著者
機関誌編集委員会
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-3, 1991-01-10

マシュー先生は1954年ボストン大学の理学療法学科を卒業し, 1967年ノースカロライナ大学の修士課程で公衆衛生学修士号を取得された。1982〜1985年, APTA副会長を務め, 1985年から会長に就任し, 現在に至っている。大学院で, 地域社会における保健・医療推進プログラムについての内容の検討, 評価の方法について研究し, 現在はある特定の地域社会の理学療法サービスの必要度を調査し, その結果に基づいて, その地域に適した, 場所, 理学療法士(人ではなく専門性), 設備, 機器を選択して, 情報管理システムのサービス提供などの仕事を主にやっておられる。インタビューにあたって, マシュー先生の地域ケアに関する豊富な知識, 経験の中で日本の地域ケアの発展のために少しでも役立つものを引き出すことができたらと願った。地域ケアというものは, その地域に住む人たちの生活, 文化と深い関わり合いをもっている。米国と日本とではそれぞれ大きな違いがあるが, 戦後40年間, わが国は米国をモデルとして学び, 追いつき, 追い越せをモットーとしてきており, リハビリテーション, 地域リハビリテーションも全くその通りである。このインタビューのなかから少しでも学ぶものがあったら望外の喜びとするものである。なお, このインタビューは第25回日本理学療法士学会の特別講演のため来日した機会をとらえ1990年5月28日帝国ホテルで行ったものである。
著者
生野 公貴 北別府 慎介 梛野 浩司 森本 茂 松尾 篤 庄本 康治
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.485-491, 2010-12-20
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,脳卒中患者に対する1時間の末梢神経電気刺激(PSS)と課題指向型練習の組み合わせが上肢機能に与える影響を検討することである。【方法】脳卒中患者3名をベースライン日数を変化させた3種のABデザインプロトコルに無作為に割り付け,ベースライン期として偽刺激(Sham)治療,操作導入期としてPSS治療を実施した。1時間のSham治療およびPSS治療後に課題指向型練習としてBox and Block Test(BBT)を20回行い,練習時の平均BBTスコアの変化を調査した。さらに,PSS治療後24時間後にBBTを再評価した。【結果】全症例Sham治療後と比較して,PSS治療後に平均BBTスコアが改善傾向を示した{症例1: +4.9(p<;0.05), 症例2: +3.1, 症例3: +5.7(p<0.05)}。全症例の24時間後のBBTスコアが維持されていた。また,PSSによる有害事象はなく,PSSの受け入れは良好であった。【結論】1時間のPSSは課題指向型練習の効果を促進させ,24時間後もその効果が維持される可能性がある。
著者
石川 玲 香川 幸次郎 伊藤 和夫 小野 洋一 伊藤 日出男 対馬 均 進藤 伸一 菅原 正信 三浦 孝雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.433-438, 1988-09-10

寒冷や積雪が在宅脳卒中後遺症者の生活に及ぼす影響について検討するために, 青森県内2ヶ町村の在宅脳卒中後遺症者115名を対象に実態調査を行った。更に3年後39名について追跡調査を実施し, 以下の結果を得た。(1)非積雪期の生活で何等かの訴えを有する者は18%であったが, 積雪期では60%以上の者が訴えを有していた。(2)非積雪期の訴えは夏ばてや付添い者の多忙により通院できない等訴えの内容が多岐にわたっていたが, 積雪期では外出の制限や身体症状の増悪に関することに集中していた。(3)非積雪期での主な外出先は医療機関, 福祉・保健センター, 友人宅, 散歩であり, 積雪期では友人宅や散歩に出かける者が減少する反面, 医療機関や福祉・保健センターに出かける者の数は減少していなかった。寒冷や積雪は対象者の生活に多大な影響を及ぼしているが, 冬の外出は自己の行為に対する意味づけの軽重に規定されると考えられた。
著者
森近 貴幸 秋田 直人 浪尾 美智子 金谷 佳和 金谷 親好
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【目的】膝前十字靭帯(以下ACL)再建術後の競技復帰を目指したリハビリテーションでは、再建術からの時期、筋力などを考慮しながら運動強度を増加させてゆく効率的なプログラム構築が要求されている。また、早期復帰を目指し、ACLに負担をかけない筋力増強や再断裂予防のための取り組みも重要である。今回ACL再建術後の高校サッカー競技選手に対して、クリティカルシンキングによるプログラム構築を行い、アプローチとして動きによる気づきを取り入れた症例で効果的な知見が得られたので考察を交え以下に報告する。<BR>【方法】対象は試合中に受傷し、ACL再建術を施行した高校サッカー競技選手。治療プログラムにおいてクリティカルシンキングを用いて、筋力増強とともに基本的動作、サッカー動作、補助トレーニングをMECE(モレなく、ダブりなく)で段階的に行った。また、フェルデンクライス・メソッドによる動きによる気づき(以下ATM)を補助トレーニングの中に取り入れ、自覚的な運動能力の変化を評価した。ATMは、関節を滑らかに動かすレッスンなどで構成されており、1日に1プロセスをゆっくりと心地よい自動運動で行なった。<BR>【結果】クリティカルシンキングを用いたプログラム構築では、各時期に応じたメニューを提供することができ、MECEを活かしてトレーニングの無駄を省けた。また、治療への積極的な参加を促すことが出来た。ATMを取り入れてから、「余分な力が入らなくなった」「自分の身体に対する意識が変わった」という自覚的変化が現れ、動作が滑らかになった。トレーニングの段階が進むにつれサッカー動作の質が向上し、「ボールを扱う感じが違う」「ドリブルが楽になった」という感想と、「ボールタッチが柔らかくなった」という客観的意見が得られた。<BR>【考察】クリティカルシンキングを用いたことにより、各段階で必要な筋力や動きを明確にすることができた。この問題点を選手自身が認識することで、効果や取り組む姿勢に変化が現れた一因になったと考えられる。また、MECEにてプログラムのモレ、ダブりをなくしたことで時間的な効率が上がり、早期復帰につながるのではないかと考えられる。アプローチでは、フェルデンクライス・メソッドによるATMを補助トレーニングの中にレッスンとして早期から取り入れたことで、動きを通して自分の身体に対する気づきを学習することができた。これにより、走ったり、ボールを扱ったりする時期が来る前に神経系による身体の準備が完了していたため、サッカー動作トレーニングへの移行がスムーズに行なえた。さらに、受傷前の習慣的な動作が改善されたため、動作のレパートリーが豊富になり再断裂の予防とパフォーマンス向上につながったと考えられる。<BR>
著者
大平 高正 池内 秀隆 伊藤 恵 木藤 伸宏
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.420-425, 2004-12-20
被引用文献数
3

本研究の目的は,高齢者を対象に歩行開始時の足圧中心点(以下,COP)の後方移動(以下,逆応答現象)を調べ,1)足指筋力,足関節背屈筋力,歩行開始前後の静的バランス能力との関連性を調べること,2)各パラメータの若年者との相違を調べ,高齢者における逆応答現象の移動距離が減少する要因を調べることである。中枢神経疾患の既往の無い,在宅生活を送っている自立歩行可能な高齢者15名を対象とした。計測パラメータは,(1)逆応答現象の前後方向最大距離:As,(2)逆応答現象の左右方向最大距離:Al,(3)歩行前静止立位バランス:Bd,(4)歩行後静止立位バランス:Ad,(5)逆応答出現までの潜時:Cd,(6)足指最大圧縮力体重比:Fg,(7)足指圧縮力の増加の傾き:Gs,(8)足指圧縮力発生までの潜時:Gd,(9)足指圧縮力発生から最大圧縮力までの時間:Tp,(10)足関節背屈トルク体重比:Dtとした。AsとAlに強い正の相関が認められた。AlとBdに負の相関が認められた。CdとGdに正の相関が認められた。若年者群との比較では,高齢者群はGsが有意に低かった。転倒群に対し運動療法を施行するとAl,Gsの増大,Bd,Gdの短縮が認められた。今回の調査では,高齢者の逆応答現象に関与する因子の明確化には至らなかった。
著者
吉元 洋一 勝田 治己 長谷川 博一 杉浦 昌己 宮川 博文 古川 良三 青山 賢治 三橋 俊高
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.321-328, 1988-07-10
被引用文献数
4

脳卒中患者87例に対し, Brunnstrom Stageと姿勢反射機構検査を行い, 以下の結論を得た。1. 上・下肢Brunnstrom Stageと本検査得点の比較では, 全てのStageにおいて健側との間に有意な得点差を認めた(下肢StageI : p<0.05, 他は全てp<0.01)。2. 上・下肢StageIIとIIIの比較では, 健側及び麻痺側共に有意差を認めた(p<0.01)。3. 上肢StageVとVI, 下肢StageIIIとIV, IVとV, VとVIの麻痺側間の比較において有意差を認めた(p<0.05)。4. Brunnstrom Stageと本検査得点の相関係数は, 上肢健側r=0.555, 麻痺側r=0.825, 下肢健側r=0.613, 麻痺側r=0.872と中等度以上の相関関係を認めた。
著者
大城 昌平 穐山 富太郎 後藤 ヨシ子 草野 美根子 横山 茂樹
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.452-456, 1992-08-01

正常発達を遂げた成熟児を対照に, 重篤な合併症がなく正常発達の見込まれたAFD児, SFD児についてブラゼルトン新生児行動評価を用いて新生児行動の発達評価を行い, 加えて, ベイリー乳幼児発達検査による6ヵ月, 12ヵ月時の精神・運動発達について追跡調査を行った。その結果, SFD児では成熟児やAFD児に比べ新生児期の行動発達及び, 6ヵ月・12ヵ月時の精神・運動発達に遅滞傾向が認められた。SFD児は, より未成熟な要因に加え, 外環境からの刺激に対し, 意識状態の調整や注意集中, 運動調整系のストレス徴候を示しやすく, 環境との適応障害を起こしやすいものと考えられた。また, 結果的に乳児期の精神・運動発達にも影響を及ぼすものと考えられた。
著者
大城 昌平 穐山 富太郎 後藤 ヨシ子 横山 茂樹 鋤崎 利貴
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.355-358, 1996-09-30

本論文は低出生体重児77名を対象として,在胎週数に換算して(修正)44週時のブラゼルトン新生児行動評価(NBAS)とベイリー乳幼児精神運動発達検査(BSID)による修正12カ月時の精神運動発達との関連について統計学的に検討し,NBASが低出生体重児の早期介入及び療育の適応決定に有効であるかどうか考察した。NBASの8つのクラスター(漸減反応,方位反応,運動,状態の幅,状態調整,自律神経系の安定性,誘発反応,補足項目)と12カ月時の精神運動発達指数との関連を単相関分析により概観した結果,自律神経系の安定性クラスターを除いた他のクラスターと精神運動発達指数は有意な相関を示した。12カ月時の精神運動発達指数を目的変数,NBASの各行動クラスターを説明変数とした重回帰分析の結果,高い相関が認められ,精神運動発達指数はNBASから約60%の精度で説明することができるという結果であった。また,標準偏回帰係数を算出した結果,運動,状態の幅,誘発反応の各クラスターが統計的に有意に影響を及ぼす因子であった。これらのことから,修正44週時のNBAS評価は初期乳児期の精神運動発達を予測するうえで有用であり,早期介入及び療育の適応決定において有益であると考えられた。
著者
西本 哲也 小原 謙一 藤田 大介 土屋 景子 西本 東彦
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, 2007-04-20

【目的】理学療法教育場面で学生のモチベーションの問題は大きく取り上げられ、多数の養成校で授業や実習形態の工夫がなされている。問題解決型学習やクリニカルクラークシップなどもそうであり、臨床に即した実践・模擬実践を通して学生のモチベーションや臨床適応能力向上に効果があることが報告され、それらから学ぶべきことが非常に多い。我々はモチベーションが向上する背景には必然的にポジティブ感情が伴っているような漠然としたイメージを抱いている。Fredricksonはポジティブ感情が思考と行動のレパートリーを増加させるという拡大-構築理論を提唱しているが、今回我々はポジティブ感情の付与要素を創造・実現的刺激と、娯楽・癒し的刺激に分け、各々が行動意欲にどのような影響を及ぼすかを検討し、学生に有効なポジティブ感情を付与するための要素を見出そうとした。<BR>【方法】岡山県内の福祉施設業務に従事する介護関係職、看護師、ボランティアの計49名を対象とし、約2時間のイベント前後の行動意欲および気分について調査した。イベントはA群(男性6名・女性14名、平均31歳)が「介護予防におけるリハビリの基本技術」研修会、B群(男性4名・女性11名、平均34歳)が一般に人気の娯楽番組を2番組続けて鑑賞、C群(男性4名・女性10名、平均36歳)はコントロール群でイベントは通常の業務内容であった。行動意欲は単語レベルの自由記載で現在したいことを全て記入してもらい(5分間)、その後幾つかのカテゴリーに分類した。気分については坂野らの気分調査票を使用した。行動意欲、気分調査はイベント前後での記載数、点数を比較(Wilcoxon検定;p<0.05)し、カテゴリー、項目のイベント前後での増減についての比率も比較検討した(2サンプル比率検定;p<0.05)。またA・B群は終了後の満足度についての5段階評価も行った。<BR>【結果】行動意欲については小川らの研究を参考に10のカテゴリーに分類した。A・B群ではイベント前後で記載事項が有意に増えており、A群では「勉強・仕事」が有意に増加していた。B群では「遊び」など幾つかのカテゴリーでの増加傾向が見られたが有意に増えたカテゴリーはなく「勉強・仕事」はむしろ減少傾向であった。C群でも有意に増えたカテゴリーはなかった。気分調査ではどの群もイベント前後で有意な変化は見られなかったが、A・Bでは「爽快感」で増加傾向が、「疲労感」「不安感」で減少傾向が見られた。満足度はA・B群とも2名を除き4以上であった。<BR>【考察】A・B群ともイベントによる行動意欲の拡大が示唆されたが、A群ではより創造・実現的な要素が拡大され、B群のイベントである娯楽的な刺激ではその要素はむしろ減少した。息抜きは癒しになるが創造・実現なポジティブ感情を誘発することは難しい可能性がある。今後は行動意欲とストレス尺度や不安尺度との関連を調査する必要性を感じた。