著者
大槻 眞 坂本 長逸 前田 光雄 岡野 邦泰 尤 芳才 山崎 富生 馬場 茂明
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.359-365, 1978 (Released:2007-12-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1

1-phenyl-1-hydroxy-n-pentane (PHP) をラット十二指腸内へ注入し, 血中セクレチン濃度, 膵液, 膵アミラーゼ分泌量を同時に測定した. さらにPHPの作用に対するソマトスタチン (GIF) の影響もあわせて検討した.PHP 200mg/kg/min の注入により血中セクレチン濃度は, 5分後には前値の4~5倍にまで増大したが, PHP 50mg/kg/h 注入では血中セクレチン濃度は変動しなかつた. しかし両注入量に対する膵外分泌反応には差がなかつた.PHP 200mg/kg/min に対するセクレチン反応はGIFで完全に抑制されたが, 膵外分泌反応は認められた. 以上より PHP のセクレチン分泌作用は比較的弱く, セクレチン以外の膵外分泌刺激因子 (例えばCCK•PZ) に対し, 強い分泌刺激作用を示した.
著者
道免 和文 千住 恵 西本 愛 重松 宏尚 山崎 文朗 入江 康司 石橋 大海
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, pp.564-568, 2001-05-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
15
被引用文献数
2

症例は68歳,女性.蛋白尿,浮腫を主訴に入院した.低補体血症,高IgM血症,クリオグロブリン血症を認め,腎生検で膜性増殖性糸球体腎炎の所見が得られた.同時に肝機能障害,HCV RNA血症を認め,組織学的に慢性活動性肝炎像を示した.クリオグロブリン血症,膜性増殖性糸球体腎炎をともなった慢性C型肝炎と診断し,インターフェロン療法を施行した.HCV RNAの陰性化と共に尿蛋白の著減,クリオグロブリン血症の改善がみられた.本症例はクリオグロブリン血症,膜性増殖性糸球体腎炎,慢性C型肝炎の相互の関連性を強く示唆する貴重な症例と考えられた.
著者
加藤 景三
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.503-523, 1972-05-05 (Released:2011-06-17)
参考文献数
60
被引用文献数
10

膵管造影における正常および異常像を追求する目的で, 剖検例による検討を行ない, 次の結果を得た.1.主膵管走行を4型, 副膵管走行を3型に分類した.各走行型について, 発生学的に考察することにより, 複雑な膵管系の走行が比較的容易に理解できる.2.主, 副膵管および胆管は種々の開口型式をとるが, 開口型式と走行とは相関が認められる.3.主要分枝以外の分枝最大径1mm以上, 分枝の辺縁波状, 数珠状拡張および嚢状拡張所見は, 膵管上皮の過形成または化生, および管内粘液様物質貯溜と密接な関係がある.4.膵癌では, 主膵管の辺縁硬化を伴う狭窄および閉塞と分枝の中断ならびに直線化所見が認められる.狭窄部より尾側の膵管は拡張する.
著者
前田 光雄
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.75, no.11, pp.1802-1812, 1978 (Released:2007-12-26)
参考文献数
55
被引用文献数
1

胸部手術74例, 腹部手術56例およびその他の手術162例の計292例を対象として, 術後高アミラーゼ血症の性質を検討した. 292例中56例 (19.2%) に術後高アミラーゼ血症が認められ, その内膵型高アミラーゼ血症は6例 (10.7%) であり, 膵に直接侵襲を加えた症例に限られた. 一方, 唾液腺型高アミラーゼ血症は50例(89.3%) に認められ, 胸部手術および胸, 腹部以外の手術後の高アミラーゼ血症の全例がこれに属した.胸部手術, 特に体外循環による開心術例では, 術後高アミラーゼ血症の頻度も高く, 血清アミラーゼ活性上昇の程度が他の手術例に比して有意に高値を示し, 肺組織抽出液中に認められた唾液腺型アミラーゼの関与が強く示唆された. Cam/Ccr 比は膵型高アミラーゼ血症では術後有意に上昇したが, 唾液腺型高アミラーゼ血症では手術前後で有意な変化を示さなかつた.
著者
西川 潤 宮嵜 孝子 鈴木 庸弘 板谷 優子 山脇 秀元 三原 弘 蓮本 祐史 藤浪 斗 小川 浩平 細川 歩 工藤 俊彦 杉山 敏郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.9, pp.1535-1539, 2011 (Released:2011-09-05)
参考文献数
24

infliximab投与により薬剤誘発性ループスを発症した潰瘍性大腸炎の1例を経験した.ステロイド依存性潰瘍性大腸炎患者に対し,寛解導入ならびに寛解維持目的でinfliximab投与を施行した.第5回目のinfliximab投与後に多関節痛,リンパ球減少,抗二本鎖DNA抗体陽性,抗核抗体陽性を呈し薬剤誘発性ループスと診断した.保存的治療とinfliximab投与中止により症状の改善が得られた.
著者
白上 洋平 後藤 尚絵 西脇 伸二 丹羽 優佳里 久保田 全哉 岩下 雅秀 小野木 啓人 林 隆夫 前田 晃男 齋藤 公志郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.1377-1382, 2007 (Released:2007-09-05)
参考文献数
29
被引用文献数
2 5

症例は33歳男性.心窩部痛を主訴に来院.上部消化管内視鏡検査にて胃および十二指腸粘膜のびらん,浮腫を指摘され入院となった.入院経過中に,胃十二指腸炎の増悪を認めた.血清抗サイトメガロウイルス(以下CMV)抗体価の上昇と,胃粘膜生検組織にて核内封入体を認め,CMV胃十二指腸炎と診断した.健常成人のCMV感染症において,胃のみならず十二指腸まで病変を認める例は極めてまれであると考え報告する.
著者
土屋 雅春 島袋 嘉修 朝倉 均 水野 嘉夫 小田 義英 小野 明 森実 敏夫 山中 郁夫 辻 公美
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.989-997, 1974-10-05 (Released:2011-06-17)
参考文献数
20
被引用文献数
4

潰瘍性大腸炎において免疫学的追及を行ない胸腺T-cell系異常及びHL-Aに関し以下の知見を得た.1. 胸腺は全例Pneumomediastinography上大きく, レ線密度が強い. 組織学的には10例中6例にリンパ濾胞が証明された.2. 胸腺内T-cellは全例末梢血に比し高値であり胸腺はT-cell poolの場と考えられる.3. 末梢血T-cellは一定の傾向をみないが, PHA刺激試験12例中9例, DNCB試験9例中5例に反応性の低下を認めた.4. ヒト胎児大腸粘膜を添加した白血球遊走阻止試験で9例中7例に遊走阻止が認められた.5. 日本人の潰瘍性大腸炎35例で追及したHL-A検索では, HL-A 9及びHL-A 5が統計学的有意差で高率に認められた.
著者
高橋 信一 田中 昭文 徳永 健吾
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.1273-1282, 2010 (Released:2010-08-05)
参考文献数
46
被引用文献数
2

2009年,日本ヘリコバクター学会から改訂ガイドラインが発表され,そこではすべてのH. pylori感染者に対し除菌を行うよう強く勧められるとされた.H. pylori胃炎を背景として,さまざまな上部消化管疾患や消化管以外の疾患が発症するが,除菌により組織学的胃炎の改善とその後発症する疾患の予防に結びつくことが期待されている.世界の標準除菌治療は,プロトンポンプ阻害剤(PPI)+クラリスロマイシン(CAM)+アモキシシリン(AMPC)もしくはメトロニダゾールによるものだが,CAM耐性菌による除菌率の低下が問題であり,近年,連続療法やラクトフェリンなどによる除菌率上乗せ効果が注目されている.
著者
中村 孝司 鎌上 孝子 大国 篤史 黄 沾 伊藤 善志通 糸数 憲二 菅又 成雄 鳥居 正男 三宅 和彦 山中 正己 丹羽 寛文
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.80, no.12, pp.2493-2503, 1983 (Released:2007-12-26)
参考文献数
47
被引用文献数
7

消化性潰瘍の治療に当つて嗜好品をいかに取り扱うべきか, 今日でも不明確な点が多い. また潰瘍の経過に及ぼすこれらの効果についての検討もきわめて乏しい.著者らは, 内視鏡的に経過を追跡しえた症例591例 (平均観察期間5年11カ月) を対象として, 喫煙, 飲酒, コーヒー摂取の潰瘍再発, 治癒に与える影響について検討を行つた.その成績は次の通りである. 1. 喫煙は消化性潰瘍の再発率を統計的に有意に上昇させ, 明らかな悪影響を与えることが示された. また潰瘍の治癒率にもある程度の抑制効果が示された. 2. 飲酒およびコーヒー摂取は, 消化性潰瘍の再発率, 治癒率に大きな影響を与えなかつた.

1 0 0 0 OA E型肝炎の臨床

著者
矢野 公士 玉田 陽子 八橋 弘
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.188-194, 2009 (Released:2009-02-05)
参考文献数
32
被引用文献数
2

E型肝炎は世界中に遍在している疾患である.本邦では,遅くとも1980年ごろには散発的なE型肝炎の発生がおこっており,近年増加傾向にある.E型肝炎ウイルスには4つの遺伝子型があり,このうち本邦に土着しているのは3型および4型である.元来熱帯地方で報告されてきた1型ないし2型とは異なった疫学,臨床的特徴を示す.3型と4型との間にも相当の地理的分布,臨床的差異が存在し,4型HEVはE型急性肝炎の重症化と関連している.本稿では,近年明らかになってきた,本邦におけるE型肝炎型肝炎の現状,ならびに疫学と遺伝子型を中心としたE型肝炎の臨床的特徴について述べる.
著者
中村 俊幸 岸本 恭 下澤 信彦 小池 祥一郎 清水 忠博 久米田 茂喜 渡辺 豊昭 中澤 功 重松 秀一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.2, pp.195-198, 2000-02-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1 5

梅毒性直腸炎は報告が少なく,非常にまれな疾患である.今回われわれは同性愛者の梅毒性直腸炎の1例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する.患者は40歳の男性,同性愛者で過去に肛門性交歴があった.主訴は肛門からの出血と疼痛で,内視鏡で下部直腸に潰瘍性の病変を認めた.生検で病変部のTreponema pallidumが証明され,梅毒性直腸炎と診断された.
著者
吉田 浩二 中村 祐輔
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.1255-1261, 2010 (Released:2010-08-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1

2009年9月,米国医薬食品局(FDA)は「治療用がんワクチンについての臨床的考察 Clinical considerations for Therapeutic cancer vaccines」を発表した.がんワクチン療法が,副作用が少なく高いQOLを保つ治療法となる可能性に言及している.がん治療の概念が変わりつつあることを,FDAガイダンスの解説から紹介し,現在,われわれの共同臨床研究ネットワークで実施されている膵癌,食道癌,大腸癌の「がんペプチドワクチン療法」の現状と今後の展開について紹介する.
著者
早雲 孝信 東 健 中島 正継 安田 健治朗 趙 栄済 向井 秀一 水間 美宏 芦原 亨 水野 成人 平野 誠一 池田 悦子 加藤 元一 徳田 一 竹中 温 泉 浩 井川 理 青池 晟 川井 啓市
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1539-1544, 1991 (Released:2007-12-26)
参考文献数
19
被引用文献数
2

ras遺伝子は, そのpoint mutation により活性化される癌遺伝子として知られている. 今回, われわれは oligonucleotide hybridization assay を用いて,大腸癌86例における K-ras codon 12, 13のpoint mutation の有無について検索した. その結果, codon 12に32例, codon 13に1例の33例 (38%) に point mutation を認めた. 変異の比率を腫瘍の存在部位, 組織型, 深達度, リンパ節転移, ステージ分類別に検討したが, 有意な関係は認められなかつた. しかし, 深達度mやsmといつた早期の癌においても高頻度に変異が検出され, ras遺伝子の point mutation が癌の進行過程というよりも発癌の過程に関係していることが推察された.
著者
古沢 明彦 鵜浦 雅志 野ツ俣 和夫 森岡 健 早川 康治 松下 栄紀 小林 健一 服部 信 牧野 博 福岡 賢一 田中 延善 中川 彦人 西邨 啓吾 金井 正信 杉本 立甫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.86, no.12, pp.2765-2772, 1989 (Released:2007-12-26)
参考文献数
32
被引用文献数
1

40歳未満で発症した若年肝細胞癌 (HCC) 11例について, 非若年HCC187例と臨床病理学的に比較した. 若年ではHBsAg 陽性例が10例(91%)と非若年に比し有意に高率であり, 50%にHBVや進行性肝疾患の家族集積を認めた. 肝硬変合併率は73%と非若年と差異は認めなかつた. 肝障害の既往を有する例は27%で, 腹痛で発症し発見時進行例が多かつた. 腫瘍随伴症候群 (PNS) 合併例が若年では36.3%と非若年に比し有意に高率であつた. PNS合併若年HCCではLC合併例は25%と低く, AFP著増例が多く且つ著しく予後不良であつた. 以上より我が国の若年HCCではHBVが発癌に強く関与し, またPNSを伴う例はHCCの中でも特徴的な1群を形成しているものと推測された.
著者
荒木 寛司 小野木 章人 井深 貴士 森脇 久隆
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.427-431, 2010 (Released:2010-03-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

28歳男性.家族歴として父に30年前より原因不明の反復する腹痛·発熱発作.現病歴,約1年前より1~3カ月に1回,数日から1週間で自然軽快する腹痛·発熱発作あり,血液検査でCRP,白血球増多を認めた.全身CT,上下部消化管内視鏡にて異常なし.MEFV遺伝子検査にて患者と父にE148Qヘテロ/M694Iヘテロの遺伝子異常を認め家族性地中海熱と診断.コルヒチン(1mg/日)の投与にて症状は消失した.
著者
森妹子
雑誌
日本消化器病学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.106, 2009
被引用文献数
1
著者
河野 辰幸
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.170-175, 2005 (Released:2005-06-06)
参考文献数
46

バレット腺癌においても,外科治療の意義は確実な局所コントロールとリンパ節を系統的に郭清できることによる根治性の追求にあり,食道扁平上皮癌での治療経験が参考となる.その侵襲の大きさと術後生ずるかもしれないQOLの低下が問題である.内視鏡治療は転移に対しては無力であるが,表在性病変に対する内視鏡切除術の局所制御能は外科切除術に匹敵し,原発巣の詳細な組織学的評価が可能であるなど,粘膜内に止まる可能性のある限局性病変に対しては常に第一段階治療法の役割を担う.逆流防止手術や内視鏡的アブレーションなど,バレット上皮の消褪や腺癌への進展予防における役割についてはなお一定の見解が得られていない.
著者
幕内 博康
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.1299-1308, 2008 (Released:2008-09-05)
参考文献数
62
被引用文献数
2

欧米ではBarrett腺癌の増加が著しく,本邦でも報告例が増加している. Barrett食道癌の発生母地であるBarrett食道はSEBEを含めても集検例の6.1%,医療施設の受診例では20.1%であった. 欧米では,Barrett食道からの腺癌の発生は0.5%,食道癌全体の半数をしめているが,本邦ではまだ少なく,われわれの施設で食道癌全体の0.9%を占めるに過ぎず,1973年から2005年までの報告例は431例であった.Barrett腺癌についてその診断面では,拡大内視鏡やNBI,治療面ではEMR, ESDが進歩·普及しつつある. Barrett食道の発生,定義,Barrett腺癌の発生,サーベイランス,精密診断,治療法など,まだまだ数多くの問題点が残されている.