著者
石橋 陽子 松薗 絵美 合田 智宏 横山 文明 菅井 望 関 英幸 三浦 淳彦 藤田 淳 鈴木 潤一 鈴木 昭 深澤 雄一郎
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.5, pp.759-768, 2011-05-05
被引用文献数
2 1

急性壊死性食道炎の4例を経験した.4例とも初発症状は吐血で,上部消化管内視鏡検査では特徴的な黒色食道を呈した.発症時の基礎疾患は,3例がケトアシドーシス,2例が糖尿病であった.3例は保存的に軽快し,死亡例を1例認めたが死因は急性壊死性食道炎によるものではなく,基礎疾患である敗血症が予後を規定した.急性壊死性食道炎はまれな疾患ではあるが,緊急内視鏡における鑑別診断として念頭に置くべきであると考える.<br>
著者
木村 まり子 松田 徹 深瀬 和利 奥本 和夫 間部 克裕 鈴木 克典 青山 一郎 堺 順一 斉藤 博 佐藤 信一郎
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.145-151, 2002-02-01
被引用文献数
20

上腸間膜動脈解離6症例につき検討した.高血圧を4例に認め,危険因子として考慮された.症状の特徴として,背部に放散する高度の腹痛,背部痛,食後の症状増悪,腸雑音の減弱が挙げられた.診断にはCTや腹部超音波検査が有用であった.抗血栓凝固薬で保存的に管理し,4例が改善した.改善しない2例については厳重に経過を観察し,増悪するようなら侵襲的治療を考慮する必要がある.本疾患として加療されていることもあり,腹痛の鑑別診断上忘れてはならない疾患であると考えられた.
著者
太田 慎一 伴場 裕巳 今井 幸紀 新井 晋 藤原 研司
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.253-263, 2002-03-05
参考文献数
90
被引用文献数
1

大腸癌の予防は重要な課題であり,この点でプロスタグランジン合成酵素であるCOX-2が注目を集めている.家族性大腸腺腫症ではヒトで有意の腺腫に対する退縮効果が報告された.しかしながらその作用機序に関しては現在も様々な議論がある,ヒトの癌においては臨床的展開が期待されると共に癌発生機構解明の手がかりを与えてくれる可能性のある分野であり,今後の発展が期待される.
著者
松森 篤史 米田 諭 小林 洋三 竹田 幸祐 安藤 稔 山根 佳子 西村 公男 小嶌 秀之 福井 博
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.9, pp.1207-1211, 2005-09-05

症例は30歳男性.黄疸と肝機能障害にて入院.入院7日目にプロトロンビン活性は30%と低下し急性肝炎重症型と診断した.直ちに血漿交換とグルカゴン-インスリン療法を施行し救命し得た.ウイルスマーカーはすべて陰性で,薬物服用歴とリンパ球幼弱化試験陽性であることよりホスホマイシンが原因と診断した.ホスホマイシンが原因となった急性肝炎重症型は本症例が最初の報告例である.<br>
著者
山口 智弘 塩飽 保博 小出 一真 栗岡 英明 信谷 健太郎 船津 英司 久津見 弘 藤本 荘太郎 細川 洋平
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.101, no.10, pp.1087-1094, 2004-10-05
被引用文献数
12

症例は74歳女性. 上部消化管内視鏡検査にて下部食道に黒色隆起性病変を認め, 悪性黒色腫の診断のもと, 胸腹部食道亜全摘術を施行した. 術後DAV療法を施行し, 23カ月間無再発生存中である. さらに本邦報告例193例について臨床病理学的に検討した. その中でアンケート調査を行い予後の明らかとなった72例では, 60歳以上, T2以深, リンパ節転移陽性, 遠隔転移有り, で予後が有意に悪かった. 腫瘍径, 生検の有無では予後に差を認めなかった.
著者
堀 智英 岡田 喜克 町支 秀樹 宗行 毅 永井 盛太 岸和田 昌之
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.673-679, 2003-06-05
被引用文献数
17

症例は87歳女性. 突然の嘔吐, 心窩部痛および腹部膨満感を来し入院. 上部消化管造影および内視鏡検査で径5cm大の胃寄薩部腫瘍の十二指腸球部脱出嵌頓と診断され, 内視鏡的整復不能のため, 腫瘍摘出術を施行した. 腫瘍は病理組織学的所見で紡錘型細胞の束状増生を認め, 核分裂像は2個/10視野. 免疫組織学的にc-kit,CD34S-100蛋白陽性. 電顕で神経内分泌穎粒を認め, 良性GANTと診断. 術後3年2カ月目の現在, 再発を認めない.
著者
阿部 陽介 光島 徹 永谷 京平 井熊 仁 南原 好和
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.836-845, 1995-05-05
被引用文献数
20 26

case-control studyの手法を用いて胃癌死亡減少に対する胃癌集団検診(胃集検)の効果の疫学的評価および胃集検の効率化の検討を行い,重点的に受診すべき対象年齢と適正な受診間隔の設定を行なった.対象は基本集団を千葉県安房11市町村の地域住民(人口約16万人)とし,caseを胃癌死亡者男527,女293例,controlは性,年齢±3年,住居地区をマッチさせた一般住民男1552,女861例である.これを胃集検受診者と未受診者に分類し,受診者の胃癌死亡の比較危険度(RR)は未受診者を1.0とすると,男0.417,女0.480に低下した.性年齢別では男40~74歳,女50~69歳,受診間隔では前回受診から最長3年間はRRの有意の低下が認められた.
著者
馬場 仁 会澤 亮一 山尾 瑞奈 安部 宏 宮川 佳也 松岡 美佳 相澤 良夫
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.101, no.12, pp.1325-1331, 2004-12-05
参考文献数
22
被引用文献数
2

62歳男性. 悪心, 左上腹部痛を主訴に平成15年3月当院受診. 同年5月の再受診時より肝障害を認め6月4日入院. 腹部造影CTでは肝左葉中心の斑状高濃度域を認めた. MRIでは肝の信号はびまん性に不均一で, T1強調像で低信号, T2強調像でやや高信号, SPIO造影で左葉中心の斑状低信号を認めたが, 腫瘍の同定は困難だった. 肝不全が進行し7月26日死亡. 肝ネクロプシーと画像所見からびまん型肝血管肉腫と診断した.
著者
明石 哲郎 河辺 顕 坂本 竜一 宜保 淳也 井上 直子 小島 瑞穂 久野 晃聖 有田 好之 伊藤 鉄英 名和田 新
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.713-718, 2003-06-05
被引用文献数
8

膵仮性嚢胞は, 急性膵炎や慢性膵炎の合併症として, しばしば経験する. しかし, 縦隔内膵仮性嚢胞はまれで, 我々の検索しえた範囲では, 本邦報告例は21例である. また, その治療は, 大多数が嚢胞摘出術や嚢胞ドレナージ術などの外科的治療を受けている. 今回, 我々は抗酵素療法に抵抗性を示す縦隔内膵仮性嚢胞合併膵炎に対しソマトスタチン誘導体投与が奏効し, 保存的に嚢胞の消失を認めた症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
著者
滝川 一 高森 頼雪
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.653-658, 2003-06-05
被引用文献数
6

薬物性肝障害の診断は薬物投与と肝障害の時間的関連, 除外診断, その薬物が肝障害をおこしやすいかという点に基づいて行われているのが現状と考えられる. 近年, 特異体質による代謝能の変化に基づくと考えられる薬物性肝障害の存在が問題視されている. わが国では1978年に提起された診断基準が存在するのみであるが, 薬物リンパ球刺激試験の偽陰性例や上記のような代謝性の薬物性肝障害が診断できないという問題を抱えている. 今回, 国際コンセンサス会議による診断基準をわが国の現状に合うように改訂した診断基準を提起した. 症例による検証で有用と考えられたが, 今後, 症例のさらなる積み重ねによる検証が必要である.
著者
安藤 仁 加賀谷 尚史 竹森 康弘 野田 八嗣
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.723-729, 1997-11-05
被引用文献数
1

HP陽性消化性疾患患者78例に対し除菌治療を施行し(PPI+AMPC 17例,PPI+AMPC+CAM 61例),HP抗体価およびPGI・II値,I/II比の推移について検討した.HP除菌例(<I>n</I>=68)では,治療後HP抗体価の低下およびPGI・II値の低下,PGI/II比の上昇を認めた.特にPGII値の低下とPGI/II比の上昇は除菌治療開始2カ月後の早期より著明でその後も持続した.一方,HP非除菌例では,治療後HP抗体価およびPGI/II比に明らかな変化はなく,PGI・II値がPPIの影響かむしろ早期に一過性の上昇を示した.以上より,PGII値とPGI/II比はHP除菌効果を早期より反映して変動することが示された.