著者
芝崎 美和 山崎 晃
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.256-267, 2016
被引用文献数
1

本研究の目的は, 児童の謝罪が幼児と同様に罪悪感によって規定されるか否かを明らかにし, 違反発覚の有無という点で異なる約束違反場面と欺き場面での加害児の謝罪についての児童の予測が罪悪感認識の程度と関連するか否かについて明らかにすることであった。調査対象者は小学2年生87名, 4年生86名, 6年生79名であった。分析の結果, 以下の3点が明らかになった。第1に, 所有物の持ち去り場面で加害児の行動として謝罪を推測した者は罪悪感低群よりも高群で多く, 反対に自己中心的方略を推測した者は罪悪感高群よりも低群で多かった。第2に, 約束違反場面では加害児の行動予測に罪悪感認識の高低による違いはみられず, 加害児の罪悪感の程度にかかわらず謝罪が多く予測された。第3に, 欺き場面では, 罪悪感認識の高低によって謝罪を推測する程度には違いがみられなかったが, 罪悪感低群では自己中心的方略を推測した者が多く,他方,罪悪感高群では, 向社会的方略を推測した者が多かった。以上のことから, 児童の謝罪が罪悪感に規定される程度は違反の種類によって異なり, 所有物の持ち去り場面での児童の謝罪は罪悪感と関連するが, 約束違反場面での謝罪は罪悪感と関係しておらず, 違反が発覚しない欺き場面では, 罪悪感は謝罪ではなく向社会的方略を促すことが示された。
著者
一柳 貴博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.79-94, 2021-03-30 (Released:2021-05-01)
参考文献数
31
被引用文献数
5

本研究の目的は,小学校の通常の学級に在籍するASD特性児に対する「周囲児」の行動メカニズムを検討し,両者の関係形成に向けた支援を提案することであった。小学校教諭95名を調査協力者とした質問紙調査を実施し,周囲児の要支援行動が「ある」と回答した35名のデータを用いて,周囲児の要支援行動および代替行動の内容・きっかけ・結果の回答をKJ法を参考にして分類した。要支援行動については,〈ASD特性児が周囲とずれた行動や発言をする時〉に,【からかい・悪口】【行き過ぎた注意】【除け者・回避】が生じ,【不快体験の生起・維持】や【楽しさを得る】という結果に至っていることが示された。代替行動については,ASD特性児と周囲児の間で「共有」できるものがある時に【友好的な関わり】が生じるというメカニズムと,各々が自分のことに取り組めるような環境がある時に【ASD特性児に対して何もしない】という代替行動が生起するというメカニズムが示された。周囲児の代替行動を増やす支援として,ASD特性児と周囲児が「共有」できる場を増やすこと,各々のことに集中して取り組めるような環境を整えること,休み時間の両者の関わりに着目すること,周囲児自身の話を丁寧に聞くことの四点が見出された。
著者
松井 仁
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.29-36, 1992-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16

In this research, a new scaling procedure was developed in order to measure personality traits (θ) to create Movement responses of organic objects (M or FM in the Rorschach test) in the Inkblot test. This procedure was based on the item response theory. In this procedure the homogeneity of the items of the used test were checked. Here, 60 items including the Rorschach test and other items from Holtzman Inkblot Technique (HIT) were used and 402 subjects were asked to create one response for each item. Then, 40 homogenious items including 8 items from the Rorschach test were selected through the principal factor method. The item parameters of the selected 40 items and the information function for the estimation of θ were then calculated. The estimates of θ were also calculated by the maximum likelihood method. A discussion on the charactristics of items and personality traits estimated on Movement took place. And the result proved that the estimate of θ (personality traits) in order to create Movement responses were not reliable at a low level.
著者
白石 智子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.252-262, 2005-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
34
被引用文献数
17 10

本研究では, 大学生の抑うつ傾向への対処的・予防的取り組みとして認知療法を基にした心理的介入プログラムを実践し, その評価を行った。研究1では, 大学生126名を対象に, 本プログラムの抑うつ感軽減効果及び抑うつ関連認知の変容効果について検証した。実験期間は3週間であった。分析の結果, 本プログラムを受けた認知療法群 (n=62) は, 統制群 (n=64) に比べ有意に抑うつ感の程度が軽減したことが示された。また, 抑うつ感の発現因と捉えられている否定的自動思考の頻度, 抑うつスキーマの程度も有意に軽減したことが示され, 本プログラムは将来に対する予防的措置としても有効であることが示唆された。研究2では, 本プログラムによる抑うつ感軽減効果の個人差について検討した。個人差要因となる変数には, 認知的変数として否定的・肯定的自動思考の頻度及び抑うつスキーマの程度を, 行動的変数として調整型・改良型セルフ・コントロール実行状況を想定した。分析の結果, 介入前における肯定的自動思考の頻度が効果の個人差要因となることが示された。
著者
松岡 弥玲
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.45-54, 2006-03

本研究の目的は,(1)理想-現実自己のズレが年齢と共に減少していく変化と,自尊感情が生涯にわたって維持される傾向とが関係しているかどうかを検証すること,(2)理想自己の実現可能性の生涯発達変化を捉えること,(3)ズレを減少させる方略(肯定的解釈,粘り強さ,諦めの早さ)の生涯発達変化をズレとの関わりから探索的に検討することである。調査参加者は15歳から86歳までの男女(865名)。主な結果は以下の通りである。(1)自尊感情は生涯維持され,ズレは年齢と共に減少していた。そして青年期から老年期までの全ての群でズレと自尊感情との間に有意な負の相関関係がみられ,ズレが減少していく変化と自尊感情の維持とが関連していることが示唆された。(2)実現可能性は,45-54歳に減少する傾向がみられた。(3)ズレを減少させる方略は,高校生から55-64歳までの間,対照的な方略が交互に用いられ,男女差が顕著であった。しかし,65-86歳群になると男女共にズレと方略との関わりが無くなった。これらの結果について,性差に焦点をあて,ライフイベントや職業生活との関わりから考察がなされた。
著者
松岡 弥玲
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.45-54, 2006
被引用文献数
3

本研究の目的は,(1) 理想-現実自己のズレが年齢と共に減少していく変化と, 自尊感情が生涯にわたって維持される傾向とが関係しているかどうかを検証すること,(2) 理想自己の実現可能性の生涯発達変化を捉えること,(3) ズレを減少させる方略 (肯定的解釈粘り強さ諦めの早さ) の生涯発達変化をズレとの関わりから探索的に検討することである。調査参加者は15歳から86歳までの男女 (865名)。主な結果は以下の通りである。(1) 自尊感情は生涯維持され, ズレは年齢と共に減少していた。そして青年期から老年期までの全ての群でズレと自尊感情との間に有意な負の相関関係がみられ, ズレが減少していく変化と自尊感情の維持とが関連していることが示唆された。(2) 実現可能性は, 45-54歳に減少する傾向がみられた。(3) ズレを減少させる方略は, 高校生から55-64歳までの間, 対照的な方略が交互に用いられ, 男女差が顕著であった。しかし, 65-86歳群になると男女共にズレと方略との関わりが無くなった。これらの結果について, 性差に焦点をあて, ライフイベントや職業生活との関わりから考察がなされた。
著者
伊藤 拓 竹中 晃二 上里 一郎
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.162-171, 2005-06
被引用文献数
1

多くの抑うつの心理的要因が提唱される中, 抑うつの心理的要因の共通点や抑うつを引き起こす共通要素についての検討はほとんどなされていない。本研究では, この点に着目し, 従来の代表的な抑うつの心理的要因である完全主義, 執着性格, 非機能的態度とネガティブな反すうの関連を明らかにするとともに, 完全主義, 執着性格, 非機能的態度からうつ状態が引き起こされる上で, ネガティブな反すうが重要な共通要素として機能しているかを検討した。大学生(N=191)を対象とした8ヶ月間の予測的研究を行った。その結果, (1)完全主義, 執着性格, 非機能的態度という異なる抑うつの心理的要因は, 共通してネガティブな反すう傾向と正の相関があること, (2)これらの心理的要因が高くても, うつ状態が直接的に引き起こされるわけではなく, ネガティブな反すう傾向が高い場合にうつ状態が引き起こされることなどが示された。以上のことから, 完全主義, 執着性格, 非機能的態度という異なる抑うつの心理的要因からうつ状態が引き起こされるメカニズムには, ネガティブな反すう傾向が共通要素として介在していることが示唆された。
著者
村山 航
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.130-140, 2003-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
20 13

これまでの研究において, 学習方略使用と有効性の認知との関係に関し, 一貫した結果が得られていない。本研究では, その非一貫性を解消するため, 従来単一のものとして扱われていた学習方略の有効性の認知を, 短期的な有効性の認知 (目前のテストなどに対する有効性の認知) と, 長期的な有効性の認知 (長期的な学習に対する有効性の認知) の2つに分け, 学習者の方略使用に与える影響を比較検討した。また, その結果の学校間変動や達成目標という個人差変数の調整効果も併せて検討した。中学生・高校生12校1138人に, 予備調査によって作成した歴史の学習方略質問紙に対して回答してもらい, 階層線形モデルなどによる分析を行った。結果, 短期的な有効性の認知は方略使用に対し直接の効果を持つが, 長期的な有効性の認知は, 短期的な有効性の認知を媒介した間接的な効果しか持たないことが明らかになり, 学習方略の有効性の認知を分けて概念化することの有用性が示された。有意な学校間変動は見られなかった。また, 達成目標による調整効果はみられなかった。
著者
坪井 裕子 李 明憙
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.335-346, 2007-09
被引用文献数
1

本研究の目的は自己記入式のYouth Self Report (YSR)と職員が評価するChild Behavior Checklist (CBCL)を用いて虐待を受けた子どもたちの行動と情緒の特徴を明らかにするとともに,臨床的応用可能性を探ることであった。児童養護施設に入所中の子ども142名を対象に,YSRとCBCLを実施した。両方有効だったのは124名(男子75名,女子49名)だった。問題行動得点では,CBCLとYSRの間で一定の相関が認められたが,コンピテンスに関しては両者で捉え方が異なる可能性が示された。被虐待体験の有無による比較では,CBCL,YSRいずれにおいても被虐待体験が子どもの行動や情緒の問題に影響を及ぼすことが確認された。職員は子どもが気づきにくい「社会性の問題」や「注意の問題」などを客観的に捉えることが示された。反面,「身体的訴え」や「思考の問題」など,子ども側の主観的な問題を捉えにくいことが挙げられた。臨床的応用例の検討からは,自己評価と他者評価を組み合わせることによって,虐待を受けた子どもの行動と情緒の問題を,より多面的に理解できることが示唆された。
著者
工藤 与志文 白井 秀明
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.21-30, 1991-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
11

The purpose of this study was to investigate the effects of learners' existing mis -rules (ru) on area learning. It was inferred that schoolchildren had a ru that if the perimeter of a figure is longer, the area of it is larger (perimeter-ru). The relations between the presence of this ru and the existent education of area were researched. The results were: (i) More than fifty percent of the children in each grade judged areal size in terms of the ru.(ii) The percentage of the ru-response rapidly increased after area learning. These results suggested that (a) the present education of area could not reconstruct the perimeter-ru to the correct rule (ru), and (b) rather, might strengthen misjudgments caused by the perimeter-ru.
著者
解良 優基 中谷 素之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.285-295, 2016-09-30 (Released:2016-10-31)
参考文献数
41
被引用文献数
5 7

本研究は, 課題価値概念におけるポジティブな価値とコストが学習行動に及ぼす影響について, それぞれの主効果に加えて交互作用効果がみられる可能性について検討した。4年制大学の大学生と短大生計434名を対象に, 心理学の授業について課題価値評定および持続性の欠如について測定した。重回帰分析の結果, 努力コストにおいてのみポジティブな価値とコストの交互作用効果が有意であった。単純傾斜の検定を行った結果, 努力コストを高く認知している者にとって, ポジティブな価値の認知はより強い影響をもつことが明らかとなった。また, 機会コスト, 心理コストについては, それぞれポジティブな価値とコストの主効果のみが有意であり, ポジティブな価値は学習の持続性に正の影響を, コストは負の影響を及ぼしていた。興味価値・実践的利用価値の2つのポジティブな価値の間では概ね共通した結果がみられ, 学習者のもつポジティブな価値のみでなく, コスト認知についても考慮する必要性が示唆された。
著者
久保 信子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.511-520, 1999-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
21
被引用文献数
8 5

本研究の目的は, 大学生の英語学習について, 学習動機学習に関する認知的評価, 学習行動, およびパフォーマンスという潜在変数間の関係を明らかにすることである。そのために, 志向-評価モデルと名づけた動機づけモデルを提案した。そのモデルは, 学習動機と学習に関する主観的評価が共変動し, それぞれが学習行動に影響し, さらにパフォーマンスに作用すると想定したものである。このモデルを文系の学生193名, 理系の学生136名の反応について検討した。まず学習方略について, その項目を因子分析にかけた。その結果, 一般的方略と大意伝達方略の2つに分類された。次に, 文系の学生と理系の学生とではいくつかの観測変数の分布に顕著な違いが見られたので, これらを別々に分析した。共分散構造分析にかけたところ, 文系および理系の学生の両グル-プは潜在変数間において同様の関連を持つ結果となり, その関連は志向-評価モデルと同様であった。学習動機と認知的評価への介入一般について考察した。
著者
谷 冬彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.265-273, 2001-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
25
被引用文献数
43 18

本研究の目的は, Erikson理論に基づいて, 第V段階における同一性の感覚を測定する多次元自我同一性尺度 (MEIS) を新たに作成し, 青年期における同一性の感覚の構造を検討することである。Eriksonの記述に基づき,「自己斉一性・連続性」「対自的同一性」「対他的同一性」「心理社会的同一性」の4つの下位概念が設定された。20項目からなるMEISを大学生390名 (18-22歳) に施行し, 因子分析を行ったところ, 4つの下位概念に完全に対応する4因子が得られた。α係数, 再検査信頼性係数, 2時点での因子分析における因子負荷量の一致性係数などの結果から, 高い信頼性が確認された。また, EPSIとの関連から併存的妥当性が確認され, 自尊心尺度, 充実感尺度, 基本的信頼感尺度との関連から構成概念的妥当性 (収束的・弁別的妥当性) が確認された。また, 年齢が高くなるほどMEIS得点が高くなるという結果から, 発達的観点からの構成概念的妥当性も確認された。このように信頼性・妥当性の高い多次元自我同一性尺度 (MEIS) が作成され, 青年期における同一性の感覚は4次元からなる構造であることが示唆された。
著者
坂口 由佳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.290-310, 2013 (Released:2014-03-03)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究は, 自傷行為経験者の視点から, 自傷行為をする生徒たちに対する学校での対応を検討したものである。自傷行為経験者14名によって書かれたブログから学校の先生たちの対応に関する記事を抜粋し, グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。その結果, 自傷行為をする生徒たちは先生からの対応について大きく2つの体験プロセスを経ていた。一つは《自傷行為をする生徒たちにとってサポートされたと感じる体験プロセス》であり, この体験を重ねる中で, 生徒たちは自傷行為をやめようと思えるようになっていく。もう一方は《自傷行為をする生徒たちにとって冷たく見放されたという形で体験がすすむプロセス》である。この体験を経ると, 自傷行為をする生徒たちは心を閉ざし, 先生たちとの関係を絶つようになる。一度つながったとしてもその後の先生たちの対応によっては容易に関係を切り, 一旦先生たちとの距離を置くようになるとサポートされたと感じる体験プロセスに戻ることはほとんどない。しかし, 先生たちからのこまめな声かけなど日常的なサポートを繰り返し受けることでサポートされたと感じるプロセスに戻っていくというルートが一つ認められた。
著者
榎本 淳子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.180-190, 1999-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18
被引用文献数
27 14

本研究は, 青年期の友人関係の発達的な変化を明らかにすることが目的である。青年期の友人関係を友人との「活動的側面」と友人に対する「感情的側面」の2側面から捉え, これらの関連とそれぞれの発達的な変化を質問紙を用いて検討した。対象者は中学生 (326名), 高校生 (335名), 大学生 (247名) の計 908名であった。因子分析の結果, 活動的側面については4因子 (「相互理解活動」, 「親密確認活動」, 「共有活動」, 「閉鎖的活動」) が見いだされた。発達的変化としては, 男子は友人と遊ぶ関係の「共有活動」からお互いを尊重する「相互理解活動」へと変化し, 女子は友人との類似性に重点をおいた「親密確認活動」から他者を入れない絆を持つ「閉鎖的活動」へと変化し, その後「相互理解活動」へ変化した。感情的側面については, 因子分析から5因子 (「信頼・安定」, 「不安・懸念」, 「独立」, 「ライバル意識」, 「葛藤」) が見出された。また, 発達的変化は, あまり見られなかった。2側面の関連については, どの活動的側面も感情的側面の「信頼・安定」と関連しており, 親しい友人とは信頼し安定した感情で友人関係を築いていることがわかった。また, 活動的側面の「親密確認活動」は主に感情的側面の「不安・懸念」と関連しており, 「相互理解活動」は「独立」と関連していた。
著者
依田 新 大橋 正夫 島田 四郎
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-9,64, 1969

小学校へ入学したばかりの1学級の児童に担任の教師が個別に面接して, 好きな友達と嫌いな友達の名前を無制限にあげさせた。こうして毎月1回3年生の終りまで合計36回にわたって学級内の友人構造を調査した。これを主として数量的に分析した結果次のことが明らかとなった。<BR>(1)好きな友達としてあげる人数の平均は第1回では1人以下であったのが次第に増加し, 終には3人を越すようになつた。あげた嫌いな友達の数はそれより稍少いが, 大体類似の傾向をたどつて増加する。<BR>(2)好きな友達として女子が指名するのはほとんど最初から女子が多いが, 男子が男子を多くあげるようになつたのは2年生の3学期に入つてからである。とれに対して嫌いな友達としてあげるのは, 男女ともはじめから男子が多い。<BR>(3)多数から集中的に選ばれるスターは, 「好きな友達」ではほとんど女子, 「嫌いな友達」ではほとんどが男子である。両方ともその地位はかなり安定しているが, 特に前者はそれが顕著である。<BR>(4)本研究の年齢範囲では選択行動の一貫性は発達に伴って増大しているとはいえない。しかし積極的選択の方が拒否的選択よりも常に高い。<BR>(5)好きな友達の相互選択の量は一般に男子同志より女子同志の間の方が多く, 又次第に多くなるが, 異性間のそれは2年生を山とし3年生ではかえつて少くなっている。又相互依存の程度は次第に高くなって行く。相互に嫌い合つている組の数には性による差がなく, 又異性間のそれは3年生に急増している。<BR>以上のごとは一般に言われているよりも早く既に1年生頃から性的対立がみら札それが3年生にはかなり顕著になることを一貫して裏づけているように思われる。しかもそれはまず女子の方の側から現れ, ややおくれて男子の方にも現われることを示している。しかしこれは本研究の資料が面接調査によるものであるということに幾分関係があるかもしれない。
著者
落合 良行
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.233-238, 1982-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1
著者
林 創
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.43-53, 2002-03
被引用文献数
1

本研究は,児童(小学1~6年生)を対象(N=378)に,再帰的な心的状態の理解がいつごろ理解できるようになるのかを,「心の理論」研究の二次的信念課題によって検討したものである。既存のアイスクリーム課題(Perher & Wimmer,1985)と誕生日課題(Sullivan et al.,1994)に加えて,簡潔で実施が容易な移動課題を新たに用意し,3つの課題を比較した。さらに,ともに意図的な虚偽を述べている場面で「うそと冗談」を区別させる課題を実施し,再帰的な心的状態の理解との関わりを調べた。その結果,移動課題は誤解や解釈の困難性を招きにくい課題であると同時に,この課題から1年生(6~7歳)で多くの者が二次的信念を理解できることが判明した。また,二次的信念や二次的意図の理解と,「うそと冗談」の区別の正答率に関連があり,うそと冗談を区別する上で再帰的な心的状態の理解が前提となることが確認された。