著者
松田 勝敬 森 大毅 粕谷 英樹
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.477-487, 2000-07-01
参考文献数
25
被引用文献数
3

ささやき声の低次のフォルマント周波数が, 通常発声に比べてわずかに高いことが知られている。本論文ではこの現象について, 声門下部系の結合を考慮した声道の電気回路モデルをもとに音響的に説明することを試みる。モデルにおける, 3次元声道形状は磁器共鳴画像(MRI)から測定した。その結果, 声門上部構造のせばめと, 声道と声門下部系との結合が低い周波数のフォルマントを上昇させる主な原因であることが分かった。
著者
曽根 敏夫 城戸 健一 二村 忠元
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.320-326, 1962-11-30
被引用文献数
40 7

We subjectively evaluate the acoustics of rooms and the qualities of acoustical instruments by evaluating musical sounds, speech sounds, and others passing through them. In such a case we had expressed the evaluations by some descriptive adjectives such as "rich", "clear", "resound" and so forth. But there are a variety of expressions to describe the impression of such sounds, and it is uncertain what and how many adjectives we should use. Judging from the number of physical factors influencing those sounds, we expected that it is possible to select a limited number of adjectives sufficiently evaluating those sounds and made two experiments. The first experiment was made from the standpoint of room acoustics. 15 differentlyconditioned sounds made with a reverberation equipment were rated on 21 seven-category scales defined by polar-opposite adjectives. As a result of factor analysis of the intercorrelation between scales by the centroid method, four nearly orthogonal factors were extracted; (1) the aesthetic or lyric factor, (2) the one expressing "volume" and "extent", (3) the one expressing "brightness" and suchlike, (4) the one expressing "softness" and suchlike. The secound experiment was made by varying the lowest resonance of a dynamic loudspeaker by means of a simulator. The ratings were made by the Scheffe's method for pair comparison, and the result proved consistent with the first one.
著者
中山 実 清水 康敬
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.368-373, 1989-05-01
被引用文献数
11

平仮名文の提示パターンをテレビ画面に提示し、無音、BGM音、テレビのCM音、雑音の4種類の音環境下で被験者に音読させ、学習能率としての音読速度と学習意欲の指標としての瞳孔面積を測定した。その結果、音読速度、瞳孔面積とも無音の音環境下で最も大きな値を示した。ナレーションを含むテレビのCM音は音読速度を最も低下させ、不快に感じる雑音は瞳孔面積を最も小さくした。更に被験者のそれぞれの音環境に対する特性を調べて音読速度との相関関係や音圧レベルとの関係も調べた。
著者
永幡 幸司
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.406-417, 2000-06-01
被引用文献数
18

本研究では, 視覚障害者がある場所で聞こえてくる音からその場所を特定する際の過程の分析を行った。その結果, 視覚障害者が音から場所を特定する過程には, ある音の存在からおおざっぱに場所の特徴を特定した後に, 他の音の存在から詳しく場所を特定していくという「階層的」な過程と, ある場所で聞かれる特徴的な音すべてを総合的に判断することで場所を特定するという「並列的」な過程の2種類があり, 人によってそのどちらかを採用していることが分かった。また, どちらかの過程を採用するにせよ, 音から場所を特定する際に具体的に用いている音は, 人によって異なっていることが明らかとなった。
著者
伊藤 憲三 水島 昌英 北脇 信彦
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.431-440, 2005-08-01
参考文献数
28
被引用文献数
1

入力信号を音声とそれ以外の信号(非音声)に識別して, 定常雑音を効率的に抑圧する方式を提案した。音声と非音声の識別には, 入力信号の周期性を表す特徴量, 信号スペクトル特徴, パワーなどを用いた。雑音抑圧処理は, スペクトルサブトラクション(SS)とロスコントロール(LC)を併用した。SSでは, 周波数重みづけによって雑音を差し引くこととし, また, LCはSSで消し残った残留雑音を損失制御することによって無音区間の残留雑音を完全に除去した。種々の雑音を用いて評価実験を行った結果, 信号対雑音比が10dB程度以上の雑音条件下で良好な動作をすることを示した。また, 本方式をマルチマイク集音系と組み合わせることによって更に性能を向上させることを示した。更に, 聴覚障害者による数字了解度試験を実施し, 提案した雑音抑圧処理が難聴者の聴こえに非常に有効であることを示した。
著者
石田 明 小畑 秀文
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.911-917, 1991-12-01
被引用文献数
8

音声認識装置を例にとって考えると、音声信号処理の分野で雑音処理は重要な研究課題である。特に背景雑音は、音声入力と間違えて応答する原因になるなど、認識率の著しい低下を招く。この問題は、実環境に存在する様々な非定常な雑音、とりわけ、ドアの開閉音のような継続時間の短いものに起因することが多く、この種の雑音対策は単純ではなく、より高度な雑音処理技術が必要とされる。本論文は、雑音環境の中の継続時間の短い非定常雑音と人間の音声とを区別する手法について述べたものである。本手法は、雑音と音声とを区別する重要な手掛かりとして、母音らしい部分を含むか否かの情報を用いることとし、そのための特徴量として周期性/ピッチ周波数/最適線形予測次数/5母音との距離/第1ホルマントのQという五つの特徴量を選定した。本論文では、この特徴量について詳細に検討を行い、特徴量の分布とそれらの変化パターンとを用いることで、音声と非音声の区別を高精度に行うことができることを示す。また、この手法をS/N比の低下した信号に対して検討を行い、耐雑音性の点でも優れた特徴量であることを示す。
著者
黒岩 和治 的野 孝明 カバタンチ ムアンバ
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.443-451, 1984-07-01

This paper describes a method for separating each of progressive (direct) and retrogressive (reflected) sound waves in real time which are traveling between the source and the reflector and are overlapped mutually. In this method, the sound wave is expressed and measured in the form of a correlation function obtained from the source and receiver signals in the case of scanning the time delay (variable) and fixing the receiving position (parameter). In order to realize the real time separation, three microphones closely set at the receiving position are used. From them, time delay differential and space differential values are derived. Then, by addition and subtraction of these two differential values, each of progressive and retrogressive sound waves can be obtained separately. Some experiments based on the theory in the case of normal incidence are carried out. Then, considering about the measured sound waves concerning the attenuation by distance and the traveling time, it is shown that the theory and the procedure of separating are valid. But, it is not yet about the case of oblique incidence.
著者
高木 興一 松井 利仁 青野 正二 酒井 雅子
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.957-964, 1995-12-01
被引用文献数
12

本研究では、パチンコ、音楽鑑賞などの娯楽に伴い暴露されるような音の危険性をTTS(騒音性一過性域値変化)の観点から、暴露実験により評価することを試みた。暴露実験の結果、パチンコ店、ディスコ、ライブハウスの音を2時間暴露すると20dB程度のTTSが生じ、その聴力への危険性が大きいことが示された。一方、ヘッドホンステレオでの聴取を想定した、洋楽、邦楽のCDの音の暴露では、3〜5dBのTTSが生じるのにとどまった。また、既存の2種類の予測式によりTTSを計算したところ、どちらの予測値も実測値に比較的よく追随し、レベル変動の大きな変動騒音によるTTSの予測に対し、両予測式を適用できることが分かった。
著者
甲田 壽男 永田 可彦 小木曽 久人 中野 禅 山中 一司
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.836-841, 1994-10-01

生体リズムで機械を駆動するという外燃を初めて提唱しその具体的な実現の方法を示した。生体リズムとして心拍信号を検出し、これから得た心拍間隔から電力調整器を制御する信号を発生させ扇風機の回転を制御する方法である。心拍間隔、制御電圧、扇風機の回転数及び風速を測定しそのパワースペクトル密度を求めた結果、心拍間隔に見られる1/f揺らぎ特性や呼吸の影響などがそれぞれのパワースペクトル密度に保存されていた。
著者
若松 勝寿 堀井 憲爾
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.468-476, 1993-07-01
参考文献数
14

本論文は雷鳴の発生と伝搬、ロケット誘雷実験による雷鳴の観測法及び雷鳴解析による雷放電路の再現方法について述べている。雷鳴に含まれる特徴音を使用し、短い時間窓の相関解析から雷撃点近傍の雷放電路を詳細に再現し、最終電撃距離や雷撃進入角度が求められることを示している。自然雷の雷鳴に近い継続時間の長い雷鳴では、ゼロ交差数から相関解析の時間窓を決定して雷放電路を連続再現している。また、多重雷では支配的な雷鳴を形成する雷鳴から再現できることを示している。
著者
山口 善司 壽司 範二
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.8-13, 1956-03-30
被引用文献数
5

In order to get the real ear response reflecting the actual characteristic of a receiver, the relationship among the sound pressures in the free field, at the entrance of a ear canal, ant at the ear drum was found by using the probe tube microphone, with the subject seated facing the sound source in the free field. From the results that the relation between the sound pressure at the entrance of the ear canal ant that at the ear drum was constant in case of both open ear and ear closed by a receiver, the real ear response of a receiver was found to be measured easily. After this experiment, the real ear response of two kinds of receivers were measured. As s results, the conversion coefficient from the conventional coupler response to the real ear response was shown concerning each receiver. By using this conversion coefficient, so far as we use the same kinds of receivers, it is possible to convert directly the real ear response from the coupler response which is easily and accurately obtainable without repeating the complicated measurement of the real ear response.
著者
上田 麻理 藤本 一寿
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.301-308, 2010-07-01
被引用文献数
2

雨天時は,降雨による環境悪化によって視覚障害者が屋外歩行時に危険に晒されているという意見が聞かれる。視覚障害者も雨天時に屋外を歩行する機会が少なくないことから,雨天時の視覚障害者の歩行の安全確保は重要な課題であり,その解決は急務である。本研究は,視覚障害者の雨天時の歩行環境整備の第一歩として,視覚障害者のための雨天時の歩行環境の問題点を明らかにするために,視覚障害者と歩行訓練士を対象に三つのアンケート調査を実施した。その結果,雨天時は,"傘にあたる雨音"等の降雨騒音によって,視覚障害者が歩行時に利用している聴覚情報の聴取が妨害されていることが分かった。そこで,雨天時の環境騒音レベルを測定してみたところ,降雨量がやや強い雨の状態で晴天時に比べ15dB以上高かった。このことから,視覚障害者の雨天時の歩行環境整備として,聴取妨害となる降雨騒音の低減が必要であると結論した。
著者
龍田 建次 吉久 光一 久野 和宏
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.554-560, 1998-08-01
被引用文献数
8

名古屋市では, 市内の国道1号沿道に騒音常時監視装置を設置し, 1974年依頼騒音レベルの測定を継続している。本論文では, これらのデータを基に, L_<Aeq>の観測時間とその測定値との関係について, 基礎的な検討を行った。その結果, 幹線道路沿道では, 1)観測時間長を1時間から24時間あるいは1週間とすることによって, L_<Aeq>の90%レンジが11.4dBから4.2, 2.4dBと狭くなること, 2)L_<Aeq>の日変動パターンは, 平日と休日では大きく異なること, 3)L_<Aeq, 1h>の90%レンジは, 平日と休日, 時間帯あるいは各時刻に分類することによって, 最小3.5dBまで狭くなること, などが確認された。
著者
加藤 雅代 古村 光夫 橋本 新一郎
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.888-896, 1994-11-01
被引用文献数
10

日本語の発音リズムとされる、モーラ単位の等時性という言語習慣に基づく新しい日本語リズム規則を提案する。まず、母音部エネルギー重心点CEGVをリズムのタイミング点と仮定し、日本語リズムを母音部エネルギー重心点間の時間長D_Gで定義した。発声器官の物理的構造による制約が、等時性を乱す第一の要因であるという仮説を立て、実音声の分析を通じて検証した。分析実験の結果をモデル化することにより定めた本リズム規則は、一つのVCV形音韻連鎖内の音韻情報のみを用いた非常にシンプルな規則ではあるが、発話速度の変化にも対応でき、音声合成のための規則として十分実用に耐えるものである。