著者
木村 容子 山崎 麻由子 佐藤 弘 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.106-112, 2019 (Released:2019-12-20)
参考文献数
12

漢方医学において疲労倦怠感は気血水スコアの気虚に分類されるが,補気剤を用いても軽快しない場合がある。 一部の慢性的な症状の背景には瘀血が存在すると考えられている。慢性の疲労倦怠感が駆瘀血剤(桂枝茯苓丸加味4例,桃核承気湯2例,併用4例)で改善した10症例(M/F1/9,年齢中央値46歳,範囲23—55歳)を経験した。 体格はほぼ中等度,自覚症状では,頚または肩の凝りが9/10例,便秘が5/10例,のぼせまたはホットフラッシュが5/10例であった。食欲不振はなく,むしろ過食が10例中5例に認められた。診察所見では,舌下静脈怒張(8/10例),臍膀圧痛(9/10例),目の隈(5/10例)などが認められ,舌や腹部所見は3—8ヵ月後には軽減または消失していた。 慢性の疲労倦怠感には瘀血の徴候を呈する症例がある。これらの症例には補気剤で補うよりも,まず瘀血を目標にして治療が有効な可能性がある。
著者
大平 征宏 齋木 厚人 大城 崇司 鈴木 和枝 龍野 一郎 白井 厚治 秋葉 哲生
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.272-277, 2013 (Released:2014-02-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は減量手術後に体重増加を来した51歳女性。若年時より肥満があり,30歳の時に糖尿病を発症した。45歳時には糖尿病性ケトアシドーシスで入院した。48歳時に過食症の診断も受けており,食事・運動療法では減量困難であった。減量手術を受け,体重は減量手術後6ヵ月で11kg 減少した。しかし,術後7ヵ月頃からリバウンドした。この頃,精神状態も不安定であり,日中は常に何かを食べている状態であった。不安定な精神状態の治療を目的に,抑肝散エキス5g/日を投与した。抑肝散投与後,摂取エネルギーの減少に伴って体重は減少した。患者本人も精神状態の改善を自覚した。また,HbA1c(JDS)も抑肝散投与後に8.7%から7.1%に改善した。本症例では抑肝散が患者の精神的不安定を改善することによって過食を抑える事で,体重減少およびHbA1c の改善が得られた可能性が示唆された。
著者
高久 俊 高久 千鶴乃 平馬 直樹 高橋 秀実
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.202-211, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
14

衛気虚証患者の体質改善に対する少量の玉屏風散末内服の有用性について報告する。対象は易感冒,アレルギー性鼻炎,発汗異常のうち1-2つを主訴とする患者30例である。玉屏風散末は黄耆,白朮,防風の3生薬を粉末にして混合したものを使用した。その有効性については内服開始6ヵ月後あるいは1年後に自覚症状の改善度をスコア化して評価した。玉屏風散末内服は24例(80.0%)で有効(著効19例,有効5例)であり,主訴別では特に易感冒(17例中著効12例を含む16例で有効)およびアレルギー性鼻炎(13例中著効6例を含む10例で有効)に対して高い有用性を示した。また有効症例全24例中,一日内服量0.7-1.4g の症例が19例(79.2%)を占めた。以上,構成する3生薬いずれも保険適応があることを勘案すると,玉屏風散末は少量内服で高い効果を示す経済的な衛気虚証患者の体質改善薬となりうることが示唆された。
著者
中山 毅 田中 一範
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.647-651, 2009 (Released:2010-03-03)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

妊娠中および帝王切開術直後に発生した癒着性イレウスに対して,大建中湯エキスを服用することにより,保存的に加療できた症例を経験した。症例は29歳女性。15歳の時に小腸軸捻転にて開腹歴あり。妊娠11週に癒着性イレウスを発症したため,大建中湯を投与したところ,大量の下痢便を認め症状は軽快。その後,胎児ジストレスにて36週に緊急帝王切開を施行。腹壁前面に小腸の強固な癒着を認めた。術後4日目に術後癒着性イレウスの診断にて,大建中湯を経口投与した。6日目に,軟状便および排ガスを認め,9日目には経口摂取を開始。その後は異常なく25日目に退院した。妊婦の高齢化に伴い,イレウス合併妊娠の報告が数多く認められる。妊娠中は母子ともに,重篤化しやすく外科的処置が必要となることが多いが,妊娠中や出産時に発生した癒着性イレウスに対して,大建中湯を用いることにより,保存的に改善する症例もあると考えられる。
著者
木村 容子 清水 悟 杵渕 彰 稲木 一元 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.147-153, 2010 (Released:2010-07-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

緒言:大柴胡湯が有効な全身倦怠感や易疲労感の患者タイプを多変量解析により検討した。対象と方法:全身倦怠感や易疲労感を訴え,随証治療にて大柴胡湯を投与した患者53名を対象とした。随伴症状,体質傾向,舌所見,腹部所見,年齢,性別,身長,体重,高血圧・高脂血症・糖尿病の有無,さらに,1カ月後の胸脇苦満の改善の有無を加えた計46項目を説明変数とし,全身倦怠感や易疲労感の改善の有無を目的変数として,多次元クロス表分析により最適な説明変数とその組み合わせを検討した。結果:大柴胡湯によって全身倦怠感や易疲労感を改善できる患者タイプは,「発汗」,「のぼせ」,「喉のつまり感」,「胸の圧迫感」などの自覚症状を伴う人であった。特に,発汗の症状があって治療後に胸脇苦満が軽減する場合に,大柴胡湯による全身倦怠感や易疲労感の改善が最も関連する結果となった。考察:「喉のつまり感」や「胸の圧迫感」などの気うつが背景にあると推測された。発汗は頭を含めた上半身に多い傾向があり,また,大柴胡湯による全身倦怠感や易疲労感の改善は,初診時の胸脇苦満の部位(右,左,両方)よりもむしろ治療後に胸脇苦満の軽減を認める人に認められやすいと考えられた。
著者
田原 英一 後藤 雄輔 吉永 亮 井上 博喜 矢野 博美
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.94-101, 2020 (Released:2020-12-07)
参考文献数
24

四物湯を含む処方が奏功した6例を経験した。症例1は13歳男性で起床困難であったが,集中力低下を目標に治療したところ,通学も可能になった。症例2は18歳女性で,起床困難だったが,同じく通学が可能になった。症例3は10歳女性で,治療により部分的に通学可能となった。症例4は42歳男性で,社交不安に対して四物湯を追加したところ改善した。症例5は多愁訴であったが,四物湯を含む処方で症状が軽減した。症例6は56歳女性で同じく多愁訴であったが,四物湯を含む処方で症状が軽減した。いずれの症例もうつ,不安が明らかであり,4例でコルチゾールの低下を認め治療により回復した。四物湯は血虚を治療することで集中力,判断力を回復し精神症状を改善すると考えられる。
著者
周防 一平
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.147-154, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
41

岡部素道は昭和の日本鍼灸界における第一人者であった。その功績は,経絡治療の樹立,GHQ 旋風時のGHQ との直接交渉,北里研究所東洋医学総合研究所設立への貢献など数知れない。そこで筆者は昭和鍼灸史の見直しを目的とし,戦前における岡部の治療方法とその成立過程についての調査を行うこととした。岡部晩年の内弟子であった相澤良氏に対する岡部本人の談話の聞き取り調査,岡部最初の論文「古典に於ける補瀉論に就て」を中心とした岡部の著作,論文等の調査を行ったところ以下のことが判明した。戦前の岡部の治療は,晩年の比較脈診による69難本治法とは異なり,六部定位による脈位脈状診に基づき診断を行い,単刺による一経補瀉を行っていた。現在一般にいわれている昭和14年(1939)3月3日の新人弥生会結成が経絡治療の始まりではなく,昭和11年(1936)の段階で経絡治療の理論・臨床体系が出来上がっていた。
著者
伊藤 隆 喜多 敏明 嶋田 豊 柴原 直利 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.433-441, 1996-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
16
被引用文献数
3 3

八味地黄丸が奏功した慢性喘息患者4症例を報告した。症例は63歳女, 57歳女, 41歳女, 42歳男。いずれも成人発症, 通年型である。重症度では第1例は軽症, 第2例は中等症, 第3, 4例は重症に相当した。漢方医学的には4例ともに八味地黄丸証を認めた。第1例はウチダ八味丸Mが奏功したが, 第2~4例は反応せず熟地黄を用いた自家製丸剤により始めて喘息病態の改善を認めた。4例ともに喘息病態の改善に伴い発作点数の低下, 治療点数の低下, 早朝時ピークフロー値の上昇を認めた。経口ステロイド剤は第3例と第4例に使用していたが, 第3例で離脱, 第4例で減量できた。本報告により八味地黄丸が慢性喘息患者の呼吸機能改善に対して有用であること, 丸薬として投与する場合には乾地黄よりも熟地黄を用いた方が治療効果においてより優れている可能性が示唆された。
著者
山本 昇吾 藤東 祥子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.13-21, 2015 (Released:2015-06-29)
参考文献数
20

【目的】原発開放隅角緑内障に対して,標準的治療を基本にして長期にわたり漢方治療を行った症例を呈示し,緑内障治療における漢方の意義について考察する。【症例】症例1は,男性で初診時17歳の原発開放隅角緑内障症例である。34年間で3度手術を行ったが,漢方治療を継続しながら経過を観察し得た症例である。症例2は,女性で初診時56歳,初診より約30年前に原発開放隅角緑内障と診断されたが,その後希望により漢方治療を19年間継続している症例である。いずれも失明状態になることが危惧されていたが,漢方治療を継続することにより視機能を維持し,眼圧もコントロールすることができた。症例3は,女性で初診時23歳,漢方内服中に眼圧は正常範囲に低下し,内服中止により眼圧上昇を示した。【考察】原発開放隅角緑内障における眼圧上昇に対して有効な特定の処方名は挙げられないが,少しでも有効な漢方方剤はある。また,漢方を継続的に服用することは視機能維持にも有効である可能性がある。【結語】漢方薬は原発開放隅角緑内障の眼圧低下及び視機能維持の補助的治療に用いて有効である。
著者
日笠 久美
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.393-399, 1994-10-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
8

肝性脳症を示した肝硬変に対して, 大黄を中心とした漢方治療で, 症状の改善が見られた2症例を経験した。症例1は54歳, 女性。肝硬変, 及び慢性腎炎により腹水を発現して来院した。分消湯血鼓加減を投与して, 腹水は消失したが, その後に便秘と共に意識レベルが低下し, 高アンモニア血症を認めた。分消湯血鼓加減に大黄を徐々に10gまで投与したところ, 便秘が改善し, 意識レベルの正常化を認めた。症例2は68歳, 女性。肝硬変に高血圧を合併したが, 強いふらつき感とともに高アンモニア血症を認めた。七物降下湯15gとともに大黄末を5gまで徐々に増量するに比例してアンモニア値が低下した。上記2例とも大黄の増量で血中アンモニアは低下したが, アミノ酸組成には影響を与えなかった。大黄には潟下作用や腸内細菌への抗菌作用により, 間接的にアンモニアを低下させるとともに, 直接的にもアンモニア低下作用があると考えられる。また大黄の鎮静作用も脳症状の改善に作用していると考えられる。
著者
斉藤 晶 竹越 哲男
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.336-339, 2012 (Released:2013-02-14)
参考文献数
12
被引用文献数
3

耳管開放症はまれな病気でなく,全人口の5%に存在している可能性がある。自声強聴や耳閉感がよく見られる症状である。薬物治療,手術を含め種々の治療が行われているが,満足した結果が得られていない。漢方医学的には,気虚または血虚と考えることができる。耳管開放症の漢方治療は加味帰脾湯が良く知られていた。今回,補中益気湯を10症例に投与した結果を報告した。4例が改善,1例がやや改善,4例が不変であった。作用機序は,耳管の緊張の亢進,耳管周囲の脂肪組織の増加,精神面への影響を考えた。補中益気湯が耳管開放症の選択肢の1つとなることが期待される。
著者
竹田 眞
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.322-324, 2012 (Released:2013-02-14)
参考文献数
4

顔面神経麻痺後の異常神経再生による「ワニの涙」症候に対する根本的治療は無い。この現象は唾液支配分枝が涙腺を異常支配する事により起こるとされている。今回筆者は右顔面神経麻痺後の「ワニの涙」症候を針治療にて急速な改善を認めた一例を経験したので報告する。用いた針は和針(ステンレス製)1寸6分,3番である。また取穴は,右聴宮,右太陽,右和髎であった。10分間の置針一回のみで「ワニの涙」症候は完全に消失し,再発は無かった。しかし食事中の瞼裂狭小は改善するものの完全には消失しなかった。
著者
寺沢 捷年 松田 治己 今田屋 章 土佐 寛順 三潴 忠道 鳥居塚 和生 本間 精一
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.131-136, 1984-10-20 (Released:2010-09-28)
参考文献数
5
被引用文献数
4 4

慢性関節リウマチと全身性進行性硬化症の合併症例に対し, 自家製の桂枝茯苓丸を投与したところ, レイノー現象と手指屈曲制限が著しく改善した。この効果が桂枝茯苓丸によるものであることを急性投与実験により明らかにした。この効果は同一生薬を用いた水煎剤では得られず, 丸と丸料との相違を示唆する所見である。今後は剤型の相違による適応病態の差異について慎重に検討すべきものと考える。
著者
加藤 彩 中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.336-339, 2013 (Released:2014-05-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1

繰り返す性器ヘルペスの治療には,抗ヘルペスウイルス薬の継続投与による再発抑制療法が行われているが,漢方薬による治療報告は散見される程度である。今回,繰り返す性器ヘルペスの再発に補中益気湯が奏効した症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。症例は,34歳女性,2回妊娠2回出産。数年前より性器ヘルペスの再発を繰り返し近医にて治療していたが,再発が頻回となり当科を初診した。再発所見の他,全身倦怠感,食欲低下などを自覚し,気虚と考え補中益気湯を7.5g/日投与開始した。服用後2週間で全身倦怠感は消失。徐々に再発回数は減少し一年弱で服用を中止したが,その後も再発は認めなかった。本症例は,全身倦怠感,食欲低下の改善ともに,性器ヘルペスの再発回数も減少していった。性器ヘルペス再発の状態を気虚と考え,補中益気湯で治療は可能と考えられた。
著者
釜付 弘志 金倉 洋一 野村 裕久 永田 文隆 石川 順子 新里 康尚 山口 陽子 丹羽 邦明 森川 重敏 高橋 正明 米谷 国男 徳永 泰基 石川 洋 伊藤 誠
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.849-858, 1995-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1

従来, 切迫早産の治療は安静療法が主で, その補助療法として薬物療法がある。しかしその副作用や投与限界量等により, 有効な治療効果が達成できないことがある。今回我々はこのような症例に対して灸療法と, その原理から電気的に考案されたマイクロ波発振装置による刺激療法を行い, 良好な結果を得たのでここに報告する。妊娠24週以降の切迫早産患者に対して至陰, 湧泉, 三陰交の穴に灸療法を行った。その結果, 灸療法により作用時間は短かったが子宮緊張が緩和され, 胎動が増加し, 臍帯動脈, 子宮動脈の血管抵抗が低下することがわかった。また, マイクロ波刺激を頻回に行うことにより同様の効果を長時間持続でき, しかも副作用は認められなかった。その結果, 薬物療法に灸療法を併用すると薬物の使用量を減らすことができ, それによって副作用の発現頻度を抑えることができた。灸療法は切迫早産の新しい治療法として有効かつ安全であると考えられた。
著者
若山 育郎 形井 秀一 北小路 博司 粕谷 大智 山口 智 赤尾 清剛
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.651-666, 2008 (Released:2009-01-15)
参考文献数
30
被引用文献数
2 2

鍼灸は我が国に伝来以来1500年にわたって独自の発展を遂げてきた。その間,現代に至るまで,鍼灸は原則的に個人の力量に頼る医療であったが,現代医学にチーム医療という概念が浸透し始めてきたこともあり,鍼灸についてもチーム医療の一員として取り入れている施設が少しずつ増えてきている。特に近年大学病院などで鍼灸の応用が始まっているのはその現れである。そうした大学病院で,どのような疾患に対して鍼灸が用いられ,どのようにその効果を評価しているのかという点を明らかにするとともに,現代医療において鍼灸が果たすべき役割を考えてみる目的で,鍼灸を積極的に取り入れている4つの代表的な大学病院の状況を報告した。
著者
澤井 孝之 木村 泰治郎
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.633-635, 1998-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
8

乾癬性関節炎の患者4例にヨクイニン湯を内服させ, 関節痛に対する効果を調べた。4例とも治療による関節痛の改善をみた。副作用は全く認められなかった。4例中3例において, ヨクイニン湯の内服によりコルチコステロイド, エトレチナート, 非ステロイド系消炎鎮痛剤 (NSAIDs) を中止できた。残りの1例はヨクイニン湯のみで, 関節痛のコントロールが可能であった。4例ともヨクイニン湯の内服中に乾癬皮疹に変化は認められなかった。ヨクイニン湯は乾癬性関節炎の関節痛に対して第一選択の薬剤になり得ると思われた。
著者
今井 美奈 松本 園子 堤 祐介 光畑 裕正
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.115-123, 2014 (Released:2014-10-17)
参考文献数
28
被引用文献数
2

四逆散の難治性疼痛に対する報告は少ない。西洋医学的治療で鎮痛を得られなかった26症例で四逆散の有効性が認められた。男性13症例,女性13症例,年齢は57歳~85歳であり,発症から受診までの期間は1週間から15年であり,慢性痛に分類される症例は17症例であった。四逆散7.5g分3を処方し,証により他の漢方薬を併用した。NSR で0~4にまで痛みが改善した期間は3日~90日であり,平均26±19日であった。痛みの部位は様々であり,漢方医学的腹診では,腹直筋の緊張を認めた症例は58%,胸脇苦満は38%,心下痞鞕は38%であった。これらの腹候がある場合には四逆散を基本とした治療で鎮痛効果が認められた。特に腹候が明らかでなくてもうつ状態と脇胸部から背部にかけての痛みでは四逆散と香蘇散の併用で効果が認められた。四逆散は難治性疼痛に対して試みる価値のある方剤であることが示唆された。