著者
上村 明英 ウエムラ アキエ Akie UEMURA
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
no.19, pp.145-150, 2019-03-31

本稿は、大学における英語の授業内多読の効果について報告するものである。各授業の冒頭15分間で用意された多読図書を読む活動を1学期間行い、学期最終日にアンケートを実施した。その結果、多読を妨げる最大の要因が時間不足であることが明らかになった。さらに、一年の間に多読に対する意欲が低下していることも分かった。本調査から授業内多読は二つの理由からこの状況を打開する方法となり得ることが示唆された。一点目としては、授業内多読を通して多読の楽しみを学生が認識することができるという点である。もう一点は、授業内多読は読む時間が最低限確保できるというだけでなく、授業外でも多読をするきっかけとなりうるという点である。調査結果をふまえ、授業内多読に必要不可欠な要素についても考察を加える。
著者
小杉 大輔 コスギ ダイスケ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
no.20, pp.129-134, 2020-03-31

本研究では、Big Five尺度短縮版への回答をもとに、現実の自己、ネット上の自己、理想の自己の違い、および理想-現実、理想-ネット、ネット-現実のギャップと自尊感情との関係について検討した。その結果、まず、本研究の調査対象となった大学生において、情緒不安定性、非勤勉性、非調和性の3側面についてはネット上で現実の自己よりも理想の自己に近い自己を表出する自己高揚的呈示をすること、外向性については、ネット上で自己卑下的呈示をすること、開放性においてはいずれの自己呈示も見られないことが示された。また、自尊感情については、全体として理想-現実のギャップが大きいほど低いことが示唆された。一方、ネット-現実のギャップについてもその大きさが自尊感情に影響を与える可能性が示唆された。
著者
下澤 嶽 シモサワ タカシ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.18, pp.9-14, 2018-03-31

エシカル消費に関心が集まるなかで、地産地消もエシカル消費のひとつであるという議論が目立つようになってきている。しかし、何を持ってエシカルな地産地消となるのかについては、まだ十分な議論がなされていない。農産物の生産・流通を例にとって、エシカルな地産地消の基準のあり方を考察する。
著者
永井 聡子 ナガイ サトコ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.18, pp.97-104, 2018-03-31

地域の劇場とは何か。我が国の文化創造の拠点としての公共劇場において、「芸術」や「文化」についての論議や、「観客」についての論議は必須である。上演ジャンルをリードするものとしての劇場が必要であるという認識がないことが問題なのであり、それは劇場運営や劇場建設に大きく影響している。筆者は、『劇場の近代化』(思文閣出版、2014)の中で、演劇のジャンルが劇場空間と切り離せないその系譜を「帝国劇場」「築地小劇場」「東京宝塚劇場」の3劇場の近代化に劇場の本質的意義があるとして、演劇史との境界領域から論じた。むしろ芸術作品をリードするのが劇場で、その先に劇的世界が構築される。こうした立場から本論では、筆者が2つの劇場で企画・制作した新作舞台を事例に、演劇人、劇場人の言説を資料として、観客を能動的にするための地域の劇場はいかにあるべきかについて論じることを目的としている。
著者
野村 卓志 林 左和子 岡田 建志 ライアン ジャック 井出 直樹 ノムラ タカシ ハヤシ サワコ オカダ タケシ ライアン ジャック イデ ナオキ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
no.19, pp.151-156, 2019-03-31

図書館にeBookサービスを導入することにより、図書の貸出等の管理を容易にし、さらに利用者の利便性を上げる効果があるとされている。本学図書館へのeBook導入へ向けての試行として、eBookを複数の講義で学生に利用させた上でアンケート調査を行った。eBookは2社のシステムを利用し、その比較を行った。他大学の事例と比較しつつ、本学の図書館にeBookサービスを導入するときの特徴や問題点、さらに講義環境に求められる特性について論じた。
著者
永井 聡子 ナガイ サトコ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.18, pp.97-104, 2018-03-31

地域の劇場とは何か。我が国の文化創造の拠点としての公共劇場において、「芸術」や「文化」についての論議や、「観客」についての論議は必須である。上演ジャンルをリードするものとしての劇場が必要であるという認識がないことが問題なのであり、それは劇場運営や劇場建設に大きく影響している。筆者は、『劇場の近代化』(思文閣出版、2014)の中で、演劇のジャンルが劇場空間と切り離せないその系譜を「帝国劇場」「築地小劇場」「東京宝塚劇場」の3劇場の近代化に劇場の本質的意義があるとして、演劇史との境界領域から論じた。むしろ芸術作品をリードするのが劇場で、その先に劇的世界が構築される。こうした立場から本論では、筆者が2つの劇場で企画・制作した新作舞台を事例に、演劇人、劇場人の言説を資料として、観客を能動的にするための地域の劇場はいかにあるべきかについて論じることを目的としている。
著者
佐々木 哲也 下澤 嶽 ササキ テツヤ シモサワ タカシ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.17, pp.205-218, 2017-03-31

本学では、2015年12月3日に静岡文化芸術大学生活協同組合(以下、本学生協)を設立した。生協設立の運動そのものは、学内の福利厚生の拡充を求める教職員と学生により行われたものであるが、本学も、福利厚生の充実、食堂・店舗の運営の安定化及び大学活動の活性化を目的として、生協設立に積極的に関与した。本稿では、生協設立の過程、開業初年度の状況及び生協設立により得られた成果を報告する。さらに、一連の取り組みから得られた知見として、大学が抱える諸課題の解決において生協設立が有効な手立てとなり得ること、また、生協設立においては、教職員・学生の自治意識と大学の当事者意識が重要であることを提示した。
著者
奥中 康人 オクナカ ヤスト
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.18, pp.65-90, 2018-03-31

群馬県では、公設消防組が設立された1894年に、広くラッパが配備され、組織的な練習もおこなわれていた。ほぼ同時期に、消防用のラッパ譜も制定されていたという。本稿は、1890年代~1940年の7種類の消防ラッパ譜(「喇叭ノ符」(1895)、「喇叭符」(1895)、『喇叭符號手帳』(1896~97)、『消防の栞』(1908)、『消防喇叭音譜』(1929)、『消防喇叭教本』(1938)、『警防喇叭教本』(1940))の内容を分析することによって、近代群馬にどのような音楽が鳴り響いたのかを明らかにすることを目的としている。群馬県の消防ラッパ譜に収録された楽曲は、消防のために作られたオリジナル曲と、軍隊のラッパ譜によって構成されている。軍隊ラッパ譜から転用された曲の多くは、1885年に刊行された『陸海軍喇叭譜』とその改訂版を典拠としているが、1890年代のラッパ譜の中には、1885年以前に陸軍が使っていたフランスのラッパ譜も含まれている。1920年代には、群馬のオリジナルのラッパ文化がわずかに芽生えようとしていたが、1938年のラッパ譜では、ほとんどが『陸軍喇叭譜』の曲で占められることとなった。
著者
谷川 憲司 梅田 英春 長嶋 洋一 的場 ひろし 峯 郁郎 タニガワ ケンジ ウメダ ヒデハル ナガシマ ヨウイチ マトバ ヒロシ ミネ イクロウ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.18, pp.141-146, 2018-03-31

子供、高齢者、聴覚・視覚などの特性の如何に関わらず、誰もが一緒に楽しめる音楽(楽器)の開発を目的として、学生を主軸としたワークショップ形式で研究を行った。2つの成果物、モニカム(楽器)とリズカ(リズムゲームカード)を制作し、「UD+ in はままつ」で紹介した。その後、企業との連携により立体印刷技術を活用してリズカの発展形(立体版)を制作し、小学生・障がい者による遊び方の実験を行った。
著者
根本 敏行
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.123-135, 2012

今日、先進諸国の都市では、新しい創造的な諸活動の受け皿として、近代以降の産業遺産を活用した都市政策が展開されている。一方、先進国の近代化の過程には、戦争や民族紛争、奴隷貿易、強制労働などの負の文化遺産も同時に存在する。本論考では、英国、ドイツ、とりわけアイルランドにおいて、負の文化遺産にも正面から真摯に取り組み、新しい都市や地域の発展に結び付けようという試みについての事例を取り上げている。(文化政策研究科長研究委2011 による調査報告/根本担当分を含む )
著者
パルス トーマス ショウバック マイケル
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-6, 2006
被引用文献数
1

立命館大学理工学部ならびに静岡文化芸術大学用に開発したプレゼンテーション授業運営・評価ツールの意義とその詳細、および実証的効果について概説する。ツールはリアルタイム・オンライン・ピア・フィードバックシステムを備え、教員は個々のオーディエンスが行った評価(イントロダクション、ボディ、コンクルージョン、内容、ビジュアルエイド、デリバリー、質疑応答の7項目)にリアルタイムでアクセスできる。プレゼンテーションをした当人は、終了後すぐに、教員による評価、ピア・エヴァリュエーションの結果(匿名)に加えて、両者がどの程度一致しているかをパーセンテージで表したものについても閲覧できる。一方、教員は、色分けされた円グラフで、個々のオーディエンスがどの程度プレゼンテーションの内容を理解できたか、どの程度プレゼンテーションの方法論を理解しているかを容易に把握することができる。このシステムにより学生の授業態度、習熟度、授業満足度が飛躍的に向上したことが、セメスター毎に実施するオンライン授業評価アンケートの数値にも顕著に表われている。
著者
ヒューズ メアリー パルス トーマス
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.99-106, 2006

現在進行中のカリキュラム、英語ディプロマコース(以後EDC)の進展状況を報告する。EDCは、二年にわたって集中的に行われるインテンシヴな教育プログラムである。学習意欲の高い学生を対象とし、学生の英語によるコミュニケーション能力を-特にオーラル・コミュニケーションに焦点を合わせて-発展させることを目標としている。学生たちは、時事問題や個人的関心についての多様なトピックを適切な語彙を使用して、形式にとらわれずに話すことを学ぶと同時に、ビジネスにおいて使用できるレベルでも話せるように学習している。教材には、新聞、ビジネスレター、ラジオやテレビのニュース、インターネット上の情報などの多様なメディアを使用している。課題は様々なプレゼンテーションやレポートから成り、卒業後を視野に入れたテーマが設定されている。学生がこのコースを通じて成果をあげるためには、自習のために充分な時間を-例えばLL教室やインターネット上の材料を利用したり、日記をつけたりして活用しなければならない。このコースは学生の側に多大な献身を要求するものであるが、それなりの努力をした学生はコース終了時に、社会に出て働くにあたって英語を活用する準備が整っていることになろう。EDCは、それぞれが重なり合う三つのスキルを学生に伸長させることを意図している。それらは、英語力、生涯学習を続けるスキル、社会で働くためのスキルである。
著者
黒田 宏治
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.41-47, 2007
被引用文献数
1

近年、第3セクターを巡っては、経営破綻や法的整理なども続き、批判的な論調が強いが、一方で、地方圏には小規模ながら健闘している第3セクターも少なくない。本稿では、そのような第3セクターの事例を6社取り上げて、調査分析を行った。そこから、プロパー体制、デザイン戦略など組織面、戦略面にわたり6つの留意点を抽出することができた。
著者
永井 聡子
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.67-72, 2014

帝国劇場における「貴賓席」は舞台と客席を繋げる前舞台領域に存在し、両者の関係性を提示している。本論文では、劇場の近代化の過程において議論となった舞台と客席の前舞台領域における関係性を考察するため、1911年に開場した帝国劇場とその劇場建設のモデルのひとつとなったパリのオペラ座(ガルニエ設計)を例に、当時設けられた「貴賓席」の配置について考察する。考察の方法は、劇場に関する当時の資料、劇場関係者の言説を中心として論じる。
著者
高瀬 奈美 スプリンガー マーカス マーシャル アントニ 羅 沢宇 横田 秀樹 ライアン ジャック サリッチ エドワード タカセ ナミ スプリンガー マーカス マーシャル アントニ ラ タクウ ヨコタ ヒデキ ライアン ジャック サリッチ エドワード Nami TAKASE Marcus SPRINGER Anthony MARSHALL Zeyu LUO Hideki YOKOTA Jack RYAN Edward SARICH
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.17, pp.171-176, 2017-03-31

本稿は静岡文化芸術大学の英語・中国語教育センター(以下、英中センター)発足から3年間における取組を報告するものである。英中センターの役割、TOEICから見る成果検証、学生へのアンケート調査結果を報告する。TOEICを利用した検証では、英中センターが主催する様々な活動によって、点数にも反映していることがわかった。また、学生による利用調査でも、英中センターが有効に使われ、言語学習において効果があることが明らかになった。
著者
鈴木 元子
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-8, 2008

本稿では、『夏の夜の夢』や五月祭、および広場での笑いのシーンにバフチンのカーニヴァル的な笑いの理論を援用して、アメリカの代表的作家サナニエル・ホーソーンの"My Kinsman, Major Molineux"を新たに読み解くことを試みた。主人公ロビンの名前の起源には、春を告げる小鳥(ロビン)のほかに、『夏の夜の夢』のパックことロビン・グッドフェローや、ロビン・フッド伝説のロビンが考えられ、作品の文学世界はアメリカからイギリスへ、新大陸から旧大陸、そして中世へと広がる。この短編のクライマックスである広場に行列が通るシーンは、『夏の夜の夢』の劇中劇に触発された「ペイジェント」として、「演劇的な仕掛け」がこの作品にあることを論じた。
著者
福岡 欣治
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.69-77, 2007

大学新入生の心理的適応におよぼす家族および友人のソーシャル・サポートと達成動機の影響を検討した。福岡(2000)の枠組みを踏襲しつつ、本研究では精神的健康度を含め2時点においてこの問題を検討した。247名の大学新入生から得た入学後3ヶ月時点でのデータを分析した結果、主として友人のサポートが自己充実的な達成動機を高めることで大学新入生の学業および大学生活全般についての意欲低下を防ぐ効果をもつこと、また家族および友人のサポートが精神的健康を支える効果をもつことが示された。また、 3ヶ月時点の回答者のうち127名から得られた入学後9ヶ月時点でのデータでも、同様の分析結果が得られた。ただしこれらの回答者はやや授業に対する意欲が高い傾向にあり、再検討の余地を残すものであった。これらの結果をふまえ、大学新入生における環境移行への心理的適応過程に対する今後の検討の方向性を考察した。
著者
佐々木 哲也 下澤 嶽 ササキ テツヤ シモサワ タカシ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.17, pp.205-218, 2017-03-31

本学では、2015年12月3日に静岡文化芸術大学生活協同組合(以下、本学生協)を設立した。生協設立の運動そのものは、学内の福利厚生の拡充を求める教職員と学生により行われたものであるが、本学も、福利厚生の充実、食堂・店舗の運営の安定化及び大学活動の活性化を目的として、生協設立に積極的に関与した。本稿では、生協設立の過程、開業初年度の状況及び生協設立により得られた成果を報告する。さらに、一連の取り組みから得られた知見として、大学が抱える諸課題の解決において生協設立が有効な手立てとなり得ること、また、生協設立においては、教職員・学生の自治意識と大学の当事者意識が重要であることを提示した。
著者
阿蘇 裕矢 黒田 宏治
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.61-74, 2010

近年、人口の減少・高齢化、地球環境問題など新たな社会経済構造の変革に伴い、生活環境の悪化や都心の衰退などに伴う都市行政や都市経営の課題が指摘されている。また、住民の快適な住環境への関心が高まるなど、より良い都市のあり方、良質な市街地のストックが求められている。本研究では、従来の再開発に関わる手法によって都市や市街地の質や価値を高めてきた流れを検証しながら、まちづくりにおける再開発事業の事例を通して、住民にとってより快適で良質な地域コミュニティを創出するための方策等について考察する。特に、計画から事業完了までのプロセスを洗い出すために浜松市東地区の再開発をケーススタディとして、従来の手法によって補うことができない問題や課題とは何かを考察する。
著者
的場 ひろし 和田 和美
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.83-89, 2011

メディア造形学科では、研究・教育の成果を様々な形で学外へ発表しており、特に地域の文化施設との連携による情報発信を推進している。2010年に浜松科学館で行われた企画展では、教員の指導のもと、学生によるメディアアート、インタラクティブアートをベースとした作品展示が実現した。本論文では、このプロジェクトの詳細について報告する。