著者
小山 淳
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.10, pp.746-755, 1997-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10

昭和52年に全国的規模の市販清酒調査が国税庁鑑定企画官室と各国税局鑑定官室によって開始されてから平成8年で20年を経過した。調査結果はその都度発表され, 消費者が購入する時点での酒質を知る貴重なデータとして活用されてきた。今回は, 級別制度が廃止された平成4-7年度のデータを中心に, 主力製品, 吟醸酒, 純米酒, 本醸造酒ごとに紹介していただいた。今後の清酒の商品設計を考えるうえで, 貴重な基礎デ地タであり大いに活用できる内容と思われる。
著者
平田 大六 岡崎 直人
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.905-911, 1999-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14

最近, また酒の歴史を感じさせる出来事があった。新潟県関川村渡邉邸の土蔵から, 宝暦の古酒が発見されたと言うことである。本稿では, 歴史的な背景を踏まえ, 本古酒の成分値から見る, 造られた当時の酒について推論していただいた。
著者
高野 博幸
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.88-94, 1989-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

朝食のパンの香りと風味は, 人生の幸せを感じさせる。このパンの香りと風味は, パン屋の深夜作業からもたらさせる。パン製造業の従業員数別工場数をみると, 従業員5人未満が全体の53%, 従業員10人までの工場が全体の74%で圧倒的多数が中小企業である。パン屋の作業形態改良法として冷凍生地製パン法が工夫されているが, 通常のパン酵母は冷凍障害を起こし発酵力が下がる。これを克服したバイオテクノロジーとして, 冷凍耐性酵母が1970年代に日本で発見された。冷凍耐性のしくみも次第に明かにされつつあり, 工場生産への応用もはじまっている。凍耐性のしくみも次第に明かにされつつあり, 工場生産への応用もはじまっている。バイオテクノロジーが工業生産システムの改変をもたらしたよい例として, やさしく解説していただいた。
著者
佐々木 定
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.2, pp.84-91, 2005

日本経済に明るい見通しを期待する発表が出始めているが, 酒類業界においては酒類の総消費数量が減少傾向を示しており, 消費の伸びが期待できない材料が多く見受けられる。<BR>そこで, 総務省の家計調査を基に消費者の嗜好の変化や消費行動などについて分析を試みたところ, 若者の酒離れ, 低価格商品へのシフトといった傾向が顕著となっている。<BR>将来に向かって酒類市場が縮小していくと思われる中で, 流通を含めた酒類業界全体で業界構造を見直し, 低価格商品への依存から脱却して, 収益を重視した取り組みを考える時期が来ていると提唱している。
著者
宇都宮 仁 磯谷 敦子 岩田 博
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.12, pp.882-889, 2004-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
3

消費者に有用な情報を提供することを目的に, 専門家パネルの官能評価結果と分析値を基に重回帰を行い, さらにこの回帰式を単純化して甘辛区分判別式を定義した。AV=G-AAV: 新甘辛度, G: グルコース (g/dl), A: 酸度 (ml)(AV: 0.2以下を辛口, 0.3から1.0をやや辛口, 1.1から1.8をやや甘口, 1.9以上を甘口)清酒の飲用経験が豊富なパネル及び飲用経験が少ないパネルにより市販清酒の官能評価を行い, 甘辛表示と甘辛評価が異ならないことを確認した。
著者
岩野 君夫 三上 重明
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.791-796, 1988-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
35
被引用文献数
4 5

麹造りにおいては, 清酒では黄麹菌が, 焼酎では白麹菌が, また泡盛では黒麹菌が使用されるが, 各麹菌は酵素力価やpH安定性など, それぞれ異なった特徴を有している。本稿では, 本格焼酎の製麹に用いられる「白麹菌」にスポットをあて, あらゆる角度から他の麹菌と比較検討した結果について解説していただいた。各麹菌の持つ特徴が, 詳細なデータで示されており興味深い。
著者
染谷 光男
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.12, pp.974-979, 1999-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7

醤油の国際化が進んでいる。キッコーマンは1973年に米国工場を建設したのを皮切りにアジアに2拠点, さらには97年ヨーロッパ工場, 98年米国カルフォルニア工場へと海外での生産拠点を設けている。今回はオランダのヨーロッパ工場建設の経緯と国際戦略, 特にヨーロッパを中心に事業展開の経緯を解脱していただいた。
著者
鮫島 吉廣 中島 雅樹
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.615-620, 1998-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

サツマイモは糖質原料と澱粉質原料の特性を併せもつユニークな醸造原料であるが, これまではもっぱら蒸留酒に利用されるに留まっている。そこで, 新しい醸造酒の開発に取り組んでいる筆者から「サツマイモ発泡酒」についてご紹介いただくことにした。
著者
松尾 眞砂子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.9, pp.619-626, 1996-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14

テンペはインドネシアが世界の食文化に貢献する最高のものとされ, 海外の研究者からも注目されてきた。そのテンペ菌を利用して発酵したおからの食材としての加工適性, 保存性および機能性について解説していただいた。
著者
栗林 喬 金桶 光起 渡邊 健一
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.9, pp.624-631, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
18
被引用文献数
1

セルレニン耐性を指標としたカプロン酸エチル高生産酵母の育種方法は,日本醸造協会をはじめ,各県公設研究機関,酒造メーカーなどで幅広く利用されている。しかし本法による酵母を用いた吟醸酒は,カプロン酸によるオフフレーバーが問題となる場合もある。著者らは,カプロン酸エチル高生産酵母を用いた吟醸酒において総脂肪酸の大部分をカプロン酸が占めるという知見に基づき,酵素法によるカプロン酸の定量法を設定するとともに,本法がカプロン酸エチル濃度の推定にも有効であることを示した。製造現場でも利用できる簡易な方法なので,吟醸酒の品質管理の参考にしていただきたい。
著者
入江 元子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.7, pp.440-446, 2010 (Released:2016-01-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

食品由来の特定成分はアルコール代謝に影響を与えることから,二日酔いの軽減や防止などに用いられてきた。著者らは清酒粕による酔いの低減効果を報告しているが,その後新たに乳酸菌発酵酒粕を開発し実験動物を使用して調べた結果,様々な機能性,例えば体重増加抑制,脂肪蓄積抑制,血中脂質改善などの効果を持つことを見出している。更に,飲酒前にこの乳酸菌発酵酒粕を摂取すれば,血中アルコール濃度が低減することも判明した。本稿ではこのアルコール濃度低減効果に関する被験者データおよび推測される作用機序について解説して頂いた。
著者
岡田 孝彦
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.86-93, 2001-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
1

ビールの製品ラインは壜, 缶, 樽に大別され, それぞれの容器特性に応じた設備構成となっている。パッケージング工程の役割としては, 醸造工程でつくられたビールを品質低下させることなく容器に充填するのは勿論のこと, その後の保存性を確保するために確実に密封すること, 商品としての美観性を損なわないよう仕上げることが重要である。
著者
小島 正明
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.294-299, 2010 (Released:2012-02-24)
参考文献数
24
被引用文献数
1

味噌は塩分が多いという固定概念から,味噌と高血圧に関する十分なデータがないのにも拘わらず味噌の消費が減少している。そこで,著者らは味噌の消費拡大を目的として,食塩を添加しなくても腐敗することのない大豆発酵物(無塩味噌粉末)の安定した製造方法を確立している。今回はこの無塩味噌粉末のデザート,チーズ製品,総菜への応用と,生理学的機能性としてアレルギーやアトピー症状の軽減や抗肥満効果が期待できることを解説いただいた。
著者
喜多 常夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.604-616, 2015
被引用文献数
2

日本は世界的に見て,稀に見る長寿企業の多い国であるという。その中でも,とりわけ清酒製造業は長寿である。欧州では,ドイツなどでもワインやビール醸造業には長寿企業が多い。その理由は那辺にあるか,著者も長寿酒造業者のリストを整理・解析し考察を加えているが,明確な答えは見つかっていないようにも窺える。しかし,我が国の清酒製造業者が何代にもわたって酒造業を脈々と続けて来たことは厳然たる事実である。<br> 貴重な調査記事の一読をお勧めするとともに,読者諸賢におかれてはそれぞれ考えをめぐらせ,将来への清酒製造業の維持・発展のよすがとして頂くことを希望したい。
著者
土田 靖久 大江 孝明 岡室 美絵子
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.489-495, 2015-07

機能性成分については,疲労回復効果や血流の改善効果を有するクエン酸などの有機酸,糖アルコールの一種で整腸作用を有するソルビトールおよび抗疲労作用や血圧上昇抑制作用を有するポリフェノール類といった梅酒に豊富な成分やフリーラジカル消去活性で示した抗酸化能を対象としてきた。香気成分については,'甲州小梅'でγ-デカラクトン,δ-デカラクトンが甘い香りに大きく寄与することが報告されていたが,全国の60%以上を生産する和歌山県での主力品種'南高'に関する報告はほとんどなかった。'南高'果実は,完熟期が近づくとフルーティーな香りを放ち,このような果実を梅酒原料として用いると,モモ様のフルーティーな香りをもつ梅酒に仕上がることが知られている。よって,我々は'南高'を原料とした梅酒の香気成分を調査し,特徴的な芳香成分の一部が,γ-デカラクトン(モモ様),δ-デカラクトン(モモ様),酪酸エチル(パイナップル様)および酢酸ブチル(リンゴ様)であり,青っぽい香りが安息香酸エチル(シバ様)であることを明らかにした。その上で,これら香気成分や梅酒の苦味成分として報告されているプルナシンおよびシュウ酸を対象として栽培方法との関係を調査してきた。これらの調査の中で,原料果実の収穫時期や追熟処理が機能性成分,香気成分および苦味成分含量に大きく影響することを明らかにしてきた。一方で,果実品質は栽培環境にも影響を受けることが知られており,リンゴ果実では芳香成分量に影響することが報告されている。よって,梅酒についても園地条件などの栽培環境により香気成分量等に違いが生じることが予想される。そこで,我々は現在,栽培環境と梅酒品質との関係を調査しており,ここでは,光条件や土壌条件といった栽培要因が梅酒の品質に及ぼす影響について紹介する。
著者
栗原 雅直
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.9, pp.620-624, 2000-09-15 (Released:2011-09-20)

酒を多く飲んだときの失敗談はよく聞く話であるが, 生命に関わる問題も発生することを留意する必要がある。本稿では酒を飲んだときの傾向と対策を医学の面から解説していただいた。