著者
網本 和 杉本 論 深井 和良
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.29-33, 1994-01-31
被引用文献数
9

片麻痺例の基本動作において, いわゆる健側の上下肢によって支持面を押すため正中軸をこえて麻痺側方向へ転倒するPusher現象は左半個無視にともなうことが多い。そこで脳血管障害による左半側無視22例を対象に, 坐位・立位・歩行におけるPusherスコアを操作的に定義し, その重症度を規定した。Pusher現象は, 坐位よりも歩行時に顕著であった。Pusher現象は, 半側無視の重症度とは必ずしも関連せず独立した症候である可能性があり, 経過と共に変化する例があった。
著者
島田 裕之 古名 丈人 大渕 修一 杉浦 美穂 吉田 英世 金 憲経 吉田 祐子 西澤 哲 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.105-111, 2006-06-20
被引用文献数
27

本研究では,地域在住の高齢者を対象としてTimed Up & Go Testを実施し,性差と加齢変化を調べた。また,転倒,活動性,健康感との関係を調べ,高齢者の地域保健活動におけるTimed Up & Go Testの有用性を検討した。対象は地域在住高齢者959名であり,平均年齢74.8歳(65-95歳),男性396名,女性563名であった。検査および調査項目は,身体機能検査としてTimed Up & Go Test,歩行速度,握力,膝伸展筋力,Functional Reach Testを実施した。質問紙調査は過去1年間の転倒状況,外出頻度,運動習慣,趣味,社会活動,主観的な健康感を聴取した。Timed Up & Go Testを5歳の年齢階級別に男女差を調べた結果,すべての年代において男性が有意に速い値を示した。加齢変化をみると男女とも70歳末満と以上の各年代に有意差を認めた。男性においては他の年齢階級間に有意差は認められなかった。一方,女性では70-74歳と80-84歳,85歳以上,および75-79歳と80-84歳の間,80-84歳と85歳以上の年代問において有意差を認めた。転倒,活動性,健康感との関係では,転倒状況,外出頻度,運動習慣とTimed Up & Go Testの有意な関係が認められた。以上の結果から,高齢者におけるTimed up & Go Testは性差と加齢による低下が明らかとなった。また,転倒,外出頻度,運動習慣と密接な関係が示され,地域保健活動の評価指標としての有用性が確認された。
著者
坂本 年将
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.399-403, 1993-11-01
被引用文献数
2

健常女性15名30股 (正常群)と変形性股関節症患者75例121股 (患者群)において, 最大随意等尺性外転筋力 (最大筋力)を得るために必要な股関節外転運動回数を求めた。患者群は, X線像と臨床症状より, 健側群 (片側性患者の正常側:26股), 臼蓋形成不全群(16股), 前期群(11股), 初期群(22股), 進行期群(36股), 末期群(10股)に分類した。各群において80〜90%の対象股から最大筋力を得るためには, 正常群, 健側群, 臼蓋形成不全群, 前期群, 初期群では少なくとも4〜5回, 進行期群, 末期群では, 少なくとも8回の外転運動が必要であった。最大筋力の発揮に 6回以上の外転運動を要したものは, 正常群, 健側群, 臼蓋形成不全群では全て50歳以上の症例であった。股関節症の進行と加齢は最大筋力の発揮の遅延を引き起こす因子であると考えられた。
著者
江崎 重昭 川村 次郎 本多 知行 小野 仁之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.49-52, 1995-03-31
被引用文献数
3

電気刺激による筋力強化を目的に, 健常人10名の大腿四頭筋に対し, 高周波電気刺激を6週間行った。高周波電気刺激は周波数50KHz, パルス幅10μsecのパルスを周波数50Hzで変調した。刺激後6週での大腿周径と筋断面積の増加は認められなかったが, 最大随意筋収縮力は2.2±1.7kg・mの増加を認めた(p<0.01)。以上の結果より高周波電気刺激は健常人に対する筋力強化に有効であることが示唆され
著者
伊東 元
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, 1988-01-10

本協会学術誌編集協力者 小島 泉先生(東名古屋リハビリテーション学院教官)は昭和62年10月13日交通事故の為39歳の若さで死去されました。先生は国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院を卒業後, 下呂温泉病院に勤務され, 日々の臨床に励む傍ら大学に通い, その後米国ロングアイランド大学修士課程を終了し, 帰国後東名古屋リハビリテーション学院の教官として後輩の指導にあたっておられました。臨床, 教育だけでなく本協会の財政基盤検討委員会委員長として, 所帯の大きくなった本協会の財政基盤の見直し作業を精力的に行ってこられました。向学心, 研究心が旺盛で, 後輩の面倒をよくみられ, 将来にむけた視野の広かった先生に無理をお願いして, 本年度から本誌の編集協力者になっていただいておりました。ご多忙のなか, 投稿論文の査読を快く引き受けて下さり, 的確なコメントをつけて下さいました。本誌の編集方針に関して, 「本誌に対する若手会員の注意, 関心を向かせるような編集を!・・・・・・」等, 常に後輩や, 将来の理学療法に目を向けた意見を寄せて下さった小島先生の急逝は誠に残念です。本編集委員会は先生のご意見をこれからの編集の中に生かすべく取り組んでまいりたいと考えております。ここに生前のご指導に深く感謝し, ご冥福をお祈り申しあげます。
著者
金子 文成 車谷 洋 増田 正 村上 恒二 山根 雅仁
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.115-122, 2005-06-20
被引用文献数
3

本研究の目的は, 一連の投球動作中に変化する筋活動の様相について, 先行研究にあるように投球相毎に平均化するのではなく, 連続的時系列データとして動的変化を示し, 肩関節回旋筋腱板を構成する筋における活動動態の差異について検討することであった。大学生野球部投手1名の投球中(球種は直球)に, 肩関節回旋筋腱板を構成する4筋から筋電図を記録した。そのうち棘上筋, 小円筋, 肩甲下筋にはワイヤ電極を使用した。棘下筋には能動型表面電極を用いた。筋電図は振幅および時間軸共に規格化した(nRMS)。各関節運動の加速度はビデオカメラで記録した画像から算出した。反復した投球間における, nRMSのばらつきである変動係数は, 筋によって異なる特徴を示した。筋活動動態の連続時系列的変化として, 10球分のnRMSを平均した(nRMSavg)曲線の最大値出現時間は, 筋毎に異なっていた。投球において動的機能が重要視される肩関節回旋筋腱板において, nRMSavgが時々刻々と入れ代わる様子が明らかになった。筋間の相関性も筋の組み合わせによって異なり, 棘下筋と小円筋が強く相関していた。反復した投球における筋活動動態のばらつき, 連続時系列的なnRMSavgの変化, そして筋間の相関性の特徴は, 個人内での筋活動動態の特徴を検出するための指標として有効である可能性があると考えた。
著者
河津 弘二 槌田 義美 本田 ゆかり 大田 幸治 緒方 美湖 吉川 桂代 山下 理恵 山鹿 眞紀夫 古閑 博明 松尾 洋
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-29, 2008-02-20

本研究は,地域における一般高齢者向けの,介護予防を目的とした運動プログラム「長寿きくちゃん体操」の紹介をするとともに,地域主体での教室運営による運動プログラム介入前後の身体機能面と精神活動面で変化がみられたことを報告する。教室の対象は,老人クラブの21名(74.1±3.7歳)で,期間は3ヶ月問であり,教室は他機関の健康運動指導士が運営した。身体機能面の変化に対し,教室の前後で,10m全力歩行,開眼片脚立ち,握力,長座位体前屈,Timed Up & GO Test (TUGT),6分間歩行を評価した。また,日常生活活動や精神活動の変化に対し,アンケート調査で,主観的健康観,FallsEfficacy Scale (FES), MOS Short-Form-36-Item Health Survey (SF-36),グループインタビューを実施し,また痛みの変化ではNumeric Rating Scale (NRS)を実施した。結果は,身体機能面で,10m全力歩行,TUGT,6分間歩行,握力で有意な改善を認めた。また,精神活動面は,主観的健康観で有意な変化を認め,他項目でも改善傾向があった。地域リハビリテーションでの介護予防教室に対し,ポピュレーションアプローチでの間接的な運動プログラムの提供により,心身の変化の可能性を示唆したと考えられた。
著者
坂本 望 大谷 拓哉 新小田 幸一 前島 洋 吉村 理 飛松 好子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.45-51, 2007-04-20
被引用文献数
1

認知症高齢者の易転倒が認知機能の低下によるものか,運動機能低下によるものか明らかにするために,認知症高齢者の外乱に対する反応を調べた。対象は認知症を有する高齢者(認知症群)10名と認知症を有さない高齢者(対照群)7名であった。外乱は移動速度100mm/s,移動距離50mmの床面の前方向への水平移動とした。この外乱を予告なしに5回加えた時の,足圧中心と前脛骨筋,大腿直筋の筋電図のアナログ信号を2000Hzでサンプリングし,A/D変換を行った。足圧中心データから足圧中心移動距離,足圧中心応答時間,筋電図データから各筋の潜時,潜時から500ms間(O-500ms間),及びその後の500ms間(500-1000ms間)における各筋の%筋電図積分値を算出した。足圧中心移動距離,500-1000ms間の前脛骨筋%筋電図積分値において,認知症群は対照群と比較し,有意に小さい値を示した。一方,足圧中心応答時間,各筋の潜時,0-500ms間における前脛骨筋,大腿直筋,500-1000ms間における大腿直筋の%筋電図積分値において2群間に有意差は認められなかった。これらの結果から,認知症群は対照群と比較し,外乱に対する反応への遅延を引き起こしていないことが明らかとなった。しかし,足圧中心を移動させず,少ない前脛骨筋の活動量で立位保持を行っていた。
著者
安藤 正志 丸山 仁司 小坂 健二
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.10-13, 1995-01-31
被引用文献数
4

速く歩行させた(高速度歩行)後, また遅く歩行させた(低速度歩行)後, 快適歩行はどのように影響されるかを確認することを目的に, 健常成人30名(男12名, 女18名・平均年齢19.3歳)を対象として10m直線路上を歩行させた。1. 快適歩行を連続4回施行させ, それぞれの歩行所要時間, 歩幅そして歩行率を比較したところ, 再現性が確認できた。2. 高速度歩行後に快適歩行を再生させ, 事前に測定した快適歩行と比較したところ, 所要時間は一時的(5秒時)に短縮し歩幅, 歩行率は一時的に増大した。3. 一方, 低速歩行後の快適歩行では, 所要時間は増大し, 歩幅, 歩行率は減少した。しかしながら, これらの異なった歩行速度における干渉効果は時間経過とともに減弱してしまうことが確認できた。
著者
上出 直人 柴 喜崇 前田 真治 荻野 美恵子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.130-134, 2005-06-20
被引用文献数
1

進行性核上性麻痺患者に対し, 部分体重免荷トレッドミルトレーニングを含んだ短期集中練習を施行し, 歩行能力への影響を検討した。症例は69歳男性。介入開始時の歩行能力は, 屋内歩行最小介助レベルであった(FIM移動下位項目:4)。介入方法は, 体重免荷装置を用いて, 体重の30%以内を免荷した状態で, トレッドミル上での歩行トレーニングを3〜5分間施行した。トレッドミルの速度は, 症例が耐えうる最大の速度とし, トレーニング回数毎に漸増させていった。全8回のトレーニングを含んだ短期集中練習実施後, 症例の歩行速度, 歩幅は改善を示した。しかし後方易転倒性は変化せず, ADL上の移動能力や転倒頻度については改善しなかった。部分体重免荷トレッドミルトレーニングは, 歩行時の両下肢の協調的なステッピング運動を短期間で向上させる効果を有するが, バランス能力には効果が小さいことが示唆された。ADL上での移動能力の向上につなげるためにはバランストレーニングとの併用が必要であることが示唆された。
著者
高尾 敏文 斉藤 秀之 田中 直樹 飯塚 陽 奥野 純子 柳 久子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.180-187, 2011-06-20

【目的】本研究の目的は,慢性期脳卒中患者に対する体重免荷トレッドミル歩行練習(BWSTT)の即時効果について明らかにすること,さらに継続介入による効果と合わせて,BWSTTによって歩行能力がどのように変化していくのかを示すことである。【方法】対象は,慢性期脳卒中患者8名であった。内訳は,年齢(平均±標準偏差)は59.0±9.0歳,性別は男性6名・女性2名,片麻痺の原因疾患は脳出血5名・脳梗塞3名,麻痺側は右7名・左1名であった。週3回・4週間(計12回)のBWSTTを実施した。【結果】BWSTT実施前後では,歩行速度は実施前に比して後が有意に速く,歩幅は実施前に比して後が有意に広がった。継続介入による効果では,快適歩行速度,最大歩行速度,最大歩幅および最大歩行率で有意な改善を認めた。【結論】慢性期脳卒中片麻痺患者に対するBWSTTによる歩行速度の改善は,即時的には歩幅の改善,経時的には歩行率の改善による可能性が示唆された。
著者
相馬 正之 吉村 茂和 寺沢 泉
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.119-123, 2004-04-20
被引用文献数
4

本研究の目的は,若年者と中,高年者で遊脚相中における禄趾と床が最小となる最小拇趾・床問距離に至る時間と全遊脚相時間の関係および最小拇趾・床間距離が加齢の影響を受けるかどうか明らかにすることである。被検者は健常女性,若年群が20歳代30名,中高年群が50歳代10名,60歳代10名,70歳代10名とした。測定項目は基本的な歩行データと最小拇趾・床問距離,全遊脚相時間などとした。結果,若年群と比較すると高齢群では速度および歩幅,全遊脚相時間が有意に低下していた。また,最小拇趾・床間距離の値は,若年群,高齢群共に17.3〜18.2mmで差が認められなかった。全遊脚相時間も同様に0.37〜0.39sec,つま先離れから最小拇趾・床問距離に至るまでの時間が0.13〜0.15 secに収まっていた。このことから,最小拇趾・床間距離は,快適歩行下で加齢の影響が認められず,高齢者においても保たれていることが明らかになった。高齢者では,加齢の影響により歩行能力の低下が明らかにされている。しかし,最小拇趾・床間距離において加齢の影響が認められなかったことは,高齢者が最小拇趾・床間距離の低下を個人の機能に見合った何らかの補償を行うことにより,最小拇趾・床間距離に差が認められなくなった可能性が推測された。
著者
奥田 邦晴
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.227-232, 2005-06-20
被引用文献数
1

近年, 障害者のスポーツが盛んになるにつれて, 従来の身体機能の維持, 改善を目的としたリハビリテーションの一環としてのスポーツの意義というよりは, むしろ競技能力を競い合うという本来のスポーツが有している意味合いが強くなってきている。一方, 重度の障害者のためのスポーツは楽しみとして, レクリエーション的な要素を多分に含んだものとしての位置づけが確立されてきており, 重度の障害者でも積極的にスポーツ活動に参加できる可能性が広がってきている。理学療法の大きな目的として障害者の生活支援がある。この生活支援の具体的方法の一つであるスポーツに焦点を当て, 本稿では特に重度の障害者の生活遂行過程におけるスポーツの機能ならびに理学療法学との接点について報告する。障害者のスポーツとは 障害者のスポーツとは, 障害者が余暇を楽しみながら, 健康でより活動的な人生を充実させていこうとする一つの手段であり, 種目数も個人競技, 団体競技ともに非常に多くなってきており, その内容も競技からレクリエーショナル的要素を含んだスポーツまで多岐にわたっている。
著者
横井 輝夫 佐藤 典子 益野 淳子 郷間 英世
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.343-347, 2004
参考文献数
18
被引用文献数
1

離乳期の口腔機能に停滞していると考えられる重症心身障害児・者の適切な食形態の基礎資料を得るために,口腔機能の発達段階と食形態のレベルについて実態を調査した。対象は3歳から55歳(平均年齢28.1歳)までの摂食・嚥下障害が疑われる重症心身障害児・者92名である。方法は離乳の初期,中期,後期に特徴的にみられる口腔機能である舌運動と顎運動を評価し,提供されている食形態のレベルとの関連を調べた。結果,舌運動と顎運動については大多数が離乳中期までの段階に停滞していた。一方,離乳後期以降の食形態が主食で3割,副食で8割の者に提供されていた。全体的に舌運動と顎運動の機能に対し有意にレベルの高い食形態が提供されていた。口腔機能は,食形態や摂食姿勢などの食事環境との相互作用で発達していく。誤嚥性肺炎や食べる楽しみの喪失などを予防するために,口腔機能の発達段階に適した食形態のレベルについての再考が必要であると考えられた。