著者
久留 ひろみ 吉崎(尾花) 由美子 玉置 尚徳 和田 浩二 伊藤 清
出版者
公益財団法人 日本醸造協会・日本醸造学会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.167-174, 2010 (Released:2012-02-17)
参考文献数
13

ミキの成分組成について測定を行った。その結果,仕込み後急速に流動性が増し,デンプンがマルトースに加水分解されることがわかった。本加水分解は,酵素に起因するものであるが,本酵素は生サツマイモ中に存在する,β–アミラーゼに由来するものであると推察された。また,仕込み後急速に酸度が増しさわやかな風味が形成されたが,酸の組成としては乳酸と酢酸が主成分であった。また,乳酸については,約70%がD乳酸,約30%がL乳酸であることがわかった。エタノール分については,約1週間経過した後も1%未満であったので,酒類には該当しなかった。
著者
久留 ひろみ 吉崎(尾花) 由美子 玉置 尚徳 和田 浩二 伊藤 清
出版者
公益財団法人 日本醸造協会・日本醸造学会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.157-163, 2011 (Released:2016-06-14)
参考文献数
8

伝統的なミキは,奄美大島の自然飲料である。通常のミキは乳酸発酵が主体であり,酒類には該当しない。ミキのもろみに,焼酎酵母を仕込み初期から加えると,エタノールが生成し,酒類に該当した。しかし,発酵速度は遅く,発酵歩合も低かった。この理由として,糖化の主体が生イモ由来のβ-アミラーゼであり,生成糖のほとんどがマルトースであるためと考えられた。焼酎酵母は麦汁の発酵性が弱いために発酵が遅れると思われた。そこで,マルトースをグルコースに分解するために,焼酎麹を加えた。焼酎麹は多量のα-グルコシダーゼ等を含有するため,マルトースが効率的にグルコースに分解されると思われた。その結果,発酵が順調に推移した。糖組成の変化はHPLCで追跡したが,焼酎麹の添加により,グルコースの生成が認められた。焼酎麹の添加は,発酵歩合が向上する効果ももたらした。
著者
寺本 祐司
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.314-318, 2001-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

日本では, ハチミツ酒を口にする機会は少ないが, その歴史は古くヨーロッパの神話や伝説にも登場する。ハチミツ酒はハチミツを単純に水で薄めてアルコール発酵させるだけでなく, ホップ, ハーブ, 薬草やスパイスなどを加えて作り, 機能性を有する嗜好飲料である。市販されている各国のハチミツ酒も紹介してもらった。
著者
谷田 正弘
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.582-587, 1993-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15

醸造を含めて食品には, 独特の香りを有するものが多く, 日本人の食生活や食文化に大きな影響を及ぼしている。近年, 生理学や化学分析手法の発展によリ, 香リと記憶を科学的に捉える試みが始まっておリ, 得られた知見が, よリ快適で豊かな生活に役立つ日も遠くない。
著者
深谷 正裕 川村 吉也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.7, pp.536-543, 1994-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
45

昨年ブームを起こしたナタ・デ・ココは, 酢酸菌の産生するバイオセルロースである。従来, 酢酸発酵では害菌として嫌われてきた。しかし, 近年このバイオポリマーは, 高強度, 保水性や乳化懸濁安定性, 結着性などの特徴を有し, 種々の用途開発の研究が盛んに行われている。ここではその特性と生産法の検討などを解説していただいた。
著者
高山 卓美
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.6, pp.398-410, 2002-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1

中国では少なくみても約300種の酒が造られている。このうちコウリャンや麦などの穀類を原料として, これを糖化, 発酵して蒸留したものが白酒であり, 日本の焼酎にあたる。中国の白酒は, 世界で唯一固体発酵を利用した蒸留酒であり, その製造方法は大変に複雑である。筆者は中国の酒事情に詳しく, そこで代表的な白酒の1つである鳳香型白酒について2回にわたって解説していただく。第1回目は, 鳳香型白酒の製造方法を詳述していただいた。
著者
志村 富男
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.897-904, 1999-11-15 (Released:2011-09-20)

ワインの品質に原料ブドウは決定的な影響を及ぼす。我が国のブドウ栽培環境は気象面など必ずしも恵まれてはいないが, 国産の優良なワイン用原料ブドウを求めて関係者の息の長い努力が積み重ねられてきている。そのような中で, 筆者らは雨よけ垣根方式という画期的な栽培法を開発され既に実積をあげておられる。本稿ではその開発の経緯や効用, 技術体系について詳細に解説していただいた。
著者
小林 健
出版者
公益財団法人 日本醸造協会・日本醸造学会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.10, pp.726-742, 2009 (Released:2016-02-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1

製麹は清酒醸造においてもっとも重要な工程である。筆者は製麹現場の状況を実験室規模で再現し,厳密に管理された条件で製麹試験を行い,高度な統計解析により製麹操作と麹の品質との関係を詳細に検討した。そこから見えてきた麹内部の現象を「もう一つの並行複発酵」と概念付け,その一方で品温経過や乾燥条件という外部条件を高度に制御することにより,その条件に応じた品質の麹が得られることを示した。製麹に携わる方はもとより,麹の研究者にとっても大いに参考になる知見が精緻に記述されている。
著者
小笠原 博信 高橋 克文 飯塚 兼仁 伊藤 清 石川 雄章
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.304-307, 1991-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

1. 大麦を原料として製麹した白麹は米を原料としたものに比べ多量のキシラナーゼを生産したが, これは大麦中のキシランが酵素生産の誘導源となった結果であることがわかった。2. 麦麹から調製した粗酵素液は米麹粗酵素液よりも大麦をよく溶解した。3. 精製キシラナーゼを添加することにより大麦の溶解速度, 溶解量が上昇し, 溶解補助効果が認められた。4. 麦麹を用いて大麦焼酎の小仕込みを行ったところ, キシラナーゼ等による溶解補助効果により発酵特性が改善され, 米麹区分に比較して発酵速度が大きく, またもろみの流動特性が著しく改善され, 発酵歩合も向上した。
著者
橘 勝士
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.9, pp.651-657, 2000-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
3

グルジアはワイン発祥地の一つと考えられているが, 冷戦終結前は旧ソ連に属していたために, 我々日本人には, その内情を知ることは困難であった。しかし, ソ連の崩壊で独立したため, 以前は困難であった入国が可能になった。1998年にグルジアを旅行した著者に気候, 風土およびワイン製造の実情について解説していただいた。
著者
後藤 邦康
出版者
公益財団法人 日本醸造協会・日本醸造学会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.209-214, 2009 (Released:2016-01-19)
参考文献数
14
被引用文献数
1

酒米47点,市販清酒および酒粕各25点中のカドミウム(Cd)濃度を測定した。試料は硝酸と過酸化水素を用いたマイクロ波分解装置により調整し,誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-AES)により分析を行った。測定した酒造用玄米,70%精白米および市販酒粕中のCd濃度は平均でそれぞれ29.9,25.3,154.7μg/kg,市販清酒中のCd濃度は1.29μg/lであった。70%精白米中のCd濃度は玄米の約78%(7試料の平均値)となった。以上の結果から,精米工程によるCd濃度の減少効果は少なく,また原料米中のCdは清酒へはほとんど移行せず,酒粕に移行する可能性が示された。
著者
小野 玄記
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.797-803, 1999-10-15 (Released:2011-09-20)

平成7酒造年度から全国発売されている14号酵母 (金沢酵母) は, 全国各地の蔵元で幅広く愛用され, 上々の評判を得ている。最近, 省力化などの労働問題から, 泡なしタイプの金沢酵母を要望する声が上がってきた。既に, 金沢局の鑑定官室と北陸酒造技術研究会酵母部会が中心となり, 泡なし酵母の分離が行なわれ, 管内製造場で, 3酒造年度に渡り試験醸造が行なわれた。従来の金沢酵母と遜色がない良好な結果を得たので, 本年度より全国に配布されるはこびとなった。本稿は新しく本酵母を使用されるメーカーのため, その特徴と仕込み上の留意点, 製成酒の酒質などについて解説していただいた。
著者
稲橋 正明
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.679-687, 2001-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

最近, 吟醸酒用の酵母として, カプロン酸エチルあるいは酢酸イソアミルといった香気成分を高生産する清酒酵母が多数育種され実用化されているが, 筆者らがここ数年かけて育種した「きょうかい1701号」は, 副題に掲げるような吟醸香にとって理想的な実用株である。ここでは, 育種の経緯から実際に使用する場合の要点などについて解説していただいた。
著者
斎藤 久一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.9, pp.616-618, 1996-09-15 (Released:2011-09-20)
被引用文献数
2

以前から開発され, 実用化されていたいわゆる「秋田流・花酵母」を全国各地の製造場から, ぜひ使用したいという希望が高まってきた。そこで, 秋田県のご好意により平成8年度から《きょうかい酵母》として全国配布することとなった。本稿では, 吟醸酒製造の基本的考え方から各工程での要点等を中心に解説いただいた。
著者
小野 文一郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会・日本醸造学会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.2, pp.90-97, 2009 (Released:2016-01-18)
参考文献数
24

酵母におけるアミノ酸代謝のうち,特に含硫アミノ酸の生合成は,細胞増殖をはじめ醸造においては好気成分等の生産に深く関連している。近年の研究でその生合成の制御には,多様な要因が関連していることがわかってきた。これらの含硫アミノ酸代謝に関与する遺伝子の発現制御メカニズムに関する研究は,醸造酵母における硫黄代謝の制御,さらには実用株の育種にとって重要な基礎的知識をもたらすことが期待される。ここでは,著者の長年にわたる研究成果を中心に,出芽酵母の含硫アミノ酸合成について最近の成果も含め解説していただいた。
著者
末澤 保彦
出版者
公益財団法人 日本醸造協会・日本醸造学会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.69-78, 2010 (Released:2012-02-13)
参考文献数
29
被引用文献数
1

減塩醤油は塩分濃度が9%程度であるので,耐塩性乳酸菌の生育によるガス発生変敗が大きな問題となる。従来,減塩醤油の変敗原因菌はホモ乳酸発酵型のLactobacillus属と知られていたが,種までは同定されていなかった。そこで,著者は16S rDNA配列決定法により,Lactobacillus renniniと初めて同定した。さらに,佃煮変敗菌として,ヘテロ乳酸発酵型のL.fructivoransとの比較も行った。従来の微生物検査に耐塩性乳酸菌検査を追加することにより,減塩醤油などの変敗が予知でき,さらに,PCR–DGGE法による製造工程の菌叢解析を行うことにより,変敗菌の有無の予測が期待できることを明らかにした。これらは減塩醤油などの低塩食品の製造に大いに参考となるので,ご一読いただきたい。
著者
協同組合福岡銘酒会
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.845-848, 1996-12-15 (Released:2011-09-20)
被引用文献数
1

県内の有志で構成する「福岡銘酒会」は約20年の歴史を持ち, その中で培われた信頼関係をもとに, 地酒でなくてはできない熟成酒プロジェクトを平成になって発足し, 現在順調に進展している。その発端から今後の課題までを, 当初から計画を推進してこられた筆者に紹介していただいた。
著者
村 清司 谷村 和八郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.186-192, 1994-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18

バシはフィリピンで造られている伝統的な甘蔗酒で, 製造の際に樹皮類を添加している。筆者等はこの添加原因を研究し, 樹皮中のフェノール類が乳酸菌や酢酸菌の増殖を阻止し, かつ低濃度では酵母の増殖を促進するという興味ある事実を突き止めた。熱帯における巧妙な開放発酵の神秘に接した感がする。