著者
赤澤 陽一 上山 浩也 永原 章仁 中川 裕太 松本 紘平 稲見 義宏 松本 健史 今 一義 八尾 隆史 渡辺 純夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.111, no.10, pp.1968-1975, 2014-10-05 (Released:2014-10-05)
参考文献数
22

66歳女性.上部消化管内視鏡で体上部後壁に17 mm大の胃粘膜下腫瘍(SMT)を認め,PET-CTで体下部大弯に別病変として30 mm大のFDGの集積を認めた.CT gastrography(CTG)では上記検査で指摘し得なかった8 mm大のSMTをさらに診断できた.病理組織診断ではGIST,神経鞘腫,壊死組織とそれぞれ異なる組織像であった.CTGが胃SMT診断に有用であった貴重な症例であったため報告する.
著者
真武 弘明 内藤 説也 小河原 悟 飯田 三雄 松井 敏幸 岡部 信郎 山本 勉 藤田 晃一 岡田 光男 八尾 恒良
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.1448-1454, 1989 (Released:2007-12-26)
参考文献数
42

日本人 Crohn 病患者108例のHLA-A, -B, -C, -DRおよびDQの検索を行ない, 日本人 Crohn 病とHLAとの関連性について検討した. 日本人 Crohn 病患者ではDR4が有意に高率であり, そのsubtype であるDR4.1の出現頻度が有意に高率であつた. B51, Bw54, DRw12, DRw13, DRw52は対照群に比べ出現頻度が高い傾向を示したが, 有意差は認めなかつた. DR2, DQw1, DQw3は有意に低率であり, B7は低い傾向を示した. 日本人 Crohn 病患者においては, DR4特にDR4.1, またはそれに連鎖している部位に疾患感受性遺伝子があることを推測した.
著者
杉原 健一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.28-36, 1984 (Released:2007-12-26)
参考文献数
31

本邦では右側大腸憩室症が高頻度に認められるが, その成因は不明である. 著者は右側大腸憩室症の発生病態を解明する目的にて, 右側大腸憩室症患者13例と正常者10例の上行結腸に大腸内視鏡を用いて Mikro-Tip 圧力トランスデューサーを留置し, 腸管内圧を測定した. 安静時, 右側大腸憩室症群の運動指数は正常群よりも高い値を示した. Neostigmine 静注後, 両群ともにおいて高圧の波が多数出現したが, 特に憩室症群では正常群に比べよい高圧の波がより高頻度に出現し, 憩室症群の運動指数は正常群より有意に高い値であつた. また, 憩室症群のうち有症状群と無症状群の間には腸運動に差を認めなかつたが, 憩室症の無症状群の運動指数は安静時, neostigmine 刺激後のいずれにおいても正常群より有意に高値であつた. さらに, このような腸管内圧を上昇させる圧力波は segmental contractiom により発生した波であつた. これらの観察結果から, 上行結腸における腸管内圧の上昇および腸運動異常が右側大腸憩室症の発生に重要な役割を演じていると考えられる.
著者
間部 克裕 加藤 元嗣 坂本 直哉 浅香 正博
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.218-224, 2013 (Released:2013-02-05)
参考文献数
26

ペプシノゲン(PG)は,胃底腺で産生されるPG Iと胃全体から産生されるPG IIからなり,約1%が血液中に漏出する.血清PGは胃粘膜の萎縮と相関し,PG I 70ng/ml以下かつPG I/II比3以下がPG法における胃がん高リスクである.胃がんの原因がH. pylori感染であることが明らかになり,PGに血清H. pylori抗体を組み合わせるABC分類が提唱され,胃がんリスク分類が可能となった.H. pylori除菌治療によりリスク例もA群に誤分類されてしまうことが課題である.Cut off値の見直しや除菌後PGなど,除菌治療後のPGについて検討がされている.
著者
仲瀬 裕志
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.1916-1921, 2013 (Released:2013-11-05)
参考文献数
20

本邦における潰瘍性大腸炎の増加にともない,難治例に対して免疫抑制剤を使用する頻度が増加している.カルシニューリン阻害剤であるタクロリムスは,難治性および重症潰瘍性大腸炎に有効な薬剤である.日本および欧米の今までの報告から,難治例に対するタクロリムス短期治療効果は約70%と考えられる.タクロリムスや抗TNF-α製剤など,潰瘍性大腸炎治療に関するさまざまな治療オプションが増加する中で,われわれはタクロリムスの位置付けを明らかにしていく必要がある.加えて,個々の患者にとってどの治療法が適切であるのかを見極めることは,患者QOLに貢献しうる.これらは,消化器医師にとって今後の重要な課題である.
著者
道堯 浩二郎 恩地 森一 灘野 成人 堀池 典生 太田 康幸
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.2210-2214, 1989 (Released:2007-12-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1

肝組織内DNAポリメラーゼα (DNA-Pα) をモノクローナル抗体を用いて検出し, 各種肝疾患の肝細胞増殖動態について検討した. 肝細胞1000個に対するDNA-Pα陽性肝細胞数は, hospital control では平均1個であつたのに対し, 急性肝炎, 慢性肝炎, 肝硬変ではいずれも平均約20個に増加していた. また, 肝細胞癌では平均約500個と著明に増加していた. 慢性活動性肝炎は慢性非活動性肝炎よりDNA-Pα陽性肝細胞が多く, piecemeal necrosis, 巣状壊死の高度な例では軽度例に比べDNA-Pα陽性細胞が多く認められた.
著者
大塚 淳司 千布 裕
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.184-187, 2001 (Released:2008-02-26)
参考文献数
10

症例は21歳女性.98年5月,食欲不振,悪心・嘔吐出現.4日後,40°C台の発熱,過換気,意識障害出現.Reye症候群を疑い,血漿交換,ステロイド投与を行ったが,入院後第5病日死亡した.肝臓necropsyにて中心核性脂肪肝の所見を認め,Reye症候群と診断した,Reye症候群は大部分が2歳以下に発症し,成人発症はまれである.今回我々は成人Reye症候群の1例を経験したため,文献的考察を加え報告する.
著者
鎌田 佳宏 三善 英知 竹原 徹郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.25-34, 2014 (Released:2014-01-05)
参考文献数
42

NAFLDからNASHを鑑別診断するには肝生検が必要であるが,わが国に約1000万人いるNAFLD患者すべてに行うことは困難である.最近,非侵襲的なNASH診断法としてさまざまな血液マーカーを用いたスコアリングシステム,最新の画像診断法であるエラストグラフィーやControlled Attenuation Parameter(CAP)が用いられるようになってきた.また単一の血液マーカーとしてサイトケラチン18断片の有用性が報告されている.われわれは最近糖鎖マーカーを用いた新規NASH診断の血液バイオマーカーを発見した.これら非侵襲的診断法は肝生検に取って代わる新しいNASH診断法となることが期待される.
著者
多田 稔 高木 馨 川久保 和道 白田 龍之介 石垣 和祥 武田 剛志 藤原 弘明 梅舟 仰胤 齋藤 圭 斎藤 友隆 渡邉 健雄 秋山 大 内野 里枝 岸川 孝弘 高原 楠昊 高橋 良太 山本 恵介 濱田 毅 水野 卓 宮林 弘至 毛利 大 松原 三郎 木暮 宏史 中井 陽介 山本 夏代 佐々木 隆 笹平 直樹 平野 賢二 伊地知 秀明 立石 敬介 伊佐山 浩通 小池 和彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.8, pp.1474-1478, 2015-08-05 (Released:2015-08-05)
参考文献数
15

IPMN,膵嚢胞は,膵癌高危険群の中で最も効率のよい指標である.IPMNは進行が緩徐で比較的予後のよいIPMN由来浸潤癌がよく知られているが,予後不良の通常型膵癌の発生もともなう.最適な経過観察方法は定まっていないが,EUSがいずれの発癌形態にも最も感度のよい検査方法である.ただし,スクリーニングのための最適な検査方法については検討事項である.
著者
正宗 淳 濱田 晋 下瀬川 徹
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.8, pp.1464-1473, 2015-08-05 (Released:2015-08-05)
参考文献数
44

慢性膵炎が膵癌のリスクファクターであることは,疫学研究により確立されている.メタ解析によると,慢性膵炎の膵癌リスクは一般人口に比べて13.3倍,慢性膵炎の診断2年以内の膵癌症例を除いた場合でも5.8倍とされる.特に遺伝性膵炎では69倍と非常に高い.発癌メカニズムとしてK-ras変異の重要性や間質細胞との相互作用,細胞老化(senescence)回避機構の関与が明らかとなりつつある.一方,実臨床において慢性膵炎に合併した膵癌を早期発見することは容易ではない.慢性膵炎に合併した膵癌に特異的な所見はなく,断酒や禁煙などによる炎症のコントロールが,膵癌予防という点からも重要である.
著者
中島 滋美
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.225-233, 2013 (Released:2013-02-05)
参考文献数
33

ペプシノゲン(PG)法,ABC分類および胃X線検査の現状と問題点,および胃がん検診における位置づけを考察した.PG法は血清学的胃粘膜萎縮診断法で,効率よく胃がん危険群を囲い込むことができるが,PG陰性胃がんが存在するため胃がんを見落とす可能性がある.PG法と血清ヘリコバクター・ピロリ(Hp)抗体検査を併用したABC分類は,両者の弱点を補い合う組み合わせで,血液検査で簡便に実施できる胃がんリスク評価法である.胃X線検査は対策型検診として唯一認められている検査法で,画像によるHp感染診断も可能である.ABC分類と胃X線検査を相補的に利用すると,効率のよい「リスク別胃がん予防&検診」が構築できる.
著者
佐藤 竜吾 藤岡 利生 村上 和成 兒玉 雅明
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.100, no.11, pp.1295-1301, 2003-11-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
35

近年の膨大な研究により,Helicobacter pylori感染が上部消化管疾患のみならず,血液疾患,心・血管系疾患,皮膚疾患など消化器以外の疾患と関連している可能性が示唆されている.さらに,胃外に発生したMALTリンパ腫の除菌奏功例も報告されている.特発性血小板減少性紫斑病に関しては,わが国ではH. pylori陽性患者の約半数に除菌治療が期待できる状況にあり,近い将来,除菌適応疾患に加わる可能性が高い.本稿で紹介した疾患の中には,エビデンスが不十分なものも少なくなく,また疾患によりH. pylori感染の関与の程度も様々と思われる.今後,各専門家が協力して慎重に検証していく必要がある.
著者
山田 剛太郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.377-384, 1999-04-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
18

慢性肝炎の新しい組織分類として本邦では新犬山分類が,欧米ではDesmetらの新ヨーロッパ分類ともいうべき新しい分類が相次いで発表されている.C型肝炎ウイルスの血清学的診断が確立され,B型,C型慢性肝疾患のほぼ全経過が明らかにされ,さらには抗ウイルス剤を中心とした治療が広く実施されるようになるとともに慢性肝炎における肝生検の診断的意義も大きく変化してきた.このような時代に即した分類として,いずれの新分類も病変の進展度を線維化のstagingで,壊死・炎症の活動度をgradingに分けて評価する新しい診断基準となっている.診断基準の詳細を紹介するとともに,臨床応用として自験例を用いた若干の検討を供覧した.
著者
福嶋 真理恵 古藤 和浩 遠城寺 宗近 中牟田 誠 名和田 新 相島 慎一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.42-47, 2005 (Released:2005-03-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は45歳,男性.平成10年より慢性硬膜血腫術後のてんかん発作にて,近医経過観察中,高アンモニア血症を指摘され,平成13年5月当科に紹介入院.HCV-RNA陽性だが肝予備能低下なく,門脈大循環へのシャントなく,アミノ酸分析正常であった.薬剤の関与としてバルプロ酸ナトリウムが考えられ,減量中止したところアンモニア値は改善した.基礎病変として肝疾患を持つ症例においても,常に薬剤による高アンモニア血症に考慮して診療にあたるべきと考えられた.
著者
小西 文雄
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.99, no.9, pp.1050-1056, 2002-09-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
26

HNPCCにおいては,DNAミスマッチ修復遺伝子の異常によって生じるマイクロサテライト不安定性(MSI)が高率に認められ,遺伝子不安定性が発癌をきたすものと考えられている.一方,散発性大腸癌においても,15~20%の症例においてMSIが認められる.近年,散発性大腸癌におけるMSIの発生機序が明らかとなってきており,Vogelsteinらが1980年後半に提唱したAPC,Ki-ras,p53,DCCなどの大腸発癌に関わる遺伝子変化に加えて,散発性大腸癌の発生にかかわるDNAミスマッチ修復遺伝子に関連したDNA methylationなどのepi-geneticな変化の重要性が明らかとなった.
著者
金子 宏 小長谷 敏浩 飯田 章人 各務 伸一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.103, no.9, pp.1031-1038, 2006 (Released:2006-09-05)
参考文献数
50
被引用文献数
2

機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)は従来からの症候性胃炎,神経性胃炎などに相応する疾患単位であり,機能性消化管障害の国際的教科書ともいえるRome基準にはその定義,病態が詳しく説明されている.2006年4月に公表されたRome III基準ではディスペプシア症状を4つに限定し,2つの下位カテゴリーが設定されている.病態としては消化管運動異常,消化管知覚過敏,心理社会的因子などがあげられる.病態解明のための検査法の進歩も欠かせない.症状および疾病行動を理解するために,現時点である程度コンセンサスが得られている病態の関与,およびそれらの相互作用について多角的視野(脳腸相関,身体-心理-社会モデル)から解説する.
著者
加藤 章信 鈴木 一幸
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.104, no.12, pp.1714-1721, 2007 (Released:2007-12-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1

肝疾患ではさまざまな栄養代謝障害が生じ栄養学的介入が必要である.急性肝炎では,バランスのとれた食事を摂取するようにする.劇症肝炎を中心とする急性肝不全では意識障害が出現する前から食物摂取は困難あり栄養管理の基本は中心静脈栄養法となる.慢性肝炎ではバランスのとれた食事が基本であるが,ことにC型慢性肝炎では鉄制限食の併用が有用である.脂肪肝·非アルコール性脂肪肝炎(non-alcaholic steatohepatitis; NASH)ではダイエットによる急激な体重減少は避ける.肝硬変ではバランスのとれた食事とともにエネルギー代謝異常対策としての就寝前補食や,蛋白·アミノ酸代謝異常に対する経口分岐鎖アミノ酸製剤が用いられる.肝癌では過不足のない栄養療法が発癌抑制の面から重要となる.
著者
吉川 一紀 津村 裕昭 黒目 学 迫本 実 田中屋 真智子 植松 周二 高橋 浩一 山本 剛壮 三上 素子 横崎 宏 田中 義淳
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.969-972, 1999-08-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1

47歳男性が下血のため入院し,下部消化管内視鏡検査にてBauhin弁より口側6cmにある回腸憩室からの消化管出血と診断された.開腹による回盲部切除では同部位の憩室に魚骨の刺入がみられ,病理学的には刺創周囲に化膿性炎症と血管破綻像をともなう真性憩室であった.大変まれな魚骨による回腸末端の真性憩室からの消化管出血と診断され,若干の文献的考察を加えて報告する.