著者
五十嵐 崇訓
出版者
Japan Society of Colour Material
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.156-163, 2012-04-20
被引用文献数
2 4

ファンデーションの開発では,ファンデーションを塗布した肌の色,つや,透過性を適正化するために,その光学特性の制御法が重要な技術テーマとなっている。このようなファンデーションの光学特性制御はおもに二つのアプローチにより達成されている。一つ目は,目的の光学特性を発現する粉体を合成し,この粉体をファンデーションに配合することで目的の特性を作り出すものである。二つ目は,ファンデーションを肌上に塗布した際に形成される化粧膜に,目的の光学特性を発現する構造を与えるものである。いずれの方法においても,光学特性の中でもとくに重要な反射に着目した研究が数多く報告されている。本報では,とくに消費者からの期待が高い,透明感のある美しい化粧仕上がりを目的とした先行研究をおもな事例として取り上げながら,ファンデーションの反射特性の具体的な制御法の概要を紹介する。さらに,この概要を受けて,今後の技術課題についてコメントする。
著者
坪川 紀夫 土田 秀世 小林 清高
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.280-285, 1993-05-20

多孔質のカーボンブラックであるポーラスブラック表面へのビニルポリマーのグラフト反応について検討した。粒子表面ヘラジカル重合開始基を導入する目的で, 細孔内ヘメタクリル酸メチル (MMA) とt-ブチルペルオキシ-2-メタクリロイルオキシエチルカーボナート (HEPO) とを吸着させた後, 重合を行うことにより, ペンダントにペルオキシ基を持つポリマー (poly (MMA-co-HEPO)) を細孔内へ保持した。このようなpoly (MMA-co-HEPO) を保持したポーラスブラックにより, スチレンやMMAの重合が開始され, 対応するポリマーが粒子表面ヘグラフトし, グラフト率は, 55~60%に達することがわかった。さらに, ポリマーをグラフトしたポーラスブラックは, グラフト鎖の良溶媒中へ長期間にわたり安定に分散することも明らかとなった。
著者
阿部 芳首 鈴木 康弘 郡司 天博 広沢 景 長尾 幸徳 御園生 堯久
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.643-649, 1997-10

新規な反応性錯体化合物として, アゾおよびアゾメチン化合物を配位子とする2-ヒドロキシ型チタンキレート錯体の合成とその熱分解を検討した。<BR>チタンテトライソプロポキシドは2当量の2-ヒドロキシアゾおよびアゾメチン化合物と定量的に反応し, チタンキレート錯体を生成した。これら錯体は, 分解点が102~115℃で熱安定性が低く, また容易に加水分解した。これらの性質は, これまでに報告している2, 2'-ジヒドロキシアゾおよびアゾメチン化合物を配位子とするキレート錯体がきわあて高い熱安定性と加水分解安定性を有しているのとは著しく異なっている。本実験で得られたキレート錯体を減圧下で熱分解した結果, 揮発成分として2-プロパノールとアセトンが生成し, 一方残渣として黒色の固体が得られた。この固体をTHFとヘキサン (1 : 10 (V/V)) で再沈殿して単離した熱分解生成物は, 配位子とチタンを構成成分とする分子量Mw2000~3700のポリマーであることがわかった。
著者
八木田 良実 橋本 晃 島田 和宏 松井 和則
出版者
Japan Society of Colour Material
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.321-326, 2012-08-20
被引用文献数
1

9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン(BPEA)の微粒子を,BPEAアセトン溶液を水に注入する再沈法を用いて作製し,その光学特性について研究した。作製したBPEA分散液は黄色の均一な溶液で,動的光散乱法により得られた平均粒子径は83~122 nmであった。BPEA分散溶液は,BPEAアセトン溶液とBPEAバルク結晶の間のスペクトル領域に吸収ピークがあり,ナノ粒子固有の吸収を示した。蛍光スペクトルは,525 nmと600 nm付近にピークを示した。前者は0.2 ns程度の蛍光寿命が主成分で,BPEA分散液をろ過して粒子サイズが小さくなると強度が増加するので,ナノ粒子固有の蛍光に帰属した。後者は50 ns程度の蛍光寿命が主成分で,バルク結晶と同一のピークをもっていることからバルク結晶と同一の起源の蛍光に帰属した。
著者
酒井 裕二 竹ノ内 正紀 阿部 正彦
出版者
色材協会
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.47-52, 2000-02-20
参考文献数
12
被引用文献数
1

化粧品クレンジング油として注目されているテトラオレイン酸ジグリセロール (DGTO) と汎用の油である流動パラフィン, トリ-2-エチルヘキサン酸グリセロール (GTE) との乳化特性が比較検討された。<BR>その結果, DGTOを用いた場合, 水よりも油の含有量が多い系においてさえも分散媒が水であるO/Wm系やWm相が形成しやすいことがわかった。また, 水と油の界面張力値は, DGTOを用いた場合が最も小さかったために, 用いた他の2種類の油ほど界面活性剤の添加効果は認められなかった。さらに, 小角X線散乱測定を行ったところ, DGTO分子は液晶間にほとんど溶解されず, 微小の液滴として存在していることがわかった。これらの特性は, DGTO分子がもつ大きな有機性値と無機性値に起因することが示唆された。
著者
松下 祥子 河井 妙保 橋本 麻希
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.7-11, 2011-01-20
参考文献数
25

現在の世界的な問題の一つとして,科学・技術による使用エネルギー量増加の問題が挙げられる。多くの諸国が先進国並みの技術を獲得し,場合によっては先進国を凌駕し,多くの利便性を得るとともに多くのエネルギーを消費している。本問題の解決策として注目を集めているのが自己集積・自己組織化プロセスである。本稿では,固体表面に形成される溶液の薄膜を利用して微粒子を自己集積的に二次元に配列させる手法の一つ,移流集積法について,温度・湿度ならびに物理的・化学的界面特性変化による配列の違いを紹介する。また,その配列体(二次元コロイド結晶,二次元微粒子アレイ,二次元自己集積体,粒子膜などと呼ばれている)と応用についても,ごく簡単に紹介する。
著者
植本 誠一郎
出版者
色材協会
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.401-407, 2002-08-20
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
荒牧 賢治
出版者
Japan Society of Colour Material
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.151-155, 2012-04-20

リオトロピック液晶は界面活性剤や脂質が溶媒中で形成する規則構造をもった集合構造であり,濃度,温度を調整することによって得られる。粘稠な性質をもつため,リオトロピック液晶中に水あるいは油を分散させることで高い粘性をもつゲルエマルションが得られる。ここではヘキサゴナル液晶(H<sub>1</sub>)やミセルキュービック相(I<sub>1</sub>)を用いたO/H<sub>1</sub>型,O/I<sub>1</sub>型のゲルエマルションの調製法と粘弾性特性について簡単に述べたあと,透明ゲルエマルションの調製について詳述した。通常のエマルションと同様に,O/H<sub>1</sub>型,O/I<sub>1</sub>型ゲルエマルションは連続相と分散相との屈折率差のため,白濁している。しかし,グリセリンを加えることで透明なO/H<sub>1</sub>型およびO/I<sub>1</sub>型ゲルエマルションを得ることができる。グリセリン濃度を変化させたときに,透明ゲルエマルションが得られる組成と,I<sub>1</sub>相と油相の屈折率が一致する組成が同じことから,連続相と分散相のコントラストマッチングにより透明ゲルエマルションが得られたことがわかった。
著者
辻元 英孝 八木 繁幸 井川 茂 飛鳥 穂高 前田 壮志 中澄 博行 櫻井 芳昭
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.207-214, 2010-05-20
参考文献数
34
被引用文献数
5

溶液塗布法による高分子電界発光素子(PLED)の開発を目的として,りん光性ビスシクロメタル化イリジウム(III)錯体,ビス[2-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ピリジナト-<i>N</i>,<i>C</i><sup>2</sup>&rsquo;]イリジウム(III)(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナート-<i>O</i>,<i>O</i>)(<b>1</b>)およびビス[2-(ジベンゾ[<i>b</i>,<i>d</i>]フラン-4-イル)キノリナト-<i>N</i>,<i>C</i><sup>3</sup>&rsquo;]イリジウム(III)[1,3-ビス(3,4-ジブトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオナート-<i>O</i>,<i>O</i>](<b>2</b>)を新規合成した。錯体<b>1</b>はトルエン溶液中において,発光極大波長475 nmおよび507 nm,発光量子収率0.91を有する青緑色発光を示した。また,錯体<b>2</b>は,発光極大波長610 nm,発光量子収率0.77を有する赤色発光を示した。これらのりん光材料を発光ドーパントとし,ポリビニルカルバゾール(PVCz)をホストポリマーとするPLEDを作製した(素子構造:ITO(150 nm)/PEDOT:PSS(40 nm)/PVCz:PBD:<b>1</b>(or <b>2</b>)(100 nm)/CsF(1.0 nm)/Al(250 nm))。錯体<b>1</b>および錯体<b>2</b>を発光ドーパントとするPLEDは,それぞれ溶液中と同様な青緑色および赤色の電界発光を示した。これらの結果から,共ドーパントして錯体<b>1</b>と錯体<b>2</b>を組み合わせることによって白色発光が得られる可能性が示された。実際,ポリビニルカルバゾール層中に錯体<b>1</b>と錯体<b>2</b>の両方を含むPLEDを作製し組成比を調整したところ,PVCz:PBD:<b>1</b>:<b>2</b>=10:3.0:1.2:0.012(wt/wt/wt/wt)の比においてCIE色度座標(0.364,0.378)(@13 V)の白色発光を得た。この白色PLEDは,最大発光輝度4200 cd m<sup>&minus;2</sup>(@13 V),最大電流効率4.9 cd A<sup>&minus;1</sup>(@7.0 V),最大電力効率2.4 lm W<sup>&minus;1</sup>(@6.0 V),最大外部量子効率2.4%(@7.0 V)の素子特性を示した。
著者
大薮 泰 寺田 幹雄 阿蘇 雄 小田 圭昭
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.729-734, 1995-12-20
参考文献数
8
被引用文献数
2 4

漆をモデルとした酵素反応形塗料の開発において, ラッカーゼとウルシオール類似物をエマルション化するたあの第3成分として, 4種の化工でんぷんを選んだ。<BR>これらの化工でんぷんを使い, ヒイロタケの培養液より生産したラッカーゼと4- {9' (Z), 12' (Z) -オクタデカジエニル} カテコールをエマルション化して, 20℃80%RHにて24時間乾燥させた。これらの膜に対して乾燥時間, 動的粘弾性, 光沢, 透過色を測定した。<BR>主な結果は次のようである。<BR>1) 化工でんぷんによるエマルション化は充分であった。<BR>2) 化工でんぷんのリン酸基やカルバモイル基は初期の硬化に影響し, これらの基が増加するにともない乾燥時間が短くなった。<BR>3) これらの膜は一般的な漆膜と同じような理想的な粘弾性を示し, 漆膜に比べ高光沢でやや黄色みを帯びていた。<BR>以上の結果から, 天然漆の成分を含まない酵素反応形塗料を開発することができた。
著者
門脇 徹治
出版者
Japan Society of Colour Material
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.242-245, 2011-07-20

最近,顔料や分散剤などの原材料の開発,微細可能な分散機の出現があり,分散技術は飛躍的に進歩を遂げている。この分散技術は,地味な技術分野ではあるが,さまざまな工業分野での基盤技術となっている。さらにナノテクノロジー,環境,エネルギーなどのこれからの時代を先導する科学技術の重要な要素技術である。本解説は顔料の分散の入門書とし,顔料の分散の考え方のイメージをつかんでもらうことを目的とし,概念的なモデルを用いて簡潔にまとめた。
著者
野々村 美宗 小林 直人 中川 直樹
出版者
Japan Society of Colour Material
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.435-438, 2011-12-20

固体粒子が液液界面や気液界面に吸着してエマルションや泡を安定化する場合がある。これまでの研究の多くは,単純な球状のエマルション/泡に関するものばかりだったが,最近では固体粒子がネットワーク構造や共連続構造などの複雑な構造も構築することが明らかになった。本解説では,固体粒子を使ってサツマイモ状エマルションや梅干し状エマルション,非球形多相エマルションを調製する方法を紹介する。これらの知見は,医薬品や食品,化粧品,塗料などの製剤や材料を開発するうえで有用である。
著者
平野 浩司 溝口 佳孝
出版者
Japan Society of Colour Material
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.259-264, 2012-06-20
被引用文献数
1 2

日本におけるアルミ建材では,アルミニウム素材に陽極酸化処理を施して「陽極酸化皮膜(アルマイト皮膜)」を形成させ,さらにアニオン電着塗装にて形成した「電着塗膜」からなる『複合皮膜』が大半を占めている。このシステムは1960年代に登場し,数々の改良がなされる中,高温多湿・沿岸部の多い厳しい日本の環境下に適したものとして,飛躍的に伸びた日本発祥のシステムである。本稿では,この『複合皮膜』の形成処理工程について述べるとともに,電着塗装ラインにおける設備,塗装原理,塗料タイプの変遷について解説する。
著者
平野 浩司 溝口 佳孝
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.259-264, 2012-06-20
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

日本におけるアルミ建材では,アルミニウム素材に陽極酸化処理を施して「陽極酸化皮膜(アルマイト皮膜)」を形成させ,さらにアニオン電着塗装にて形成した「電着塗膜」からなる『複合皮膜』が大半を占めている。このシステムは1960年代に登場し,数々の改良がなされる中,高温多湿・沿岸部の多い厳しい日本の環境下に適したものとして,飛躍的に伸びた日本発祥のシステムである。本稿では,この『複合皮膜』の形成処理工程について述べるとともに,電着塗装ラインにおける設備,塗装原理,塗料タイプの変遷について解説する。
著者
チャイキェンカイ アマタ 竹下 侑花 柴田 雅史
出版者
Japan Society of Colour Material
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.439-448, 2012-11-20
被引用文献数
1

Fe源,構造形成剤の除去方法およびメソポーラスシリカの型がFe含有メソポーラスシリカの紫外線吸収能に与える影響を検討した。また,これらFe含有メソポーラスシリカの紫外線防御剤としての可能性を,薄膜にしたときの紫外線透過性,外観色,光触媒活性により評価した。<br>FeアセチルアセトナートをFe源としたMCM-41型を焼成した試料が最も良好な紫外線吸収能を示した。ただし,鉄濃度が高くなる(Fe/Si ≥ 0.02)と薄茶色の外観となった。一方,FeアセチルアセトナートをFe源としたHMS型またはMCM-41型で溶媒抽出によって構造形成剤を除去した試料は紫外線吸収能は前述のものより劣るものの外観色は白色であった。<br>焼成したFe-MPS試料(Fe/Siモル比=0.02)の水分散物の薄膜は,シリカ表面処理をした酸化チタン水分散物と同程度の紫外線透過挙動であった。また光触媒活性もみられなかった。これらのことからFe含有メソポーラスシリカは紫外線吸収剤としての可能性があるものと考えられる。
著者
野々村 美宗 小林 直人 中川 直樹
出版者
Japan Society of Colour Material
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.435-438, 2011-12-20

固体粒子が液液界面や気液界面に吸着してエマルションや泡を安定化する場合がある。これまでの研究の多くは,単純な球状のエマルション/泡に関するものばかりだったが,最近では固体粒子がネットワーク構造や共連続構造などの複雑な構造も構築することが明らかになった。本解説では,固体粒子を使ってサツマイモ状エマルションや梅干し状エマルション,非球形多相エマルションを調製する方法を紹介する。これらの知見は,医薬品や食品,化粧品,塗料などの製剤や材料を開発するうえで有用である。
著者
吉田 豊彦
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.7, pp.313-318, 2002-07-20
被引用文献数
1

この報文の目的は1) 塗膜の暴露または促進試験による経時変化を整理して, 2) 定量的な考察が容易な数学的モデルで表現することである。<BR>常乾アルキド樹脂エナメル8試料をサンシャイン促進耐候試験機とキセノン促進耐候試験機で1000時間まで試験した。変色は試験片と原片との色差をCIE94色差であらわした。<BR>時間と色差の関係にはつぎの2つの式がよくフィットし, 高い決定係数を示した。<BR>△E=p√t+q, △E=△Ef (1-e-<SUP>kt</SUP>) ここに△Efは仮定の色差上限値である。<BR>前者の式は劣化の初期によくフィットし, 変色の機構に拡散が支配することを示唆する点で興味があるが, 長期の暴露によって最大色差に収れんしない。後者の式は1次反応機構の仮定によって容易に誘導できるので, (1) 式より優っている。<BR>回帰方程式の係数から, キセノンの誘導期がサンシャインのそれよりも短いことを示した。また, サンシャインとキセノンの間の促進の比, すなわち, 同じ色差に相当する時間の比は一定ではなく, 色差のレベルによって変化することを示した。
著者
吉田 豊彦
出版者
色材
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.7, pp.313-318, 2002-07-20
参考文献数
4
被引用文献数
1

この報文の目的は1) 塗膜の暴露または促進試験による経時変化を整理して, 2) 定量的な考察が容易な数学的モデルで表現することである。<BR>常乾アルキド樹脂エナメル8試料をサンシャイン促進耐候試験機とキセノン促進耐候試験機で1000時間まで試験した。変色は試験片と原片との色差をCIE94色差であらわした。<BR>時間と色差の関係にはつぎの2つの式がよくフィットし, 高い決定係数を示した。<BR>△E=p&radic;t+q, △E=△Ef (1-e-<SUP>kt</SUP>) ここに△Efは仮定の色差上限値である。<BR>前者の式は劣化の初期によくフィットし, 変色の機構に拡散が支配することを示唆する点で興味があるが, 長期の暴露によって最大色差に収れんしない。後者の式は1次反応機構の仮定によって容易に誘導できるので, (1) 式より優っている。<BR>回帰方程式の係数から, キセノンの誘導期がサンシャインのそれよりも短いことを示した。また, サンシャインとキセノンの間の促進の比, すなわち, 同じ色差に相当する時間の比は一定ではなく, 色差のレベルによって変化することを示した。