著者
横山 茂樹 高柳 公司 松坂 誠應 大城 昌平 金々江 光生 東 英文
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.125-128, 1995-05-31
被引用文献数
12

足底部を氷水で冷却することにより, 同部の感覚を低下させることが, 立位姿勢調整及び歩行運動にどのような影響を及ぼすか検討した。対象は健常男子15名とし, 足底部を冷却する前後で, 立位時の重心動揺と歩行時の床反力を測定した。重心動揺の指標として, 重心動揺面積, 重心動揺集中面積, 重心動揺実効値とし, 床反力では垂直・前後・側方分力のピーク値及び足圧中心軌跡における側方への重心動揺振幅を検討した。立位時の重心動揺において, 冷却の前後では各測定値とも有意に増大した。しかし, 歩行時の床反力の各ピーク値及び側方重心動揺振幅に有意な差は認められなかった。以上のことから足底部からの感覚情報人力減少は立位調整に大きな影響を与えるが, 歩行運動においては影響が少ないことが推察された。
著者
対馬 栄輝 尾田 敦
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.218-225, 1996-05-31
被引用文献数
13

変形性股関節症患者にみられる跛行の原因の一つとして歩行時股関節外転筋の反応が遅延,すなわち立脚期踵接地時における下肢筋の活動開始時期が遅延していると考えた。本稿の目的は変形性股関節症患者における歩行時下肢筋の活動開始時期を計測して,健常者と比較検討することである。変形性股関節症患者10名と健常者10名を対象として,自由歩行時の中殿筋と大腿直筋のEMG,並びにフットスイッチから信号を記録し,踵接地に対して股関節外転筋と膝伸展筋の活動が開始する時期を測定した。その結果,患者群は各筋における活動開始時期の間に有意な相関関係は認められず,各筋の活動開始時期に変調が起こっていると考えられた。また健常群と比較して各筋活動開始時期は有意に遅延しており,動作の予測制御(pre-activity)の遅延が生じていると考えられた。この結果から運動の協調性の改善を目的とした閉鎖運動連鎖での訓練を頻繁に取り入れていく必要性が予想された。
著者
奥壽郎 網本 和 渡辺 敏 牧田 光代 岡本 慎哉
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.125-130, 1991
被引用文献数
11

パーキンソニズムの平衡機能評価として, 立位重心動揺検査を用い静的立位重心動揺に加え, 連続的かつ随意的最大に身体を振幅させる動的立位重心動揺(側方・前後)測定も行い, 健常者と比較検討した。また動的立位重心動揺測定は, 後方及び側方よりVTR撮影し身体関節運動を併せて分析した。対象はパーキンソニズム患者10例, 健常者10例であった。パーキンソニズムの特徴的な結果として, (1)静的重心動揺では, 重心位置が後方に位置していた (p<0.05)が, 他の因子には差はなかった。(2)動的重心動揺では側方・前後共に, 重心移動能力と身体偏位角の低下が認められた (p<0.01)。以上の結果よりパーキンソニズムの平衡機能評価は静的立位重心動揺のみならず, 動的立位重心動揺測定を実施することで,より具体的に把握できるものと考えられた。
著者
和田 治 建内 宏重 市橋 則明
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.356-362, 2009-12-20

【目的】骨盤の矢状面アライメントが,身体回旋動作における胸郭・骨盤・脊柱回旋可動域および身体重心移動量に与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は骨・関節および神経疾患のない健常成人男性17名とした。三次元動作解析装置を用いて,身体回旋動作時の胸郭・骨盤・脊柱回旋可動域および身体重心移動量(後方・側方)を求めた。開始肢位の骨盤前傾角度を自然立位(中間位),自然立位より5度前傾位(前傾位),自然立位より5度後傾位(後傾位)の3種類とし,各条件で身体回旋動作を測定し,これらの項目を比較した。【結果】身体回旋角度において,前傾位での回旋では,中間位での回旋と比較し,胸郭・骨盤・脊柱とも回旋角度は有意に低値を示した。後傾位での回旋では,中間位での回旋と比較し,胸郭・骨盤・脊柱とも回旋角度は有意に低値を示し,前傾位での回旋と比較すると,脊柱の回旋角度が有意に低値を示した。身体重心移動量は,前傾位での回旋では,中間位での回旋と比較して,後方重心移動量が有意に小さく,側方重心移動量が有意に大きい結果となった。後傾位での回旋では,中間位での回旋と比較して,後方重心移動量,側方重心移動量とも有意に小さくなった。【結論】本研究により,骨盤の矢状面アライメントは胸郭・骨盤・脊柱回旋可動域および身体重心移動量に影響を与えることが示唆された。
著者
備酒 伸彦 安田 俊吉 山下 康将 中田 雅子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.103-107, 1991-03-10
被引用文献数
1

在宅健常高齢者の「生活」に関する知識・認識を得るため, 60歳以上の在宅健常者118名を対象として, ADL・APDL(生活関連動作)の中から抽出した代表的な10項目の価値序列に関する調査を行った。なお, 結果の処理にあたっては, 対象を年齢・性・家族構成の別で18グループに分類して検討した。全グループ共通して, 価値序列の上位層は排泄・食事, 中位層は入浴・更衣・整容・意志伝達・屋内移動, 下位層は屋外移動・仕事(家事)・交際であった。このうち上位層, 下位層では全グループに共通した価値序列がみられたが, 中位層においては性別による序列の相違が大きかった。また仕事(家事)の項目については, 性・年齢・家族構成の相違が反映されていた。
著者
川島 敏生 野鳥 長子 武田 真佐美 高嶋 直美 長尾 啓子 重松 雄大 長屋 説 佐藤 宜充 山上 繁雄 栗山 節郎
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.345-350, 1998-07-31
被引用文献数
4

膝前十字靭帯損傷による神経受容器の機能低下によって筋の反応時間の遅れが予想される。また, 膝前十字靭帯損傷後の患者は特有な歩容を呈することが指摘されており, これが大腿四頭筋に与える影響も考えられる。今回それを検証することを目的に, 膝荊十字靭帯損傷患者の大腿四頭筋の等速性筋力・力発生率, 脛骨の前方動揺距離を測定するとともに, 表面筋電図を用いて大腿直筋・内側広筋の筋電図反応時間・電気力学的遅延・周波数解析などを行った。各パラメーターを健側・患側で比較した結果, 患側の等速性筋力・力発生率には有意な低-ドが, 脛骨前方動揺距離には有意な増大カ月忍められた。さらに, 患側の電気力学的遅延に有意な遅延が認められるとともに, 患側の内側広筋の平均パワー周波数に有意な低下が認められた。電気力学的遅延と脛骨前方動揺距離に相関は認められなかった。反応時間のうち, 中枢過程を反映するといわれている筋電図反応時間には差が認められず, 末梢過程を反映するといわれている電気力学的遅延に有意な遅延が認められた。また, %タイプII維が高い者に増大力月忍められるという力発生率と内側広筋の平均パワー周波数に有意な低-ドが認められた。これらのことから, 膝前十字靭帯損傷後の反応時間の遅れの原因が, 神経受容器の障害であるという予想に反し, 内側広筋のタイプII維の萎縮が原因であると推察した。また膝前十字靭帯損傷後の患者は大腿四頭筋の収縮を避ける歩容や股関節屈曲モーメントを大きくする歩容を呈するといわれている。この様な歩行が2関節筋で股関節屈曲作用もある大腿直筋と単関節筋で膝関節伸展作用のみの内側広筋の活動量に差をもたらし, その結果として同じ大腿四頭筋でありながら, タイプII維の萎縮に差を生じさせたと考えた。