- 著者
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箕輪 光博
- 出版者
- 林業経済学会
- 雑誌
- 林業経済研究 (ISSN:02851598)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.1, pp.110-115, 1997-03-01 (Released:2017-08-28)
- 参考文献数
- 12
本稿は,10年ほど前に劇的な民営化に踏み切ったニュージーランド(以下,略してNZ)の国有林を取り上げ,その背景,内容,現状,評価を素描すると共に,あわせてわが国の国有林の民営化について言及したものである。NZ林業・林産業の特徴は,ラジアータパイン松主体のモノカルチャー型,平地林型,輸出志向型の育成的林業,川上から川下までの一貫した技術主導型の経営,短伐期指向(25〜30年伐期)などにまとめられる。国有林の民営化は,そのようなNZ林業の特質,官業としての国有林経営の非効率さなどに起因しているが,より根本的にはロジャーノミックスと呼ばれる経済変革,成人式と言われる社会変革の一環として断行されたものである。民営化は,林業公社,保全局,林業省への3部門分割(1987年)と国有林のアセットセール(伐採権の売却: 1990年以降)の2段階にわけて行われた。1996年までに,約45万haの国有林・伐採権が売却され政府の林木資産保有割合は10%以下に低下した。生産面と保全面を分離し,かつ人工林経営の徹底した民営化に踏み切った今回のNZの変革は,10年を経た今日賛否両論に晒されてる。我が国の国有林のあり方を考える際には,NZ民営化の功罪とその特殊性,及び我が国の国有林の歴史と使命を十分に考慮する必要があろう。