著者
髙橋 梯二
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.29-35, 2014

わが国の酒類の「地理的表示」としては,これまでに清酒の白山,単式蒸留しょうちゅうの薩摩,琉球,球磨,壱岐が指定されていたが,新たに果実酒(ワイン)の山梨が指定された。わが国では,酒類だけでなく,様々な飲食物で産地の名称を使用したものが多くあるが,法律に基づく地理的表示の整備はまだこれからである。今回は,地理的表示の持つ意義や今後の課題について,詳しく解説していただいた。
著者
楠見 晴重
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.36-43, 2014
被引用文献数
1

京都盆地の地下には約211億トンという,琵琶湖に匹敵する豊富な水量の水瓶(京都水盆)がある。この京都水盆へは,京都府から滋賀県,三重県にまたがる7,050km2の地域に降った雨から毎年45億トンが供給される。<br>平安京の昔から1200年間,京都の文化や伝統産業,たとえば茶道,京友禅,京豆腐や湯葉,伏見や京都の酒造りをこの良質で豊富な地下水が育んできた。<br>この大切な地下水資源を将来にわたって守り抜くために,著者は3次元地質構造モデルを作成され,地下水汚染対策に利用されています。<br>地球上では水不足が進行しており,2025年には48カ国17億人が深刻な水不足になると予想されている。この大切な水を守るために京都や日本から発信する必要があると述べられています。
著者
本藤 智
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.453-459, 1989-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
73

米味噌の一般成分の中で水分を除けば最も多いのは炭水化物である。その主要構成成分をなす糖類の種類はま複雑多岐に亘っている。それらは大豆と米に由来し, 原料処理, 製麹, 発酵工程を経る間にダイナミックな変化を見せ, 製品の色, 香り, 味, 物性などに著しい影響を及ぼす。味噌製造中における糖類の果す役割に視点をおいて, これまでに得られた知見をまとめていただいた。
著者
舘 博
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.251-256, 1998-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
28

醤油中にはジペプチドとして幾つかのX-Proが認められている。ペプチドのアミノ末端よりX-Proを特異的に遊離させるX-プロリルジペプチジルーアミノペプチダーゼ (XPAP) を筆者は麹菌から初めて見出した。またこの酵素は熟成の呈味形成に大きく関与することも明らかにした。本酵素の作用機作と呈味形成の役割を詳しく解説いただいた。
著者
安藤 義則
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.300-305, 2012 (Released:2017-12-12)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

本格焼酎は日本古来の蒸留酒として,主に南九州で生産消費されてきた。1965年頃から現在に至る焼酎ブームにより全国に拡がり,日本の代表的な蒸留酒となってきた。本格焼酎は原料由来の独特な風味を持っているが,業界では消費者嗜好にあった焼酎の開発,研究が進められてきた。本格焼酎の中で,穀類焼酎は原料風味を弱く,芋焼酎・黒糖焼酎は原料の香味を強くする方向に流れになってきたが,香味成分の研究により原料の特徴の弱いあるいは強い商品など多様な商品群ができて欲しい。近年分析技術の進歩により,その原料風味の解明がなされるようになってきたので,今回は本格焼酎の香味成分の研究を紹介していただいた。
著者
堀江 修二 土佐 典照 細谷 達夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.57-61, 1992-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

A method for evaluating the quality of koji from various analytical data was proposed. Koji was digested in a solution containing acetate buffer, pH 5.0, at 55°C for 5 hr, and the filtrate of digestswas analyzed for specific gravity (Bé degree), glucose and amino acids. Moisture content (KM) of koji was also determined. From these results, true digestion value (SS), true saccharification value (ST), total potency (TR=SS×ST), true amino acidity (S A), saccharification ratio (1/SS), amino acid ratio (SA/TR), and true glucose (SG) were calculated by equations respectively defined. When values of koji for highly ranked sake (ginjo-koji) and for common sake were compared during the process of koji making, changes in measured values other than SA were smaller for the former koji than for the latter at the time of shimai-shigoto (2 nd mixing operation) and thereafter. When properties of koji were plotted in a 3-axle radar chart prepared from axles of TR, SA/TR, and ST/TR, koji for highly ranked sake showed lower TR and higher SA/TR than koji for common sake. A 5-axle radar chart prepared from axles of SS, ST, SA, KM and SG showed that koji for highly ranked sake gave almost regular pentagonal shapes, while koji for lowly ranked sake gave irregular pentagonal shapes having high KM and SG.
著者
塩谷 育生 築山 良一 古林 万木夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.11, pp.768-774, 2003-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11

醤油は単に調味料というより素材を活かす天然の消臭素材であり, 醤油麹抽出物もまた消臭活性を有する食品素材である。ここでは, 醤油麹抽出物の消臭活性と食品加工への利用について解説していただいた。
著者
諏訪 芳秀
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.376-383, 2006-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12

レストラン等で「とりあえずビール」と注文されるように, ビールはアペリティフとして食欲を刺激し食事を美味しく感じさせて, 我々の食生活を豊かにしてくれる。本稿では, 食物認知としての食物刺激ではなく, 飲用後のビールが消化管内に到達した後の普遍的な生理特性としてのビールのアペリティフ効果のメカニズムと関連成分について解説していただいた。
著者
小林 統
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.465-471, 1996-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

酵母の凝集に関しては, 清酒酵母でも泡なし酵母でも種々研究され, 細胞壁の構造が関与していることが解明され, 実用化が進んでいる。ビール酵母でも酵母の凝集は発酵に大きな作用を及ぼすことは昔から知られていた。ここでは, 凝集に関与する遺伝子について筆者の研究をも紹介しながら, 分かりやすく解説していただいた。
著者
山口 仁美
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.716-723, 2013 (Released:2018-02-13)
参考文献数
31

ニコチアナミンは高等植物に広く存在する非タンパク質構成アミノ酸である。近年,ニコチアナミンの抗高血圧作用が報告されており,食品に含まれるニコチアナミンの健康作用が期待され,様々な植物性食品における含量が報告されている。しかし,これまでの分析法には,醤油中ニコチアナミンを測定する上で問題があった。そこで,著者はマルチモードODSカラムのScherzo SW-C18を用いる高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)による,醤油およびその他の植物性食品のニコチアナミン分析法を確立したので,解説いただいた。今回示した分析法は,複雑なマトリックス(夾雑成分)の中から,イオン性で高極性の微量な機能性成分を,汎用的な手法で選択的かつ高感度に分析することを可能にしたものであり,食品中の他の機能性成分や危害要因の分析に,今後,この手法を応用できるので,ご一読いただきたい。
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.10, pp.763-768, 2000-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17

奄美諸島は現在は鹿児島県大島郡に属しているが, 中世は琉球王国に属していたこともあり, 独特の風俗習慣が残っている興味深い地域である。島特産の発酵食品はこのような他の地方にない奄美諸島の歴史と伝統から生まれたものである。
著者
橋爪 克己
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.2-7, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
21

清酒には多数の苦味物質が含まれるが,大部分は閾値以下の濃度であり,単独で苦味を感じさせるものは少ない。著者らは以前,清酒のHPLC画分から呈味を手掛かりに苦味ペプチドを同定した。さらに最近,同様の方法で,フェルラ酸およびそのエチルエステルが強い苦味を呈することを見出した。フェルラ酸を含むフェノール酸は植物細胞壁の構成成分であり,清酒製造工程において麹の酵素によって遊離すると考えられている。本記事では,苦味物質としてのフェルラ酸等の同定,フェノール酸の原料米中の分布とその遊離に関わる麹菌酵素について,最新の研究成果をもとに解説いただいた。これらの苦味物質は特に活性炭未処理清酒で濃度が高く,近年増加している「無濾過」清酒の品質を考えるうえで,大変興味深い研究である。
著者
高島 正一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.115-119, 1991-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1

わが国の経済の進展は, 国民生活の上にもいろいろな形で波及し, 特に食生活では外食の機会の増加, 主婦の調理時間の短縮をはじめ, 世界の珍味を居ながらにして味わえるなど, その様変わりは彩しいものがある。いうまでもなく, それらが醤油の生産にも問題を投げかけている。永年醤油製造の第一線に携わって来られた筆者に忌憚ない見解を吐露していただいた。
著者
山本 綽
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.499-506, 2012 (Released:2017-12-12)

この論文は,昨秋,札幌で行われたIUSM 2011 Sapporoでの明治の大化学者,高峰・北里両巨人についての講演から,高峰博士の業績を中心に,博士に私淑する著者によりまとめられたものである。著者は酵素工業の研究・生産・経営に長く携わってこられている方で,高峰博士の理解のための好適の一文である。
著者
井沢 真吾
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.63-68, 2010 (Released:2012-02-13)
参考文献数
26

酵母が発酵によって生産するエタノールは,一方で酵母細胞自身にとって増殖や生理活性を阻害する毒物でもある。したがって,酵母はエタノールストレスに対する耐性メカニズムを備えていると考えられるが,その研究は主にmRNAの転写レベルで行われてきた。本論文の著者らは,エタノールストレス適応においてmRNA転写後の翻訳に至る過程で様々な調節が行われていることを明らかにした。また,清酒醸造においては酵母細胞内のmRNAの動態が他のエタノール発酵系と異なることを示した。
著者
能勢 晶 濱崎 天誠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.6, pp.362-370, 2016 (Released:2018-07-13)
参考文献数
16

清酒製品の着色は,品質劣化の大きな要因であることから,製造者及び販売店は輸送時や店頭での着色増加が起こらないよう大きな注意を払っているのが現状である。 着色反応は温度の影響を最も大きく受けるが,今回,割水由来のフミン酸が存在すると,低温下でも蛍光灯の光により徐々に着色が進行し品質が劣化していくことが著者らによって見出された。 最近は,出荷前の瓶貯蔵が多くのメーカーで行われており,店頭での陳列時と合わせて,蛍光灯の光を受ける機会が増えてきており,当事者の知らない間に着色が進行していることが考えられる。醸造用水の環境悪化による有機物の混入も多くなってきていることから,フミン酸による着色現象や着色機構,品質への影響等について解説して頂いた。熟読をお勧めしたい。
著者
奥田 将生 橋爪 克己 沼田 美子代 上用 みどり 後藤 奈美 三上 重明
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.699-711, 2009 (Released:2016-02-10)
参考文献数
24
被引用文献数
5 9

酒米研究会が収集した気象データの明らかな試料を用いて,気象データから米の溶解性に関する酒造適性を予測できるかどうかを検討する目的で,気象データとデンプン特性及び蒸米消化性の関係について解析した.出穂後1ヶ月の平均気温はアミロペクチン短鎖/長鎖比及びアミロース含量とは高い相関関係を示した。また,出穂後1ヶ月の平均気温は,DSCやRVAの測定値とも高い相関性を示した。酒米統一分析条件での蒸米消化性(デンプンの消化性)は出穂後1ヶ月の平均気温が23℃付近で消化性が高くなるような関係を示した。もろみに近いデンプンの老化を反映させた条件では,出穂後1ヶ月の平均気温と蒸米の酵素消化性(デンプンの消化性)は直線的な負の高い相関性を示した。それぞれの条件で出穂後1ヶ月の平均気温でデンプンの消化性を予測する式を構築し,この式より2008年度の試料について予測できるか検定したところ,予測値と実測値は出穂後1ヶ月の平均気温でどちらの条件でもデンプンの消化性を比較的精度良く予測できた。また,タンパク質含量は気温と強い相関がみられなかったものの,タンパク質の消化性はデンプンの消化性と同様な傾向を示し気温と有意な相関性を示すことがわかった。以上の結果から,出穂後の1ヶ月間平均気温によってかなり高い精度で米の溶解性に関する酒造適性を予測できる可能性が示された。
著者
豊田 健太郎 池崎 秀和 平林 和之 三村 昭彦 那須 賢二 戸塚 昭
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.49-58, 2016 (Released:2018-05-28)
参考文献数
13
被引用文献数
4

清酒の味を味覚センサー(味認識装置)で評価した結果,以下の知見を得た。1.BT0センサーは疎水性部分を持つペプチドに応答し,清酒の後味(膨らみ感,味の幅)の評価に活用できる可能性が示された。純米酒では,BT0センサーの出力が高く出る傾向が認められ,清酒の後味(膨らみ感)に着目した官能検査との間で相関が認められた。2.CT0センサーは有機酸塩に応答し,清酒の「濃醇感」の評価に活用できる可能性が示された。3.BT0とCT0の2本のセンサーを用いて,清酒の「後味」及び「濃醇感」という2つの項目によって清酒の味を識別することができた。4.清酒の味わいの違いを表示する方法を提示した。