著者
中田 彩 沖田 実 中居 和代 中野 治郎 田崎 洋光 大久 保篤史 友利 幸之介 吉村 俊朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-5, 2002-02-20
被引用文献数
10

本研究では, 臥床によって起こる拘縮を動物実験でシミュレーションし, その進行過程で持続的伸張運動を行い, 拘縮の予防に効果的な実施時間を検討した。8週齢のIcR系雄マウス34匹を対照群7匹と実験群27匹に振り分け, 実験群は後肢懸垂法に加え, 両側足関節を最大底屈位で固定し, 2週間飼育した。そして, 実験群の内6匹は固定のみとし, 21匹は週5回の頻度で足関節屈筋群に持続的伸張運動を実施した。なお, 実施時間は10分(n=8), 20分(n=7), 30分(n=6)とした。結果, 持続的伸張運動による拘縮の進行抑制効果は実施時間10分では認められないものの, 20分, 30分では認められ, 実施時間が長いほど効果的であった。しかし, 30分間の持続的伸張運動でも拘縮の発生を完全に予防することはできず, 今後は実施時間を延長することや他の手段の影響を検討する必要がある。
著者
吉野 浩一 大野 範夫 鈴木 貞興 藤井 杏美
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【はじめに】<BR>立位バランスまたは歩行時の安定性に大きく関与していると考えられる足趾の機能を評価することは、下肢の疾患に対する理学療法を施行するうえで重要である。臨床上も立位バランス不良の症例において、足趾の開俳運動不全を呈していることをしばしば経験する。そこで今回、足趾開俳機能と足趾把持機能との関連性について検討したので報告する。<BR>【対象と方法】<BR>対象者は測定時に下肢に愁訴のない成人男性22名,44足を対象とした。平均年齢は29.2±4.5歳,平均身長172.3±5.3cm,平均体重66.5±6.6kgであった。足趾の開俳は足関節底背屈0°にて、自動運動で足趾の開俳が可能であるかを評価した。その際、代償運動排除のため足部のMP関節伸展に制限を加えた。可否の判定は足趾間の接触がなく開俳可能なものと定義した。その後、全被験者の足趾屈筋の筋力(把持力)を測定した。測定にはT.A.G.メディカル社製EZフォース(プロトタイプ)を使用し、自作の足趾把持用のバーを取り付け測定した。測定肢位は自然立位とし、片側に対し3回施行し両側の測定を行った。測定された数値(peak)は3回の平均値とし、体重で除し体重比で算出した。尚、測定された筋力は全足趾開俳可能群(以下開俳群)と非開俳可能群(以下非開俳群)に分け、開俳機能と足趾屈筋筋力との関係について比較検討した。統計処理にはマン・ホイットニ検定を用い危険率5%以下を有意とした。<BR>【結果】<BR>22名44足中、11名の両側22足に足趾の開排不全が認められた。開排不全の最も多かったのは4,5趾間で13足、ついで3,4趾間9足、2,3趾間5足、1,2趾間5足であった。尚、2趾間以上重複しての開排不全は10足であった。また、足趾把持筋力(体重比)の平均値は開排群0.146±0.03kg/BW、非開排群0.108±0.02kg/BWで(p<0.05)にて有意差を認めた。<BR>【考察】<BR>今回の実験において足趾開排の差における足趾把持筋力の有意差が確認できた。これは足趾同士が接触せず、足趾間が開排する事により屈筋がより収縮しやすい足趾の肢位に置かれたことによるものと思われる。この結果、足趾の把持能力改善には足趾の開排運動が有効であることが示唆された。また、足趾別の検討として、非開排群においては4,5趾間の開排不可が13足と多く、この影響も考えられたが、重複した開排不全が10足あり、足趾別の把持力貢献度は今回の実験では検討することはできない。今後、足趾固有の機能についても検討していきたい。<BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR>
著者
浅井 友詞 野々垣 嘉男 谷田 武喜 水口 静子 石田 和人 堀場 充哉 和田 郁雄 水谷 武彦 水谷 陽子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.191-195, 1996-05-31
被引用文献数
2

大腿四頭筋部における超音波断層法(以下US法)の最適測定部位および有用性について検討した。方法は,患肢,健肢に対してコンピュータ制御式筋力測定装置により等速性膝伸展最大筋力,超音波断層装置により膝蓋骨上縁5,10,15,20,25cm位の筋肉厚およびコンピュータトモグラフィーにより筋断面積を求めた。結果,筋力と筋肉厚の間には10,15cm位で有意な相関がみられ,筋断面積と筋肉厚の間には10cm位に有意な相関がみられた。したがって,US法の最適測定部位は10,15cm位と思われた。また,臨床の場において筋力の発生には,心理的要因,神経的要因が関与するため,筋の絶対筋力を計測することは困難である。そこでUS法は,筋力,筋断面積を反映し,筋の萎縮あるいは筋の回復を推察するために有用であると考えられた。
著者
半田 健壽
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-5, 2005-02-20

日本理学療法学術大会(以下大会)は今回で39回を迎えた。宮城県理学療法士会の担当で平成16年5月27日(木)から29日(土)の3日間にわたり, 「病気障害, そして健康-理学療法学の近未来に向けて」をテーマに行われた。大会開催は, 10数年前からの開催構想, 士会で開催のコンセンサスを得ることまで含めると5年間にわたる準備の一大プロジェクトであった。特別講演をはじめ多くの企画に加え, 一般演題もこれまでの最高の1,059題(応募数は1,070題)に昇り, 参加者総数は4,910名, うち有料参加者数2,782名を数え, 活発な学術交流が図られたことは喜ばしい限りである。 本稿は大会長基調講演の発表を元に加筆し, 作成したものである。 大会開催に当たって 日本理学療法士協会(以下協会)は会員数も3万名を超え, 大会への参加者も前述の通り増して来た。日本で理学療法制度の誕生より約40年の間に多くの変化があったが, 中でも理学療法の理論的背景は大きく変化している。
著者
宮川 哲夫 高橋 仁美
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.177-182, 2005-06-20

人口の高齢化, 喫煙, 環境の変化に伴い慢性閉塞性肺疾患(COPD)は, 世界的に増加の傾向にある。世界的なCOPDの治療ガイドラインもまとめられ, 呼吸リハビリテーションは包括的内科治療と供に治療の第一選択であり, そのエビデンスも十分に確立されてきている。一方, COPDを中心とした慢性呼吸不全の在宅呼吸ケアには, 在宅酸素療法(HOT)と在宅人工呼吸療法(HMV)があげられるが, いずれも生活支援を行い, 日常生活機能を改善させ, 健康関連QoL(HRQoL)を改善させる包括的な呼吸リハビリテーションの一環として実施されなければならない。ここでは在宅呼吸リハビリテーションについて概説する。COPDの疫学 2001年に行われたNICE(Nippon COPD Epidemiological)study(日本慢性閉塞性肺疾患疫学調査)によれば, 我が国でのCOPDの発症率は40歳以上で8.5%およそ530万人と推定されており, 2000年には初めて死亡原因の第10位となった。現在, COPDは世界の死亡原因の第4位であり, 有病率や死亡率は数十年の間にさらに増加し, 2020年には第3位と予想されている。
著者
望月 かほる
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.236-240, 1991-05-10

練馬区は, 東京都23区の北西部に位置し, 面積は48km^2で, 23区の中では世田谷区, 足立区, 大田区についで5番目の広さである。区の面積の90%は住宅地であり, いわゆる東京のベッドタウンとして発展してきた。平成3年1月1日現在の住民基本台帳に基づく人口は 612,975人, 世帯数は 247,600世帯であり, 65歳以上の人口は 59,866人で, 区内総人口の 9.8%を占めている。23区内では比較的高齢化率の低い方の区に属している。当区における脳卒中による死亡率は, 訪問指導が開始された昭和53年度は第2位の34%であったが, 昭和63年度は第3位の14.2%と減少してきている。区内にある医療機関は病院, 診療所を合わせて440所だが, そのうち150床以上の総合病院は2所しかなく, これら総合病院には常勤理学療法士は置かれていない。また, 運動療法の施設認可基準病院は, 47床規模の1施設のみである。大きな人口をかかえながら本格的な医療設備をもった病院の数が少ない練馬区において, 医療終了後の在宅住民に対して, 機能回復訓練など保健事業の実施主体である保健所は重要な役割を担っている。以下, 練馬区の保健所・保健相談所が行っている訪問指導, 機能訓練の状況をまとめてみた。
著者
古賀 稔啓
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.233-236, 2005-06-20

障害者スポーツの代表的なものとして車椅子バスケットボールがあるが, 最近は障害に応じた多種多様なスポーツの選択ができるようになり, 多くの障害をもった人たちが生活の中でスポーツを取り入れ, また日常生活において介助を必要とする重度の障害をもった人たちもスポーツに挑戦できる時代になってきた。重度脳性麻痺者がスポーツをするために必要となる競技用具が研究開発されるようになってきたことが重度障害者がスポーッ参加できるようになった要因である。本稿では, 個々の障害に応じた競技用具の工夫について紹介する。足蹴り用レーシング車椅子 脳性麻痺でも上肢機能が下肢機能よりも劣っている場合に, 下肢で車椅子を駆動させてスポーッを行うための車椅子である。下肢で地面を蹴って駆動させるために, 後ろ向きでの走行になる選手もいる。その場合の車椅子では, キャスター部分が背側に付けられており, ハンドル操作は体側部分に付けられたハンドルレバーの操作で行われ, キャスター部分と連結しており, ダンパーを取り付けることでハンドルレバーを触らない時は直進できるようになっている(図1, 2)。
著者
金谷 さとみ
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.285-287, 2005-06-20

社会情勢と臨床教育 地域で暮らす要介護高齢者, 障害者およびその家族は保健, 医療, 福祉にまたがるサービスニーズを持っており, 地域での関係機関, 職種間の連携は非常に重要なものとなる。介護保険制度の導入で要介護(支援)高齢者におけるものはかなり整備されたが, 介護保険対象外の障害者においても同様の整備がすすんでいる。現在, 保健, 医療, 福祉の方向性は, 入院期間の短縮と在宅ケアの推進へ, そして中央機関から地方機関へと大きく流れを変え, 理学療法は理学療法士の数が圧倒的に少ない現状と, 増加を見込まれる将来を踏まえ, 前述のような社会変化とともに, その役割も少なからず変化していくものと考えられる(図1)。生活支援系での理学療法は, 医療施設で一時的に提供される機能回復とは異なり, 長期的な経過の中で提供される機能回復, 機能維持(または低下の予防), 機能低下への適切な対応と捉えることができる。そして, その目的は対象者の生活全体を支援し, (本人の望む)社会参加や社会活動を促すことにあり, つまり, それは保健, 医療, 福祉のみならず, 教育, 雇用, 都市計画などを包括するノーマライゼーション(normalization)を目的とする考え方に到達する。