著者
寺林 進
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.67-77, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
31

生薬の基原は,生薬の品質確保において最も重要な項目の一つである。本稿では生薬の薬用部位,特にそのラテン語表記,基原植物の学名に関する課題について考察した。『日本薬局方』の生薬のラテン語表記には議論の余地を残すものがある。例えば,麦門冬は根なのでOphiopogo nis Tuber ではなくOphiopogonis Radix とすべきである。日本薬局方収載生薬の基原植物の学名表記は分類学で用いているものとは異なる場合がある。その違いがわかるように比較対照を示した。生薬の流通品の調査にもとづいて,『第十六改正日本薬局方』に基原植物を追加収載した生薬の例を示した。また,日中薬局方での基原に関して異なる例を示した。
著者
大平 征宏 齋木 厚人 山口 崇 今村 榛樹 佐藤 悠太 番 典子 川名 秀俊 南雲 彩子 龍野 一郎 小菅 孝明 秋葉 哲生
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.191-196, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

以前我々は減量手術後に易怒性から過食,リバウンドした症例を抑肝散が改善させたことを報告し,肥満症患者の精神面に対する漢方治療が有用である可能性を提唱した。今回,頻用されている減量治療薬および抑肝散の減量治療に対する効果を比較した。当院で減量治療目的にマジンドール,防風通聖散または易怒性を指標に抑肝散を投与された肥満症患者107例を後ろ向きに検討した。投与3ヵ月後,マジンドールおよび抑肝散で有意な体重減少を認めた。糖代謝への影響を糖尿病患者のみで検討した。HbA1c の改善はいずれの群においても有意差は認めなかった。肥満症の減量治療にはメンタルヘルスの問題が重要であり,患者の精神面を意識した漢方治療は有効であることが示唆された。
著者
中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.81-85, 2009 (Released:2009-06-17)
参考文献数
9
被引用文献数
4 6

[目的]トリカブトの塊根を湿熱処理したブシ末は四肢・体幹の冷えや痛みに用いられる。疼痛性疾患に対して漢方エキス剤に加えてブシ末を処方し,治療効果と安全性について検討した。[対象と方法]修治ブシ末を247例(男性94例,女性153例)に処方(1.5‐8.0g/日)し,4週間後の効果を判定した。効果判定にはVisual Analog Scale(VAS)を用いた。投与前に比べて4週間後のVASが50%以下であれば著効,51‐75%であれば有効,76%以上もしくは4週間以内に処方を変更した場合は無効と判定した。[結果]ブシ末に関して著効102例,有効84例,無効61例で,著効と有効を合わせると75.3%であった。副作用は3例(舌のしびれ,膀胱絞扼感,全身浮腫)に認められた(1.2%)。[結語]今回の検討では重篤な副作用は認められず,疼痛疾患に対して高齢者に対するブシ末の有効性と安全性を確認しえた。
著者
呉 炳宇
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.893-898, 1995-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
15

帯状疱疹患者52例を針灸で治療し, 49例の患者 (対照群) は漢方薬で治療した。鎮痛効果の尺度として視覚的表現スケール (VAS) を用いた。針灸群は東洋医学の症状鑑別法に基づき, 証による本治法的な針を実施した。それと共に, 皮膚病変部の周囲を取り囲む針治療を実施し, 次いで灸を30分間行った。漢方薬群は肝胆湿熱型には龍胆潟肝湯を投与し, 肝鬱気滞型には逍遥散を投与し, 脾経湿熱型には胃苓湯を与えた。針灸群では, 平均3.8回の治療後に痛みが消えたが, 漢方薬群では, 鎮痛効果の発現に平均5日かかり, しかも3例では無効であった。鎮痛効果の発現率は針灸群で有意に良好であった。針は経絡の気と血を疏通することにより痛みをコントロールすると考えられる。針はまた免疫機能を高めてウイルスの活動を抑制し, それにより鎮痛効果を現すとも考えられる。針灸は帯状疱疹患者の痛みを有意に改善させた。針灸は鎮痛作用を有するといえる。
著者
松下 嘉一 今野 昭義 鎌田 慶市郎
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.15-23, 1993-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7

平成1年12月から平成2年6月まで千葉大学耳鼻咽喉科外来に口内乾燥を主訴として来院したシェーグレン症候群 (SjSと略) 4例について, 同大学第1内科において, 症例によっては現代医薬を併用し漢方治療を行った。漢方方剤としてはエキス製剤および煎剤, 丸剤を用いたが同名方剤でも煎剤のほうが有効と考えられた。治療経過については唾液分泌量を指標とした。4例中1例に正常化がみられた。他4例には多少なりとも唾液分泌量の増加をみとめた。したがって口内乾燥症状に多少なりとも漢方治療が有効であったことから, QOLに幾分なりとも寄与するものと考えられる。
著者
山田 光胤
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.505-518, 1996-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17

医療は専ら西洋医学を修めた医師によって行うこととし, 漢方を学んでも医師の資格は与えないという明治政府の処置によって, 明治16年 (1883) 以降漢方医学を学ぶ者は次第に絶え, 我が国の伝統医学・医療は絶滅に瀕した。これは, 日本人の特に当時の政府人の西洋崇拝, 伝統蔑視の思想が強く関与しているものと思われた。このような風潮は, 現在でも引き継がれていると考えられる。しかし, 幕末から明治にかけて, 日本漢方を西洋医学と対比するに, 外科手術の面は別として, 内科的治療のレベルは, むしろ日本漢方が優れていた。この具体的な症例を, 浅田宗伯は著書『橘窓書影』の中に記録している。そのような時流の中で, 東洋医学を学んで医師となった和田啓十郎は, 漢方医学の有用性・重要性を唱えて, 明治43年 (1910),『医界之鉄椎』を著した。この書は実に, 漢方医学復興の一粒の種子となった。金沢医専出身の医師・湯本求眞は, この書によって啓発され, 和田門下となって生涯を漢方医学の究明と, それによっての患者の治療に尽し, 昭和2年,『皇漢医学』3巻を著した。この書は, 西洋医学の知見を混えて, 傷寒論, 金匱要略の解釈を中心にした, 漢方最初の現代語による解説書である。湯本の『皇漢医学』は, その後の我が国に於ける漢方医学の復興に, 大きな影響を及ぼしたのみでなく, 中国に於ても, その伝統医学の温存に力を与えたといわれる。ともあれ昭和年代初頭では, ごく僅かな生き残りの漢方医と数名の医師によって, 漢方医学が伝承されていたが, やがて, 漢方復興の機運が, 次第に醸成され, 種々な運動が起こった。昭和11年 (1936), 当時新進の漢方医学研究者が志を同じくし, 漢方医学復興を目指してその講習会を開催した。偕行学苑と名付けられたが, 翌年より拓大漢方講座と名を改めた。この漢方講座は, 昭和19年 (1944) 迄8回, 毎回約3ヵ月乃至4ヵ月間ずつ開催され, 第2次大戦後の昭和24年 (1949) に, 第9回紅陵大学漢方講座として15日間開催された。通算9回, 700名以上の有志が聴講し, 中からはその後, 漢方医学界の柱石となる人物も輩出した (筆者も, 戦後の第9回講座を, 医学生の身分で聴講した)。第2次大戦前の昭和16年, 南山堂より『漢方診療の実際』という書が発行された。この書は, 従来の「証」に随って治療する漢方の本質から一歩踏み出して, 現代医学的病名に対して, 使用した経験のある漢方処方を列挙して解説している。当時とすれば画期的な漢方医学の解説書であった。そして, 第2次大戦後, 昭和29年 (1954) に改訂版が発行された。さらに昭和44年 (1969) に発行された『漢方診療医典』(南山堂) は, 漢方診療の実際を大改訂した書である。これらの書を通じて解説された, 現代医学病名に対応して用いられる漢方処方の延長が, 現在の日本で, 大量に使用されている漢方製剤の応用なのである。これらの書が, 現代日本漢方に及ぼした影響は多大なものがある。その『漢方診療の実際』初版は, 大塚敬節, 矢数道明, 木村長久, 清水藤太郎の共著となっている。これらの著者達こそ, 拓大漢方講座講師団の中核であって, その後の漢方復興運動を成し遂げた人達である。それらの人達の系譜こそはまた, 現代日本漢方の正統でもある。即ち大塚敬節は, 湯本求眞門下の古方派の学統を継ぎ, 木村長久は, 明治の大家・浅田宗伯の直門・木村伯昭の嗣子で折衷派の学統を継ぎ, 矢数道明は, 大正時代に活躍した漢方医・森道伯の流れを汲む後世派・一貫堂の後裔であった。
著者
安井 廣迪
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.845-897, 2001-03-20 (Released:2010-03-12)
被引用文献数
1
著者
中江 啓晴
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.455-458, 2009 (Released:2010-01-13)
参考文献数
5

硬膜穿刺後頭痛は腰椎穿刺後に生じる頭痛である。今回,非常に強い硬膜穿刺後頭痛に五苓散が奏効した2症例を報告する。症例1は37歳男性,症例2は36歳女性で,腰椎穿刺の直後から起立性頭痛が出現。硬膜穿刺後頭痛と診断,五苓散の内服を開始したところ改善した。五苓散は利水剤であり,水毒に対する処方である。硬膜穿刺後頭痛は国際頭痛分類第2版では低髄液圧による頭痛に分類されている。今回,髄液を津液,低髄液圧を水の偏在すなわち水毒と考え,五苓散を投与したところ改善が得られた。硬膜穿刺後頭痛に対する五苓散の有効性が示唆された。
著者
多留 淳文
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.533-562, 2001-01-20 (Released:2010-03-12)
被引用文献数
1
著者
寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.89-97, 2012 (Released:2012-10-04)
参考文献数
15

漢方は1875年に明治維新政府によって捨て去られるまで,我が国の医療の主流であった。1910年,和田啓十郎は『医界之鉄椎』を公刊し,西洋医学との協調の下に漢方を正当に評価すべきことを提唱した。今から丁度100年前,明治43(1910)年のことである。この著作に啓発され,漢方復興運動に取り組んだのが湯本求真であり,そして湯本求真の精神に共鳴したのが大塚敬節である。このように見ると,この『医界之鉄椎』が漢方の復興に果たした歴史的意義は甚大である。本稿では『医界之鉄椎』が発刊された当時の時代背景と,それから一世紀,我々の先輩は何を成し遂げたかを明らかにした。
著者
小橋 重親 井齋 偉矢 富山 知隆 中島 俊彦 竹田 眞
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.109-113, 2016 (Released:2016-08-18)
参考文献数
12

流涙や眼脂の原因となる鼻涙管狭窄症に対しては,鼻涙管ブジー法が一般的に行われている治療法である。鼻涙管ブジー法で軽快しない57歳,女性の涙目に柴蘇飲を投与したところ,3日で軽快したことを経験した。その後の検討で,成人11例中10例(90.9%)において柴蘇飲が鼻涙管狭窄症に有効であった。成人は全例,眼科で鼻涙管狭窄の診断を受けており,うち9例が鼻涙管ブジー法を行っていた。また幼児の流涙2症例も柴蘇飲の投与で,1週間で流涙が改善した。鼻涙管狭窄症による流涙に対しては,柴蘇飲が治療の選択肢になり得ると考えられた。
著者
木村 容子 黒川 貴代 永尾 幸 山﨑 麻由子 杵渕 彰 佐藤 弘 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.228-235, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
21
被引用文献数
4

不眠に補中益気湯が有効であった7症例を経験した。内訳は,補中益気湯を就寝前に服用した2例,補中益気湯の服用のみで不眠が改善した3例,補中益気湯を追加した2例であった。全症例において「浅い眠り」の訴えがあり,疲れやすい・食後の過度の眠気・日中の眠気など気虚による所見を認めたが,食欲不振などの「胃腸症状は顕著でない」ことが共通していた。また,7例のうち5例では補中益気湯により朝の目覚めが改善した。不眠に用いられる酸棗仁湯と帰脾湯は,いずれも気と血を補う処方であるが,帰脾湯は脾胃や心を補う生薬を多く含み,より虚証に用いるべきと考えられた。疲れやすい・食後の過度の眠気・日中の眠気など「気虚による症状が顕著」であるにもかかわらず,動悸・胸騒ぎ・驚きやすい・健忘・貧血・出血など「心の異常による血虚の症状に乏しい」場合には,浅い眠りや朝の目覚めの改善に補中益気湯が有効であると考えられた。
著者
濱口 眞輔 小松崎 誠 北島 敏光 恵川 宏敏
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.366-371, 2017 (Released:2018-02-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1 6

当院を受診した腰椎疾患のうち,変形性腰椎症,腰部脊柱管狭窄症,腰椎手術後症候群による下肢の痛み,冷え,痺れを呈する患者を診療記録から抽出し,漢方薬による治療効果について調査した。評価項目は下肢の痛み,冷え,痺れの有無,先行した疼痛治療法,選択した方剤とその効果とした。その結果,これらの疾患による下肢痛,冷感,痺れに対して,証に随って先行鎮痛治療に追加した漢方薬としては桂枝加朮附湯,真武湯,苓姜朮甘湯,当帰四逆加呉茱萸生姜湯,牛車腎気丸,芍薬甘草湯の処方例が多く,痛みは60例中32例(53%),痛みと冷えの合併には34例中17例(50%)と概ね半数の症例に効果がみられたが,痛みと痺れの改善は19例中4例(21%)のみであった。桂枝加朮附湯,苓姜朮甘湯,牛車腎気丸,当帰四逆加呉茱萸生姜湯,真武湯の先行鎮痛治療への追加処方は腰痛疾患による下肢症状緩和に有用であると結論した。
著者
堀田 広満 及川 哲郎 伊藤 剛 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.722-726, 2011 (Released:2012-03-21)
参考文献数
35
被引用文献数
1

掌蹠膿疱症に関節症状を合併する例は少なくないが,標準的治療は確立されていない。今回,柴胡桂枝湯の投与で皮疹および関節症状が改善した掌蹠膿疱症の症例を提示する。症例は44歳,男性。足底の膿疱,胸鎖関節,股関節,腰部の疼痛を認めた。ジクロフェナクナトリウム挿肛後も疼痛は緩和せず当研究所を受診した。掌蹠膿疱症の関節痛合併例と診断し「治小柴胡湯,桂枝湯,二方証相合者」を目標に柴胡桂枝湯を処方したところ,1ヵ月後,関節痛,皮疹が軽快した。以後,上気道症状と共に再び足底に膿疱を認め,桔梗湯の『傷寒論』条文「咽痛者」から桔梗を加味したところ,関節痛,皮疹がほぼ消失した。掌蹠膿疱症の関節痛合併例に柴胡桂枝湯を用いたとする文献はない。関節痛を合併する掌蹠膿疱症は稀ではなく,柴胡桂枝湯は有用な処方のひとつであると考える。
著者
三島 怜 小川 恵子 有光 潤介 津田 昌樹
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.29-33, 2017 (Released:2017-07-05)
参考文献数
11
被引用文献数
1

一般的にがん終末期においては,症状は右肩下がりに悪化し,症状の改善を図ることは非常に困難である。中でも骨転移疼痛のコントロールは難しい。症例は67歳男性,左腎癌右骨盤骨転移にて,緩和的化学療法や疼痛緩和治療が施行されていたが,疼痛コントロールが不十分であった。当初盗汗を主訴に湯液治療を開始し,さらに骨転移疼痛に対する疼痛緩和目的で鍼灸治療の併用を開始した。併用治療により,十分かつ,迅速な疼痛緩和が得られたため報告する。
著者
鈴木 理央 岡 洋志 萬谷 直樹 渡邊 妙子 神山 博史 長崎 直美
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.250-254, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
18
被引用文献数
3

顔面痛のある38歳女性。三叉神経痛と診断され,カルバマゼピンで痛みはある程度軽減していたが,漢方治療を希望して来院した。30年前の事故で顔面を強打した既往を手掛かりに,治打撲一方をカルバマゼピンと併用したところ痛みは改善し,高木の圧痛点も軽減もしくは消失し,最終的にカルバマゼピンを廃薬できた。外傷の既往と高木の圧痛点を認める神経痛症例には,同薬を試みる価値があると思われた。