著者
山本 治
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.5, no.9, pp.1448-1460, 1930

冷血動物タル蟇及ビ龜ニ就キテ種々ナル植物性神經毒ヲ投與シコレガ胃分泌機能並ニ色素ノ胃内移行状況ニ及ボス影響ヲ觀察シ凡ソ次ノ如キ成績ヲ得タリ。即チ「ビロカルピン」ハ蟇ニ於テハ僅ニ酵素分泌ノ増進ヲ來シ胃酸ニ對シテハ認ムベキ影響ヲ及ボサズ、龜ニ於テハ胃酸及ビ酵素分泌ヲ亢進シ、「アトロピン」ハ蟇ニ於テハ殆ド影響ヲ認メザルモ龜ニ於テハ胃酸分泌ヲ亢進セシメ、「アドレナリン」ハ蟇、龜共ニ胃酸分泌抑壓ノ傾向ヲ示シ酵素分泌ニ對シテハ認ムベキ影響ヲ證明セズ。「ヒヨリン」及ビ「ヱゼリン」ハ蟇及ビ龜ノ胃酸分泌ヲ促進セシムル傾向ヲ有シ酵素分泌ニ對シテハ「ヒヨリン」ハ亢進作用ヲ呈セドモ「エゼリン」ハ認ムベキ影響ヲ及ボサズ。即チコレ等藥物ノ胃分泌機能ニ及ボス影響ハ蟇ト龜トニ於テ相同ジカラズ。然レドモ色素ノ胃内移行ニ及ボス影響ハ夫レガ胃酸分泌ニ及ボス影響ト略一致セリ。(自抄)
著者
中村 小市
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.12, no.11, pp.1911-1921, 1937

家兎ニ植物性神經毒、「ゼクレチン」或ハ食餌投與ニヨリテ其膵臟外分泌機能ヲ變化セシメ、次イデ輸膵管内「オレフ」油注入ニヨル急性膵臟壊死ヲ惹起セシメタルモノニ就テ、肝臟ノ「ガラクトーゼ」處理機能ヲ檢索セシニ、「ピロカルピン」、「ゼクレチン」ヲ注射シタルモノニアリテハ肝臟ノ該機能ハ高度ノ障碍ヲ蒙リ、「アトロピン」使用時ハ之ニ次グ。而シテ豫メ「アドレナリン」及ビ食餌投與後ノモノニ於テハ、急性膵臟壊死ニヨル肝臟ノ該機能障碍ハ寧ロ輕減セラルヽヲ見タリ。
著者
吉光 雅志 林 宣明 金子 佳史 土山 寿志
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.74-79, 2011 (Released:2011-01-05)
参考文献数
20

症例は28歳,女性.腹痛,粘血便にて入院.O157感染による腸管出血性大腸炎に引き続き,血小板減少,腎不全を発症し,溶血性尿毒症症候群(HUS)と診断した.一時,血小板数の増加・尿量の回復を認めたが全身痙攣と一過性片麻痺にて脳症を発症した.ステロイドパルス療法や血漿交換などの治療により後遺症なく回復した.成人での脳症発症の報告は少なく,今後の治療法確立のため文献的考察を含めて報告する.
著者
川本 勝 福島 恒男 久保 章 石黒 直樹 竹村 浩 土屋 周二
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.193-198, 1982-02-05 (Released:2007-12-26)
参考文献数
18
被引用文献数
2

潰瘍性大腸炎症例31例の便中細菌および短鎖脂肪酸を検索した.本症例の便中総細菌数は健常人とくらべ減少していた.なかでも嫌気性菌数が減少し,好気性菌数の増加がみられた.短鎖脂肪酸濃度は健常人にくらべ減少し,便中細菌数と比例した.短鎖脂肪酸分画において揮発性短鎖脂肪酸濃度が低く非揮発性の乳酸濃度が高かつた.病変部位が拡がる程また緩解期より活動期で揮発性短鎖脂肪酸濃度は減少し,乳酸濃度は増加した.乳酸濃度に対する揮発性短鎖脂肪酸濃度比と排便回数との間に負の相関がみられた.便中細菌および短鎖脂肪酸が潰瘍性大腸炎の病態と深い関係があることが示唆された.
著者
船越 顕博 山内 孝 井 林博
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.1766-1769, 1980

膵癌の酵素学的診断法を確立する目的で,DIPN 500mg/kgをgolden syrian hamsterの皮下に毎週注射することにより実験膵癌を作成した.実験膵癌の組織型は全て人膵癌類似のDuctal cell腺癌を示した.DIPN注射後,12,16,20,22,25週と経時的に採血し,血清中並びに膵組織中のRNase(Poly U, Poly C, Poly A, Poly G)を測定すると,全例膵癌の観察された25週にはPoly Uaseの上昇を認め,経時的なRNase測定により膵癌診断の指標となることが示唆された.
著者
中野 哲 熊田 卓 北村 公男 綿引 元 武田 功 井本 正己 小沢 洋
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.1306-1314, 1979-06-05 (Released:2007-12-26)
参考文献数
23
被引用文献数
3

健常者35例,肝硬変症を含む良性消化器疾患79例,肝癌を含む悪性消化器疾患84例の合計198例に,「第一」SPAC ferritin kitを用いて血清ferritinを測定し,その診断的意義を検討した.肝硬変症で43%,肝炎で50%前後,原発性肝癌で74%,転移性肝癌で67%に血清ferritinの異常高値がみられた.肝疾患において血清ferritinとGOT,血清Feとの対比を行つたが肝炎時にGOTと著明な相関がみられた(p<0.01)のみである.原発性肝癌では血清ferritinは,AFPが104ng/ml以上の場合は正の相関(P<0.05)それ以下の場合は負の相関傾向(0.05<P<0.1)がみられた.また巨大な腫瘍では微小な腫瘍より明らかに血清ferritinは高値を示した(P<0.05).一方,肝悪性腫瘍の血清ferritinとCEAは明らかな相関はみられなかつた.
著者
江原 正明 土屋 幸浩 大藤 正雄
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.1443-1451, 1981-07-05 (Released:2007-12-26)
参考文献数
38
被引用文献数
6

閉塞性黄疸例および急性胆管炎例に対し,経皮的胆汁ドレナージをX線透視下穿刺により187例,超音波映像下穿刺により66例,計253例に施行した.両方法はともに著者らが開発した新しい経皮的胆汁ドレナージ法であり,安全性と確実性の高いことが確認された.とくに,超音波映像下穿刺法は,選択的胆管穿刺が容易かつ確実に行なえるため,手技が簡便である上に,きわめて安全性の高い方法であり,手技に伴なう重篤な合併症を全く認めなかつた.なお,ドレナージ施行後の黄疸軽減効果,急性胆管炎に対する治療効果などの臨床効果についても検討を加えた.
著者
河邉 毅 良永 雅弘 北村 陽介 村尾 寛之 多喜 研太郎 加来 豊馬 山下 晋作 鶴田 悟 吉河 康二 酒井 浩徳
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.238-244, 2011 (Released:2011-02-07)
参考文献数
15

症例は67歳女性.胃癌で幽門側胃切除術(低分化腺癌+印環細胞癌,stage IIIA)施行後,20年目に左頸部リンパ節腫脹を認めて来院し,生検で低分化腺癌+印環細胞癌を認め,胃癌の再発と診断し,化学療法施行.2年後に骨髄抑制,DICを合併し死亡.剖検で,脳以外の全身臓器を検索したが原発巣は認めなかった.本症例は,進行胃癌術後,晩期再発したと考えられた.
著者
村脇 義和 川崎 寛中
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.1143-1152, 1999-10-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
73

慢性肝疾患では肝線維化が問題となるが,この対策を確立するためにも肝線維化の病態を正確に把握する必要がある.肝での細胞外マトリックスは主として肝星細胞で産生される.肝星細胞は正常肝ではその産生能は低いが,線維肝では活性化され筋線維芽細胞となりその産生能は著明に高くなる.肝星細胞の活性化にはTGF-β1が,増殖にはPDGFの関与が明らかにされている.一方マトリックス分解にも肝星細胞が強く関与しているが,MMP酵素群の特性およびその活性を規制しているTIMPについても詳細が明らかにされて来ている.最近ではこれら病態を踏まえて各種薬物の抗線維化作用が実験的肝線維化モデルで検討されている.
著者
大下 恭弘 原田 亘 刈屋 憲次
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.413-417, 1999-04-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は60歳,男性.平成8年1月抗核抗体陽性,DNA抗体陽性,LEテスト陽性,持続性蛋白尿,貧血,リンパ球減少を認め,ARAの診断基準でSLEと診断.平成8年3月腹痛出現.腸雑音の低下および腹部X線写真にて小腸ガスと鏡面像を認め,麻痺性イレウスと診断.経口小腸造影検査では上部空腸間に瘻孔を認めた.イレウスの原因がSLEの血管炎と考えられ,プレドニン60mgより開始し,イレウスは改善したが,瘻孔は開存したままであった.
著者
藤原 靖弘 平本 慶子 朴 成華 中原 憲一 木幡 幸恵 谷川 徹也 渡辺 憲治 富永 和作 渡辺 俊雄 荒川 哲男
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.6, pp.965-970, 2013 (Released:2013-06-05)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本邦ではGERD患者の半数以上が何らかの睡眠障害を有しており,特にNERD患者に多い.夜間の逆流は,胸やけ症状・覚醒の有無やおこる時間帯により入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒,熟眠障害をきたす.一方,睡眠障害が食道知覚神経過敏を介してGERD症状を悪化させることから,GERDと睡眠障害は相互関連がある.GERDと閉塞性睡眠時無呼吸は共通のリスク因子を有することがその関連に影響を与えている.睡眠障害をともなうGERD患者では睡眠障害をともなわないGERD患者に比較して,GERD症状が強く,健康関連QOLや労働生産性が低下している.
著者
藤谷 幹浩 高後 裕
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.1900-1908, 2013 (Released:2013-11-05)
参考文献数
48

潰瘍性大腸炎では臨床所見を指標として活動性が評価される.しかし,臨床症状が改善しても,内視鏡的,組織学的に炎症が残存している例が多く,このような例では長期の寛解が得られない.そこで,粘膜に炎症所見が認められない状態,いわゆる粘膜治癒を治療エンドポイントとすることが提唱されている.これまでの研究から,粘膜治癒症例では,長期の寛解が維持され,腸管切除の頻度も低いことが明らかにされた.しかし現状では,粘膜治癒の定義や判定時期が明確ではなく,粘膜治癒が得られない例への対応も確立されていない.今後,粘膜治癒の定義を統一し,治療法別に経時的な粘膜治癒達成率を明らかにしていくと同時に,粘膜治癒が得られない例に対する新規治療法の開発が期待される.
著者
李 天成 武田 直和
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.195-200, 2009 (Released:2009-02-05)
参考文献数
13

E型肝炎ウイルス(HEV)はE型肝炎の原因ウイルスで,エンベロープを持たない小型球形RNAウイルスである.少なくとも4つの異なる遺伝子型が存在するが,血清型は同一である.日本におけるHEVは主に輸入感染,動物由来感染,輸血感染という3つのルートで伝播する.E型肝炎の診断にはRT-PCR法とELISA法があり,確実な診断が可能になっている.HEVの感染をコントロールするにはワクチンの開発が必須である.現在,DNAワクチンあるいは組換え蛋白ワクチン開発の研究が進んでいるがまだ実用化されていない.
著者
中島 淳 冬木 晶子 大久保 秀則
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.10, pp.1704-1710, 2016-10-05 (Released:2016-10-05)
参考文献数
2

機能性消化管疾患の画像検査では,静止画による間接的所見による画像検査と動画による直接所見による画像検査の2つのアプローチがある.間接的画像検査でCT検査は非常に有用であり,消化管の拡張所見の有無に加え,消化管内容物の鑑別ができるという点で有用な情報を提供してくれる.Gastroparesisや慢性偽性腸閉塞症,巨大結腸症などは上記2点に関して特徴的静止画像を呈するが,実際の消化管運動異常をみているわけではない点に注意を要する.小腸運動に関しては,シネMRIは小腸の運動を直接観察することができる非侵襲的画像検査として非常に有用であり,今後のさらなる改良が期待される.
著者
小南 陽子 相方 浩 平松 憲 田中 未央 苗代 典昭 中原 隆志 本田 洋士 長沖 祐子 村上 英介 宮木 大輔 三木 大樹 河岡 友和 高木 慎太郎 平賀 伸彦 柘植 雅貴 芹川 正浩 今村 道雄 兵庫 秀幸 川上 由育 高橋 祥一 佐々木 民人 茶山 一彰
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.456-464, 2013 (Released:2013-03-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1

症例は61歳男性.毎年,検診にて40mm大の肝嚢胞を指摘されていたが,2011年の腹部超音波検査にて肝嚢胞の増大を指摘.造影CT検査などの各種検査を行ったが確定診断に至らず,嚢胞周囲の軽微な胆管拡張の精査目的にてERCPを施行.その際の胆汁細胞診にて多量の肝吸虫卵を認め,肝吸虫症と診断.プラジカンテルの内服により肝嚢胞の縮小と血中肝吸虫抗体価の陰性化が得られ,肝吸虫の駆虫が確認された.
著者
川野 紀子 田代 充生 田口 雅史 木原 康之 芳川 一郎 宿輪 和孝 山崎 雅弘 久米 恵一郎 大槻 眞
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.1627-1633, 2008 (Released:2008-11-05)
参考文献数
19

症例は73歳男性.排便時の肛門部痛を主訴に来院した.直腸Rb部に直径4cm大の一部黒色を呈する隆起性病変を認め,肝転移をともない,直腸肛門部悪性黒色腫(Stage IV)と診断された.dacarbazine,nimustine,cisplatin,tamoxifenによる多剤併用化学療法(DAC-Tam療法)に加えinterferon-βの局所投与を施行したところ,1コース終了時には疼痛の消失と原発巣の縮小,肝転移の消失を認めた.計6コース施行後に,直腸腫瘍からの出血コントロールに対する放射線治療を併用した.化学療法を合計8コース施行し,初回治療開始後24カ月経過した現在も生存中である.
著者
八尾 隆史 村上 敬
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.4, pp.669-675, 2015-04-05 (Released:2015-04-05)
参考文献数
28

現在,大腸鋸歯状病変は過形成ポリープ(HP),鋸歯状腺腫(TSA),sessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)に分類されている.TSAは明らかな腫瘍性異型を示す病変であるが,HPとSSA/Pは明らかな腫瘍とは判定できない病変である.SSA/PはHPと同様の細胞から構成されるが,HPではみられない不整な構造と不規則な核腫大をともなう.それぞれの診断基準は一応確立されているが,これらの中間的病変や種々の鋸歯状成分が混在した病変の本質の解明と臨床的に意義のある分類の確立が,今後の課題である.
著者
浅野 光一 梅野 淳嗣 松本 主之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.12, pp.1967-1976, 2011 (Released:2011-12-05)
参考文献数
64

近年,ゲノムワイド関連研究をはじめとしたゲノム研究はめざましい進歩を遂げている.炎症性腸疾患(IBD)の領域においても,現在までに約100の関連遺伝子領域が同定され,その結果disease pathwayを想定することが可能となった.しかしながら,IBDの遺伝的要因に未解明の点が多いこと,人種差や環境の差異により疾患関連遺伝子の影響度も異なることなども明らかになってきた.これらを解明するため,同定されたIBD関連遺伝子領域のさらなる詳細な解析に加え,まれな遺伝子多型やコピー数多型の解析,さらに腸内細菌叢などの環境要因と遺伝子との間の相互作用など,さまざまな遺伝的要因に関する研究が続けられている.
著者
中島 美智子
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.80, no.10, pp.2216-2223, 1983 (Released:2007-12-26)
参考文献数
34
被引用文献数
1

臨床像並びに肝生検で診断された肝疾患患者183例(アルコール性肝疾患41例, ウイルス性肝疾患104例, 薬剤性肝疾患28例, 対照10例) につき, 肝組織内γ-glutamyl transpeptidase (γ-GTP) を測定し同時採取した血清γ-GTP値との関連をみた. 各疾患いずれも肝組織内γ-GTP活性は血清γ-GTPに反映し, 特にアルコール性肝疾患, 薬剤性胆汁うつ滞型肝疾患においては肝組織内並びに血清γ-GTPの上昇が顕著であつた. 各疾患に共通して肝組織内γ-GTPの増加, 減少はそれぞれ肝細胞の水腫様腫大, 好酸性壊死を反映した. 血清γ-GTPの上昇はアルコール, 薬剤に伴う酵素誘導と肝細胞の変性, 壊死に伴うγ-GTPの逸脱が強く関与していることを示唆した.