著者
永山 理穂
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-04-25

本研究は、男性美容部員(化粧品企業の販売小売店で接客を担う従事者)に着目し、美容産業における労働実践と美のあり方に関するジェンダー規範が変容・再生産するメカニズムを、X社・Y社の企業比較分析を通して検討する。本研究の研究課題は以下の2つである。まず、資料分析を行い、各社において労働実践と美のあり方に関する言説がいかに変遷してきたのかを明らかにする。つぎに、各社ごとに男性美容部員へのインタビュー調査を実施し、彼らの行為戦略を分析する。そのうえで、各美容部員の行為戦略の結果、ジェンダー規範がどのように変容・再生産されるのかを示す。
著者
李 東宣
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

今年度も引き続きオックスフォード大学にて研究を続けられたことで、問題関心がより明確になり、博士論文を具体的に構想する段階に至ることができた。博士論文では、トマス・バーロウというアングリカン聖職者を中心に、一七世紀半ばにおけるさまざまな論争の思想的基盤を明らかにする。イングランド一七世紀半ばの内戦期・空位期は、従来の君主制と国教会体制が崩壊した中、政治権力の本質とその限界という論点が最も顕著に浮上し、また宗教論争が最も根本的な次元で繰り広げられた時期である。この時期のアングリカン思想は、そもそも歴史的な分析が行き届いておらず、数少ない先行研究の中では反/非政治的に描かれてきた。しかしバーロウの一連の著作は、これまで専ら神学の観点から分析されてきたものも含め、実は宗教と政治の境界線を緻密に論じており、アングリカンという立場を維持しつつ共和政の権威を一定程度受け入れている。このようなバーロウの思想とそれを取り巻く知的潮流をたどることで、これまで明らかにされなかったアングリカン思想の一側面に光を当て、従来の政治思想の枠組みで宗教を語るのではなく、宗教内在的な議論から政治思想を語ることを博士論文では目指す。当初計画した王権論研究とは一見距離があるが、近世ブリテンにおける宗教と政治を分かつ境界線の論争性と、一見「宗教」的な議論の中に潜む政治性という点では一貫しており、かつ最新の研究を踏まえた着眼点という面でより大きな学術的貢献が期待できる。
著者
新林 力哉 (2023) 新林 力哉 (2022)
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-03-08

古代社会では祈雨など政治的・社会的に意味のある祭祀を為政者が行うことが重要である。本研究は、日本古代における天皇がどのような構造で地方の神々を祭っていたかを検討し、古代天皇が持つ祭祀執行者としての性格を明らかにするものである。特に地方神祭祀の究明を重視するのは、各地域の共同体を支配下に置く天皇がその神をどのように祭るかが国家としての特性を表すという考えからである。また地方神祭祀を研究するため国司や地方豪族の祭祀のあり方をも対象とし、天皇祭祀との関係を検討することで、古代国家の地方神祭祀の構造を明らかにする。そして奈良時代から平安時代後期にわたる変化を追い、古代国家の中世への変化を明らかにする。
著者
山岸 蒼太
出版者
関西学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

本研究は、教育・職業・当事者組織を中核に構成されてきた従来型の視覚障害当事者コミュニティと日常的に接点をもたない視覚障害者の経験に着目し、彼らのアイデンティティのあり様を社会学的に考察することを目的とする。健常者あるいは障害当事者間でどのような関係を取り結んでいるのかをライフヒストリーインタビューや参与観察を通じて明らかにする。
著者
田近 周 (2023) 田近 周 (2020-2022)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-03-08

海洋の酸性化は海洋生態系に大きな影響を与えるといわれており、近年盛んに研究されているテーマである。過去の大量絶滅事変は、海洋酸性化等の環境変動とそれが生態系に与えた影響を直接観察できる絶好の研究材料である。本研究では、特に良好に保存された化石試料を採取・分析することによって白亜紀末の大量絶滅事変における海洋酸性化を復元し、それが当時大繁栄していたアンモナイトの絶滅とどのように関連していたのか、について検証を行う。
著者
古澤 卓也
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

少なくともある程度は競争的な選挙の下で特定の政党が長期間勝利し続ける体制(一党優位制)には、権力が安定するというメリットがある一方で、実質的な競争の不在による腐敗といったデメリットもある。ジョージアでは、安定性と競争性が奇妙な形で共存している。すなわち、常に特定の政党が議会選挙で連続して勝利し国政を支配してきた一方で、第一党自体は定期的に交代してきたのである。本研究はこのようなジョージア政治の特徴を「特殊な一党支配体制」と名付け、そのメカニズムを分析する。本研究は単にジョージア政治に関する理解を深めるだけでなく、政治における安定性と競争性の存立条件を明らかにすることを目的としている。
著者
岡 瑞起
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

コンピュータシステムで集積された情報の分析結果を,セキュアシステム構築のために活用するためには,結果をユーザに分かりやすく可視化して提示することが必要不可欠である.可視化する際に重要な要素である「色」に注目し,画像に使用されている色の組み合わせが自動的に調和的に変更する技術の開発を行った.既存の手法では,画像の色を変更した際に,大域的な色の整合性が保たれないという問題があり,色の具合に不自然さが残るという問題があった.この問題を解決し,より大域的な空間整合性を確保する手法の提案を行った.この成果は,電子情報通信学会論文誌に採録された.また,Microsoft Research Asia(MSRA,北京)にて6ケ月間の研修を行い,セキュリティ強化のために一般に広く使用されているユーザ認証技術に関する研究を行った.ユーザ認証技術としてユーザの自由な描画(スケッチと呼ぶ)を用いた認識技術を提案した.スケッチをしてもらう絵を用いる,という新しいアイディアの提案を行った.システムのユーザビリティを高めることを第1の目的とし,ユーザが署名を書くときのように絵を書いてもらっても高精度に認識できる方向性パターンという特徴を用いた.方向性パターンとは,スケッチを画像として扱い,検出されるエッジをいくつかの方向に量子化した特徴を指す.方向性パターンを特徴として用いることにより,スケッチの揺らぎを吸収し,精度よく認識を行うことが可能となることを実験データにより示した.この成果を米国特許として申請中(2008年4月現在)である.
著者
関根 雅
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-04-25

本研究では平均場ゲーム理論を用いて、多人数ゲームとしてのファイナンスモデルを考察する。具体的には、金融市場における市場参加者の相互作用を考慮し、その均衡における証券価格や投資家たちの戦略分布を記述する理論モデルを構築した上で、その理論の社会実装方法を提案することを目的とする。また、より長期的には金融市場のみならず経済全般への応用も目指している。本研究が進展すれば、投資家たちの競争・協調行動の効果を織り込みながら金融危機等を分析できるようになり、均衡における人々の状態分布を考慮に入れた効率的なリスク管理方法や投資戦略、そして投資の促進や市場の規制といった政策の方法などを提供できると期待される。
著者
三反畑 修
出版者
国立研究開発法人防災科学技術研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

伊豆島弧の海底カルデラ火山では、地下浅くの高圧マグマと断層破壊が相互作用して発生すると考えられる『火山性津波地震』という特異な火山性地震が約十年間隔で発生し、大きな地震動を伴わずに数十cmの津波を引き起こしている。本研究は、地震波・津波の観測記録を基にした観測ベースの研究と、マグマと断層破壊が相互作用する現象を物理理論によって再現する理論ベースの研究によって、火山性津波地震の動力学的な発生メカニズムと、その火山活動との関連を明らかにすることを目指す。この研究によって、直接観測が困難な離島的な海底火山で繰り返す特異な現象の実態解明が期待される。
著者
西森 早紀子
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-04-25

T2K実験でニュートリノ振動を精密に測定することで、物質優性宇宙の謎を解明する鍵となるレプトンにおけるCP対称性の破れの検証を行う。現在2σ以上の信頼度でCP対称性の破れを示唆しているが、今後統計数を確保することで統計誤差が改善される。本研究では、ニュートリノビーム生成過程のニュートリノフラックス不定性の最も大きな要因であるハドロン生成の精密測定を、スイスにあるCERN NA61実験により行い、ニュートリノ振動が最大となるエネルギー領域でのニュートリノフラックス不定性を改善させる。これによりニュートリノ振動解析の系統誤差を削減し、レプトンにおけるCP対称性の破れの発見に繋げる。
著者
林 昌子 (2023) 林 昌子 (2022)
出版者
東京都立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-03-08

研究の目的は、福祉国家成立に貢献したR・H・トーニーの思想と活動を掘り起こすことで、現代イギリスにおける福祉政策や、地域福祉サービスの実践に与えている影響を明らかにすることにある。トーニーの社会思想の土台をなすキリスト教社会主義が、イギリスにおける社会主義の歴史、および宗教改革以来のキリスト教思想史の中で、どのような影響のもとに形成されたのかを解明する。研究成果を報告する機会としては、人体科学会、日本社会思想史学会、イギリスのウィリアム・テンプル財団等において、学術大会における研究報告および論文投稿によって行う。
著者
宮前 健太郎
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2021-04-28

明治期に年間10万人を超える死者を出した伝染病・コレラは高い致死率と感染力、患者の凄惨な病状から、当時の人々にかつてない恐怖をもたらした。それゆえに、伝染病としてのコレラそのものと並んで問題化したのが、伝染病をめぐる流言蜚語である。日本各地で発生した地域住民による隔離病院襲撃や警察との衝突、いわゆる「コレラ一揆」も、元々は「隔離された患者は生き肝を奪われる」、「警察官は消毒と称して病原菌を散布している」といった流言の流布によって起きたものである。申請者は今後これまでの研究内容を踏まえつつ、コレラをめぐる流言の特徴や成り立ち、背景、それを解消するために行われた啓蒙活動の諸記録を検討していく。
著者
高岸 治人
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本プロジェクトの目的は、心の理論と呼ばれる他者の心的状態を推測する認知能力と社会行動(利他性)の関連を検討することにある。本年度は昨年度実施した自閉症スペクトラム障害を抱えた成人(ASD参加者)を対象にした実験で測定した眼球運動の解析を行った。課題は自分より多い金額を受け取る人(Xさん)と自分より少ない金額を受け取る人(Yさん)が存在するという状況の中で、Xさんの取り分をどのくらい減らすか、もしくはYさんの取り分をどのくらい増やすかを回答するという方法で行った。実験の結果、まずASD参加者は、精神疾患や発達障害を持たない健常参加者よりもYさん(自分より少ない金額受け取る人)の取り分を増やさない傾向を持つことが明らかになった。また、注視時間に関してもASD参加者はYさんの利益に注意を払わない傾向を持つことが明らかになった。これらの結果は、ASD参加者は行動レベルでも認知レベルにおいても利他性に関して健常参加者とはまた違った傾向を持つことを示している。次に第二実験としてオキシトシンをASD参加者へ投与することで利他性が促進されるかどうかを確かめる研究を実施した。オキシトシンはこれまで授乳時、分娩時に重要な役割を果たすホルモンであると考えられてきたが、近年の研究の結果、他者に対する信頼や心の理論といった社会性を促進させる働きを持つことも明らかになった。またこれらの結果を受け、近年、ASDの改善薬として注目が集まっている。実験では、20名のASD参加者に対してオキシトシンを投与し、投与前後の利他性の程度を測定した。結果に関しては現在分析中である。
著者
木谷 佳楠
出版者
同志社大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究はアメリカの映画史を宗教の観点から研究調査するものである。日本においては様々なアメリカ文化が流入しており、我々の目から見れば、アメリカは諸外国の中でも最も親しみを感じる国かもしれない。しかしながら、我々は知っているようで実はアメリカの核心は知り得ていない。その核心とは、人種と宗教との関係性を考慮に入れない限り知り得ないものである。ビュー・リサーチ・サンターによって2010年に行われた世論調査によると、アメリカ人の41%は2050年までにイエスが再臨し、終末が訪れると信じているのである。しかも、同調査では白人の福音派の人々の58%が差し迫った終末の訪れを信じているという結果が出ている。この終末思想は世俗の文化であると見なされているアメリカ映画にも影響を及ぼし、これまで数々の終末を描いたディザスター映画の制作に寄与している。他にもアメリカン・ヒーロー像をよく観察すると、その特徴はイエス・キリストをモデルとしていることが分かる。例えばヒーローは、ひとりで戦い、彼は人間でありつつも超人であり、映画の後半で一度は痛めつけられるが再び復活して敵を倒す、などの特徴が挙げられる。アメリカ映画の中にキリスト教的要素を見つけることができるのは、そもそもハリウッド映画業界がユダヤ人によって形成されたところに端を発している。キリスト教徒たちから不道徳な文化を社会に発信していると非難を受けたユダヤ人映画製作者たちは、やがて1930年代よりキリスト教を映画という文化を守るための盾として用いるようになるのである。このように、映画は単なる娯楽文化のようであって、その実は宗教と人種の問題と密接に関わっているものなのである。本研究はその関係性を明らかにするものであり、特に本年度はキリスト教福音派の人々が持つ終末観がいかにアメリカの映画表象に影響を及ぼしているのかということを明らかにするため、1970年以降から2010年までの映画についての調査を行った。
著者
高倉 龍
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2021-04-28

操作的に自然な最も広い物理理論である一般確率論(GPTs)における1つの理論として量子論をとらえることで,量子論に特有の性質や量子論の本質を明らかにする研究を行う。本研究では特に,量子論において重要な現象である不確定性・非局所性をGPTsに拡張しその性質を調べることで,量子論の不確定性・非局所性の更なる理解を得ることを目標とする。具体的には,1)量子論で成り立っている状態準備の不確定性と同時測定の不確定性の「等価性」がGPTsにおいてどの程度一般的であるか,2)GPTsにおける最大エンタングルド状態が量子論のものと同様の物理的・数学的な性質を示すか,の2つの項目について研究を行う。
著者
越智 秀明
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

本年度は、前年度に注目した18世紀ヨーロッパにおけるポーランド・リトアニア共和国(以下、ポーランド)を対象とした言論の研究を進めるべく、まずはヴォルテールのポーランド論を検討した。ポーランド国内においてカトリックによる反動的不寛容が蔓延していたことは、ヴォルテールの関心をひくきっかけではあったが、それだけに止まらず、ポーランド分割を複数の複雑な文脈の中で捉えていることがわかった。特にポーランドの状況には、国内における王政派と共和派の対立、ロシアやスウェーデン、デンマーク、プロイセンといった所謂「北方」諸国の台頭やオスマントルコ帝国の弱体化といった国際パワーバランスの変化が大きく関わっていると捉えている。以上の研究をまとめたものを、2020年度政治思想学会大会自由論題報告において報告する予定である。また、この研究と並行して、当時のポーランドを左右しえた言論状況を検討すべく、共和派の言論(ルソー、マブリ)、バール連盟関係著作(ヴィエルホルスキ、パッツ)、ポーランドをフランスの身近な存在にした諸著作(コワイエ、ダルジャンソン)、直接政治の現場にたった王の諸著作(エカチェリーナ、フリードリヒ、スタニスワフ=アウグスト)、ポーランド啓蒙の著作(スタニスワフ・レシチニスキ、コナルスキ)などの著作の検討を始めた。このうち、ある程度進展している共和派の言論とバール連盟関係著作に関する研究については、2020年度社会思想史学会研究大会で報告する予定である。博士論文の完成には至っていないが、以上の研究を進め、まとめていく予定である。
著者
大崎 果歩
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

本年度は前年度に引き続き、『杜翁手澤聖書』と呼ばれる、トルストイ自身による赤線や青線、取り消し線の書き込みがみられるロシア語福音書に関する分析を行った。1880年代初頭に書かれた『四福音書の統合と翻訳』と、1896年に刷られたロシア語福音書への書き込みの間には十数年の時間のずれがあり、その間にどの程度トルストイの聖書観に変化がみられるかという問題については引き続き調査が必要であるものの、トルストイ自身の書き込みと、『四福音書の統合と翻訳』で示された彼の聖書読解を照らし合わせることによって、彼が行った書き込みの背後にある、かなりの程度統一された基準とその根拠を明らかにすることができた。また本年度は、コロナウイルス感染拡大によりモスクワや東京の研究施設へのアクセスが制限され、資料収集や研究上の交流が困難な状況に陥ったが、それまでに収集した資料をもとに先行研究を読み込み、またトルストイのキリスト教観に対してロシア正教会の高位聖職者が示した反応の整理も行った。加えて、神学博士で、ロシア正教会渉外局長の座についているイラリオン(アルフェエフ)府主教が著した『カテヒジス――正教信仰への案内』という、正教の神学や奉神礼、教会暦、聖人、イコン、教会建築等の基礎がわかりやすく解説されたロシア語書籍の共訳を行った。現在は出版にむけて校正を行っている最中である。研究成果に関しては年度内の公開が間に合わなかったが、新型コロナウイルス感染症の影響による半年の採用延長が認められたため、来年度前期に英語口頭発表と日本語論文発表を予定している。
著者
伊角 彩
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

東京都足立区で2015年度から実施している悉皆調査「子どもの健康・生活実態調査」を用いて 、小学生高学年の子どもの自殺リスク要因を縦断的に検討する。具体的には、小学校4年生時点および6年生時点の希死念慮を主要アウトカム、自己肯定感・幸福度・コーピング・抑うつ傾向を副次アウトカムとして、1)家庭の経済的状況、2)家族構成の変化、3)ネガティブな親子の関わり(虐待傾向を含む)、4)友人と地域とのつながり、5 )いじめられた経験とボジティブな親子の関わりの交互作用との関連を調べる。
著者
湯地 智紀
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2021-04-28

代数幾何学という分野において主に研究される対象は、スキームと呼ばれる対象である。スキームに課される条件Pに対して、「条件Pを満たすスキームたちと、それらの間の"関連"」というデータ(これをC(P)とおく)を考える。本研究では主に、条件PとデータC(P)の間の関係について調べる。例えば、本研究で問われる問題として、ふたつの条件P,Qに対して、C(P)とC(Q)がデータとして異なる場合に、PとQが条件として異なるだろうか、という問題が挙げられる。
著者
辻村 昇太
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

令和元年度は、数論的な体の絶対ガロア群の組み合わせ論的特徴付けについて、関連した次の2つの研究成果を得た。1.有理数体Qの絶対ガロア群G_Qの充分大きな閉部分群のグロタンディーク・タイヒミュラー群GTにおける通約化部分群からG_Qへの準同型であって、元の閉部分群に制限すれば、包含写像になっているものを構築した。G_Qの閉部分群はQのある代数拡大体に対応しているが、上述の充分大きなという条件は、「その代数拡大体の任意の有限次拡大体の乗法群の可除元のなす群が1のべき根のなす群に含まれる」といった体論的な条件である。これまでの遠アーベル幾何学の研究に現れる多くの体に加え、p進局所体の最大アーベル拡大のような円分指標が消えている体がこの条件を満たしていることも確認しており、そのような設定での遠アーベル幾何学の研究も今後の興味深い課題の一つに思われる。例えば、上述の準同型を構築する際に、J.Stix氏による数体の最大円分拡大上の種数0双曲的曲線に対する弱グロタンディーク予想型の結果の、上述の体論的な条件を満たす体上における設定への一般化を行った。前年度に投稿した論文に、これらの結果を書き加え、論文の再提出を行った。2.望月新一氏、星裕一郎氏との議論により、GTの部分群として、G_Qを組み合わせ論的に構築する研究の遠アーベル幾何学への応用を与えた。具体的には、数体の最大円分拡大体上の種数0双曲的曲線に付随する高次配置空間に対するグロタンディーク予想を証明した。このことに関する結果は、前年度より引き続き行っているBGT(G_Qの組み合わせ論的な候補)に関する研究をまとめた論文に書き加える予定で、現在投稿準備中である。また、前年度、及び、今年度に得た結果に関する講演を4回、中国科学技術大学、オックスフォード大学、ノッティンガム大学、ソルボンヌ大学で行った。