著者
神保 りか 吉岡 篤史 高橋 有香 小野 圭一 足立 洋祐 小島 茂 武田 雄一 野内 俊彦 清水 誠一郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.8, pp.1051-1054, 2005 (Released:2005-08-05)
参考文献数
10

最近12カ月間にトラニラストが原因と考えられた重症肝障害の5症例を経験した.トラニラスト内服開始後,平均34日目に黄疸を認めて入院となり,内服中止後平均37日で肝機能の正常化を認めた.薬物リンパ球刺激試験は3例に施行したがいずれも陰性で,薬物性肝障害の診断には国際コンセンサス会議の診断基準が有用であった.トラニラストによる肝障害はまれではなく,内服中は定期的に肝機能を検査する必要がある.
著者
久持 顕子 神代 龍吉 古賀 郁利子 田中 英介 井出 達也 日野 照子 村島 史朗 緒方 啓 桑原 礼一郎 古賀 浩徳 宍戸 昌一郎 上野 隆登 佐田 通夫 江口 尚久
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.100, no.3, pp.333-336, 2003-03-05 (Released:2011-06-17)
参考文献数
8

症例は51歳女性, 1989年より2型糖尿病と高脂血症でグリベンクラミドなどで加療中であった. ピオグリタゾンの追加投与開始81日後に, 肝細胞型肝障害が認められた, 同薬の中止4週間後に肝機能は正常化した. チトクロームP450 (CYP) 2C19遺伝子型は2/2, CYP2C9遺伝子型は1/1であった. トログリタゾンと類薬の本剤によっても肝障害のおこる可能性があり, 注意が必要と思われる.
著者
春間 賢 隅井 浩治 森川 章彦 上村 直実 忌部 明 木村 学 徳毛 健治 吉原 正治 豊島 仁 井上 和彦 松原 秀樹 梶山 梧朗 松本 隆允
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.851-857, 1989 (Released:2007-12-26)
参考文献数
30
被引用文献数
5 5

胃底腺性過形成性ポリープ (胃底腺ポリープ) の胃酸分泌, 血清ガストリン値および血清ペプシノーゲン1 (PG1) 値について, 健常者と腺窩上皮性過形成性ポリープ (腺窩上皮ポリープ) の値と比較検討した. 胃酸分泌と血清PG1値は健常者と胃底腺ポリープでは差がなく, 腺窩上皮ポリープでは著しい低値を示した. 一方, 血清ガストリン値は, 健常者と比較すると, 胃底腺ポリープではやや低値を, 腺窩上皮ポリープでは著しい高値を示した. さらに, 組織学的な検討とあわせ, 胃底腺ポリープは過形成性ポリープの一つに分類されるが, 胃底腺に高度の萎縮をともなう腺窩上皮ポリープとは異なり, 萎縮のない胃底腺粘膜に発生していることを明らかとした.

1 0 0 0 OA 血流と肝画像

著者
板井 悠二 松井 修
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.95, no.4, pp.301-310, 1998 (Released:2008-02-26)
参考文献数
39
被引用文献数
1

肝臓は肝動脈と門脈の二重支配を受ける極めてユニークな臓器である. 肝画像は造影剤を用いることにより血流の影響を大きく受けざるを得ず, 肝画像の進歩は血流解明の歴史ともいえる. 合理的な造影検査の開発, 肝腫瘍の診断, 治療に血流の知識は不可欠なばかりか, 血流も意識した肝画像は肝血管の生理と病理(解剖, 破格, 吻合, 閉塞時病態生理など), 肝細胞癌の多段階発生に幾多の新しい知見をもたらした. 更に瀰漫性疾患にあっても脂肪肝のsparing, focal fat depositに血流が本質的な役割を果たしていることが示されている.
著者
佐々木 英
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.1191-1200, 1984 (Released:2007-12-26)
参考文献数
29
被引用文献数
1

経口的胆汁酸負荷試験を腸疾患 (特に回盲部疾患, 回盲部切除例) に応用し, 胆汁酸の吸収障害を検討した. まず健常者10例において負荷胆汁酸を検討すると酵素法にて血清総胆汁酸濃度を測定する場合遊離型 ursodeoxycholic acid 600mg負荷が有用であり, 次にこれを回盲部疾患7例, 回盲部切除5例に負荷すると, 負荷後の血清総胆汁酸濃度は, 平担な pattern を示し, 特に負荷後120分値がそれぞれ9.5±2.0μM/l, 7.6±0.6μM/lと健常者の20.9±3.4μM/lに比して有意に低値であつた.また各疾患の個々の症例での負荷後のピーク値を比較すると, 回盲部疾患, 回盲部切除例は, 健常者に比して有意に低値であつた. これらのことより, 遊離型 ursodeoxycholic acid 600mgを使用した経口的胆汁酸負荷試験は, 回盲部疾患における胆汁酸吸収障害をよく反映した
著者
筒井 ひろ子 溝口 靖紘 宮島 慶治 阪上 吉秀 東森 俊博 関 守一 山本 祐夫 原 久子 巽 陽一 門奈 丈之 森沢 成司
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.603-609, 1985 (Released:2007-12-26)
参考文献数
13
被引用文献数
4

Propionibacterium acnes (P. acnes) をラットの静脈内に注入し, 一定の期間をおいて少量の lipopolysaccharide (LPS) を静注すると, 肝に広範な壊死巣が出現する. この急性肝不全実験モデルにおける肝障害誘導機構を解析するため, 肝内粘着性細胞の機能変化を検討した.P. acnes 加熱死菌静注7日後に, 肝臓から粘着性細胞を分離し, LPSを添加して48時間培養すると, 0.5μg/ml以上のLPSを添加した場合には粘着性細胞培養上清に著明な肝細胞障害活性が認められた. これに比較して, P. acnes 非投与ラットの肝臓から粘着性細胞を分離してLPSで同様に処理した場合, 細胞培養上清中に見られる肝細胞障害活性は低かつた.以上の結果から, 二段階の処理によつて活性化された肝内粘着性細胞は肝細胞障害因子を産生分泌し, この因子が本実験モデルにおける急性肝細胞障害の誘導に重要な役割を果すことが示唆された.
著者
松崎 達 中澤 敦 大塚 征爾 前田 憲男 米井 嘉一 稲垣 恭孝 鈴木 修 桐生 恭好 水野 嘉夫 小川 健二
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.98, no.3, pp.300-306, 2001 (Released:2008-02-26)
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

症例は47歳男性,直腸炎型の潰瘍性大腸炎(以下UC)で通院中に突然,右下肢腫脹・疼痛を認めて入院,ドプラエコーで下大静脈から膝窩静脈におよぶ広汎な静脈血栓症と診断.本邦のUC患者ではこれまで18例の深部静脈血栓症合併例が報告されているが,検索しえた限りでは直腸炎型での合併は初めてであった.抗凝固療法と血栓溶解療法の併用により深部静脈血栓症にともなう症状のみならず,UCの臨床症状の改善を認めた.
著者
河口 貴昭 酒匂 美奈子 吉村 直樹 高添 正和 柳 富子
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.536-541, 2009 (Released:2009-04-06)
参考文献数
10

42歳男性,HIV感染進行期に全大腸炎型の潰瘍性大腸炎を発症した.緩解導入療法が奏効したが,HIV感染は進行したため,多剤併用療法(HAART)を行った.HIVウイルス量は激減しCD4リンパ球数は回復,さらに潰瘍性大腸炎は無治療で緩解を維持した.潰瘍性大腸炎を合併したHIV感染の報告は本邦初であるが,HIV感染進行期の免疫異常と炎症性腸疾患発症との関連が示唆される興味深い症例である.
著者
難波 光義 宮川 潤一郎 浜口 朋也
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.1398-1404, 2005 (Released:2005-11-04)
参考文献数
25

2型糖尿病の治療のみならず,メタボリックシンドロームから2型糖尿病への進行を止めることは,大小両血管障害を抑制することにつながる.わが国では食習慣の変化,とりわけ高脂肪食によってメタボリックシンドロームを抱えた肥満者が急増しつつあるが,その背景には消化管ホルモン,とりわけ脂肪摂取に対してインスリン分泌促進作用を発揮するGIPやGLP-1などのインクレチンの分泌あるいは作用異常の介在が疑われる.従来の薬剤とは全く異なる機序をもったGLP-1関連製剤の臨床応用は,前述の代表的生活習慣病の予後改善に貢献するのみならず,これらの成立機構や病態基盤の解明にも役立つ可能性が期待される.