著者
片山 一朗 室田 浩之 調 裕次
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.516-521, 2008-10-01 (Released:2008-12-13)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

皮膚症状を有するシェーグレン症候群患者26例を対象に,人参養栄湯を3ヵ月服用させて,皮膚疾患特異的QOL及び自他覚症状の推移を検討した。皮膚疾患特異的尺度としてはSkindex-16を用いた。総合評価では1ヵ月後および3ヵ月後において,スケール·スコアでは症状,感情,機能のうち,症状と感情の3ヵ月後において有意な改善を認めた。自他覚症状では,口唇炎·口角炎,凍瘡様皮疹,手足の冷え,疲労感において1ヵ月後および3ヵ月後で有意な改善を認めた。眼瞼炎,食欲不振は訴えを有する症例が少なく有意差はなかったが,77.8%,66.7%と高い改善率を示した。眼,口腔の乾燥感は30∼40%台の改善率が認められたが,有意差は1ヵ月後の眼の乾燥感においてのみ得られた。副作用はほてりのぼせの1例のみであった。以上から人参養栄湯は皮膚症状を有するシェーグレン症候群の多彩な愁訴を改善し,患者のQOLを高める安全かつ有効な薬剤と考えられた。
著者
今福 信一 中山 樹一郎 野口 雅久
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.636-641, 2012-12-01 (Released:2013-02-26)
参考文献数
12

皮膚の細菌感染症はありふれた疾患で,その多くは黄色ブドウ球菌による。治療には内服または外用の抗菌薬が用いられるが,外用薬についてはあまり熟慮されず古典的な抗菌薬が未だに用いられ続けている傾向がある。また,日常の臨床では培養結果をみて薬剤を選択することは稀で,一般に初診時に経験的に投与されている。従って用いている抗菌薬の感受性と菌種の頻度を知ることは重要である。ナジフロキサシン (NDFX) は内服の剤形がない外用抗菌薬で,皮膚の細菌感染症に対して保険適応があるが,伝染性膿痂疹以外の皮膚細菌感染症についての効果,および感受性についての情報に乏しい。   目的:伝染性膿痂疹以外の皮膚感染症(毛包炎,せつ・癰,ひょう疽)について NDFX 軟膏 1 %の臨床効果,および分離された起炎菌の各種薬剤に対する感受性について検討した。   方法 : 同意を得た各疾患毛包炎患者 22 例,せつ・癰患者 28 例,ひょう疽患者 25 例に対して起炎菌の培養同定,感受性試験を行った。また治療の効果を 5 段階で評価した。   結果 : 分離された菌の 37%(29/79)が Staphylococcus aureus であった。。NDFX の感受性は MIC が最も小さい 0.063 μg/ml 以下が 75.9 %を占め,また全菌種が 4 μg/ml 以下で耐性が無いと考えられた。臨床的な改善度は改善以上が毛包炎で 95%,ひょう疽で 81%,せつ・癰で 96%であった。試験中に明らかな副作用はみられなかった。NDFX 軟膏 1%は他の薬剤と比較して頻度の高い起炎菌に低い MIC を示し,有用性の高い外用薬と考えられた。
著者
吉田 正己
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.272-277, 1985-04-01 (Released:2012-03-15)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

昭和54年2月から昭和57年5月までの期間に臨床的に皮膚粘膜の単純ヘルペスと診断した134例(そのうち分離陽性107例)を対象とし, ウイルスの分離率と分離ウイルス株の型別を検討し, 次の結果を得た。1)発疹の形態別によるウイルス分離率: 小水疱と膿疱から95%以上, 糜爛と痂皮下糜爛から75%以上にウイルスを分離できた。さらにアフタ, 潰瘍, 丘疹, 水疱前紅斑からも分離できた。しかし痂皮と水疱後紅斑からは全く分離できなかつた。2)病日とウイルス分離率の変動: 1病日100%から6病日57%まで漸減傾向を認めた。しかし7病日から30病日の検索でも今回は注意深く湿潤病巣を捜し出したところ67%に分離できた。3)病巣部位別によるウイルスの型別: 顔および体幹上半からは75例すべて単純ヘルペスウイルス(HSV)1型が分離され, 手からは6例中2例にHSV 2型が分離された。臀部と男子外陰部の14例からはすべてHSV 2型が分離されたが, 女子外陰部からは5例中4例にHSV 1型が分離された。とくに成人の初感染11例はすべてHSV 1型であり, このうち女子外陰部, 乳房, 口腔に生じた6例が性的接触による感染と考えられた。
著者
志賀 建夫 横川 真紀 緒方 巧二 千々和 龍美 川村 昌史 中村 寿宏
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.244-247, 2006 (Released:2006-07-31)
参考文献数
11

34歳,男性。右前胸から背部,右上腕にかけての刺青の施行から3年後に,感冒様症状が先行して刺青の朱色部に限局した発赤と腫脹が出現した。リンパ節腫脹,発熱,咽頭痛といった全身症状も伴った。発赤部からの皮膚生検では,真皮の刺青色素周囲に著明な組織球の浸潤がみられた。パッチテストにて塩化第二水銀が陽性であり,刺青の朱色色素である辰砂(硫化水銀)に対するアレルギー反応によるものと考えた。プレドニゾロン30mg/日の内服およびプロピオン酸クロベタゾールの外用にて症状は速やかに消退し,プレドニゾロンの漸減,中止後も症状の再燃はみられていない。本症例は刺青施行後3年間の間に2度同様のエピソードを示しており,いずれの際にも感冒様症状の後に本症が発症していることから,発症には感染症が誘因になっていると考える。
著者
高橋 収 田中 伸二 小国 隆 中西 秀樹
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.892-896, 1986-10-01 (Released:2012-03-15)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

フラジオマイシン(FRM)含有軟膏の大量使用が原因と考えられた両側感音難聴の2例を報告した。症例1は53才男子。たきびの火が着衣に引火し, 体表面積の70%(III度55%)の熱傷を受け, FRM含有軟膏を外用して総計38.5kgを使用した。外用開始約4ヵ月後より耳鳴の訴えがあり, 聴力検査で高音障害型の両側感音難聴を指摘された。症例2は18才男子。ガソリンの爆発で, 体表面積の70%のIII度熱傷を受け, 受傷後4週目頃より, FRM含有軟膏を外用し総計48kgを使用した。外用開始, 約5ヵ月後より耳鳴を訴え, 聴力検査で高音障害型の両側感音難聴を指摘された。2症例とも難聴は外用剤中止後も徐々に進行し, 約1年でほぼ全聾状態となつた。
著者
佐久川 裕行 山口 さやか 山城 充士 苅谷 嘉之 新嘉喜 長 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.94-98, 2020

<p>31 歳,女性。16 歳頃より自覚していた左足底の黒色斑が,妊娠 25 週頃より急速に増大し,隆起してきたため,妊娠 30 週で当科を紹介された。初診時,左足底に 18×10×2 mm の潰瘍を伴う黒色結節があり,悪性黒色腫を考え 10 mm マージンで全切除生検を行った。病理組織学的には,表皮真皮境界部を主体として,豊富なメラニン顆粒を含有し核小体の目立つ異型細胞が胞巣状に増殖しており,末端黒子型の悪性黒色腫と診断した。Tumor thickness は 3 mm,深部断端,側方断端は陰性であった。pT3bNXMX stage Ⅱb 以上の診断で,早期の全身検索および補助化学療法が必要と判断し,妊娠 32 週 4 日に経膣分娩で早期娩出した。胎盤や出生児に転移所見はなかった。出産後,全身検索,センチネルリンパ節生検を行い,末端黒子型悪性黒色腫 stage Ⅱb(pT3bN0M0)と診断し,術後の補助化学療法として,DAV-Feron 療法を 3 クール行い IFN-<i>β </i>の局注射療法を継続している。術後 4 年が経過しているが,再発,転移はない。</p>
著者
鈴木 淳子 萬 秀憲 芋川 玄爾 高島 巌
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.494-498, 1994-06-01 (Released:2011-07-21)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

天然コレステロールエステルと類似した構造をとるcholesteryl isostearate(以下IS-CE)を応用した浴用剤の水溶性成分溶出抑制作用と, 保湿効果を検討した。健常男性18名の前腕部をアセトン·エーテル(AE)で15分間脱脂処理後, IS-CE配合浴用剤浴(20g/150l, 40℃, 5分)を行った。水溶性成分(ニンヒドリン陽性物質)のさら湯中溶出に対する抑制率は, 浴用剤中のIS-CE量の増加に伴い高まる傾向にあり, IS-CE 4.8%配合浴用剤はさら湯に比べ有意に抑制した(p<0.05, paired t-test)。健常男性15名の前腕部をAEで15分間脱脂処理後, IS-CE 4.0%配合浴用剤またはIS-CEを除いた浴用剤浴(いずれも20g/150l, 40℃, 10分)を2日間行い, 入浴翌日の角層水分量を測定した。IS-CE 4.0%配合浴用剤浴はさら湯浴より角層水分量の回復が有意に高く(p<0.05, paired t-test), また, IS-CEを除いた浴用剤浴よりも高い傾向にあった。下腿に左右ほぼ同程度の乾燥性皮疹を発症した女性6名の一方の下腿にIS-CE 4.0%配合浴用剤浴(20g/150l, 40℃, 20分), 他方にさら湯浴を8日間行った。IS-CE 4.0%配合浴用剤浴はさら湯浴に比べ, 乾燥性皮疹を有意に改善した(p<0.05, Wilcoxon signed rank test)。以上の結果から, IS-CE配合浴用剤浴による角層から浴水中への水溶性成分の溶出抑制作用と保湿効果が確かめられた。
著者
伊賀 和宏 横田 紗綾 中井 大助 中山 秀夫 陳 科榮
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.244-249, 2015-06-01 (Released:2015-10-01)
参考文献数
18

我々は 35 年以上の長きにわたり,コウジ酸の,肝斑,日光黒子,太田母斑,雀卵斑,色素沈着型化粧品皮膚炎およびその他の色素沈着症に対する臨床試験を行ってきた。興味深いことに,多くの患者に共通して,コウジ酸によって,色素沈着が改善するだけでなく,顔面の黄ぐすみ (皮膚の黄色化および透明度低下) にも改善効果を示すことを経験している。近年,黄ぐすみの一因として,皮膚タンパク質の糖化による糖化最終産物 (advanced glycation end products:AGEs) およびカルボニル化による脂質過酸化最終産物 (advanced lipoxidation end products:ALEs) の産生が提唱されており,我々は,コウジ酸の皮膚の黄色化および透明度低下に対する改善効果が,AGEs および ALEs の産生を抑えることによるものと推定し検討した。その結果,コウジ酸は AGEs および ALEs 産生抑制作用を示すことが明らかとなった。従って,コウジ酸の外用は色素沈着症の改善だけでなく,黄ぐすみに対しても有用であると考える。
著者
宇宿 一成
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.217-219, 2004 (Released:2005-10-21)
参考文献数
3
被引用文献数
1

10歳, 男児。胸に飛んできたカメムシを潰し体液が付着。30分後には疼痛を伴う紅斑を生じた。患者の持参した虫体からミナミアオカメムシと同定。カメムシ皮膚炎と考えた。患者がパッチテストを拒否したため, 患者の持参した虫を細切して健常人8人にパッチテストを行った。1名が48, 72時間後ともに (+) の反応を示した。この被験者はかつて腕にカメムシが這った跡に線状の紅斑を生じたことがあるということだった。この被験者ではアレルギー性の反応を生じたと考えた。その後, 筆者は同種の虫を採取し, 生きたまま左前腕部に圧抵したところ紅斑を生じた。一次刺激性接触皮膚炎と考えた。通常カメムシによる皮膚炎では一次刺激性のものが多いが, アレルギー性接触皮膚炎も生じうるものと考えた。
著者
田浦 直
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.296-314, 1969
被引用文献数
1

単極ガラス電極を使用し,正常皮膚表面のpHを測定,統計的考察を加え,つぎのごとき結果をえた。<BR> 1)正常皮膚pHは男性4.87,女性5.05で,女性は10才台後半から男性では50才を境に高くなる。部位別には前腕より上腕,屈側より伸側が高く,女性では前額部で高いものが多かつた。また,冬は高く,夏は低く,春と夏,秋と冬を境にして大きな変動がみられた。<BR> 2)新生児は出生直後高値であるが,4日目前後に著明な低下をみる。鼠径部では日数による変動が少なく,高い値を維持した。新生児のpHは胎脂,羊水の吸収,分解に影響され,鼠径部では尿による汚染とも関係あると考えた。<BR> 3)第4趾間は第1趾間よりはるかに高く,また白癬の既往のあるものに高い値が多かつたので,趾間白癬の発生と関係あるものと推察した。<BR> 4)陰嚢も鼠径より高く,pH7.0以上を有する例もみられ,変動幅も大きかつた。これは陰嚢の有する特異な解剖学的条件に由来するものと考えたい。<BR> 5)女性では月経期間中にpH値の低下を示し,その変動期間も安定していた。
著者
大森 俊 中村 元信
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.161-165, 2016-04-01 (Released:2016-07-07)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

クライミングとは,もともと自然の岩を登る行為を指すが,近年では人口壁を用いてスポーツとしての競技性を高めた「スポーツクライミング」が広く普及してきている。クライミングに伴うスポーツ障害として,筋・骨格系の異常については多くの報告があるが,皮膚障害の実態はよく分かっていない。そこで,60 名のクライマー(男性 51 名,女性 9 名)を対象に問診ならびに手足の診察を行った。対象となったクライマーの平均年齢は 33.9 歳,クライミング歴の平均は 40.8 カ月,1 週間あたりの活動時間の平均は 9.1 時間であった。問診の結果,多くのクライマーが手指の表皮剝離を経験していた(93.3%)。皮膚および爪について意識して行っている自己処置については,「こまめな爪切り」が最も多かった(76.7%)。診察の結果,手指の胼胝形成は 90.0%のクライマーにみられ,特に右第 5指 DIP 関節/PIP 関節間が最多であった(68.3%)。足については 83.3%のクライマーで両側第1 趾にアスリート結節がみられ,その長径は 1 週間あたりの活動時間と強い相関があった(r=0.653)。指への負担が大きく,きついシューズを履くという競技特性が皮膚にもたらす影響を明らかにすることができた。本調査結果を皮膚障害の予防,スキンケアの指導に繋げていきたい。
著者
平野 京子 新村 紀子 安田 和正 朝倉 みどり 木下 茂美
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.602-608, 1983-08-01 (Released:2012-03-21)
参考文献数
19
被引用文献数
4 3

ハトムギはわが国では古くより疣贅に対し単独漢方薬として広く民間に用いられてきたが, その成分や薬理学的, 免疫学的作用機作に関しての記載は乏しい。今回われわれの教室ではin vitroの実験にてハトムギの各種細胞に対する傷害活性が, いわゆるヨクイニン(種子)よりもその外皮(種皮と果皮, とくに種皮)の方がより強いことを実証した(第1報, 第2報)。そこで臨床的治験として, 外皮を集めこれを熱水抽出して遠心沈澱しその上清を処理して注射用液とし, 沈渣を外用剤として尋常疣贅と扁平疣贅に対する治療を試みた。注射は週1回0.1∼0.3ml皮内に, 外用は1日数回塗布した。その治療成績の結果は, 尋常疣贅では, 注射法より外用剤の塗布の方がよい成績を得, さらに注射と異常に過角化した角質をメスで削除して外用剤を塗布した例の方がより良い結果が得られた。扁平疣贅は, 外用剤塗布のみにて治療を行つたところ, 治癒または有効で無効例はなく, 良い成績であつた。すなわち, ウイルス性疣贅の治療には, ハトムギ果実の外皮による外用剤使用によりかなりの効果が期待出来るものと思われた。その作成法, 治験対象, 結果について述べ, 考察を加えた。
著者
林 宏明 稲沖 真 藤本 亘
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.515-518, 2006 (Released:2006-11-09)
参考文献数
13

緑膿菌による趾間感染症(Pseudomonas toe web infection)の2例を経験した。治療は“hyperkeratoticrim”と表面滲出物のdebridementおよび1%酢酸液による足浴が有効であった。緑膿菌はウッド灯を用いると緑色の蛍光を発するため趾間感染症の早期診断に有用で治療効果判定にも使用できた。趾間感染症は宿主側の感受性および環境要因により再発を繰り返しやすい。今回の症例では1%酢酸液足浴による局所管理が再発予防にも有用であった。
著者
小林 彩 吉川 美香 小川 英作 奥山 隆平
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.346-349, 2013-08-01 (Released:2013-09-07)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

基幹病院とクリニックが連携して患者の治療を進めることは,地域医療を充実する上で大変重要である。慢性皮膚疾患の一つである乾癬の診療では,生物学的製剤が近年使用できるようになり,高い治療効果を得ることが可能となってきた。そこで,私たちは長野県内の皮膚科医 (皮膚科を標榜する病院,クリニック) にアンケート調査を行い,乾癬治療の現状を把握することを試みた。 159 施設へアンケートを郵送し,各診療施設での患者数,現在の治療法,生物学的製剤に対する各医師の考えなどに関して,質問を行った。その結果,87 施設 (回答率 55%) から回答が得られた。アンケート結果からは長野県内の乾癬患者数は約 3000 人,その 7 割近くはクリニックで診療を受けていた。全体の 8 割以上の患者は外用剤のみで加療されていた。クリニックでは,生物学的製剤投与の対象となる患者が 15 施設 34 人いることがわかった。また,副作用への懸念や患者への説明時間が確保できないといったことがクリニックでの生物学的製剤導入を阻む要因となっていた。これらの結果から,生物学的製剤を含めた乾癬の診療を進める上で,クリニックと基幹病院の間の連携が大変重要であると考えた。
著者
大嶺 卓也 粟澤 剛 山口 さやか 粟澤 遼子 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.187-191, 2019

<p>68 歳,男性。初診の 10 年前に徐々に拡大する後頭部の皮下腫瘤を自覚していた。部分生検の結果,隆起性皮膚線維肉腫(dematofibrosarcoma protuberans:DFSP)の疑いで当科を紹介され受診した。当科初診時,後頭部皮下に 4.5×1.5 cm の皮下腫瘤を触知した。可動性は不良で,表面皮膚の色調変化や萎縮はなかった。頭部造影 MRI で腫瘍は後頭部皮下に境界明瞭に描出され,STIR 像で高信号を示した。病理組織学的には,紡錘形の腫瘍細胞が皮下組織において比較的均一に増殖し,花むしろ構造を呈しており,腫瘍細胞は核異型に乏しく,核分裂像はほとんど存在しなかった。免疫組織化学的には腫瘍細胞はCD34 がびまん性に陽性であった。腫瘍の凍結組織から抽出した RNA を用いて RT-PCR を行い,<i>COL1A1-PDGFB</i> の融合遺伝子を検出した。以上より皮下型 DFSP と診断した。皮下型 DFSP の報告は稀であるが,<i>COL1A1-PDGFB</i> 融合遺伝子を検出したことから,皮膚に発生した DFSP と腫瘍発生学的に同じ発癌機序によることが示唆された。</p>
著者
深井 恭子 小松 恒太郎 松尾 雄司 林 健太郎 苅谷 嘉之 宮城 拓也 山口 さやか 照屋 操 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.115-119, 2019
被引用文献数
1

<p>症例 1:87 歳,男性。18 歳時に L 型ハンセン病と診断された。5 年前から左足背に皮膚潰瘍があり,次第に隆起してきた。初診時,左足背に腫瘤があり,病理組織検査にて有棘細胞癌と診断し,左下腿切断術を施行した。症例 2:54 歳,男性。20 歳で L 型ハンセン病と診断された。43 歳頃より右第1 趾に皮膚潰瘍があり,47 歳時,病理組織検査にて有棘細胞癌と診断し右下腿切断術を施行した。30 代から左足底には胼胝があり,52 歳頃に皮膚潰瘍が出現した。54 歳時,潰瘍が増大し,病理組織検査にて有棘細胞癌と診断し,左第1~3 趾切断術を行った。術後約 3 カ月で術後創部から再発,肺に転移し永眠した。ハンセン病の慢性潰瘍は瘢痕癌の発生母地となる。瘢痕癌は他の有棘細胞癌より予後不良であり,ハンセン病の後遺症による神経障害で生じた難治性潰瘍は注意深く経過観察する必要がある。</p>
著者
砂川 文 山城 充士 粟澤 遼子 粟澤 剛
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.31-34, 2019

<p>36 歳,女性。自宅の冷蔵庫で右足を打撲した後,同部の疼痛が次第に増強し発熱もみられた。翌日の当科初診時には右足全体に著しい疼痛を訴え,外果には発赤,腫脹,熱感を認めた。高熱と炎症反応の高値を伴っており,LRINEC(laboratory risk indicator for necrotizing fasciitis)score は 4 点で,入院の上,蜂窩織炎として抗生剤加療を開始した。しかし,半日後にはショック状態となり,炎症反応の更なる上昇と腎機能の悪化,凝固系の延長を来たし,LRINEC score は 8 点に上昇した。患部には水疱が出現,試験切開所見から壊死性筋膜炎と診断し,緊急デブリードマンを施行した。起因菌は <i>Streptococcus pyogenes</i> であり,アンピシリン,クリンダマイシンの全身投与を 2 週間継続し,免疫グロブリン療法を併用した。 その後は感染の拡大を起こすことなく,第 47 病日に植皮術を施行,患肢は大きな後遺症を残すことなく,温存できた。A 群 <i>β </i>溶血性連鎖球菌は,基礎疾患を持たない健常人に単独で壊死性筋膜炎をおこし得る。 また一部の症例では致死率の高い劇症型溶血性連鎖球菌感染症(STSS)へと発展する。自験例は,A 群 <i>β </i>溶血性連鎖球菌による壊死性筋膜炎からショック状態に至ったものの,早期診断と治療開始により,患肢の温存と救命に成功した。本疾患は迅速かつ注意深い対応を要するため,経験症例を共有する必要があると考え報告する。</p>
著者
浪花 志郎 西山 和光 原 曜子 白石 達雄 山本 俊比古 内田 寛
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.1022-1026, 1982-12-01 (Released:2012-03-21)
参考文献数
9

パシフラミン(パッシフローラエキス製剤)を皮膚そう痒症を始めそう痒を伴う各種皮膚疾患計29例に投与し, その鎮静作用がもたらす止痒効果について検討した結果, 一日量3錠ないし6錠の投与で, 比較的早期に止痒効果が発現し, 併用された抗ヒスタミン剤, マイナートランキライザー, またはステロイド剤の有する止痒効果に補助的に作用する傾向がうかがわれた。副作用を示した症例は1例も認められなかつた。従つて, 上記薬剤による止痒効果が不十分であつたり, 副作用のために投与継続が困難な症例では, パシフラミンによる鎮静的止痒効果を期待して補助的に用いることは有用と考えられる。
著者
片野 あずさ 上里 博 内海 大介 大平 葵 粕谷 百合子 苅谷 嘉之 﨑枝 薫 眞鳥 繁隆 平良 清人 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.469-472, 2014
被引用文献数
1

16 歳,男性。生下時より右肩の皮下結節を自覚していた。結節は徐々に増大し,7 歳時には鶏卵大の皮下腫瘤となった。その後も腫瘤は増大を続け,16 歳時に当科を受診した。右肩に手拳大の表面常色,弾性軟,ドーム状に隆起した皮下腫瘤を認めた。下床との可動性は良好で,隆起部中央に瘻孔を有し,瘻孔内より数本の毛髪の突出がみられた。造影 CT 検査では右肩甲骨背側上方に周囲との境界明瞭な,86×44 ×67 mm の増強効果の無い単房性腫瘤であった。摘出された腫瘤は線維性の被膜を有し,その内部には多数の毛髪と粥状物質がみられた。病理組織学的所見では重層扁平上皮に裏打ちされた囊胞状構造を示し,囊腫壁には毛包,脂腺,平滑筋線維が付随し,皮下皮様囊腫と診断した。一般に皮下皮様囊腫は頭頚部,特に眼周囲に好発し,それ以外の部位に発症することは比較的稀である。囊腫の大きさが 5 cm を超える症例は本邦では自験例を含め 7 例のみが報告されているが,頭頚部以外に発症した報告は自験例のみであった。