著者
深瀬 敦 藤田 忠寛 青木 英夫 玉置 勝司 山村 雅章 山田 重雄 渡辺 英男 盛重 正仁 兼松 恭規 遠藤 ゆかり
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.1092-1101, 1992-10-01
被引用文献数
3 1

近年,コンピュータ支援による補綴物製作の手法が広く検討されているが,当講座においても,1984年頃よりCAD/CAM補綴のシステム化に関する課題に着手した.歯冠補綴物の変遷を考えると,CAD/CAMによる加工は"第三の波"ともいえるが,現在ではすでに製作方法も実用化の段階に入っている.しかし,補綴物は一般工業製品とは異なる多くの条件をもつので,その特殊性を考慮した独自のソフトウェアの構築が必要である.本論文は,CADによる歯冠形態設計の手法として,マスターモデルの修正法,支台歯マージンの設定法,エルミート曲線による軸面形態付与法について検討したものである.
著者
西本 公紀 高島 史男 多田 純夫 宮内 修平 堤 定美 丸山 剛郎
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.819-829, 1987-08-01
被引用文献数
12

歯冠修復物に対する審美的な要求は, 年々高まってきている. これに呼応して, 種々の材料が開発されており, その1つとして, キャスタブル・ガラス・セラミックスがある. ガラス・セラミックについては, 物性等は明らかになってきている. しかし, 臨床的な破折実験等も少なく, また力学的解析もほとんど行われていないのが, 現況である. 本論文は, コーニンググラスワーク社とデンツプライ社の共同開発による'DICOR'について, 力学的な検討を行った報告である. すなわち, 有限要素法を用い, 咬合力が正常または異常に補綴物に作用した状態を想定し, 応力解析を行い, 破折, 脱離等の可能性の有無について検討した.
著者
山口 泰彦 久恒 泰宏 木村 朋義 小松 孝雪 内山 洋一
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1113-1120, 1995-12-01
被引用文献数
29 9

本論文は最近,咬合の診査に用いられはじめた工業用の感圧フィルムを応用したデンタルプレスケールについて検討したものである.咬合接触部位を診査する上で原理的には咬台紙を用いるのと似ているが,これの特徴は各々の咬合接触部位の接触圧が測定できることにある.したがって,顎の機能異常の診断などにその応用が期待されている.しかし,フィルムの厚さや物性によって,咬合のさせ方によっては本来の接触圧が正確に測定できない場合もあるので,本論文はその使用上の特性を明らかにし,それを踏まえて臨床で有効に使用しようとするものである.
著者
岩並 恵一 石原 正隆 坪田 有史 小林 和弘 松山 喜昭 小久保 裕司 福島 俊士
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.109-113, 1995-02-01
被引用文献数
17 1

日常の臨床における支台築造方法や築造材料の種類について,1977年(昭和52年)と1986年(昭和61年)に実施した調査報告に続く第3報である.特にレジン築造を含む成形材料による築造の頻度に注目したが,前回の28%から8%に減少していた.大学附属病院での調査であるため特殊な環境におけるものとの解釈もあろうが,意外の感は否めない.その他,鋳造体としての銀合金の使用頻度の減少や,合着用セメントとしてのリン酸亜鉛セメントの激減などのデータも得られている.
著者
石井 立人
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.363-371, 1994-04-01
被引用文献数
5

ヒトの頭部の側方傾斜に伴う,下顎位の偏位や咀咽筋の筋電図の応答についての報告は多数ある.しかし筋電図の反射性の応答については,緊張性頚反射や緊張性迷路反射が実験的な確証のないまま説明されている.本実験では,側方傾斜に伴って傾斜側外側翼突筋下頭と対側側頭筋後部の活動が冗進するパターンが認められた.そしてこの筋活動パターンが下顎に限局される重力に対応する下顎位の水平的な位置調節としての制御機能としての役割を果たしていることを明らかにした.特に側方体位をとらせて,頚部のみ水平面に対して垂直となるような姿勢,すなわち頚部屈曲位にて,頚部を屈曲させながらも,千顎の側方方向への重力の影響を取り除いた姿勢条件を用いたことがおもしろい.
著者
前田 芳信 栄村 勲 中村 公一 西田 圭 野首 孝祠
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.900-905, 1995-10-01
被引用文献数
14 2 2

近年,咬合と全身の運動機能との関連が注目されてきている.そこで本研究では,高齢者における咬合支持が全身の運動機能の制御,特に平衡調節機能に果たす役割について検討した.特に,従来まで行われてきた静的条件下での平衡度の測定に加え,動的刺激を与えた条件下での応答時間ならびに対称性の計測を行った.その結果,高齢者における咬合支持の有無は,全身の平衡調節機能のなかで,主として静的条件下での平衡調節に関与している可能性が示唆された.
著者
角江 信彦
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1183-1193, 1996-12-01
被引用文献数
10

近年注目されているオールセラミッククラウンのエンプレスは,あらかじめ結晶化されたセラミックインゴットを用いるため,常に安定した強度と寸法精度を得ることを可能にした. 本論文は,このエンプレスによる客観的で優れた色調構築法を確立するために必要な光学特性を製作過程の条件に基づいて検討したものである.その結果,エンプレスは加熱加圧成型ならびに追加焼成に対して色彩学的にきわめて安定した材料であると評価された.
著者
一和多 寿樹
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.652-664, 1986-06-01
被引用文献数
5 5

自然歯に調和した歯冠補綴物を調整するためには,自然歯そのものの色彩を解明することが必要と考え,それを明らかにすることを目的とし,近年開発された分光放射測定装置を応用し,10代後半から20代後半までの男女の上顎前歯について詳細に測定し,L^*a^*b^*表色系において検討したものである。
著者
鈴木 卓哉
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1102-1110, 1996-12-01
被引用文献数
22

咀嚼筋や顎関節に異常があると種々の運動障害が生じるが,その1つに下顎の側方偏位がある.そのため,開閉口時の下顎切歯路は重要な診査事項となっているが,これだけでは十分な診断根拠とはなりえない.この現象を理解するためには,関節円板の動態と顆頭運動を組み合わせて追究することが求められる. 本論文は,関節円板前方転位症例における開閉口時の顆頭運動を解析したものである.開口量は顆頭移動量に依存しており,開口量が45mm以上の場合には関節円板前方転位の影響がほとんどみられないことを示している.
著者
黒崎 俊一
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.588-601, 1992-06-01
被引用文献数
15

総義歯調製において,作業模型は,床下組織に対する解剖学的および補綴学的考慮の払われた口腔粘膜面形態を表現する必要がある.本研究では,形態および被圧変位性が無歯顎者の上顎顎堤に近似した上顎無歯顎シミュレーションモデルを使用し,印象材,トレーの圧接速度および保持圧の変化が,作業模型の形態へ及ぼす影響を断面形状と変位量の変化で検討した.その結果,圧接速度の影響を受けず,保持圧を変化させることによってポストダム部の変位量を調節できるシリコーンラバー印象材が,上顎無歯顎作業模型の粘膜面形態を表現するのに有効な印象材であることが示唆された.
著者
山下 敦 近藤 康弘 藤田 元英
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.1023-1033, 1984-12-01
被引用文献数
35 25

歯科接着性レジンを用いて装着した接着ブリッジ等が, 長期間機能を営むためには, 従来のリン酸セメントによる装着法とは基本的に異なった被着歯面および金属の前処理が必要である. 著者らは先にNi-Cr 系合金と接着性レジンを強固に接着させる金属被着面前処理法を考案したが, 本法は貴金属合金に適していないため, 接着技法を補綴領域に広く発展させることを目的に, 貴金属合金に適した前処理法を種々検討した. その結果, 母合金表面にSn元素を析出させると強固な接着強さと耐求性の得られることがみい出させた. 本報告は, 歯科用金合金と歯科接着性レジンとの接着に関した基礎実験結果について述べたものである.
著者
松田 もと子 永井 成美 折笠 史明 多田 建造 辰巳 浩輝 藤原 麻紀 古川 良俊 石橋 寛二 井上 昌幸
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.588-595, 1994-06-01
被引用文献数
2 1

歯科用金属に起因すると考えられる金属アレルギーが注目されており,その診断にパッチテストが用いられている.しかし,判定は主観に頼り,皮膚の変化を的確,経時的に把握することは困難である.本論文はパッチテストにおける客観的な判定システムを開発することを目的として,パッチテスト後の皮膚色を分光測色し,色彩学的に分析したものである.その結果,皮膚の発赤反応に色彩学的に特徴のある変化が観察された.皮膚の発赤反応を判定する客観的指標を示したものとして興味深い.
著者
横堀 正純 清水 公夫 渡辺 秀昭 小司 利昭 森田 修己
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.249-254, 1996-04-01
被引用文献数
4

補綴臨床やスポーツ歯学において全身運動時における咬合接触や咬合力についての研究はきわめて重要と考えられるが,いまだ十分に明らかにされていない.そこで本研究は,握力発揮時にかみしめを自覚している男性を選択し,デンタルプレスケールシステムを用いて握力発揮時と最大かみしめ時の咬合面積と咬合力を測定し,比較検討した.この結果,握力発揮時のかみしめは最大かみしめ時とほぼ同じかみしめを行っている人が多いが,一部の人はこれと異なったかみしめを行っており,個人差が大きいという知見が得られた.
著者
田端 恒雄
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.461-470, 1992-06-01

昭和8年(1933年)に誕生した日本補綴歯科学会は,平成5年(1993年)に創立60周年を迎える.本学会は歯科の専門学会としては日本で最も長い歴史を有する学会であり,創立以来,補綴学研究と補綴臨床の中心として日本における補綴診療の進歩,発展に多大の貢献を果たしてきた.この機会に,創立以来今日に至る学会の60年の道のりを概観してみたい.
著者
宮島 和臣
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.640-649, 1996-08-01
被引用文献数
21

オールセラミックによる歯冠修復法の1つであるIPSEMPRESS(8)は陶材焼付鋳造冠と比較すると,メタルフレームを使用しないため,より自然歯に近似した光透過性を有する.しかしオールセラミックスの条件や支台歯の色調によっては最終的に装着した際,希望とする色調が得られない場合が多い.この問題点を解決するため,今回,前歯に多く使用されるレイヤリング法における一定の厚みでのデンテイン,エナメルの層の厚さの違いによる色調の影響,さらに支台歯への色調遮断効果について比較検討を行ったので報告する.
著者
石島 勉 平井 敏博 齋藤 実 近藤 ゆかり 平沼 謙二
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.116-125, 1992-02-01
被引用文献数
26 6

近年,コンタクトスポーツにおける顎口腔領域の外傷防止のためにマウスガードの使用が叫ばれている.しかし,マウスガードは咬合機能と密接な関係にあり,不良なマウスガードの安易な装着は顎口腔系のみならず全身への悪影響も懸念されるため,歯科医の十分な注意と管理が必要である.本論文は,各種カスタムメイド・マウスガード材料の厚さと荷重時の動態について検討したものである.
著者
村松 瑞人
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.564-573, 1996-06-01
被引用文献数
4

顎機能障害(TMD)患者の表面筋電図検査でみられる自発放電は,TMDの症状との関連が疑われているが,その発現する環境や臨床症状との関連様相においてはほとんど知られていない.本研究は,正常な機能を営む被験者に,ブラキシズム特にクレンチングを想定したかみしめ耐久試験を負荷し,その結果自発放電が誘発されるか否か,さらに発現したTMD症状を検討し,自発放電と症状の関係に言及している.自発放電の発現と筋症状の関連が明らかにされたことから,自発放電の発現性をパラメータとして,TMD患者の症状の予測,TMD予備群のスクリーニング,治療効果の評価などが可能となろう.
著者
平井 敏博 安斎 隆 金田 洌 又井 直也 田中 收 池田 和博 内田 達郎
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.1261-1267, 1988-12-01
被引用文献数
51 35

The purpose of this study is to evaluate the masticatory function of the complete denture wearers by examining the foods patients can eat with the dentures. A qustionnaire with listings of 35 foods was given to 39 patients who have been wearing newly made denture for 6 months and were asked to select the answer out of the following 5 categories. [figure] 1. Each answer was given a score (2, 1, 0). 35 foods were classified into 5 grades showing the difficulty by each total scores. 2. The "standard masticatory ability of complete denture wearers" was established as the diagnostic criteria by calculating the rate of food-taking ability in each grade. 3. Masticatory ability of each individual was shown as the "masticatory score". 4. Applying this qustionnaire to the alveoplasty case, the rate of food-taking ability and the masticatory score were correlated with masticatory ability and it was suggested that the qustioutnaire was useful for the evaluation of the masticatory function.
著者
後藤 忠正 五十嵐 順正
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.688-695, 1995-08-01
被引用文献数
14 3

義歯の設計概念の変化に伴って,近年パーシャルデンチャー臨床の様相が大きく変わってきている.なかでもリジットサポートに基づくコーヌステレスコープは,装着効果が確実で良好な予後が期待できることから,急速に臨床に普及し定着してきている.このたび,リジットサポートの基礎的検討そしてコーヌステレスコープの紹介,臨床応用および普及に,当初から携わってきた2人が,装着10年以上を経過した症例群を対象に経過の追跡調査を行った.その結果,総じて良好な経過を示しており臨床的な妥当性が確信され,また臨床応用上の多くの示唆が得られた.