著者
山田 剛史
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.87-98, 2000-02-29 (Released:2017-06-28)

単一事例実験計画は、教育の幅広い領域で利用されている実験計画の手法である。そこで得られたデータの分析は主に視覚的判断(visual inspection)によって行われる。しかし、この方法の客観性、評定の信頼性といった問題から、単一事例実験データの評価に統計的方法を適用することが提案されるようになった。その中でも、ランダマイゼーション検定とC統計による処理効果の検定は、日米で多くの研究者からその利用が推奨されてきた。本研究では、この2種類の方法間の比較を検定力という視点から行う。モンテカルロ法によるコンピュータシミュレーション実験を行い、2つの方法の検定力を推定した。SAS / IMLによって1次の自己相関を持つ単一事例実験データ(35個のデータを持つABデザイン)を生成し、4種類の自己相関、6つの効果量のもとでそれぞれの方法の検定力を算出した。その結果、ランダマイゼーション検定は検定力が十分に高いとはいえないが、第1種の誤りの統制は良くできていることがわかった。一方、C統計による検定では、正の自己相関のあるデータでは第1種の誤りの統制ができず、逆に、負の自己相関のあるデータでは検定力が低すぎるということがわかった。これより、系列依存性がある単一事例実験データの分析にC統計による検定を用いるのはふさわしくないことがわかった。
著者
松本 啓子 村井 佳比子 眞邉 一近
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.2-18, 2014-07-30 (Released:2017-06-28)

研究の目的 美容師用集団SSTによって必要な社会的スキルを獲得することで、指名客数が増加するかどうかを検討するとともに、より効果的なSSTにするための要素を明らかにすることを目的とした。実験1 美容師20名を対象に、独立変数:美容師用集団SSTの各スキルトレーニング(笑顔・声・傾聴・雑談・説明)、従属変数:観察者による各スキル評定得点、実験デザイン:集団間多重ベースラインデザインによって検討した。また、SSTを実施することで指名客数が増加するかを調べた。その結果、SSTによって笑顔・声スキルの評定得点が上昇すること、傾聴スキルの評定得点の上昇率と指名客数の上昇率に関連があることがわかった。また、スキル評定得点の上昇率と業務時間中の接客行動自己記録票への記入率に関連があることが示唆された。実験2 美容師8名を対象に、独立変数:傾聴スキルの習得に重点を置いた美容師用集団SST修正版の各スキルトレーニング、従属変数:観察者による各スキル評定得点、実験デザイン:個体内ABデザインおよび統制群比較によって実験を行った。その結果、雑談スキル以外の評定得点が統制群より上昇することが示唆された。結論 美容師用集団SSTによって指名客数が増加する可能性があること、また、指名客数を増加させるためには傾聴スキルを身につける必要があることがわかった。効果的なSSTを実施するには、必要な社会的スキルに焦点化した短期間のトレーニングと、日常業務の中で繰り返し自己記録を取るという組み合わせが有効であることが示唆された。
著者
米山 直樹
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.130-136, 1996

4羽のハトを用いて、並立連鎖スケジュール下での2種の分割選択肢間の選択行動を調べた。第1リンクでは2つの独立した変動比率60秒、切り替え遅延2秒のスケジュールを適用し、第2リンクでは左右の選択肢をそれぞれ30秒に固定して、一方の選択肢には連鎖固定間隔15秒固定間隔15秒のスケジュールを配し(固定分割選択肢)、もう一方の選択肢には連鎖固定間隔X秒固定間隔Y秒のスケジュールを配した(変動分割選択肢)。このうち変動分割選択肢における分割比率であるX : Yの比率は1 : 5、1 : 2、1 : 1、2 : 1、そして5 : 1と5段階に変化させた。実験の結果、変動分割選択肢に対する選択率は、Xの比率の増加につれて最初から半ばまでは減少し、半ば以降は逆に増加するというV字型の変化が3羽の被験体において示された。ただし残る1羽には最初の減少は見られず、半ば以降の増加のみが認められた。以上の結果は、Xの比率が減少した際の変動分割選択肢への選択率の増大が1番目のコンポーネントの刺激の嫌悪性によって説明され、Xの比率が増大した際の変動分割選択肢への選択率の増大は2番目のコンポーネントの刺激の条件性強化力によって説明されることを示唆している。
著者
島宗 理
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.46-57, 1996-08-05

どんなテクノロジーでもそれが活用されるためには、まず採用されなければならない。スキナーは行動分析学の基本的枠組みと、それを社会問題の解決に役立てるための指針を示した。これを21世紀に活かすためには、テクノロジー普及に関する研究と実践が欠かせない。本論文では普及に成功した行動的プログラムの例と失敗した例を分析し、普及に関する実験的・理論的研究と、さらなる実践についての提言を行う。
著者
小野 浩一
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-44, 1990-09-30
被引用文献数
1

Four types of research on superstitious behavior in humans and nonhumans were reviewed and discussed from the perspective of recent developments in this area. The first type explains the effects of periodic delivery of food on pigeons' superstitious responding in terms of stimulus substitution or species-specific appetitive behavior. Though this type of research is sometimes said to replicate Skinner (1948)'s experiment, this statement may not be accurate because the experiments emphasize the effects of contingencies in steady-state performance. The second type examines whether or not idiosyncratic and stereotyped patterns of behavior develop under response-independent contingencies with attention to accidental response-reinforcer contiguities. The third type includes a variety of studies examining the effects of response independence, such as delay of reinforcement. The fourth type studies superstitious behavior under response-dependent contingencies. It is suggested that further studies should be designed to examine more precisely the effects of response-reinforcer contiguity, aversive control, accidental reinforcement under response-dependent schedules, and verbal control over human superstitious behavior.
著者
野田 航 松見 淳子
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.13-25, 2010-01-30

研究の目的本研究では、児童の漢字の読みスキルの保持・耐久性・応用に及ぼす流暢性指導の効果を検討した。研究計画個体内実験計画を用いた。場面公立小学校の特別支援学級の教室内において行われた。対象児公立小学校の特別支援学級に在籍する5年生の男児1名が参加した。介入まず、対象児は100%正しく漢字を読むことができるようになるまで、離散試行手続きによる漢字の読みの指導を受けた。その後、半分の漢字については流暢性指導、もう半分の漢字については正確性指導による指導を受けた。流暢性指導では、速く正確に漢字が読めるように30秒タイムトライアルによる指導を行った。正確性指導では離散試行手続きによる指導を行った。正確性指導における試行数はヨークト手続きによって統制した。行動の指標正しく読めた漢字の数と間違った漢字の数を指標とした。結果流暢性指導を行った漢字は、正確性指導を行った漢字よりも、漢字単語の読みを短文内の漢字の読みに応用できるようになっていた。結論流暢性指導によって、漢字の読みの応用を促進することができた。
著者
伊田 政司
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.21-37, 1989-03-31

The voluntary aspect of television watching behavior, which can be measured using conjugate reinforcement method, is a factor which needs to be examined in rating audience of TV programs. This study examined how response rates of TV watching behavior vary as a function of the number of times the subjects watch the same program. It also examined whether the response rates differentiated according to different types of programs. It was found that response rates decreased as a function of the number of repetition and that they differentiated according to the different pro-grams. The method used in this study provides an operational definition of voluntary aspect of TV watching behavior which has not been taken into account in previous surveys.
著者
坂上 貴之
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.5-17, 2005

ヒトを参加者とした研究の倫理基準(American Psychological Association, 1992版)は以下のようにまとめられる。(1)倫理的自己制御とその限界、(2)他者の権利の尊重、(3)より上位の規定や勧告の遵守、(4)強制のない参加の保証、(5)情報操作の禁止、(6)秘密の保持。このうち、はじめの2つのクラスターを除けば、それらは参加者の対抗制御、特に倫理審査機関、説明付き同意(書)、そして倫理的問題の事例の歴史に関するインターネットによる情報の公開を利用した対抗制御と深く関連している。研究参加者による、対抗制御の行使のための環境随伴性の設計が倫理的行動を促進するために必要であるが、ルール支配行動といった、その他の倫理的行動の特性もその設計が計画される際には考慮されなくてはならない。最後に、従来の応用倫理学的なアプローチに対する可能な候補として、行動倫理学を提案することができる。なぜなら、この学は、ルール支配行動と対抗制御についての概念的、実験的、応用的分析を用いることで、倫理的行動の具体的な環境制御を研究することが可能であるからである。
著者
坂上 貴之
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.5-17, 2005-04-25

ヒトを参加者とした研究の倫理基準(American Psychological Association, 1992版)は以下のようにまとめられる。(1)倫理的自己制御とその限界、(2)他者の権利の尊重、(3)より上位の規定や勧告の遵守、(4)強制のない参加の保証、(5)情報操作の禁止、(6)秘密の保持。このうち、はじめの2つのクラスターを除けば、それらは参加者の対抗制御、特に倫理審査機関、説明付き同意(書)、そして倫理的問題の事例の歴史に関するインターネットによる情報の公開を利用した対抗制御と深く関連している。研究参加者による、対抗制御の行使のための環境随伴性の設計が倫理的行動を促進するために必要であるが、ルール支配行動といった、その他の倫理的行動の特性もその設計が計画される際には考慮されなくてはならない。最後に、従来の応用倫理学的なアプローチに対する可能な候補として、行動倫理学を提案することができる。なぜなら、この学は、ルール支配行動と対抗制御についての概念的、実験的、応用的分析を用いることで、倫理的行動の具体的な環境制御を研究することが可能であるからである。
著者
中野 良顯
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.18-51, 2005-04-25

この論文では、臨床場面でサイエンスに徹し効果の実証された最善の技法を提供することが、行動分析家の倫理であることを主張する。サイコロジストが臨床場面でサイエンスに徹するべきであるという三張は、行動分析の内部より外部で強調された。主役となったのはより大きな時代精神としての「エビデンス・ベースの医学(evidence-based medicine, EBM)」の一環であるアメリカ心理学会第12部会特別委員会による「経験的に支持された治療(empirically supported treatment, EST)」運動だった。委員会の使命は経験的に支持された治療を同定する基準に無作為化比較試験(randomized controlled trial, RCT)を含め、それに合格した治療をリスト化し、その情報を普及促進することだった。ESTとして同定された児童版心理療法の数は少なく、自閉症などの領域でのESTは見出されていない。日本に行動分析の倫理を確立する上で考慮すべきEST運動の展望から得られた課題は、マニュアルとRCTを使った臨床研究を拡大すること、内外のEST文献の組織的展望を奨励すること、そして実践家がESTを提供しうるシステムを確立することである。
著者
久保田 新
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.70-79, 1996-08-05

本試論は、随伴性により形成された行動とルールにより統制される行動の関係に関わる形で、一片の情報が「物」と「振る舞い」によって構成されること、また、その構造がその情報にアクセスする他の振る舞いを通じて階層的、ないし再帰的になると仮定することが可能か否かを問う。現代の、文明化されコンピュータ化された人間社会では、大量の情報が、もともとの、そして変化し続ける随伴性から切り離されて<物化>する、即ち、情報のダイナミックな構造が柔軟性を欠いて固着する傾向にある。柔軟な情報へのアクセスが実現できるよう随伴性をよりよくアレンジするためには、もともと情報の持っていたダイナミクス、つまり、もともとの随伴性を、最低限シミュレーンヨン的な環境において再活性化することが重要である。そのために、試論では、三項随伴性が、一見階層的に見え変化し続ける環境とその中で行動を発し結果を受け取る自己との関係を充分に説明できるかをも問うべきだと論じる。同様の再考が、ルールの理解が含まれる現実的な研究・教育システムなどの他の分野でも、従って、理論的な行動分析そのものにおいても要求されていると考える。
著者
菅佐原 洋
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-25, 2013

研究の目的 携帯電話を用いた行動分析学用語の学習において、見本合わせ(MTS)教材とリスト教材の有効性の比較を目的とした。研究計画 刺激セット間多層ベースライン法の変法を用いた。場面 筆記試験による評価は、大学の一室で実施し、介入は、各参加者の所有する携帯電話を使用して行われた。参加者 行動分析学の学習に興味をもつ大学院生5名が参加した。介入 介入条件では2つの訓練を行った。訓練Aでは、用語の定義文に対応した正しい用語を選択できるMTS教材が用いられ、訓練Bでは、用語と定義文を同時に閲覧することができるリスト教材が用いられた。行動の指標 用語の定義文に対応した正しい用語を記述する問題の正答率を使用した。結果 プローブ評価、および1ヶ月後、3ヶ月後のフォローアップ評価において、リスト教材よりもMTS教材の平均正答率が高かった。結論 参加者間で平均正答率に変動性が見られたが、MTS教材のほうが、用語の獲得と維持において、有効である可能性が示唆された。
著者
馬場 ちはる 佐藤 美幸 松見 淳子
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.26-42, 2013

通常保育場面ならびに通常学級には多様な行動を示す幼児・児童・生徒が在籍しており、支援ニーズのあることが明らかにされている。その対応策として、問題行動の低減と望ましい行動の増大における効果が報告されている機能的アセスメントに基づく支援が挙げられる。本研究の目的は、通常学級における機能的アセスメント研究のレビューを行い、それらの研究が1)通常学級で求められている多様な参加者、幅広い標的行動、統合場面、先行事象への着目、教師による支援実施に到達しているか否かを明らかにすること、および2)支援の効果を検討することであった。そのために、1982-2010年に出版された国内外の通常学級における機能的アセスメント研究39本を対象に、「出版年」、「参加者属性」、「標的行動」、「場面」、「アセスメント」、「支援」および「評価」の各項目に関して分類・分析を行った。その結果、参加者の有する診断は多様であり、統合場面でのアセスメントや支援の実施、先行事象の考慮、および教師による支援の実施がなされていたことが明らかとなった。支援では、妨害/攻撃行動を対象にその有効性が確認された一方で、新たな研究の方向性として静かで目立だないが授業参加では問題となる多様な行動(例えば、手遊びなど)への応用が考えられた。今後、望ましい行動の促進を目指した実践も含め、機能的アセスメントのさらなる応用と普及が期待される。
著者
若林 上総 加藤 哲文
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.2-12, 2013-07-31

研究の目的 発達障害のある生徒が在籍する高等学校の学級において、学業達成を支援するために、相互依存型および非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた介入を実施し、その効果、ならびに介入受容性を検討した。研究計画 ベースライン条件、相互依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた条件、非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた条件によるABCデザインを2クラスで実施した参加者間マルチベースラインデザイン。場面 定時制高校の授業内で行われた漢字テストの場面。参加者 高校1年生の2クラスとそこに在籍する発達障害のある生徒4名。独立変数の操作 相互依存型および非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた介入。パフォーマンス指標 学級全体の強化基準への達成率、漢字テストの得点、および介入受容性尺度得点。結果 相互依存型および非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた介入条件は、学級全体のテスト得点の増加に影響を与えたことが考えられた。各介入条件の介入受容性得点も高得点を示した。結論 相互依存型および非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた介入条件により、発達障害のある高校生を含んだ学級全体の学業達成を促進した。また、この介入条件の社会的妥当性も示された。
著者
村中 智彦 藤原 義博 伊藤 さと子
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.58-75, 2007-07-30
被引用文献数
1

研究の目的 知的障害児の個別指導において、逸脱反応の生起を防ぎ課題遂行反応を高める最適な試行間間隔(ITI)の設定を検討することを目的とした。研究計画 ITIの量的な相違が従属変数に及ぼす効果を検討するために反転計画法(B-A1-B-A2-Bデザイン)を適用した。場面 大学での机上課題を行う個別指導。対象児 2名の知的障害男児で、S1は10歳、S2は8歳であった。独立変数の操作 見本合わせの難度が異なる絵カード課題と単語カード課題の遂行事態で、ITIを0秒として教示を遅延しない(ND)条件、5カウントの間隔で教示を遅延する(5D)条件、3カウントの間隔で教示を遅延する(3D)条件を実施した。行動の指標 (1)課題遂行反応(絵や単語カードを取る、台版に置く)の潜時2秒以内の反応数の割合、(2)逸脱反応(離席、絵や単語カードを口に入れる)の割合であった。結果 (1)S1のカードを取る課題遂行反応の潜時2秒以内の反応数の割合は、両課題に共通してND条件で高く5D条件と3D条件で低下した。S2のカードを取る反応は、絵カード課題ではND条件で高く5Dと3D条件で低下し、単語カード課題ではNDと3D条件で高く5D条件で低下した。S2のカードを台版に置く反応は、両課題に共通して実験後半のND条件で5Dと3D条件よりも高かった。(2)S1、S2ともに、カードや指を口に入れる・折る逸脱反応が、両課題に共通して実験後半の5Dと3D条件でND条件よりも高かった。結論 対象児がいつでも課題遂行できるようにITIを0秒として教示を遅延しない設定が最適であることが確認された。
著者
小笠原 恵 氏森 英亜
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.45-56, 1990-09-30

本研究では、重度の精神発達遅滞児の要求言語形成のために、機会利用型指導法にマンド・モデル法を付け加えた指導法を導入した。本児のマンド発現を促すために、強い強化機能をもつと推測される遊具を導入し、その効果を検討した。また、指導者からの言語的手掛りや言語モデルを除去していく手続きの検討を加えることを目的とした。そのために本児がベースライン期に最も長い時間遊んでいたことから、強化機能が強いと推測されるブランコを本児が一人では乗ることの出来ない高さまで上げた。そのうえで、本児がブランコに触った時に、指導者は「なーに」という言語的手掛りを与え、反応が無いときには「やって」という言語モデルを示した。介入期1では言語モデルを、介入期2では言語的手掛りを固定遅延呈示し、介入期2で言語モデルを、フォローアップ期で言語的手掛りを除去した。その結果、介入期1では、マンド・モデル法を導入することにより、反応型を形成できた。介入期2では言語的手掛りに反応するという日常場面でよくみられる自然な形での反応へと移行した。さらに、言語的手掛りも除去し、ブランコという物理的刺激および指導者の存在という対人的刺激のみにしたフォローアップ期でも、一定水準の要求語の自発がみられた。
著者
山岸 直基
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.52-66, 2001-06-30

研究の目的 4反応系列と2反応系列を使用し系列反応の変動性に対する直前のN試行と異なる系列反応を分化強化する手続きと系列反応の長さの効果を検討することである。実験計画 分化強化条件とヨークト条件の間で強化率を一定にした被験者間ヨークトデザインを使用した。場面 被験者は実験室内でコンピュータマウス上の2つのボタンを使用した。被験者 大学生28名(男性15名、女性13名)。独立変数 直前のN試行に生起した反応と異なった反応が出現したときにポイントを提示するという手続きおよび系列反応の長さを独立変数とした。4反応系列の実験ではNは順に、1、2、3、5、7、11、15、7、1と変化し、2反応系列の実験では1、2、3、2、1と変化した。行動の指標 反応変動性の指標として全系列反応の相対頻度(U値)と周期性(反応の出現周期)の2つを測定した。結果 当確率性はヨークト条件よりも分化強化条件において高かった。周期性については、4反応系列の場合、Nが15に近づくにつれ周期性のない反応をする被験者が増加した。結論 直前のN試行と異なる系列反応を強化する手続きにより、また反応系列が長くなることにより反応変動性が増加することが示された。
著者
若林 功
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.5-32, 2009-03-30

発達障害者の就労支援に関する応用行動分析学的な手法を用いた研究に関する文献レビューはわが国ではあまり見られない。本稿では、米国における発達障害者の職業に関するスキル習得の報告を中心に、まず70年代から90年代中盤までの研究の流れを概観した。続いて、1998年以降の応用行動分析学に基づいた発達障害者への就労支援に関する研究について概観し、「作業技能(正確性・効率)」「作業技能(作業の自発的開始・課題従事・終了)」「対人生活技能」「問題行動低減」「就労支援者への指導」に分け内容を述べた。そして、米国の研究報告では、十分にエビデンスレベルが確保されているとは言えないまでも、有効な支援方法を開発しようとする流れが確かにあることを確認した。一方で、軽度発達障害者への取り組みや職業相談・職業評価等に関してはあまり応用行動分析学に基づいた研究が行なわれていないことも示された。また、なぜ応用行動分析学が発達障害者の障害者就労支援に有効なのか考察した。