著者
小川 高 岩田 涼子 小川 ひとみ
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.e1-e4, 2023 (Released:2023-01-11)
参考文献数
10

猫の口腔内悪性神経鞘腫に対してカルボプラチン混和リドカインゼリーの局所注射とオルソボルテージ照射の併用療法を実施した.局所注射に起因する有害症状は認められず,腫瘍は顕著に縮小した.治療開始時からPEGチューブ栄養管理を行い,全身状態の改善を行った.今回用いた併用療法はオルソボルテージ照射単独治療と比較して効果的である可能性があるが,症例の集積による検討が必要である.
著者
狩野 安正
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.414-417, 1992-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

患犬は, 発症翌日に来院した.前日の朝から食欲・元気なく, 流涎・腹痛・吐き気を主訴としていた.初診から6時間後に嘔吐が出現し, 沈鬱状態の進行がみられ7時間半を経過して瘋痒感が出現し, 右後肢で右肩甲関節後方を瘋くような動作を示した.8時間後に熱発と意識の混濁がみられた.13時間後に心機能の低下がみられ, 血液検査所見ではCPK, LDH, GOT, ALP, PCV, WBC (好中球) の著しい増加とβ-グロブリンの減少が認められた.嘔吐は断続的にみられ白色泡状から瀕死期には黒褐色水様となった.初診から21時間後に死亡したので, 病理組織学的検査, 細菌学的検査ならびにウイルス学的検査を行った.延髄に核内封入体をともなった非化膿性脳炎像が認められ, 肺からオーエスキー病 (AD) ウイルスが分離された.以上のことから, 本症例をADと診断した.
著者
今泉 麻美 佐藤 常男 白井 弥 雨森 隆 桑原 正人 小坂 俊文 田中 茂男
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.396-399, 2000-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
18

犬2例 (症例1: ゴールデン・レトリーバー, 雄, 9歳; 症例2: 雑種, 雄, 11歳) の前立腺に発生した腫瘤を病理学的に検索した. 症例1は前立腺上皮細胞に類似した円形~楕円形の細胞のシート状増殖から成り, 多数の核分裂像を伴っていた. 症例2では異型性の強い腺上皮の腺房内増殖が認められた. 抗ヒト前立腺特異抗原に対する免疫染色で, 症例1のほとんどの腫瘍細胞は陰性を, 症例2は大部分の腫瘍細胞が陽性を示した. 電顕的に, 症例1の腫瘍細胞の核は大型で異型性が認められ, 細胞小器官の乏しい細胞と豊富な細胞とが混在していた. 腺腔構造は認められなかった. 症例2の細胞は核の異型性は軽度で, 明らかな腺管を形成し, 細胞質内には遊離リボソーム, 分泌顆粒が認められたが, 他の細胞小器官は乏しかった. 症例1, 2ともに細胞間に接着斑が認められた. これらの所見から症例1は合胞体型前立腺癌, 症例2は腺房内増殖型前立腺癌と診断された.
著者
壁谷 英則 藤田 雅弘 森田 幸雄 横山 栄二 依田 清江 山内 昭 村田 浩一 丸山 総一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.70-74, 2008-01-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

全国23都道府県のペットのグリーンイグアナについてSalmonella, PastemllaおよびStaphylococcusの保菌状況を検討した.Salmonellaは, 98頭中17頭 (17.3%) の糞便から分離された. 分離株49株中47株は, 生物群IVのS. enterica subsp. houtenaeであり, わが国のイグアナが原因と思われる乳児サルモネラ症の原因となった血清型45: g, Z51:-が3株, 生物群IのS. enterica subsp.entericaも2株分離された. 陽性個体17頭由来の17株中9株 (52.9%) はstreptomycin耐性株であり, また, すべての株は上皮細胞侵入因子 (invA) およびエンテロトキシン (stn) 両遺伝子を保有していた.P. multocidaは89頭中3頭 (3.4%) から, また, S. aureusは18頭 (20.2%) の口腔からそれぞれ分離された.
著者
牧野 壯一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.897-901, 2001-12-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
5
著者
入江 充洋 鵤 満 伊藤 良一 三好 拓馬 栗谷川 優子 藤木 範之 チェンバーズ ジェームズ 内田 和幸
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.503-507, 2021-08-20 (Released:2021-09-20)
参考文献数
10

トラネキサム酸(以下,「TXA」)は,本邦では安全性の高い催吐薬と認識されており,犬の催吐薬として多く用いられている.しかし,TXAを用いた催吐処置後に重篤な有害事象を呈した2例を経験した.1例は投与数日後にショック状態となり死亡し,病理組織学的検査により肺動脈血栓,肝臓のび漫性うっ血及び腎臓にアミロイド沈着が認められた.他の1例は,TXA投与後にてんかん重積状態を発症したが,数日間の抗てんかん薬の投与にて改善した.そこで,TXAによる催吐処置後の有害事象発生状況を把握する目的で,臨床獣医師にアンケート調査を実施した.その結果,15%の獣医師が有害事象を経験していた.最も多い有害事象は痙攣であった.
著者
伊藤 哲郎 茅沼 秀樹 斑目 広郎
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.e14-e17, 2022 (Released:2022-01-15)
参考文献数
7

16歳齢,去勢雄の雑種猫が食欲不振,体重減少を主訴として来院し,頸部腹側に2cm大の皮下腫瘤が触知された.血液検査において総カルシウム及びイオン化カルシウムの高値を認めた.症例のintact上皮小体ホルモン(parathyroid hormone:PTH)は基準範囲内であったが,実験的に高カルシウム血症を誘発した健常猫において報告されたintact PTHと比較すると高い値であり,血清イオン化カルシウム濃度に対応したPTH抑制調節の破綻が推測された.画像検査により頸部腫瘤は腫大した上皮小体であることが疑われた.外科切除した腫瘤は病理組織検査において上皮小体腺腫と診断された.術後に総カルシウム値及びイオン化カルシウム値は速やかに正常化し,2年間の観察期間に再発は認められなかった.
著者
内田 明彦 内田 紀久枝 川上 泰 村田 義彦
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.715-721, 1999-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
49
被引用文献数
3 6

1990~1998年に神奈川県中央部と東京都西多摩郡日の出町に生息するタヌキNyctereutes Procyonoides umerrinusの内部寄生虫を調査した. 45頭中44頭 (97.8%) に蠕虫類の寄生が認められ, 線虫類11種 (タヌキ回虫Toxocara tanuki, クシマタヌキ鉤虫Ancylostoma kuskimaense, ミヤザキタヌキ鉤虫Artkrostoma miyazakiense, 猫糞線虫Strongyloides Planiceps, 犬鞭虫Trichuris vulpis, 犬糸状虫Dirofilaria immitis, Capillaria felis-cati, C. putorii, Tetragompmms melis, Molineus lagerae, Trichuris sp.), 吸虫類4種 (横川吸虫Metagonimus yokogauai, 浅田棘口吸虫Eckinostoma hortense, Concinnum ten, Stepkanoprora sp.), 条虫類2種 (マンソン裂頭条虫Spirometra erinaceieuropaei, 瓜実条虫Dipylidium caninum) の計17種で, 1頭あたりの寄生種は2~9種であった. ヒトに感染する可能性のある種は9種であった.
著者
唐木 英明
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.391-401, 2007-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
48

1986年, 英国において牛海綿状脳症 (BSE) が発見され, 1996年に英国政府は, BSEが人間に感染して, 新変異型クロイツェルフェルトヤコブ病 (新型ヤコブ病) を引き起こした可能性を認めた. 牛から牛への感染を防ぐための肉骨粉禁止と, 牛から人への感染を防ぐための危険部位の食用禁止という2つの対策が適切であったために, BSEも新型ヤコブ病もその数を減らしたが, 感染から発病までの問に長い潜伏期があるので, 対策の効果が現れるのに時間を要した. その間のリスクコミュニケーションの失敗から, 英国民の政府に対する信頼は低下した. 政府は「安心対策」として, 30ヵ月齢以上の牛をすべて殺処分にする「30ヵ月令」を実施し, 多額の税金を投入した. 日本でも2001年にBSEが発見され, 不適切なリスクコミュニケーションのために, 不安が広まった. 日本政府は, 肉骨粉の禁止と危険部位の除去に加えて, 「安心対策」として食用牛の全頭検査を開始した. 検査では弱齢牛のBSEを発見できないので, 陰性になった牛の中にBSEがいる可能性が高いのだが, 国民の間には「すべての牛を検査して, 政府が安全を保証しているのだから, BSEに感染した牛を食べることはない」という誤解, いわゆる「全頭検査神話」を生み出すことになった.
著者
岩崎 久夫 金子 憲雄 小野 承行 大久保 薫 磯田 政恵 岩瀬 賢介 安藤 泰正
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.382-385, 1973-07-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12

Liver cirrhosis was detected at a high rate from among pigs brought to the Omiya Abattoir, Saitama Prefecture, by a swine husbandry man over a period of January to May, 1969. The affected pigs presented no marked gross changes other than liver cirrhosis. Histologically, the liver showed thickening of the stroma and formation of septula, paeudolobules, or pseudo-biliary ducts. Hepatic cells were mostly affected with focal vacuolar degeneration, necrosis, and colliquation. Large nucleated or polynuclear cells appeared. In the kidney, vacuolar degeneration occurred to epithelial cells of some uriniferous tubules, and large nucleated and polynuclear cells appeared. The ovary had follicular cyst.
著者
小林 弘明 久保田 泰徳 山田 博道 保本 朋宏 沖田 美紀 平田 晴美 金森 久幸 豊田 安基江
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.15-20, 2003-01-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

平成12年3月, 黒毛和種繁殖牛を9頭飼育する農家で, 畜主が牛舎近くで枝打ちした木の枝を敷料として使用したところ, 約12時間後に5頭が神経症状を示し, そのうち3頭が約60時間以内に死亡した. 病性鑑定の結果, 第一胃内容からシキミ葉を多数認め, また, シキミ葉から0.5mg/gのアニサチンを検出した. さらにシキミ葉抽出液をマウスに投与したところ, 立毛, 嘔吐様症状, 開脚姿勢, 歩様異常等の神経症状を認めたことから, 本症例をシキミによる中毒と診断した.
著者
入江 充洋 来田 千晶 石田 卓夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.468-473, 2016-08-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

国内でおもに1次診療を実施している動物病院26施設(北海道2,東北3,関東11,中部2,近畿3,四国1,九州2,沖縄2)に初診で来院した犬及び猫の腫瘍の発生状況を調査した.犬では初診19,870例中1,902例(9.6%),猫の初診6,008例中334例(5.6%)が腫瘍症例であった.確定診断された悪性腫瘍は犬では肥満細胞腫,リンパ腫,悪性黒色腫が上位を占め,猫では,リンパ腫,悪性乳腺腫瘍,扁平上皮癌が上位を占めた.腫瘍症例のおよそ50%が腫瘍を主訴に来院していた.犬と猫の両方で,高齢で悪性腫瘍が多い傾向がみられた.また犬では,大型犬種に悪性腫瘍が多い傾向がみられた.
著者
畠添 孝 中西 信吾 木村 慶純 三角 一浩
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.511-515, 2012-07-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
9
被引用文献数
3 4

種牡馬の死亡原因や発生状況等に関して詳細に調査・解析した報告は見あたらない.そこで過去45年間に死亡したサラブレッド種牡馬53例の死亡状況について回顧的な調査を実施した.死亡状況としては突然死が16例と最も多く,消化器疾患による急性腹症死が13例,骨折等の運動器損傷後の安楽殺が11例と続いた.突然死の発生は1月と12月がそれぞれ4例と3例,3~6月は各月2例であった.またその発生場所は,運動場と種付場がそれぞれ5例と4例,厩