著者
詫摩,武俊
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, 1968-12-15

The twin study method is considered to be the most reliable one in order to study hereditary and environmental influences upon the development of intelligence. Six kinds of group intelligence tests were given to 543 MZ and 134 DZ twin pairs. The results obtained from these tests and their sub-tests told that MZ twins had higher degree of comformity than DZ twins. The evidence indicated heredity control for some function that determined intelligence test scores, though some differences were seen in the power. The following subtests showed a strong heredity influence : 1. a test that required rapid mental activities 2. a test taht involved verbal remembrance 3. a test that involve numbers and calculation 4. a test that involved recognition of the figure place in various forms. On the other hand a test that had something to do with past experiences showed less strong heredity influecne. These results might enable us to approach to the sub-functions taht constitute general intelligence.
著者
小林 朋子 櫻田 智子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.430-442, 2012 (Released:2013-06-04)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究の目的は, 災害を体験した中学生が災害直後から1ヶ月の間にどのようなことを感じ, 考えていたのかを明らかにし, その心理的な変化のモデルを生成することである。2004年の新潟県中越地震を経験した中学生の震災後の作文を, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した結果, 56個の概念, そして32個のカテゴリー, さらに5個のカテゴリー・グループが抽出された。災害後に, 家族や友人の安否がわかることで安心感が生まれ, 特に学校で友人に会えたことによって不安が解消されていったことがわかったことから, 学校再開がこころのケアにおいて非常に重要であると考えられた。また, 周囲の状況を冷静に捉え, 「自分の方がまだましだ」と考え対処しようとしたり, 自分だけではなく地域全体が早く復興できるよう願うなど, 自分だけの視点に捉われずに状況を把握していた。そして支援を受けるだけではなく, 「みんなの役に立ちたい」という思いを持っていたことが示された。
著者
堀口 康太 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.101-114, 2014-06-30 (Released:2015-03-27)
参考文献数
50
被引用文献数
5 2

本研究は, 自己決定理論の枠組を参考にし, 老年期の発達課題を考慮した社会的活動参加動機づけ尺度を作成することを目的として実施された。都市部において社会的活動に参加する60歳から89歳まで424名を対象とした質問紙調査を実施し, 男女278名(男性72名, 女性195名, 不明11名 ; M=72.0歳, SD=5.9)を有効回答として分析を実施した。予備調査によって抽出された暫定版37項目を用いて因子分析を実施し, 最終的に「自己成長の追求」, 「自己の発揮志向」, 「喪失の制御」, 「他者への同調」, 「周囲への貢献希求」の5因子22項目によって構成される社会的活動参加動機づけ尺度が作成された。その後, 作成された尺度を構成している下位尺度について理論上想定された動機づけとの対応・相違が検討され, 尺度の妥当性・信頼性が確認された。本研究で作成された尺度によって, 老年期特有の動機づけを測定することが可能となり, 老年期における社会的活動への参加に関する研究が発展する可能性が示唆された。
著者
森 一夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.17-25, 1976-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7

物質観の発達をとらえるにあたって, まず幼児の物質観は素朴実在論的物質観であると措定する。これは, 外界に実在する物質を知覚されるとおりのままの固まり (mass) としてみて, 物質の内的構造の把握にまでは至らないから,(1) 物質の表面的属性だけで判断するために重さの概念は見かけの大きさに従属していて, したがって重量と体積とは概念的に未分化である。(2) 自らの意識に反映されたとおりのままの物質としてとらえているため, 欲求の度合に応じて物質の大きさの知覚に差異が生じる。このような基本的仮説に基づいて実験を行ったところ, 次のような知見が得られた。1. 3才児と4才児では大きい球を重いと判断する傾向が認められる。つまり幼児に関する限り, 視覚が介在すると反Charpentier効果ともいうべき傾向が認められる。これは幼児の場合, 重量が見かけの体積に依存しそいるため, Charpentier効果に優先してこれと逆の結果が現われたものであろうと考えられる。2. 4・5才児にpositiveな価値をもつ刺激としてビスケットと,偽ビスケットの2次元的形態の大きさを評価させたところ, 後者よりも前者の方を大きく知覚している。また4・5才児ともビスケットを過大視している。さらに4・5才児に同一標本を, 一方ではpositiveな刺激として「チョコレート」と教示し, 他方のグループではnegativeな刺激として「苦い薬」と教示して3次元的形態の大きさを評価させたところ, 前者の方が後者の場合よりも大きく知覚している。また, 前者の場合には刺激体を過大視しているが, 5才児では後者の場合を実物よりも過小視している。3. 「大きい物体は重く, 小さい物体は軽い」と判断している4才児が, 体積と重量との量的矛盾関係, すなわち「大きいが軽く, 小さいが重い」ことを知覚的体験して, 「大きい」「小さい」「重い」「軽い」という言語でこれを表現できた場合, もはや見かけの体積 (かさ) に惑わされずにかなり正確に重さの弁別が可能になる。そして, このとき重さの弁別に際してCharpentier効果が認められる。
著者
外山 美樹 湯 立 長峯 聖人 黒住 嶺 三和 秀平 相川 充
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.287-299, 2018-12-30 (Released:2018-12-27)
参考文献数
43
被引用文献数
3 2

本研究の目的は,学習性無力感パラダイムを用いて,実験参加者にストレスフルな失敗経験を与えた後の,制御焦点と課題パフォーマンスの関連を検討することであった。促進焦点と防止焦点で基本的な認知能力のパフォーマンスには差はないが,学習性無力感を経験した後の課題においては,促進焦点のパフォーマンスが優位になるという仮説を立てて検証を行った。実験参加者は大学生57名であった。本研究の結果より,学習性無力感を経験した後の課題においては,促進焦点条件のほうが防止焦点条件よりも,パフォーマンスが高いことが示され,仮説が支持された。また,解決可能な課題と解決不可能な課題が混在している課題においては,防止焦点のほうが促進焦点よりも,パフォーマンスが高い傾向にあることが明らかとなった。本研究より,文脈によって促進焦点と防止焦点のどちらのパフォーマンスが優位となるのかが異なることが示された。促進焦点は,挫折や失敗から回復する“レジリエンス”が優れており,一方で,防止焦点は,解決不可能な課題が混在した文脈での課題パフォーマンスが優れていることが示唆された。
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.234, 2020 (Released:2020-11-03)

下記論文は,理事会のもとに設置されたワーキンググループにおいて,研究の手続きに関し,重要な先行研究が引用されておらず,結果的に他者のアイディアを無断で流用したものに該当すると判断されました。著者に説明を求めたところ,先行研究の引用が欠落していたことを認め,論文を取り下げたいとの申し出がありました。理事会は,著者の他の論文では当該先行研究が正しく引用されていることから,下記論文での引用の欠落が不注意によるものと判断し,著者からの論文取り下げの申し出を承認することとしました。 記 吉野 巌・島貫 靜(2019). 小学校算数授業におけるメタ認知育成の試み ――「頭の中の先生」としてのメタ認知の意識づけとメタ認知訓練の効果―― 教育心理学研究, 67, 343-356.
著者
瀬尾 美紀子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.441-455, 2005-12
被引用文献数
3

本研究は, 学習上の援助要請を促進する介入方法を考案し, その効果を検証することを目的とした。まず, 予備調査において, 援助要請に必要な要因を学習者に尋ねた結果, 主に自己のつまずきを明確化することと, 時間や場所の確保のような環境要因が挙げられた。研究1では, 自己のつまずきを明確化するためのつまずき明確化方略の使用と, 先行研究で影響が示されてきた達成目標や援助要請に対する認知が, 援助要請とどのように関連しているか質問紙調査によって検討した。その結果, 習得目標がつまずき明確化方略を媒介して援助要請と関連することが明らかになった。予備調査と研究1の結果を受けて, 研究2では, 高校2年生を対象に, 質問生成に対してつまずき明確化方略を教授する介入授業を行い, 方略教授の効果について検討した。その結果, 方略を教授することによって, 質問生成量の増加が, 数学の学力の高い集団で確認された。一方, 数学の学力に関係なく, 数学の学力の高い集団と低い集団の両方で, 一般的な質問は減少し, 内容関与的質問が増加して, 質問生成の質的な向上が確認された。
著者
南風原 朝和 芝 祐順
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.259-265, 1987-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9

Three probabilistic indices were proposed for interpreting major types of statistical results obtained in behavioral research: the probability of concordance as an index of correlation, and two versions of the probability of dominance being indices of mean difference in the case of randomized and paired data, respectively. Charts for finding confidence intervals for their population values were provided. The relationships of these indices with certain nonparametric statistics were also noted.
著者
平山 祐一郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.399-406, 1993-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
5
被引用文献数
2

The word-association instructional strategy for writing compositions, commonly used in elementary and junior high schools, is based on the use of word associations. Even though there are reasons to believe that this strategy can improve written compositions, the evidence available is not as yet conclusive. One of the supposed merits of this strategy is the increase in length of the compositions. To further investigate the above findings, two groups of fifth graders, one experimental (N=30) and one control (N=35), were asked to write two compositions. Both groups did not differ in the first compositions, but did in the second compositions; only the experimental group was found to follow this strategy. Confirming the supposed effect of this strategy on composition length, the compositions of the experimental group were longer than those of the control group. However, the effect of this strategy on composition length in the second composition was limited only to those experimental subjects whose first composition was relatively short.
著者
倉盛 美穂子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.121-130, 1999-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18
被引用文献数
5 3

本研究は, 異なるレベルのペアが共同で課題に取り組む場合, 被験児の話し合いへの取り組みによって, 成績の伸びや話し合い中の内容に違いがみられるのかについて検討を行った。その際に, 下位のレベルの被験児の話し合いへの取り組み (主張性・認知的共感性) が, 成績の伸びや話し合い中の内容に及ぼす影響を検討した。本研究では, 共同で話し合う課題として道徳判断課題を使用した。また, 道徳レベルが下位の被験児を, 主張性, 認知的共感性の高低によって4つのグループに分けた後に, 上位レベルの被験児とのペアリングを行った。被験児は3回の話し合いセッションに参加した後, 再び道徳レベルを測定された。この話し合いセッション後の被験児の道徳レベルの変化と, 話し合いセッション中の発話内容について分析を行った。その結果, 下位レベルの被験児の発話は, 主張性が高いと課題に記述された内容をそのまま述べる発話が多く, 認知的共感性が高いと記述内容だけでなく記述内容を発展した内容の発話が多かった。また, 下位レベルの被験児の主張性と認知的共感性は, 上位レベルの被験児の発話数にも影響していた。このような主張性・認知的共感性の違いが発話に及ぼした影響は, 下位レベルの被験児の課題成績の伸びに反映されることが明らかになった。
著者
大谷 宗啓
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.480-490, 2007
被引用文献数
1

本研究は, 高校生・大学生を対象に, 従来, 深さ・広さで捉えられてきた友人関係について, 新観点「状況に応じた切替」を加えて捉え直すことを試み, その捉え直しが有意義なものであるかを質問紙調査により検討した。因子分析の結果, 新観点は既存の観点とは因子的に弁別されること, 新観点は深さ・広さの2次元では説明できないものであることが確認された。また重回帰分析の結果, 新観点追加により友人関係から心理的ストレス反応への予測力が向上すること, 新観点による統制の有無により既存観点と心理的ストレス反応との関連に差異の生じることが明らかとなった。
著者
石津 憲一郎 安保 英勇
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.23-31, 2008-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
29
被引用文献数
27 14

臨床場面では過剰適応は非適応的とされているが, 実証的な過剰適応研究は数が少ない。本研究では過剰適応の概念を理論的に整理し, その構造を検討することを第1の目的とした。続いて, 従来言われてきたように過剰適応が個人にとって非適応的に作用するのかを実証的に検討することを第2の目的とした。中学生を対象にした調査の結果, 過剰適応は個人の性格特性からなる内的側面と, 他者志向的で適応方略とみなせる外的側面から構成されることが示された。また, 過剰適応と学校適応感, ストレス反応との関連を検討した結果, 過剰適応の内的側面は学校適応感およびストレス反応にネガティブな影響を与えていたが, 適応方略として捉えられる外的側面は学校適応感を支える一方で, ストレス反応にも正の影響を与えることが示された。本研究の結果, 従来言われてきたこととは異なり, 必ずしも過剰適応的であることが非適応的とはみなすことができないことが示された。しかし, 他者志向的な適応方略で支えられる適応感の影にはストレスの存在が想定され, そのストレスが将来の不適応を予測する可能性について考察を行った。
著者
濱口 佳和 藤原 健志
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.59-75, 2016 (Released:2016-04-11)
参考文献数
55
被引用文献数
4 6

本研究は, 高校生用の自記式能動的・反応的攻撃性尺度の作成, 能動的・反応的攻撃性と身体的攻撃・関係性攻撃との関連, 能動的・反応的攻撃性類型の心理・行動的特徴を明らかにすることを目的として行われた。高校1~3年生2,010名に対して, 中学生対象に開発された自記式能動的・反応的攻撃性尺度を実施し, 探索的因子分析を実施したところ, 中学生同様の6因子が得られた。検証的因子分析の結果, 仲間支配欲求, 攻撃有能感, 攻撃肯定評価, 欲求固執からなる能動的攻撃性と報復意図と怒りからなる反応的攻撃性の斜交2因子モデルが高い適合度を示した。6下位尺度については, 攻撃肯定評価でやや低いものの, 全体として高い信頼性が得られ, 情動的共感尺度や他の攻撃性尺度等との相関により併存的妥当性が実証された。重回帰分析の結果, 性別と能動的・反応的攻撃性によって, 身体的攻撃の約40%, 関係性攻撃の約30%が説明されることが明らかにされた。クラスター分析の結果, 能動的攻撃性・反応的攻撃性共に高い群, 反応的攻撃性のみが高い群の2種類の攻撃性の高い群が発見され, Crapanzanoの重篤モデルを支持する結果が得られた。
著者
河内 清彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.437-447, 2004-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

本研究では障害者に関する健常学生の抵抗感を軽減させるための手がかりを得るため, 健常学生の自己効力感及び障害者観に及ぼす障害条件, 対人場面, 個人的要因 (障害者への関心度, 性別, 援助経験) の影響を検討した。4障害 (視覚, 聴覚, 運動, 健康) 条件に対応した4下位尺度 (関係, 主張, 教育, 当惑) により658名の大学生に質問紙調査を実施した。因子分析の結果では, 特定の対人場面を表す下位尺度に関し, 4障害条件が共通の因子負荷量を示す「当惑関係」「自己主張」「統合教育」という3因子が抽出された。このことから, 健常学生の意識に及ぼす影響は, 障害条件よりも尺度内容に依存していることが明らかとなった。これら3因子と個人的要因との関連では,「当惑関係」因子は3要因と,「自己主張」因子は性別と関連が認められたが,「統合教育」因子はどの要因とも関連が認められなかった。一方, 下位尺度別障害条件と個人的要因との比較では, 視覚と聴覚の障害条件よりは, 運動と健康の障害条件の方が抵抗感が弱く, 性別の影響は下位尺度により異なっていたが, 関心度と援助経験は障害者と交流しようという積極的な意識を助長することが明らかとなった。
著者
山岡 明奈 湯川 進太郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.73-86, 2019
被引用文献数
2

<p> 創造性を増進することは社会にとって有用であると考えられるが,しばしば創造性の高い人は精神的に不健康であると指摘されてきた。一方で,近年では創造性が高くても精神的に健康な人の存在も示唆されている。そこで本研究では,創造性と精神的健康の両方と関連深い概念として知られているマインドワンダリングという現象に着目し,創造性の高さや精神的健康さの違いによって,マインドワンダリングの特徴に違いかあるのかを実験的に検討した。まず,62名の参加者の創造性と抑うつ傾向およびワーキングメモリ容量を測定した。その後,思考プローブ法を用いて,映像視聴中のマインドワンダリングの思考内容,自覚の有無,話題数を測定した。分析の結果,創造性が高く精神的に健康な人は,マインドワンダリング中に過去のことを考える頻度が少ないことが示された。本研究の結果は,マインドワンダリングを用いて,精神的健康を維持しつつ創造性を増進するための基礎的知見を示したといえる。</p>
著者
伊藤 美奈子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.12-20, 2000-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
25
被引用文献数
18 8

本研究は, 教師のバーンアウト傾向を規定する要因について調べることを第1の目的としている。208 名の教師を対象に次の項目についての調査が実施された。(1) 性格特性,(2) 教師としての能力評価と理想の教師像,(3) 仕事上のストレス,(4) サポート,(5) 周りの同僚に対するイメージ,(6) バーンアウトという内容からなる。その結果, 〈達成感の後退〉は, 性格特性の中でもNP (やさしさ・世話), 授業指導能力などの《指導性》と, 職場での人間関係やサポートなどの《関係性》により解消されることが示唆された。また〈消耗感〉はく達成感の後退〉が強い者に多く見られ, 《関係性》によって抑制されるという点では〈達成感の後退〉と同様であったが, 《悩み》によって促進されるという特徴が示された。また若年群とベテラン群を比較した結果, 若年群の方が〈達成感の後退〉を強く感じていたが, その背景には授業指導に関する自信の低さがあることが示唆された。また, クラス運営を重視する授業指導志向タイプと, 子どもとの関係性を大切にする関わり志向タイプを比較した結果, 前者では授業能力の評価がバーンアウトに関与するのに対し, 後者では同僚との人間関係がバーンアウトを防止するのに重要な機能を果たすことが示唆された。
著者
吉田 琢哉 吉澤 寛之 浅野 良輔 玉井 颯一 吉田 俊和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.252-264, 2019-12-30 (Released:2020-01-24)
参考文献数
59
被引用文献数
5

本研究では,複数の社会化エージェントの働きかけが,子どもの反社会的行動の規定因である社会的認知バイアスに及ぼす影響について検討した。親の養育,教師の指導,友人の非行は社会的認知バイアスに直接的な影響を及ぼす一方で,地域住民の集合的有能感は親の養育や教師の指導を媒介して社会的認知バイアスに影響を及ぼすと予想した。1,404名の小中学生とその保護者を対象に調査を実施した。共分散構造分析による分析の結果,地域住民の集合的有能感は親の認知する養育,子どもの認知する養育,および教師の指導を介して社会的認知バイアスを抑制し,子どもの認知する親の養育と教師の指導,そして友人の非行は社会的認知バイアスに直接的に影響するというモデルの適合性が示された。集合的有能感のうち,非公式社会的統制が親の養育を,社会的凝集性・信頼が教師のM機能を促進したことから,親の養育と教師の指導とでは地域住民の働きかけが及ぼす影響過程が異なることが示唆された。
著者
雨宮 政
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.p273-277, 1985-12

Simple reaction times(SRTs) and choice reaction times(CRTs) for mentally retarded(MR) children and normal(N) children matched on MA were analyzed. The main results were as follows; 1)In SRT experiments, there were great RT differences between MR group and N group, but in CRT experiments, no significant CRT differences between them were noticed. 2)Between MR-C group, selected from MR group by the condition that the members were the same SRT level that N group members, and N group, no significant differences in CRTs were seen. It was inferred that MA 5-8 N children responded on the same way of MR children in CRT tasks that demanded higher mental activities.
著者
雨宮 政
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.273-277, 1985

本研究では, MAマッチされた精神遅滞児 (MR児) と普通児 (N児) を対象として, 彼らのSRT, CRTを分析した。<BR>その結果, 次のことが明らかになった。<BR>SRT事態ではMR群とN群との問に大きなRT差が示されたが, CRT事態では有意なRT差が認められなかった。SRTレベルが同一であるMR-C群とN群との間でもCRTの差が認められなかった。MA5-8歳レベルN児は, 高次の心理的操作の要求されるCRT事態でも, MR児と同じ反応とすることが明らかになった。そこで, N児は, MA7-8歳で何らかの心理活動の転換を迎えることが推測された。