著者
山本 鉄雄 小林 文隆
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.696-703, 1995-08-01
被引用文献数
16

マウスプロテクターはボクシング,アメリカンフットボール,アイスホッケーなど様々なスポーツの選手に装着されている.その目的とするところは,選手どうしの衝突などによって引き起こされる偶発症の予防あるいは軽減にあるが,もう1つ,筋力の向上を目指すことがある.しかし,この点に関する見解は,マウスプロテクターが有効であるとするものと,そうでないとするものがあり一定しない.本研究ではこの点を明らかにするため,安定した筋力を発揮できる被験者を選別し,マウスプロテクター装着前後の筋力を測定した.その結果,上肢より下肢の筋肉で効果がでやすいなど興味深い知見が得られている.
著者
吉田 圭一 舟木 和紀 棚川 美佳 松村 英雄 田中 卓男 熱田 充
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.35-40, 1995-02-01
被引用文献数
32 13

歯冠修復の最終補綴処置として使用する合着用セメントは,100年以上にわたってリン酸亜鉛セメントが王座を占めてきた.その後,カルボキシレートセメントとグラスアイオノマーセメントが相次いで開発され,さらに歯質や金属と接着性を有するレジンセメントが登場して,接着ブリッジ以外にもキャスタプルセラミックスクラウンやラミネートベニアなどのポーセレンとの接着にも利用され,それらの用途が急速に広がりつつある.そこで本論文は,従来の合着用セメントとレジンセメントの機械的性質と吸水・溶解量,金銀パラジウム合金に対する接着強さを測定し,材料学的見地からこれらのセメントを比較検討したものである.
著者
沖山 誠司 吉田 実 山本 誠 森井 まどか 野首 孝祠
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.710-717, 1996-08-01
参考文献数
22
被引用文献数
27 5

当講座では,形状と物性が規定された試験用グミゼリーを開発し,義歯装着者の咀咽能率の評価に用いている.一方,咀咽能力が義歯装着者より一般的に優れている有歯顎者に対しては,より硬さの増したグミゼリーを用いた咀咽能率の評価が必要と考えられる.本論文では,硬さの異なる試験用グミゼリーを用い,硬さの違いおよび被験者の咬合接触状態が,咀咽能率診査結果に及ぼす影響について検討し,本診査法が被験者や目的に応じて広く応用できることが示された.今後,この種々の硬さのグミゼリーを用いた咀瞑能率診査法により,被験者の食品咬断能力,補綴治療にょる咀喉機能の回復度の詳細な評価が可能になるものと期待される.
著者
田中 義博 酒井 靖彦 近江谷 尚紀 清野 晃孝 池田 光男 早坂 正博 高橋 健二 田島 篤治
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.991-1009, 1985-10-01
被引用文献数
8

医療の向上,社会福祉の増強とともに高齢化社会が出現しdenture wearerが非常に増える傾向にあるこのなかにあって,高齢者の適切な摂食作業を呼び起こすために,食品の物理的な性質の研究は重要な課題である。特に老人特有の無気力化の防止に咀嚼,いわゆる食行動,摂食作業は日常生活のなかで大きな役割をはたしているものと考える。このような考えから,われわれは,摂食時における総合的な咀嚼研究の展開をめざしているが,今回は基礎的研究として多極食品の咬合破断時の状態を口腔外装置を使用して荷重量-変位量によって捕捉した。
著者
柿本 和俊
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.1143-1156, 1987-10-01
被引用文献数
9 4

レーザ溶接はろう着に比べ作業時間が非常に短い接合方法である. さらに, 共金溶接ができることや作業者によるばらつきが少ないことなどの利点を持っている. したがって, 歯科補綴物の接合方法としてレーザ溶接は有効であるといえる. 歯科でのレーザ溶接に関する研究はこれまでにもいくつか発表されている. これらの研究ではレーザ溶接した歯科補綴物が優れた機械的性質や精度を示したと述べるにとどまり, レーザ溶接条件や溶接部の機械的性質に影響を与える因子については不明な点が多い. そこで, これらの点に関し系統的な実験を行った. 本報ではレーザ照射条件と試料表面状態が溶込み深さと溶融径に及ぼす影響について検討した.
著者
平井 敏博 石島 勉 越野 寿 池田 和博 小西 洋次 昆 邦彦 広瀬 哲也 金子 寛 雪野 英一郎 家城 信良 植木 和宏 岡部 靖
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.114-122, 1995-02-01
参考文献数
11
被引用文献数
11 2

平成5年7月12日に「北海道南西沖地震」が発生し,長期間にわたる避難生活を送る島民の中には,緊急避難時に義歯を紛失した者が多く,不自由な食生活を余儀なくされていた.本研究は,これら被災者に対する義歯補綴処置を中心とした歯科救援活動から,アンケート調査をもとに,災害時における義歯紛失者への対処や緊急援助食料などに関する歯科的問題点および災害発生時の歯科救援活動のあり方について考察した.さらに,3カ月後の予後調査結果をもとに,その使用状況ならびに咀咽機能の回復程度について検討を加えたものである.
著者
早川 巌 今井 基泰 高山 義明 辻 喜之 守沢 正幸 安藤 秀二 米田 豊
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.19-25, 1984-02-01

上顎全部床義歯の装着間と維持安定とは相反する要素も含まれており, 両方を満足させるような義歯を製作することはなかなか困難である. 当教室でも上顎義歯口蓋部を薄床化する試みはいくつか行ってきた. 今回は, 圧印金属床義歯の製作法を改良することで装着感を向上させようと試みた. その結果, 近年実用化された接着性レジンの導入, それに伴う床材料としてのステンレス鋼の再選択, 圧印形成法の改良などにより, 義歯の維持安定を低下させることなく装着感を向上させ, しかもその製作過程を簡素化させるシステムを開発し, 実用化することができた.
著者
喜多 誠一 野首 孝祠 安井 栄 北森 喜美恵
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.1152-1161, 1993-12-01
被引用文献数
1

現在,義歯床の製作において,数多くの特長を備えている注入型レジン重合法が臨床的に広く用いられているが,これまでの埋没方法においては重合操作中の人工歯の移動や咬合高径の低下などの問題点も指摘されている.その対策として,本教室では人工歯の固定をより確実にする目的で,低膨張硬石膏をコアとする注入型レジン重合法を開発して,良好な臨床成績を得ている.本研究は,この低膨張硬石膏コア法の重合操作中における人工歯の垂直および水平変位量にっし)て,また義歯床の適合性について,レジン床との結合様式の異なる陶歯とレジン歯のそれぞれを部分床義歯に用いた場合を比較した結果,いずれの場合も良好な成績が得られたので報告する.
著者
石上 惠一 星野 浩之 武田 友孝 月村 直樹 高山 和比古 青野 晃 大岩 陽太郎 濱田 久 島田 淳 片山 幸太郎 大木 一三
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.481-487, 1992-06-01
被引用文献数
16 2

最近,スポーツ医学の一分野として,スポーツ歯学が注目されつつある.これは顎口腔系の状態と全身状態が,密接に影響しあっていることから当教室ではこれらを客観的,生理学的および科学的に探究することを目的とし,検討を行っている.本研究は,その1つとしてスポーツの中で,その種目により静的な基本姿勢,"゜構え"が要求されるアーチェリー競技において,レジンスプリントを装着し,そして咬合させることにより得られた状態とその挙上量の変化とが"的"′を捕らえるときの"構え"の安定性,すなわち重心動揺にどのような影響を与えるかを検討するため,まずその基礎的一資料を得る目的で行ったものである.
著者
井上 昌幸
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.1127-1138, 1993-12-01
被引用文献数
12 8

今年度から本誌に「依頼論文」欄を新設しました.そのために編集委員会の中に「企画小委員会」を設け,本学会で以前発表されたシンポジウムなどから特に1.トピック的なテーマ,2.総説的で系統的なテーマを決定し,代表執筆者に原稿のご執筆をお願いして本誌に順次掲載することになりました.したがって,本論文は,いわばこれらの企画の第一号であり,以前井上先生により報告された宿題講演の主旨をまとめられたものであります.金属アレルギー問題はタイムリーなテーマであり,本論文には日常の補綴臨床にたずさわるわれわれ臨床家にとってきわめて有意義な情報が提示されています.本研究の代表者である井上先生ならびに共同研究者の諸先生方のご努力に対して改めて敬意をします.
著者
重本 修伺 坂東 永一
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.379-389, 1996-04-01
被引用文献数
24 3

ブラキシズムは顎機能障害との関連で特に強い関心がもたれており,筋電図等を利用した多くの研究がある.しかし,肝心の咬合接触については適当な方法がなかったこともありほとんどが解明がすすんでいない.本研究では夜間睡眠時にどの歯のどの部位でブラキシズムを行っており,その時関節窩と顆頭の関係はどのようになっているかを調べることのできる顎運動測定器の開発を目指したものである.郡らが報告している磁気位相空間方式顎運動測定器を基にこれを発展,改良したところ,この目的に適う測定器を開発することができた.今後,本測定器の応用によりブラキシズムに関する多くの知見が得られると期待できる.
著者
田中 みか子 江[ジリ] 貞一 河野 正司 中島 正光 小澤 英浩
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.806-811, 1996-08-01
参考文献数
69
被引用文献数
4

近年,日本では急速に高齢化社会を迎えつつあり,閉経後骨粗顆症は,歯科臨床領域においても注目されている.特に顎関節部に対する骨粗蛎症の影響を明らかにすることは,骨粗耘症と,顎関節症をはじめとする咀咽機能の低下との間に関連性が考えられることから重要である.そこで本研究では卵巣摘出ラットを用いて,エストロゲン欠乏が下顎関節突起に及ぼす影響を明らかにするため,骨密度測定および軟X線写真の2値化画像解析を行った.画像解析の結果から,エス1・ロゲン欠乏により下顎関節突起の骨形成が抑制されることが明らかとなり,歯科領域においても閉経後骨粗胤症に対する注意が必要であることを提唱している.
著者
福島 俊士 青山 繁 簡 章二 中村 幸博 伊波 侃
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.175-181, 1985-02-01
被引用文献数
2

歯型彫刻の目的は,立体的なものを思い浮べそれを石膏棒に再現することで,これが果して歯科技術の習得に役立つものかということと,この技術がくり返しの練習により身についたものになって行くかが,教育現場の人にとって興味あるところである。本研究は,5年次,6年次の同一人が彫刻した歯型彫刻の作品をみて,その1年10ヵ月間にどんな変化が生ずるかを130人の学生を対象に調査観察したものである。作品の判定者には,第1報で評価の安定している3人の指導者を選んでいる。その結果,5年次,6年次間では明らかに進歩がみられており,単に歯型彫刻のくり返し習練のみ怒らず,他の実習で蓄積した知識も反映しているためと考えられる。
著者
平野 恭吉
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1142-1153, 1995-12-01
参考文献数
22
被引用文献数
3

口腔機能における口唇・頬などの口腔周囲軟組織の果たす役割は大きい.今後高齢化社会へ移行するに従い需要が高まると考えられる大型義歯には,これら軟組織との機能的調和が要求される.この観点がら当教室では軟組織の挙動を組織圧と変位の面から検索を行ってきた.本研究は口唇・頬の機能を把握する上で重要とされる1」角点に着目し,正常有歯顎者における各種食品咀咽時の口角の動きを3-DAutoTrackingSystemによって三次元時系列データとしてとらえ,同時計測した下顎運動とともに検討を行い,口唇運動が食塊形成にいかに関与しているかを考案したものである.
著者
豊田 將盟
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.433-441, 1996-06-01
参考文献数
41
被引用文献数
9 1

歯科臨床において,顎口腔系の状態変化などによる自律神経機能に及ぼす影響を評価することは,顎頭蓋機能異常患者などの診断および患者の不定愁訴に対する改善を把握する一助として,意義あるものと思われる.本研究は,医科の分野で自律神経機能の1つとして応用されている指尖容積脈波および心電図を用いて,顎口腔系の不調和による自律神経機能への影響を交感神経系,副交感神経系の両面から評価するにあたり,その有用性について検討を行ったものである.
著者
中本 宏 杉沢 肇 佐藤 友彦 島田 和基 五十嵐 孝義 深瀬 康公 西山 實
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1084-1089, 1996-12-01
参考文献数
5
被引用文献数
3

歯冠修復物マージンの支台歯フィニッシュラインに対する適合性の良否は,その予後を左右する重要な因子である.本研究は,研究者によりまちまちに分類,表現されているこの適合状態を,その観察および測定するための方法,装置の進歩に伴い,これらを整理,統合し,より合理的に分類,命名することと,修復物の適合状態の観察,測定のために走査型レーザー顕微鏡の有用性を検討することを目的とした. 適合状態は,(1) Ideal,(2) Open-Closed,(3) Extra-Lined-Intra,(4) Overlapped,の4つの評価基準で,(1) Ideal,(2) Open-Extra,(3) Open-Lined,(4) Open-Intra,(5) Open-Extra-Overlapped,(6) Closed-Extra,(7)Closed-Intra,(8) Closed-Extra-Overlappedの8つの適合状態に分類,命名した.また,走査型レーザー顕微鏡はきわめて合目的性の装置であることが実証された.