著者
三浦 勝 森 隆太郎 高橋 徹也 小尾 芳郎 山中 研 阿部 哲夫 小林 大輔 中村 恭一
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.159-164, 2004
被引用文献数
2

内分泌細胞癌は悪性カルチノイド腫瘍ともいわれ, 従来の古典的カルチノイドとは区別されている. 今回, まれな十二指腸Vater乳頭部原発の内分泌細胞癌を経験したので報告する. 症例は66歳の女性で, 発熱, 腹痛を主訴に来院し, 血中アミラーゼ高値および肝機能異常を認めた. CT膵頭部に腫瘤形成を呈し, 上部消化管内視鏡ではVater乳頭部に, 中心に陥凹を有する隆起性病変を認め, 生検でVater乳頭部未分化癌または内分泌細胞癌の診断にて, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 術後病理学的にグリメリウス染色およびクロモグラニン染色陽性で, 内分泌細胞癌と診断した.術後早期にリンパ節再発, 肝転移を認め, 術後75病日に死亡した. Vater乳頭部原発の内分泌細胞癌は会議録を含め本邦報告17例とまれであるが, 予後は極めて不良とされている. 本症例も腫瘍部でのKi-67染色が約50%陽性と, 高頻度の細胞増殖を認め, 内分泌細胞癌の悪性度を裏付ける症例であった.
著者
田山 雅雄 角村 純一 中川 公彦 高橋 英治 河村 純 森友 猛
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.909-913, 1990

症例は30歳男性で, 右季肋部痛と肝機能障害にて入院.Endoscopic retrograde cholangio-pancreaticography (以下ERCP) にて膵上縁で総胆管に2cmの長さの平滑な圧迫狭窄を認め, この部分に腹部X線やcomputed tomography (以下CT) で石灰化した小腫瘤を認めた.頸部リンパ腺結核の既往があり, ツベルクリン反応が強陽性であることから胆道周囲のリンパ節結核による総胆管狭窄と診断した.開腹所見では径2cm大の腫大したリンパ節を膵上縁の総胆管周囲に2個認め, これを切除した後Hegar拡張器にて総胆管狭窄を解除し, T-tubeを留置した.術後一過性の肝機能障害を認めたが46日目に退院した.結核性リンパ節炎による総胆管狭窄はきわめてまれで, 本邦において8例, 国外でも散発的に数例の手術報告例があるにすぎない.本邦例8例では手術は自験例のようにリンパ節摘出以外に, 3例に総胆管空腸吻合術が施行されており, すべて良好な経過を得ているようである.
著者
高橋 哲也 石井 健嗣 酒井 憲孝 関 学 佐藤 次良 落合 剛 岩城 孝次 小平 進
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.53-59, 1989-01-01
被引用文献数
1

胃癌13例, 大腸癌10例の手術症例を対象に術前あるいは術前・術後にレンチナン (Lentinan 以下LT) を投与し, 術前・術後の免疫能に及ぼす効果を比較検討した. 手術侵襲により術後の NK 活性, PHA 幼若化率, Leu7^+, HLA-DR^+ リンパ球が低下した. 術前 LT 投与では手術日の NK 活性, PHA 幼若化率, Leu7^+, CD8^+ リンパ球が上昇した. 術後は対照群と同様な低下を示したが, LT 投与によりその低下は相対的に軽度であった. 術前・術後 LT 投与では術後7日目の NK 活性, PHA 幼若化率, Leu7^+ リンパ球は LT 投与前のレベルを維持することができた. 術前・術後 LT 投与は有意義と考えられる.
著者
津福 達二 田中 寿明 末吉 晋 田中 優一 森 直樹 藤田 博正 白水 和雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.1661-1665, 2007-10-01
被引用文献数
2

症例は39歳の男性で,2004年1月,うつ病があり自殺企図にてウォッカを大量に飲用し,高度の胸焼け,嚥下障害を生じたため当院へ紹介となった.食道潰瘍および食道狭窄を認め,腐食性食道炎と診断した.希死念慮が強かったため精神科に入院となり,精神面の治療を行った.2月,狭窄症状が強くなったため,空腸瘻を造設し,全身状態の改善および精神状態の安定を待って,7月,非開胸食道抜去術,胸骨後食道胃吻合術を行った.経口摂取可能となり術後32日目に退院した.高濃度のアルコール(ウォッカ)飲用による腐食性食道狭窄を経験したので報告する.
著者
松浦 記大 藤谷 和正 中塚 梨絵 宮崎 進 團野 克樹 小森 孝通 本告 正明 柏崎 正樹 岩瀬 和裕
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.406-414, 2018-06-01 (Released:2018-06-29)
参考文献数
38
被引用文献数
2 3

2次性大動脈十二指腸瘻(secondary aortoduodenal fistula;以下,sADFと略記)はまれな疾患ではあるが,診断に難渋し致死的な転機をたどることも多い.今回,我々はsADFの3症例を経験し,診断・治療・術後成績の三つの観点から検討を行った.2症例は吐・下血の原因としてのsADFの診断に難渋し,全症例でsADFに対する治療介入を行い一旦は救命できたもののうち2症例は術後感染症により致死的な転帰をたどった.人工血管置換術後の消化管出血を見た場合,sADFを鑑別疾患として挙げ,感度・特異度とも高いとされているCTを早期に行うことが重要である.また,sADFが疑われた場合,感染のコントロール,すなわち人工血管除去を念頭に遅滞のない手術を考慮することが重要である.
著者
石山 哲 鶴田 耕二 武市 智志 高橋 慶一 森 雅江 今村 顕史 菅沼 明彦 味澤 篤 根岸 昌功
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.135-140, 2008
被引用文献数
5

症例は37歳同性愛の男性で, 2002年3月下旬, 腹痛, 下痢を主訴に前医を受診, 小潰瘍を主体とした非特異的大腸炎と多発性肝膿瘍を認め, 赤痢アメーバ症が臨床的に強く疑われ, メトロニダゾールにて治療されていた. Human immunodeficiency virus (以下, HIV) 抗体陽性が判明したため, 4月初旬当院感染症科緊急入院, CD4陽性リンパ球数が224/ulとHIVによる低免疫状態が疑われた. 入院翌日, 右下腹部痛の急性増悪あり緊急CTにて遊離ガス像と多量の腹水を認めアメーバ性大腸炎の穿孔と診断し緊急手術を施行した. 穿孔部位は盲腸で, 穿孔部を利用した人工肛門造設術を施行した. 肝膿瘍は保存的に治療し, 1年後に人工肛門を閉鎖した.近年アメーバ性大腸炎, HIV感染とも増加傾向にあり, これらを念頭においた早期診断および治療が劇症化の阻止と救命に重要であると考えられた
著者
木村 泰生 藤田 博文 山川 純一 瀧口 豪介 丸山 翔子 高井 亮 荻野 和功 小川 博
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.146-153, 2018

<p>症例は33歳の女性で,2年前に下行結腸癌による大腸イレウスに対して自己拡張型金属ステント(self-expandable metallic stent;SEMS)留置後に,腹腔鏡下左半結腸切除術を施行した.その際の病理組織学的所見は,中分化型腺癌,深達度SS,n0,ly1,v1,stage IIの診断であった.術後2年目にCEAの上昇およびCTで下腹部に約3 cmの腫瘤性病変を認め,FDG-PETでも同部のみに集積を認めたことから孤立性再発病変と判断し,腹腔鏡下に腫瘤摘出術を施行した.術中所見では腫瘤は大網内に約3 cmの孤立性の腫瘤として認め,その他に明らかな播種および転移病変は認めなかった.病理組織学的所見では,下行結腸癌の血行性大網転移と診断された.結腸癌の孤立性大網転移はまれな再発形式で,これまでに報告例はない.本症例は近年増加傾向である金属ステント留置後の手術症例(外科手術前の処置bridge to surgery;BTS)であり,ステント留置と大網再発の因果関係は不明であるが,大腸ステント留置症例における長期的な予後は不明な点も多いため今後も症例の蓄積が必要である.</p>
著者
奥川 郁 土屋 邦之 石原 陽介 中野 且敬 秋岡 清一 大坂 芳夫 高橋 滋 迫 裕孝
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.861-867, 2011-07-01 (Released:2011-07-23)
参考文献数
7

ポリカルボフィルカルシウム製剤服用後にイレウスにて開腹術を行った67歳の女性の症例について報告する.右卵巣嚢腫で手術既往があった.下痢のため近医よりポリカルボフィルカルシウム製剤を7日分処方された.服用12日目に腹部膨満と嘔吐が出現し,当院救急受診,入院となった.CTにて小腸の拡張と,小腸内に結腸内便様の内容物を認めた.イレウス管を挿入し保存的に経過を見たが,症状の増悪を見たため入院4日後に開腹した.癒着解除だけでは,腸内容を送り出せなかったため,小腸壁を切開し内容物を排出した.腹腔内の癒着のために腸管内容排出遅延が生じ,そのために服用していたポリカルボフィルカルシウム製剤が過度に膨潤,硬化した.このことによって,開腹術が必要となったと考えられた.この症例について,文献的考察を加えて報告する.
著者
勝又 健太 榎本 武治 大坪 毅人 樋渡 正樹 塚本 芳嗣 亀井 奈津子 嶋田 仁 小林 慎二郎 芦川 和広 民上 真也
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.481-486, 2020-06-01 (Released:2020-06-30)
参考文献数
16

症例は84歳の男性で,食後の腹痛を主訴に当院を受診した.既往として6年前に胃癌で幽門側胃切除術,Roux-en-Y再建,1年前に胆囊結石,総胆管結石,傍乳頭十二指腸憩室症候群で胆囊摘出術,胆管十二指腸吻合術を施行されていた.腹部MRIで輸入脚内に低信号の構造物を認め,結石の嵌頓による輸入脚症候群と診断し,緊急手術を施行した.上腹部正中切開で開腹,Treitz靱帯より5 cm肛門側の空腸に結石を触知した.空腸の一部に切開を加え摘出,単純縫合で閉鎖した.術後23日目に軽快退院した.摘出された結石はステアリン酸カルシウムが主成分であった.ステアリン酸カルシウムは胆囊結石のうち,ビリルビンカルシウム石に比較的多く含有されるほか,服用薬で酸化マグネシウムに含有されていた.本例は胃石を核として周囲にステアリン酸カルシウムが沈着したものと考えられた.胃石由来のステアリン酸カルシウム腸石による輸入脚症候群は非常にまれな疾患であるので報告する.
著者
橋本 泰司 坂下 吉弘 高村 通生 岩子 寛 渡谷 祐介 繁本 憲文 金 啓志
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.225-230, 2005 (Released:2011-06-08)
参考文献数
17
被引用文献数
7 2

門脈ガス血症はまれな病態で, 開腹術を要する予後不良な徴候と考えられてきた. 我々はそれぞれ手術と保存的治療を行った腸管虚血を伴わない2症例を経験した.症例1 は78歳の男性で, 腹痛を主訴に受診し, 来院後下血を認めた. 腹部CTで小腸の拡張と回盲部の著明な壁肥厚, 門脈ガスを認めた. 腸管虚血を伴うイレウスを疑い, 緊急手術を施行した. 術中所見は, 腸管には虚血性変化を認めず, 試験開腹で終了した. 術後の下部消化管内視鏡検査で, 回盲部に多発性潰瘍を認めた. 症例2は95歳の女性で, 排便時に突然下腹部痛が出現した. 腹部CTで門脈ガスと上行結腸の著明な拡張を認めた. 発症46時間後の腹部CTでは門脈ガスは消失し, 保存的治療で回復した. 本症の存在自体は必ずしも重篤な病態を意味せず, 保存的治療でも改善する場合があることを考慮し, 治療方針の決定にはその成因を十分に考察することが重要である.
著者
武藤 純 調 憲 間野 洋平 本村 貴志 武石 一樹 戸島 剛男 内山 秀昭 武冨 紹信 前原 喜彦
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.985-990, 2011-08-01 (Released:2011-08-23)
参考文献数
12

症例は30代女性で,健診時,腹部超音波検査にて肝外側区域に限局する胆管拡張を指摘されたが充実成分を伴わず経過観察されていた.1年後,胆管拡張は左葉全域から総胆管におよび外側区域内に5cm大の充実性病変が認められた.精査の結果,粘液産生性胆管腫瘍(Intraductal papillary neoplasm of the bile duct;以下,IPN-Bと略記)と診断し,肝拡大左葉・尾状葉切除術,胆道再建を行った.腫瘍は外側区域を中心とする最大径5.5cmの多房性嚢胞性腫瘤で,病理組織学的にムチン産生性のIntrductal papillary adenocarcinomaであった.切除後11か月が経過した現在,再発なく経過している.IPN-Bの自然経過についてはいまだ不明な点が多く,本症例のように経過を観察しえた症例はまれである.若干の文献的考察を加え,報告する.
著者
林 裕樹 金城 達也 西垣 大志 宮城 良浩 中川 裕 高槻 光寿
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.293-301, 2021

<p>症例は26歳の女性で,妊娠を契機に径10 cm大の骨盤内腫瘍を指摘され,試験腹腔鏡検査にて後腹膜腫瘍の診断となった.囊胞成分のほかに充実成分を伴っており悪性疾患の可能性が示唆され,加療目的で当院紹介となった.腹部造影CTおよびMRIにて仙骨前面に多房性囊胞性腫瘍を認め,腫瘍背側には造影効果を有する小結節が存在した.腫瘍摘出術を施行し,病理組織学的診断では後腹膜成熟囊胞性奇形腫であり,小結節は神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;以下,NETと略記)の診断であった.術後経過は良好で術後7日目に退院となった.成人発症の後腹膜成熟囊胞性奇形腫はまれな疾患であり,年齢とともに悪性化の頻度が高くなるとされている.悪性化すると予後不良であるため,早期手術が推奨されている.今回,我々は極めてまれなNETを併存した成人後腹膜成熟囊胞性奇形腫の1例を経験したので報告する.</p>
著者
松川 啓義 八木 孝仁 貞森 裕 松田 浩明 篠浦 先 楳田 祐三 成島 道樹 岩本 高行 佐藤 太祐 田中 紀章
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1915-1920, 2007 (Released:2011-06-08)
参考文献数
18
被引用文献数
3 5

内臓逆位症は合併奇形が多く, かつ内臓逆位による診断治療の困難性が診療上問題である.完全内臓逆位症, Kartagener症候群に合併した肝腫瘍に肝拡大後区域切除を安全に施行した1例を経験した. 症例はKartagener症候群 (気管支拡張症, 副鼻腔炎, 右胸心) の55歳の女性で, 腹部臓器も逆位の完全内臓逆位症で, 肝後区域中心に13cm径の血管性腫瘍を認めた. 内臓奇形・変異としては肝部下大静脈欠損・奇静脈連結・上大静脈還流, 肝静脈右房還流, 右腎静脈半奇静脈還流, 多脾, 膵体尾部欠損, 腸回転異常がみられた. 術中所見では肝部下大静脈欠損により解剖学的肝右葉は後腹膜に固定されず, 解剖学的右三角間膜から後腹膜無漿膜野はほとんどみられなかった. 完全内臓逆位症に対する肝切除も, 左右鏡像関係, 腹部臓器・脈管の変異を念頭におき, 解剖学的構造を同定認識し手術操作を行うことで通常の肝切除例と同等な切除手術が可能であった.
著者
樋口 亮太 土屋 博紀 安田 秀喜 幸田 圭史 鈴木 正人 山崎 将人 手塚 徹 小杉 千弘 平野 敦史 植村 修一郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.647-653, 2010
被引用文献数
2

近年,画像診断の進歩により膵腫瘍が偶然に発見される機会が増加している.今回,我々は術前診断しえたものの嚢胞成分の悪性を否定できず縮小手術を行った膵内副脾の1例を経験したので報告する.症例は55歳の女性で,急性虫垂炎のため行った腹部CTで膵尾部に径約3 cm大のcysticな領域を伴う充実性腫瘤を認めた.EUSで腫瘤の充実性領域は脾臓と同程度のエコー像を呈し膵内副脾を疑った.腫瘤はSPIO MRIで脾と同様の信号低下を,99mTc-スズコロイドシンチグラフィーで集積増加を示した.膵内副脾と診断したが,cysticな成分もあり悪性が完全に否定できないことを説明したところ,外科治療を希望され手術となった.膵尾部背側に3 cm大の軟らかい赤褐色腫瘍を認め,脾温存膵尾部切除術を行い術中ゲフリールにて膵内副脾を確認した.経過は良好で術後16日目に退院した.術前診断しえた膵内副脾の報告は少なく貴重な症例と思われ若干の文献学的考察を加え報告する.
著者
[ウネ]村 泰樹 藤岡 秀一 今井 貴 鈴木 旦麿 三澤 健之 村井 隆三 吉田 和彦 小林 進 山崎 洋次
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.2643-2648, 1999-12-01
被引用文献数
2

今後,day surgery (DS)への移行が予測される腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)施行患者の意識調査を施行した.希望入院時期は術前日:55%,2&sim;3日前:43%,術当日:2%であり,また当日入院は忙しさよりも個々の価値観から派生すると考えられた.83%以上が入院期間延長による負担増額を気にせず入院していた.民間の保障制度には80%が加入し,うち86%が請求していた.術後入院期間短縮を考慮する負担増額は1万円/日程度と思われた.術後入院期間は全例で4.5±1.9日,非常に多忙,多忙,やや余裕あり,余裕ありそれぞれ3.7±0.8,4.3±1.9,4.5±1.9,5.2±2.0日で,余裕のある者で有意に長かった.しかし体験した程度でよいとする者が87%を占め,短縮希望者は8%に止まった.うち自己負担額の増域によらず積極的に早期退院を望む者は全体の3%に過ぎなかった.現行医療保険制度内では,本調査施行患者はLCのDS化にあらゆる面で肯定的とは考えられなかった.