著者
小林 哲生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.625, pp.71-76, 2003-01-27
参考文献数
32
被引用文献数
1

両眼視野闘争とは、物理的には左右の網膜上に視覚刺激が与えられ続けているにも関わらず、競合する視覚刺激が交互に知覚され、一方の刺激が知覚されている時、他方の刺激が意識にのぼらないという視知覚現象であり、視覚的意識の脳内機構を実験的に調べる上で、主観的体験を定量的に観測できる稀少な現象であるとして重要性が再認識されるようになってきた。ここ数年、特に機能的MRIや脳磁図、事象関連電位といった脳機能イメージング研究により、その機構解明の手がかりとなる重要な結果が報告されるようになってきており、視野闘争には、一次視覚野のみでなく、高次視覚野、頭頂連合野、前頭連合野といった複数の部位が関わっており、相互に結合している機能領域間の情報統合プロセスの結果生ずるらしいことが明らかになってきている。
著者
井上 雅友 渡邉 勇太 島田 達郎 山内 将行 田中 衞
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.547, pp.43-48, 2006-01-17
参考文献数
8

本論文では, 離散時間型セルラーニューラルネットワーク(DT-CNN)を利用し, 学習によって得られたデータをもとに時系列データの予測方法を提案している. 予測に用いられるモデルは連立微分方程式であり, その係数はDT-CNNの状態方程式の平衡解から得られる. 機械学習によって得られたAテンプレートは時系列が多系列になるにつれて密行列になる. そこで, ハウスホルダ変換(HHT)を用いてAテンプレートを3重対角化することにより疎行列にし計算の小規模化を実現している. 時系列データにはChua回路のカオスアトラクタを用いている. シミュレーション結果では, 本提案手法を用いて観測されたデータから十分にアトラクタの予測が可能であることを示している.
著者
紅林 亘 藤原 寛太郎 中尾 裕也 池口 徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.69, pp.87-90, 2013-05-20

共通のノイズ外力によって複数の系が同期する現象をノイズ同期現象といい,リミットサイクル振動子のノイズ同期現象については,既に理論的な解析法が確立されている.一方で,カオスなどのより一般の系については,未だ理論的な定式化が存在しない.本稿では,まず,従来の位相縮約法の概念を拡張し,ノイズ外力を受けるカオス振動子に対して適用できる新しい位相縮約法を提案する.そして,新しい位相縮約法をカオス振動子に適用し,そのノイズ同期現象について解析する.これにより,共通のノイズ外力に駆動される2つのカオス振動子の位相差の確率分布を導出することができ,ノイズ同期現象の統計的性質を理論的に予測することが可能となる.
著者
沖 将且 小林 康秀 沖田 豪
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.41, pp.31-38, 1999-05-13

これまでに, ハマースタインシステムの同定は, 主として入出力の相関関数を用いたノンパラメトリックな同定法が提案されている. それらは, 線形部の次数および非線形部の多項式の次数を既知とし, 非線形部に連続関数を仮定しているため, リレー, 不感帯特性など非線形性の強いシステムには適用できない. ニューラルネットワークは, 広範な非線形特性を表現でき, 学習, 汎化能力に優れているため, ハマースタインシステムの非線形部をNNで表現し, 広範な非線形特性をもつシステムの同定法を提案する. システムの線形部はARXモデルで表現し, その次数は未知とし出力は観測雑音で汚されている. 非線形要素を表すニューラルネットワークの重み係数および線形部のシステムパラメータは, 観測値を教師信号として一括して学習を行う. また, ニューラルネットワークのユニット数および線形部の次数は, MDL 情報量基準により推定する. 最後に, 不連続など強い非線形性をもつシステムに対して, シミュレーションを行い, 本手法の理論的正当性を検証する.
著者
時永 祥三 譚 康融
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.267, pp.31-33, 2007-10-12

近年、提案された粒子フィルター(モンテカルロフィルター)は、航空管制や、車両追跡など、多くの分野で応用されている。その特徴としては、ノイズの分布は正規に限定されず、いろなタイプのノイズに対応できるという点である。本報告は、粒子フィルターにおいて、仮にノイズの分布が分らない場合において、遺伝的アルゴリズムを用いて、そのノイズの分布を推定する手法を提案し、特に、混合分布を用いたノイズの分布の推定の手法について報告する。
著者
山田 祐司 康 敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題
巻号頁・発行日
vol.97, no.531, pp.59-66, 1998-02-06

本研究では、4彩色問題の解法として、マキシマムニューロンを用いた解法を提案する。この問題に関する従来の解法では、地図を構成する領域の各々に、4色を表わす4つのニューロンを割り当て、発火したニューロンに対応する色で領域を彩色する。この場合、領域毎に1つのニューロンのみが発火する必要があるが、マキシマムニューロンはこのような条件を、常に満たすニューロンモデルである。48〜430領域の5種類の地図に対してシミュレーションを行い、従来の解法との性能比較を行ったところ、本解法は非常に優れた性能を示した。更に本研究では、ニューロンの出力値の更新タイミングについても、議論する。
著者
関川 宗久 稲葉 直彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.486, pp.139-143, 2014-03-03

本報告では,delayed logistic mapの結合系に見られる高次元トーラスの部分同期現象(Arnold resonance web)を解析する.この結合離散時間力学系は,連続時間力学系における3次元トーラスに相当する2次元不変トーラス(2次元IT:invariant torus)を発生する.また,2次元IT発生領域内部において,多数の1次元不変閉曲線(1次元ICC:invariant closed curve)発生領域が存在する.ここで,1次元ICCは連続時間力学系における2次元トーラスに相当する.パラメータ平面上において,1次元ICC発生領域は2次元IT発生領域内部で縦横無尽に存在し,そのweb状の分岐構造はArnold resonance webと呼ばれている.本報告で解析する結合系では,錯綜する1次元ICC部分同期引き込み領域の交叉点において,Chenciner bubblesと呼ばれる周期解発生領域が観察された.分岐解析により,Chenciner bubblesの境界にはサドル・ノード分岐とネイマルク・サッカー分岐の2種類が存在することが明らかとなった.
著者
神山 恭平 遠藤 哲郎 小室 元政
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.250, pp.145-150, 2014-10-09

我々は,これまでの研究において離散力学系(マップ)と連続力学系(フロー)の準周期解(正確にはマップの1-トーラスとフローの2-トーラス)について,その局所分岐の位置と型が分岐の直前におけるDominant Lyapunov Exponent (DLE)とDominant Lyapunov Bundle (DLB)によって知ることができることを明らかにした.すなわち, DLEが零になる点で分岐がおこり,その分岐の型はDLBをみることによってあきらかとなる.すなわち,マップの1-トーラスの場合はDLBにはA^+,A^-,M,Fと4つの型がある.フローの2-トーラスのDLBはマップの1-トーラスの2つのDLBの組み合わせであらわされるが,このうち,基本的にA^+×A^+(サドル・ノード分岐), A^-×M(被覆度倍分岐, M×A^-とM×Mは同じ分岐である), F×F(ネイマルク・サッカー分岐)の3種類の分岐しか存在しないことを明らかにした.被覆度倍分岐においてはポアンカレ断面の取り方によって被覆度倍分岐と周期倍分岐両方がみられる.本研究では,位相同期回路において被覆度倍分岐がおこることを示す.
著者
藤原 澄人 稲葉 直彦 関川 宗久 藤本 憲市 吉永 哲哉 遠藤 哲郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.487, pp.77-80, 2013-03-07

本研究では,delayed logistic写像の結合系を解析し,2-トーラスと3-トーラスの境界について調べた.2-トーラスと3-トーラスの境界については,リミットサイクルの2度のネイマルクサッカー分岐によって生じるという仮説があった.その仮説は多くの研究者を惑わせるシナリオであったに違いない.しかしながら,1世代前の計算機の計算機速度ではそのシナリオの可否を十分に検証することは難しかった.本研究では,3-トーラスを発生するdelayed logistic写像の結合系をリアプノフ解析することにより,その仮説が成り立たないことを明らかにする.
著者
関川 宗久 藤原 澄人 稲葉 直彦 遠藤 哲郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.15, pp.29-33, 2013-04-18

本研究では,delayed logistic写像の結合系を解析し,ICCと不変トーラスの関係を数値実験によって調べた.リアプノフ解析により,不変トーラスの発生パラメータ領域を調べたところ,縦横無尽に走るICC-アーノルドタングが観察された.同図において,準周期ネイマルク・サッカー分岐および準周期サドルノード分岐の発生を確認した.さらに,アーノルドタングがネイマルク・サッカー分岐によってICC-アーノルドタングに遷移するという極めて興味深い分岐構造を見出した.
著者
関川 宗久 稲葉 直彦 遠藤 哲郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.250, pp.129-132, 2014-10-09

本研究では, delayed logistic写像の2個の結合系である離散時間力学系を解析する.単体のdelayed logistic写像は不変1次元トーラス(invariant one-torus: IT_1)を発生するため, 2個のdelayed logistic写像の結合系は不変2次元トーラス(invariant two-torus: IT_2)を発生しうる. IT_2を発生する力学系では, IT_2を発生するパラメータ領域内部でIT_1を発生する部分同期引込領域(IT_1-Arno1'd tongues)が縦横無尽に交錯する.このような蜘蛛の巣状のIT_1部分同期引き込み領域はArnol'd resonance webと呼ばれている. 2つのIT_1-Arnol'd tonguesの交点ではChenciner bubblesと呼ばれる完全同期引き込み現象が生じ,周期解が発生する.本研究では,このChenciner bubblesの分岐構造を解析し,この同期引き込み領域がサドル・ノード分岐とネイマルク・サッカー分岐によって囲まれていることを明らかにする.
著者
太田 有三 辻 正明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.103, pp.33-38, 2008-06-20

本文では区分的線形リヤプノフ関数の一般化を提案する.従来の区分的線形リヤプノフ関数は,対象とする領域を細分化する超平面を用いて特徴付けられ,安定性のための条件は,超平面に対する重みを変数とする線形計画問題として記述される.この線形計画問題における制約式の数を減らすために分割の仕方を変え,区分的線形リヤプノフ関数の和として特徴付けられる新しいクラスの区分的線形リヤプノフ関数を提案する.
著者
金光 秀雄 今野 英明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.395, pp.41-46, 2012-01-16

閉区間上で目的関数の極小値が(下へ)単峰列となる一変数多峰関数の大域的最適化問題に対して,極大点・極小点および多峰関数の数理構造を与える,さらに,前報のアルゴリズムより広汎な多変数最適化問題に適用可能なアルゴリズムを検討・提案する.多変数のテスト関数に対するいくつかの数値実験の結果から,本手法が効率的かつ高信頼性で最小点を見い出せることを示す.
著者
安達 琢 赤穂 伸雄 浅井 哲也 本村 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.106, pp.65-70, 2011-06-23

メモリスタを用いた非対称の時間窓を持つSTDPシナプスデバイスを提案する。メモリスタ(抵抗変化型メモリ:ReRAM),キャパシタ,二つのpMOSFET,および四つのnMOSFETを用いてデバイスを構成した.まず,ReRAMの特性,および本研究で使用するバイポーラ型ReRAMのモデルについて説明する.次に,本研究を行う上で参考となった先行研究の回路動作(STDP特性における時間的因果領域のみを模擬する動作)を説明する.さらにこの回路を拡張したデバイス(STDP特性における時間的因果領域および非因果領域を模擬するデバイス)を提案し,各回路ブロックの詳細な動作を説明する.最後にHSPICEを用いた回路シミュレーションにより,ReRAMを介さずに流れる電流によりキャパシタが充電され,その後流れた電流によりキャパシタが放電され,ReRAMのコンダクタンスが元の値より減少する事を確認する.
著者
大石 進一 高安 亮紀 久保 隆徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.166, pp.61-64, 2010-07-26

本報告では非線形楕円型偏微分方程式のDrichlet境界値問題の解に対する精度保証付き数値計算方法について述べる.提案手法は先行研究とは違うまったく新しい精度保証法法で,Newton-Kantorovichの定理に基づき,自然に精度保証条件が導かれる.さらにこの手法は近似解計算の数倍程度の手間で精度保証可能である.精度保証付き数値計算法の計算速度について効果的な結果を得ることができた.
著者
貝森 晃司 中川 匡弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.458, pp.125-129, 2010-03-02

生体信号のフラクタル性に関する研究は,医療や通信など様々な分野で進められている.脳波や音声信号においては,フラクタル性を用いた手法が,従来の手法よりも深い情報を得られる可能性が示唆されている[1-2]. これより,本研究では,感情が含まれる音声のマルチフラクタル解析を行う.これにより,感情によって音声のフラクタル性に違いが見られるかという比較を行った.解析の結果,通常/怒り/悲しみ/楽しみのそれぞれの感情によって,音声のマルチフラクタル性が異なる様子が確認された.
著者
佐藤 仁樹 佐藤 雅子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.271, pp.47-52, 2013-10-21

高次元非線形最適化問題に対する複数のスパースな近似解を,遺伝的アルゴリズムを用いて導出した.まず,状態変数の番号を遺伝子とした染色体を定義する.次に,高次元非線形最適化問題を染色体で与えられた状態変数のみを変数とする問題に縮小する.縮小された非線形最適化問題の評価関数を染色体の適応度として遺伝的アルゴリズムにより染色体を改良し,縮小された非線形最適化問題を解くことにより,高次元非線形最適化問題に対するスパースな近似解を導出する.この解法を食材及び食材配合量の最適化問題に適用し,食材及び食材配合量を栄養素バランスの目標値に対して最適化した.
著者
小平 あゆみ 神野 健哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.478, pp.5-8, 2008-01-25

本研究では変形テントマップによるカオスを用いた自動作曲システムについて述べる。我々の目標はできるだけユーザーの好みに応えられる自動作曲システムを構築することである。この目標を達成するために、我々は「カオスを用いた自動作曲システム」を提案する。本システムは、マルコフ連鎖を利用し音楽の3要素であるメロディ・リズムを生成し、最後にメロディに合った和音を生成する。本研究では、状態遷移確率を変形テントマップによるカオスを用いる。和音は生成されたメロディに合うものを3コードから選択する。本自動作曲システムは既存の曲に依存せずユーザーの好みに合った曲が生成できるシステムの構築を試みた。
著者
竹之内 星矢 青森 久 大竹 敢 田中 衞 松田 一朗 伊東 晋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.82, pp.69-73, 2010-06-11
参考文献数
11
被引用文献数
1

本論文では,画像毎の特徴に応じ適応的に処理を行うセルラニューラルネットワーク(CNN)を用いた階層的可逆符号化方式を提案する.提案方式は,画像の分割と予測に基づく方式であり,符号化性能は予測性能に大きく依存する.このため,予測を予測誤差を最小とする最適化問題に帰着させることにより,CNNによる最適な予測を実現している.また,画像の特徴に応じて,CNNのテンプレート形状を変化させ,予測性能の向上を図った.さらに,コンテクストモデリングを用いる算術符号化器を導入し,高い符号化効率を実現している.様々な画像に対し符号化を行い,提案方式の有効性を確認した.
著者
石村 憲意 浅井 哲也 本村 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.389, pp.131-136, 2013-01-17

確率共鳴は雑音を有効に利用した現象のひとつとして挙げられる.これは,二重井戸型ポテンシャル等の系に閾値下の微弱な信号が入力されている時に,外部の雑音を効果的に取り込むことによって信号の値が閾値を超え,状態遷移を可能にする現象である.一方で,カオス共鳴が近年注目されている.この現象は,複数のストレンジアトラクターを持ち,閾値下の信号が入力され得るカオス系において観測される.このようなカオス系では,系内部で生成されるカオスのゆらぎを利用する事で状態遷移を起こす為,従来の確率共鳴と異なり,外部雑音が不要である.本研究では,カオス共鳴を起こす条件を満たす系としてChua発振器を用い,閾値下の信号として正弦波電圧を加えてカオス共鳴の観測を行った.ある入力周波数範囲では二つのアトラクター間でカオス的な遷移が起こり,他の範囲では状態が,一方のアトラクターにトラップされることを確認した.これらの動作が,カオス的なゆらぎが状態遷移に寄与していることを示している.さらに,カオス共鳴の度合いと系内部に発生するゆらぎの強さの関係を調べる為に入出力相関値やSNRを算出し,確率共鳴曲線に類似したカオス共鳴の特性が得られた.また,このChua発振器を並列化して共通の閾値下の入力を加えて同様の実験を行い,カオス共鳴下では相関値やSNRが向上する事を確認した.