著者
平石 隆義
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.9, pp.594-599, 2016 (Released:2018-08-03)
参考文献数
3

酒類に用いられる容器は,新素材の登場や飲酒形態の変化など時代の要請とともに変わってくる。清酒では,一升瓶が減少し少量ガラス瓶容器が増えてきている。ワイン国であるフランスでも,核家族化等により1回の食事等では750ml瓶は消費しきれず,開封後も鮮度が保たれるバッグインボックス入りワインが普及してきている。これをさらに進めたPouch Up容器を清酒に取り入れたメーカーがある。この容器の利点や酒質への影響,さらにはリサイクル制度への対応などと今後の展望を解説いただいた。

1 0 0 0 OA 大麦・麦芽 (1)

著者
福嶋 禎久
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.395-403, 2000-06-15 (Released:2011-09-20)

穀物を原料とする酒は世界に数多くあるが, ビールほど穀物の生命力を巧みに利用している例は他にみられない。大麦は単なるデンプン原料ではなく, その発芽に伴うメタボリズムがビール造りに余すところなく活用されている。製麦は大麦のもつ生物としての能力をビール造りに結び付けるビール製造工程の第一歩である。
著者
山本 精一郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.100-105, 2004

味噌の機能性として, コレステロール制御, 抗腫瘍性, 抗変異原性, 抗酸化作用などが知られている。特に, 1981年に平山雄博士 (元国立がんセンター研究所疫学部長) が, 味噌汁の摂取頻度と胃がん死亡率について疫学的調査を行い,"味噌汁ががん予防に効果がある" という説を出されて以来, 味噌の機能性に関心が集まり, 種々の機能が次々に明らかにされてきた。筆者は, 1990年にスタートしたコホート研究に携わられ, 大豆, イソフラボンの摂取が乳がんリスクの減少と関係があることを示して注目された。(編集部)
著者
上田 誠之助
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.10, pp.725-727, 1997-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
23

前報では, 米粉を固めて造るしとぎが口嘴酒にされ御神酒として供される風習について解説されたが, 今回は筆者の古代から現代に亘る幅広い調査結果に基づき, しとぎや牙米 (発芽米) から造られる醴酒 (一夜酒) を通じた古代の酒の変遷が明らかにされている。
著者
田村 博康 平田 大 栗林 喬 久米 一規 五島 徹也 中村 諒 渡邊 健一 赤尾 健 下飯 仁 水沼 正樹
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.12, pp.820-826, 2015
被引用文献数
2

今現在,大吟醸酒に代表される高級清酒の醸造には,広くカプロン酸エチルを高生産する酵母が使用されているが,様々な変異処理をほどこしているために,発酵が緩慢となり,さらには目的以外の変異がはいるというリスクもあった。筆者はそのリスクを取り除くための自然発生的な方法で目的株を分離することに成功し,遊離脂肪酸を測定することで迅速に識別する方法まで示した大変興味深い解説文である。ぜひご一読願いたい。
著者
安澤 義彦 勝又 和明 片岡 惇
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.886-892, 2006
被引用文献数
2

(1) テンシプレッサーを用いることで蒸米の硬度測定が可能であり, 25%圧縮の硬度測定から, 蒸米表面の硬さとさらし時間による硬化度の変化を, 90%圧縮の硬度測定から, 蒸米固有の硬さを測定できることを明らかにした。<BR>(2) 低圧縮及び高圧縮硬度の比を硬軟度と定義した。五百万石は表面硬化の速度が速く, 他の供試品種とは異なる挙動を示すことが確認された。また, 千秋楽の硬軟度は酒造好適米である越淡麗やたかね錦と近似の経過をし, さらし時問の経過に関係なくほぼ一定に推移したことから, 硬化しにくく溶けやすい品種であると考えられた。<BR>(3) プロラミンはさらし1時間の初期段階の蒸米固有の硬度と関係が深いことが確認され, 放冷機によって短時間に仕込む最近の酒造りにおいて興味深い結果であると考えられた。一方, 3, 6時間のさらしでは有意な結果が得られなかったことから, みかけの老化に影響を与える因子はプロラミンではなかった。
著者
包 啓安
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.563-564, 1996-08-15 (Released:2011-09-20)

蘇東披は蘇転といい, 唐宗八大家として有名な詩人 (赤壁の賦など) 書家。北宗 (11世紀後半) の行政官と仕官したが, 時の高官とあわず, 江南 (杭州, 黄州) や華南 (広東, 海南島) に赴任させられた。広東での生活では自から酒を醸していた由で, 著書の中にこの酒経があるという。著者はこの風麹を検討してAsp oryzaeが主であることを明らかにしている。
著者
花井 四郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.53-59, 1994

長い伝統に根ざした中国の酒類製造技術は日本の醸造技術にも影響を与えたとされているが, 両者は異なる道を歩んできた。中国には日本とは比較にならないほどの多種多様な酒類があり, 特に蒸留酒の白酒は顕著な香味の個性を有している。中国に度々赴かれ現場の様子に精通しておられる筆著に香味の特性に基づいた白酒の分類とそれぞれの特徴, さらには香味成分の分析値と製法の特徴との関連性などについて詳細な解説をしていただいた。
著者
水沼 正樹 平田 大
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.794-800, 2011 (Released:2017-03-28)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本誌読者に馴染みの深い出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeは,真核モデル生物のひとつとして,種々の研究に用いられている。本稿では,出芽酵母を用いて得られた老化や寿命に関する研究成果を幅広く紹介していただいた。

1 0 0 0 紹興見聞記

著者
茂田井 円
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.690-693, 1993

本年度は, 中国のバラ麹の酒, 中国のピール (次号) と中国に関する話題がいくつか取り上げられたが, 今回は, 日本にとって最もなじみの深い酒類の一つである紹興酒の最新の状況をご紹介いただいた。
著者
秋田 修
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.739-745, 1989-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

近年の吟醸酒ブームにともない, 香気生成能の高い酵母を造成しようとする試みが数多くなされている。本稿では酵母の香気生成の機構とそれを利用した香気生成能の高い酵母の分離について, 著者のこれまでの研究を中心に幅広く解説していただいた。
著者
渡部 貴志 藤井 力 家藤 治幸 北本 宏子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.2, pp.82-88, 2014 (Released:2018-02-16)
参考文献数
23
被引用文献数
1

焼酎蒸留粕の有効かつ効率的な処理技術の確立は,過去20年以上にわたり業界の最重要課題である。筆者らは,酵母を用いた排水処理法という日本発信の技術をベースにして,飼料用酵母Candida utilisによる焼酎蒸留粕排水の窒素除去と資源化の検討を進めている。生物処理は課題が多いが,各種酵母を用いて窒素除去能強化方法の有効性について評価し最適化処理を探っていく手法は,興味深い知見と示唆を与えるものであり,今後の進展に期待したい。
著者
高尾 佳史 高橋 俊成 藤田 晃子 松丸 克己 溝口 晴彦
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.48-55, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
18
被引用文献数
2

1)官能評価結果から,対照酒に比べて樽酒を摂取した場合,食品の旨味を強く,長く感じさせる効果があることが示された。2)清酒と料理を組み合わせたときの旨味後味を,味認識装置を用いて評価する方法を設定した。そばつゆやシーフードを食品サンプルとした場合には,対照酒に比べて樽酒では,旨味後味値が強くなっていた。3)食品の旨味後味に及ぼす樽酒の効果は,杉樽から抽出される物質に起因しており,比較的極性が高く,揮発しにくい成分と考えられた。杉樽から溶出するポリフェノールや多糖類の可能性が考えられるが,樽酒ではポリフェノール濃度が高いものの,多糖類の濃度には差が見られず,ポリフェノールやその配糖体の可能性が考えられる。

1 0 0 0 OA 賴山陽と酒

著者
池田 明子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.32-36, 2013 (Released:2017-12-21)

筆者は著書「吟醸酒を創った男」で,この業界に知られる作家。北陸の古都・金沢に生まれ育ち,広島へ嫁いだのち,賴山陽に傾倒し著作も多い。「山紫水明」は山陽発明の語,山陽の晩酌は「酒に自分好みに水をブレンド」していた由。本解説を楽しく味わっていただきたい。
著者
李 大勇
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.124-129, 1992

本誌86巻9号に, 第1回国際酒文化学術討論会の様子を報告した。今回は同討論会の通訳を勤め, 坂口先生の「日本の酒」を中国語に翻訳紹介された筆者に, 歴史, 自然, 文化に恵まれた中国四川省の酒周辺について解説していただいた。本稿は筆者が, 自から日本語で書かれた文章なので, その実際と雰囲気を直に味わうのに充分である。
著者
山下 勝 金藏 満次 津田 達志 丹下 達也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.874-879, 1991
被引用文献数
1 2

発酵調味料貯蔵タンクの底に, 冬期白色沈澱物が多量に析出した。これを分離し, 調べたところ, キサントプロテイン反応+, フォリン反応+であり, 薄層クロマトグラフィーのRfがチロシンと一致し, かつ赤外吸収スペクトルからもチロシンであることが確認された。<BR>析出が認められた発酵調味料は, アミノ酸度が7m1以上と高くかつチロシンも400-500ppm含まれていた。この高濃度チロシンが冬期の低温で溶解度が減少し, 沈澱物として析出したものと考えられた。<BR>発酵調味料を活性炭処理すると, チロシンが析出しやすくなった。活性炭処理をした発酵調味料は, チロシン溶解度が減少しており, 活性炭吸着物はチロシン溶解度を向上させた。活性炭に吸着されたアミノ酸を調べたところ, トリプトファン, フェニールアラニン, メチオニン, パリン, プロリン, シスチン, リジン, グルタミン酸, セリン等が多く認められた。これらのアミノ酸のチロシン溶解度向上力を調べたところ, チロシン溶解度を向上させるものが多く, 特に, トリプトファン, リジン, シスチン, グルタミン酸等は溶解度向上が著しかった。これらの結果から, 活性炭処理は, 各種アミノ酸を吸着除去するため, チロシンの溶解度が減少し, その結果, チロシンが析出することがわかった。<BR>アミノ酸以外にチロシンの溶解に関係する成分はないか調べたところ, エチルアルコール濃度が大きくなるとチロシン溶解度が減少することが認められたが, その他のグルコース濃度, 食塩濃度, 乳酸濃度, pH等はチロシン溶解度にはあまり大きく関与しなかった。<BR>チロシン析出防止法としては, チロシン含量を400ppm以下にすること, アミノ酸度を7m1以下にすること (アミノ酸度に比例してチロシン含量が減少するため), あるいはチロシンの溶解度を向上させるようなアミノ酸類 (カザミノ酸, 清酒古粕水抽出液等) を添加することが考えられる。一番簡単なのは, チロシン含量の少ない他の発酵調味料を添加することであるが, あるいは糖液を加えて火入れすることにより, メーラード反応を進行させチロシン含量を減少させるのも現場サイドでの実用的なチロシン析出防止法となり得ると思われる。
著者
野村 佳司 高橋 利郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.372-377, 2005-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7

清酒には固有の色があり, 品質の4部であるともに風味のバロメータ4になっている。流通段階で清酒が過度に着色するとクレーム対象となるため, 日光着色については万全の対策が講じられている。一方, 着色は日光ばかりではなく蛍光灯によっても起こることはしばしば経験される。筆者らは蛍光灯による清酒の着色現象を詳細に調べている。本稿は着色の実態とその防止策について貴重な情報を提供している。
著者
柏 伸典
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.213-218, 1990-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7

平成元年4月の酒税法改訂を機に, 日本の酒類市場は一気に国際化に向けて走り出したといえる。特に, ウイスキー市場は世界的な酒類資本のM &Aと絡み, 他の酒類以上に大きな変化を迫まられた。今後の市場展開には, 海外情報の適確な把握が必要といえる。