著者
河野 勇人
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.750-759, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

超高齢化社会を迎えつつある現在の日本においては,生活習慣病の予防が重要な社会的問題となっている。その予防には個々人が若い時代から自ら日常的に健康的な生活を維持していくことが重要である。栄養(食事),運動,休養は健康づくりの三本柱であるが,毎日欠かすことができない食事の役割は大きい。近年,若い女性のダイエット志向や高齢社会におけるアンチエイジング志向から,健康維持に対する関心が高まり,いわゆる健康食品やサプリメントなどの商品が増加している。しかし,それらの中には効果が実証されていない食品や健康被害を招きかねないものも含まれている。このような食環境において,科学的エビデンスに基づいた食材や加工食品の開発と提供は極めて重要な課題である。本稿は,その好例の紹介であり機能性食品の開発を進める上で大変参考になる事例である。
著者
岩下 和裕
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.669-678, 2001-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
31

焼酎醸造に用いる白麹菌のβ-グルコシダーゼは, 同じ遺伝子から生産される酵素タンパク質なのだが, 培養条件によって, 酵素の局在性が異なる。すなわち, 個体培養 (麹) では分泌型, 液体培養では細胞壁型酵素として生産される。著者は酵素の安定性と局在性に関する成分が菌体外可溶性多糖 (ESP) であることを明らかにした。ESPの本体は細胞壁多糖画分の一部であると示唆されているが, 現在のところ未知な部分も多い。ESPの研究が進展し, 将来, 各種酵素の安定化などへ広く応用されることが期待される。
著者
富田 実 山本 澄人
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.12, pp.853-859, 1997-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16
被引用文献数
4 6

前報に引き続き, 耐塩性酵母について解説していただいた。従来, 味噌・醤油醸造に有用な酵母と皮膜を形成する, 所謂白カビの有害酵母が同一酵母名に分類されている。醤油もろみから分離した産膜酵母の皮膜形成時に特有な生理的性質を検討し, 条件により皮膜生成と沈殿状生育の非皮膜形成に変わることを見い出している。また, 後半ではミソナオシと呼ばれる植物から白カビ発生抑止物質を分離同定し, グリセロ糖脂質であることを明かにした。
著者
赤尾 勝一郎 横山 正 米山 忠克
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.341-348, 1994-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
40

微生物と植物は互いに言葉 (シグナル) の交換によって対話 (コミニュケーション) しているらしいということが以前から予想されていた。最近, 窒素固定微生物 (根粒菌) とマメ科植物との共生関係の成立過程で行われている対話の内容が解明されつつあり, この対話を通じてイネ, ムギなどの非マメ科植物にも窒素固定能を賦与させることの可能性について議論されるようになったので, これらについて解説していただいた。
著者
神戸 大朋
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.37-40, 2009 (Released:2016-01-18)
参考文献数
16

醸造において,水の問題は非常に重要視される。例えば,宮水の特徴は,カリウムとリン酸にあるといわれ,酵母の発酵性とカリウムやリン酸の関係については多く研究や解析がなされている。これらの研究に加え,亜鉛もまたアルコール発酵に重要であるということが,周辺の分子メカニズムとともに証明されてきている。亜鉛は生物にとって必須の元素であり,酵素活性や遺伝子発現制御因子の活性など多くのタンパク質の活性に関与しているが,アルコール発酵系の酵素にも亜鉛を要求するものがある。亜鉛と本酵素は単に酵素活性という点だけでなく,遺伝子発現も含めてドラスティックに相互に関係していることが明らかとなってきた。今回,亜鉛とアルコール発酵系の巧妙な関係について解説をしていただいた。
著者
福田 央 韓 錦順
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.715-727, 2015

テキーラの低沸点香気成分及び中高沸点香気成分85成分を分析・比較しブランコとレポサドでは11成分(イソ吉草酸エチル,イソ酪酸エチル,バニリン,コハク酸ジエチル,ウイスキーラクトン,酢酸エチル,安息香酸エチル,カプリル酸エチル,4-ビニルグアイヤコール,2-メチル酪酸エチル及びDMS)に有意差が認められた。ブランコ及びレポサドを10成分(ウイスキーラクトン,カプロン酸イソブチル,カプリン酸プロピル,シトロネロール,イソ吉草酸エチル,バニリン,ウンデカン酸エチル,オレイン酸エチル,イソ酪酸エチル及びコハク酸ジエチル)により判別分析を検討したところ,42点の内40点が正しく判別され,判別精度は95%であった。レポサドとアネホでは9成分(フェニルアセトアルデヒド,2-ペンチルフラン,フルフラール,安息香酸エチル,ノナナール,クロトン酸エチル,バニリン,ジアセチル及びウイスキーラクトン)に有意差が認められた。レポサドとアネホを8成分(カプリン酸イソブチル,フェニルアセトアルデヒド,2-ペンチルフラン,セドロール,アセトアルデヒド,フルフラール,2-エチル-5(6)-メチルピラジン及びβ-フェネチルアルコール)により判別分析したところ36点の内32点が正しく判別され,判別精度は89%であった。ブランコとアネホでは17成分(ウイスキーラクトン,安息香酸エチル,カプリル酸エチル,及びフェニルアセトアルデヒドの他13成分)に有意差が認められた。また,4成分(ウイスキーラクトン,安息香酸エチル,カプリル酸エチル,及びフェニルアセトアルデヒド)による判別分析では42点の内40点が正しく判別され,精度は88%であった。ラム酒とテキーラでは38成分(α-テルピネオール,5-メチル-2-フルアルデヒド,ドデカノール,カプリン酸イソアミル,安息香酸エチル及びその他29成分)に有意差が認められ,5成分(α-テルピネオール,5-メチル-2-フルアルデヒド,ドデカノール,安息香酸エチル及びカプリン酸イソアミル)による判別分析では114点中111点が適切に判別され,精度は97%であった。なお,テキーラの揮発性成分の特徴であるリナロール及びα-テルピネオールは,原料処理後の発酵工程で生成すると推定された。
著者
小林 弘憲
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.6, pp.381-387, 2016 (Released:2018-07-13)
参考文献数
33

ワインの香りは,その品質を決定する重要な要素である。ワインの香りは,ブドウに由来する香り,酵母による発酵香,MLFによる香り,熟成で生じる香りが渾然一体となったものであるが,なかでもブドウの品種に特徴的な香りがよく表れていることが重視される。一方,未熟な香りなど,ブドウに起因する好ましくない香りも知られている。本稿では,甲州,マスカット・ベーリーA,シラーと各品種に特徴的な香りの研究に取り組んでいる著者に,ブドウに由来するポジティブな香,ネガティブな香について,わかりやすく解説していただいた。
著者
髙山 卓美 斉藤 敦子 THU Pham Thi VAN Nguyen Thu ANH Dan Hong
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.6, pp.394-409, 2015

東南アジアそれぞれの国の伝統的な醸造酒は,主に固体発酵法で製造されるが,ストロー様の"吸管"を用いることで,壺中の発酵醪から固形物を濾過しつつ,飲酒を楽しむユニークな飲み方が現代にも受け継がれている。近年,そのような方法は,次第に消滅したり,観光化されて伝統的な作り方から外れたものになる恐れがあり,本レポートは貴重な資料である。ご一読を!!
著者
嶋 悌司
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.335-340, 1991-05-15 (Released:2011-09-20)
被引用文献数
1

今, 新潟清酒学校が注目されている。清酒業界は杜氏等酒造従業員の高齢化が極限に近く, また, 要員の確保や要員養成においても様々な問題を抱えて極めて厳しい。そこで, 実績を重ねる清酒学校の詳細について報告いただいた。中央・地方での従業員の養成・指導に益するところ多大である。
著者
湯川 雅之 伊藤 大輔 峰時 俊貴 渡辺 敏郎 広常 正人
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.12, pp.963-968, 2009 (Released:2016-02-16)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

酒粕の有効活用のため,吟醸酒粕や普通酒粕より資化できる糖質の残存量が少ない液化酒粕を用い,その生理活性を高めたSLIPの製造方法を検討した。液化酒粕をプロテアーゼ剤と共に清酒酵母で再発酵させた結果,米由来の酸性グルテリン,グロブリン,塩基性グルテリンが減少し,TDFとRPの合計量が液化酒粕の1.7倍に高まったSLIPの製造に成功した。試験管レベルで油の吸着実験によりSLIPを評価した結果,メタボリックシンドローム対応素材として市販されている,キノコキトサンの脂質吸着量の約1.5倍となることが確認された。SLIPを摂取することにより,過剰な脂質の吸収を抑制することでコレステロール低下作用や肥満抑制作用が期待できる。
著者
木原 誠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.7, pp.462-467, 2011 (Released:2017-02-15)
参考文献数
9

ビールの品質に大きく関わるビール大麦,その育種の実例について,紹介していただき,さらに,ビールの品質上好ましい形質であるLOX(リポキシゲナーゼ)欠失ビール大麦を,DNA塩基配列の差異を利用することで,より効率的に育種することができた大変興味深いお話を解説していただいた。
著者
折原 佑輔 和気 洋子 宇都宮 仁 青島 均
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.5, pp.349-356, 2006-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1 4

1) 赤味樽および甲付樽に清酒を, 0, 2, 7, 14日間貯蔵し, グルコース, 着色度, 低沸点香気成分及び杉樽由来成分セスキテルペン類香気成分量を測定した。2) グルコース, 低沸点香気成分は, 樽貯蔵しても増加しなかった。着色度とセスキテルペン類は貯蔵日数と共に増加した。セスキテルペン類は甲付樽の方が早く抽出され, カディネン, オイデスモールは甲付樽に保存した方が赤味樽に保存したものに比べて含有量が大きかった。3) アフリカツメガエル卵母細胞にGABAA受容体を発現させて, 清酒の効果を検討した。清酒は応答を引き起こしGABA様活性を示した。また, この応答は清酒中のGABA含有量に対して大きかった。しかし, この応答は樽貯蔵しても増加しかった。4) 樽酒をペンタン抽出して芳香成分のGABAA受容体応答への影響を測定したが, 有意な効果は見られなかった。5) 樽貯蔵により, 総ポリフェノール量及びDPPHラジカル捕捉活性は相関して増加した。しかし, 過酸化水素の有意な増加は見られなかった。
著者
岸本 宗和 塩原 貫司 萩原 健一 今井 裕景 柳田 藤寿
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.931-939, 2012 (Released:2017-12-18)
参考文献数
27

1.セミヨン種ワイン発酵醪および醸造設備から乳酸菌を分離し,そのリンゴ酸分解能を検討した。前期醪から分離された22菌株中の18菌株に,後期醪から分離された24菌株すべてに,醸造設備から分離された10菌株中の1菌株,合計 43菌株にリンゴ酸の分解能が認められた。2.16S rDNAのPCR-RFLP解析および塩基配列解析の結果から,前期醪から分離されたリンゴ酸分解能を有する乳酸菌は,Lb. plantarumに,後期醪から分離された乳酸菌はO. oeniに,ワイナリー醸造設備から分離された乳酸菌はP. pentosaceusに分類される可能性が極めて高いことが示された。3.リンゴ酸分解率に及ぼすpHの影響について検討したところ,前期醪から分離された09Se-A1-4株はpH 2.9の条件下においても90%以上の高いMLF能を有していた。4.セミヨン種ブドウを原料とする小規模試験醸造において,09Se-A1-4株は速やかにMLFを生起し,さらには,クエン酸の消費が少ない特徴を有する菌株であることが認められた。

1 0 0 0 OA 発酵と貯酒

著者
宮島 豊
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.12, pp.856-866, 2000-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15

従来, 日本のビールの大部分が含まれる下面発酵ビ地ルでは, 通気した冷麦汁ヘビール酵母を添加してアルコール発酵を起こさせ, 麦汁中の発酵性糖の大部分をエタノールに変える “発酵” と, 発酵の終わった発酵液を熟成し嗜好性のある飲料に仕上げる “貯酒” の2つに分かれていた。しかしながら近年, 香味の熟成に関する研究成果と, 技術革新による発酵・貯酒タンクの大型化・自動化により2つの役割を従来通りには考えない醸造方法が一般化してきている。
著者
松山 治雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.588-591, 1997-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

1994年酒税法の改正により小口醸造ビール (いわゆる地ビール) の製造が可能になり約3年後の現在では百社を超えるメーカーでエールやヴァイツェン等の様々なビールが造られるようになった。本場ドイツ仕込みのビール醸造技術者で, 永年にわたりビール醸造に携わってきた筆者が, 欧米の小口醸造ビールの成り立ちに触れるとともに, これからの地ビールのあり方について述べており, 清酒, ワイン, 本格しょうちゅう等の地酒メーカーにとっても, 大いに参考になると思われる。
著者
丸山 新次
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.8-16, 1988-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
4
被引用文献数
1

良い清酒を造るためには, 良い原料を上手に精米することが必要である。最近, 酒造原料の重量分布を調べ, 白米の品質チェックに役立てようとする試みがなされている。ここでは, その方法を紹介していただいた。
著者
大内 弘造
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.184-187, 2010 (Released:2012-02-24)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4