著者
石井 直明
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.103, no.2, pp.143-148, 2006-02-05
参考文献数
5

近年飛躍的に進んでいる老化研究の結果から,老化のメカニズムがインスリン&middot;シグナル伝達経路やカロリー制限が関係する「エネルギー代謝」と,ヘリケースやテロメアが関係し,細胞老化やガン化につながる「細胞分裂」に集約されてきた.この両者は一見,つながりがないように思えるが,エネルギー代謝の副産物として産生される活性酸素による傷害が細胞分裂の停止や細胞死,ガン化に関与することや,インスリン&middot;シグナル伝達経路が細胞分裂を制御しているという報告があることから,老化の基本的なメカニズムが1つのネットワークの中に描かれる日が近いことを感じさせる.<br>
著者
藤田 きみゑ 長谷川 美幸 藤田 麻里 小林 寅〓 小笹 晃太郎 渡辺 能行
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.379-385, 2002-04-05
参考文献数
37

今回,われわれは古くより民間薬として用いられてきた梅肉エキスの<I>Helicobacter pylori</I>(<I>H.p</I>.)に対する殺菌効果を検討した.梅肉工キスの主成分は約3296のクエン酸1196がリンゴ酸などで,pHは強酸性である,この梅肉エキスの0.156%,0.313%,0.625%,0.9%各濃度工キス剤溶液に対して,胃粘膜由来の<I>H.p</I>.臨床分離株10株を各々濃度溶液にて培養し,菌培養MIC(最小発育阻止濃度)測定を行った.その結果,<I>H.p</I>.10株のうち<I>H.p</I>.4株に対しては梅肉工キス剤濃度0.156%以下で,また,<I>H.p</I>.6株に対してはエキス剤濃度0313%で強い抗菌力を示した.さらに,梅肉エキス0.3%,0.9%濃度溶液に混和された<I>H.p</I>.臨床分離株10株の生理的食塩水懸濁液は,5分後および15分後にて<I>H.p</I>.菌量の99.995%から99.999%が減少し強い殺菌効果を認めた.これ等結果より,梅肉エキスは安価で副作用のない<I>H.p</I>.を予防し得る食品と考えられた.
著者
峯 徹哉
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.1443-1446, 2005-11-05

今回日本消化器病学会の卒後教育委員会を代表してTrain the Trainers(TTT)に参加させていただき卒後教育における指導者とはどうあるべきかを学んだ.TTTは消化器病(消化器内視鏡を含む)を専門とする指導者を育成するためにWGO(OMGE)/OMEDが協力して作った世界的な規模でのワークショップである.従来は各国の指導者を養成するシステムはマチマチであり,統一性がなかった.現在,医療の分野でもglobalizationが声高に叫ばれている中,教育においても標準化の道に進むのが正しいと思われる.そこにTTTが組織され,現在その実績をあげつつあると思われる.<br>
著者
木村 健 浅香 正博 勝山 努 川野 淳 斉藤 大三 佐藤 貴一 下山 孝 杉山 敏郎 高橋 信一 服部 隆則 藤岡 利生
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.199-207, 1999-02-05
被引用文献数
17

第二次<I>Helicobacter pylori</I>治験検討委員会が改訂した治験ガイドラインの主な内容は,以下の通りである.<BR>I.除菌の利点と問題点: 利点は消化性潰瘍の再発抑制効果,そして低悪性度胃MALTリンパ腫の改善,かつそれらの医療経済効果である.問題点は薬剤耐性の獲得,および除菌後に新たに生じる疾患があり得ることである.<BR>II.除菌治験の適応疾患: 除菌治験を速やかに行うべき疾患は,現在のところ,胃・十二脂腸潰瘍と低悪性度胃MALTリンパ腫である.<BR>III.除菌薬: 酸分泌抑制薬+抗菌薬2剤の3剤併用療法をfirst-line therapyとする.<BR>IV.存在診断と除菌判定: 存在診断は培養,鏡検,ウレアーゼ試験にて行う.除菌判定は,培養と鏡検に加えて<SUP>13</SUP>C尿素呼気試験を必須とし,血清学的検査法とPCR法を削除する.除菌判定の時期は,治療終了後6~8週とする.
著者
青山 庄 樋上 義伸 高橋 洋一 吉光 裕 草島 義徳 広野 禎介 高柳 尹立 赤尾 信明 近藤 力王至
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.312-321, 1996-05-05
被引用文献数
6

1994年春,ホタルイカを内臓ごと生食後に旋尾線虫幼虫type Xによると思われる急性腹症を呈した10例を経験した.症状では,全例に腹痛,9例に嘔気・嘔吐,4例に下痢,6例に腹水を伴った腸閉塞と1例に皮膚爬行疹を認めた.検査所見では,経過中において,全例に末梢血の好酸球増多,9例に血清IgE値増加が認められた.ホタルイカ内臓の約3%に旋尾線虫幼虫type Xが寄生しているとの報告から,その抗体価を測定したところ,9例中7例で陽性を示した.1例では,腹膜炎の診断で回腸部分切除術が行われ,組織学的に,局所的なびらんと粘膜下層内に著明な好酸球とリンパ球浸潤を伴う炎症所見が認められたが,9例は保存的治療で軽快した.
著者
原田 岳 坂口 孝宣 稲葉 圭介 中村 利夫 倉地 清隆 深澤 貴子 中村 光一 沢柳 智樹 原 竜平 井田 勝也 今野 弘之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.432-441, 2010-03-05
参考文献数
30
被引用文献数
1

症例は70歳男性.肝門部とドーム下に肝腫瘍を指摘され受診された.門脈腫瘍塞栓をともなうStage IVの肝細胞癌と診断し,近医経過観察の方針となった.その後は症状の増悪なく経過し,初診から28カ月後の画像診断で腫瘍は著明に縮小していた.退縮に関わる因子として,門脈腫瘍塞栓による腫瘍血流の減少と,イミダプリル,補中益気湯の抗腫瘍効果が考えられた.肝細胞癌の自然退縮症例はまれであり,文献的考察を含め報告する.<br>
著者
松原 淳一 藤田 善幸 橋本 明美 新浪 千加子 伊藤 俊之 丸山 正隆
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.303-310, 2005-03-05
参考文献数
19
被引用文献数
9

1998年1月から2002年12月までの5年間に当院で経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)を施行した65歳以上の178例を対象とし,後ろ向きコホート解析を行った.術後7日以内の周術期死亡率は1.7%,30日以内の早期死亡率は5.9%,1年生存率は61.4%であった.術前のAlb,T-chol,ChE値が良いと生存率も有意に高かった.多変量解析では悪性疾患,T-chol値が予後に有意に関わっていた.術後の栄養状態の改善は有意だが限界があった.PEGは患者の状態から予測される予後や危険性を把握したうえでその適応の有無が決定されるべきであり,患者の長期生存とQOL向上の両立を考えることが重要である.<br>
著者
市田 隆文 岩月 舜三郎 各務 伸一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.1-7, 2001-01-05
参考文献数
2
被引用文献数
2

脳死肝移植適応評価委員会での脳死肝移植の選択基準に関しては,欧米のそれと異なり対象疾患に優先順位を与えた.このことより肝移植医療に必要な公平差を欠くとの指摘を受けてきた.健全なる肝移植医療を立ち上げるための善意の操作であったが,UNOSの基準と合わせてもはや実状に合わなくなってきていることも事実である.アルコール性肝硬変より圧倒的に多い肝炎ウイルスによる肝疾患を念頭に置き,UNOSの選択基準を本誌で簡潔に紹介し,わが国における脳死肝移植の選択基準の改訂の必要性を記した.
著者
鈴木 康夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.1897-1904, 2010-12-05
参考文献数
23
被引用文献数
2

抗生物質投与後に菌交代現象によって各種腸炎が引きおこされる.抗生物質起因性腸炎として,<i>Clostridium difficile</i>関連性腸炎,急性出血性大腸炎,そしてMRSA腸炎がある.急性出血性大腸炎は,比較的若年の女性に生じる特徴を有し,原因となる抗生物質を中止することにより比較的速やかに症状は改善し予後は良好である.偽膜性大腸炎を典型像とする<i>Clostridium difficile</i>関連性腸炎は,抗生物質投与後の菌交代現象によって感染した毒素産生株<i>Clostridium difficile</i>の増殖により発症する.MRSA腸炎は抗生物質投与後の菌交代現象により既感染MRSAが増殖し,腸管感染し発症する.ともに重篤な基礎疾患を有し長期入院中の高齢者に発生しやすい特徴を有し,発症後重篤な経過を辿る恐れがあり速やかな対応が必要である.<br>
著者
今村 正之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.365-373, 2010-03-05
参考文献数
27
被引用文献数
7

消化器神経内分泌腫瘍は比較的発生頻度が低く,各施設での経験数に限りがあるために診療の標準化が進まなかったが,近年の局在診断法の進歩にともない切除例が増加するに連れて,興味深い病態が解明されてきた.治療面の進歩も著しいものがあり,国際的な関心が高まりつつある.2003年にNETのWHO病理分類が改定され,またカルチノイドという消化管NETに与えられていた名称が消えた.新しい局在診断法として1987年に著者らが開発した選択的動脈内刺激薬注入法(SASI Test)とソマトスタチン受容体シンチグラフィー(SRS)が国際的に標準的診断法として普及しているが,SRSは本邦ではいまだに承認されず,診療上に支障が出ている.外科的&middot;内科的治療法の標準化に加えて,分子標的治療薬の治験が始まり,ソマトスタチン療法の進歩が患者に恩恵をもたらしつつある. <br>
著者
武田 宏司 武藤 修一 大西 俊介 浅香 正博
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.1586-1591, 2010-10-05
参考文献数
24

機能性ディスペプシア(FD)治療に用いられる代表的な方剤である六君子湯は,食欲不振に対する効果を手がかりとして,そのユニークな作用機序の解明が進んでいる.六君子湯の作用機序としては,従来,胃排出促進および胃適応弛緩の改善が知られていたが,摂食促進ホルモンであるグレリンの分泌を亢進させることがごく最近明らかとなった.シスプラチンや選択的セロトニントランスポーター阻害薬(SSRI)投与は,消化管粘膜や脳内のセロトニンを増加させ,セロトニン2Bあるいは2C受容体を介してグレリン分泌を抑制することがその副作用の発現に関わっているが,六君子湯はセロトニン2Bあるいは2C受容体に拮抗してグレリン分泌を改善する.六君子湯のグレリン分泌促進作用は,FDに対する効果に関わっている可能性も示唆されている.また,六君子湯は高齢動物の視床下部でレプチンの作用と拮抗することにより食欲を改善させる機序も有しており,今後さらに多くの作用点が見出される可能性が高い.<br>
著者
田中 治 西村 恒彦 山上 卓士 一条 祐輔 大内 宏之 大野 浩司 光本 保英 森 敬弘 吉川 敏一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.703-711, 2010-05-05
参考文献数
33

画像診断装置の性能向上および造影剤の進歩により,肝細胞癌の画像診断は近年飛躍的に進歩した.2008年1月に肝細胞特異性造影剤であるGod-EOB-DTPA(gadolinium ethoxybenzyl diethlenetriamine pentaacetic acid,ガドキセト酸ナトリウム;EOB・プリモビスト<sup>&reg;</sup>)が本邦で発売され,約2年が経過した.肝細胞機能評価のみならず,これまでの細胞外液性MRI造影剤の性能を併せ持っているために1回の検査で血流評価と肝細胞機能評価が同時に可能となり,肝細胞癌の診断,特に境界・前癌病変と癌との鑑別においてその有用性が期待される.<br>
著者
横山 顕 大森 泰
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.1745-1752, 2013-10-05
参考文献数
36

飲酒,喫煙,野菜果物不足,やせ,頭頸部癌既往,アルコール脱水素酵素1B(ADH1B)低活性型とアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)ヘテロ欠損型は,食道癌の危険因子である.多発ヨード不染帯,メラノーシス,MCV増大もリスクを高める.ALDH2欠損でアセトアルデヒドが蓄積し,ADH1B低活性でエタノールへ長時間曝露される.両遺伝子型+飲酒+喫煙で357倍のリスクとなる.ビールコップ1杯で赤くなるか,現在と過去の体質をたずねる簡易フラッシング質問紙法は,精度90%でALDH2欠損を判別し,飲酒・喫煙・食習慣と組み合わせた食道癌リスク検診問診票の高スコア群の癌の頻度は高い.予防の新戦略となる遺伝子解析の普及が望まれる.<br>
著者
田村 俊明 鈴木 史朗 大和 明子 須藤 一郎 原田 容治 望月 衛
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.8, pp.1043-1047, 2000-08-05
被引用文献数
2

症例は39歳女性,皮膚黄染を主訴に入院となり肝機能障害とIgMHA抗体陽性を認め,急性A型肝炎と診断された.40日で軽快退院したが,退院後17日目に再度肝機能が増悪し再入院となった.抗核抗体陽性,高ガンマグロブリン血症を認め,肝生検では慢性活動性肝炎像を呈し自己免疫性肝炎と考えた.プレドニゾロン投与が著効し経過良好で現在も外来通院中である.急性A型肝炎を契機に診断した自己免疫性肝炎の報告例は少なく,我々は国際診断基準を含め自己免疫性肝炎の診断について若干の文献的考察を加え報告した.
著者
柳澤 昭夫 加藤 洋
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.101, no.10, pp.1061-1071, 2004-10-05
被引用文献数
6

膵癌 (通常型浸潤性膵管癌) は膵管上皮を起源とするが, その発生過程には膵管上皮よりいきなり異形の強い癌病変として発生する過程de novo carcinoma (de novo ca) と腺腫を経て発生する過程adenoma-carcinoma sequence (ACS ca) とがある. de novo caはさらに発生してすぐに周囲へ浸潤する型intraductal non-spreding typeと膵管内をある程度広がったのちに浸潤する型intraductal spreading typeがある. 前者の膵管内の組織型像は平坦な増殖を示す癌 (Flat type) であり, 後者は丈の低い乳頭性増殖を示す癌 (Low papillary type) である. ACS caの大部分は膵管内乳頭性粘液腫瘍 (IPMN) であり, 遺伝子分析によってもACSの関係が証明された. この癌はたとえ浸潤癌であっても強い線維化内の浸潤でありその予後は良い.<BR>膵癌の発生母地は粘液細胞過形成であることが遺伝子分析により明らかとなったが, この上皮がどのくらいの期間後に癌化するか, またこの上皮からどのくらいの頻度で癌が発生するかの問題が残っている.
著者
村松 友義 丸高 雅仁 松三 彰 渡邊 直美 村上 和春
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.808-813, 2002-07-05
被引用文献数
6

症例は35歳,女性.ダイエット目的でビール酵母を2カ月間服用していたが上腹部痛,右背部痛,下痢が出現したため来院した.来院時末梢血白血球9500/mm<SUP>3</SUP>で好酸球が39%を占めていた.腹水および胃,十二指腸の生検で多数の好酸球を認め好酸球性胃腸炎と診断した.ステロイド投与により症状および検査所見は速やかに改善した.本症例の免疫学的所見を提示するとともに若干の文献的考察を加えた.
著者
藤田 淳 稲垣 恭孝 米井 嘉一 大塚 征爾 中澤 敦 塚田 信廣 鈴木 修 桐生 恭好 水野 嘉夫
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.472-477, 2000-04-05
被引用文献数
2

症例は45歳男性の特発性ヘモクロマトーシス.皮膚色素沈着,糖尿病,肝線維化,下垂体性腺機能低下を呈しHLAはA11,A31(19),B46,B60(40),Cw1,Cw7でHFE遺伝子変異(C282Y,H63D)を認めなかった.更にHLAの記載のある本邦報告25例につき文献的に検討した結果欧米症例で高率なHLAA3,B7,B14の頻度は本邦症例では極めてまれであり人種差が認められた.
著者
上田 城久朗 能丸 真司 永田 夏織 梶井 信洋 大村 良介 原田 俊則 鈴木 伸明 鈴木 道成 森岡 秀之
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.33-37, 2000-01-05
被引用文献数
17 13

症例は73歳女性.朝食2時間後より突然,上腹部痛出現.腹部CT検査と小腸造影検査より空腸憩室を合併した小腸軸捻転症と診断した.入院約1カ月後,手術を施行したが,小腸全体が反時計回りに720°捻転しており,空腸憩室はTreitz靱帯から約25cmの部位の腸間膜よりに存在した,原発性小腸軸捻転症は,本邦ではまれな疾患で術前診断されることは少ないが,本症例では典型的なCT像より術前診断が可能であった.