出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.M8, no.1, pp.1_j1-1_j2, 1884 (Released:2015-06-18)
著者
三輪 洋人 佐藤 信紘
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.293-303, 2001-01-20 (Released:2014-11-12)
参考文献数
49

最近ヘリコバクター-ピロリ (以下H. pylori) の臨床的意義が明らかにされ, 最近胃疾患の治療が根底から変わりつつある. 除菌の対象に関しては, 今後のさらなる議論が必要であるが, 実際のH. pylori感染症に対する臨床的対応はそれほど困難なものではなく, H. pylori感染症をいかに診断し, そしてどのように治療するかに集約される. H. pylloriの診断法には大きく分けて, 内視鏡を用いる侵襲的診断法と内視鏡を用いない非侵襲的診断法がある. 非侵襲的診断法のうち, 13C尿素呼気テストは最も診断精度に優れた方法のひとつであるとされる. また, その優れた診断精度から除菌治療後の治癒判定にも積極的に用いられている. 血清診断キットは欧米からの輸入キットがほとんどであるが, 近年このキットを日本人にも用いると, その診断率が欧米での成績よりかなり劣ることが明らかとなり, 本邦独自での血清抗体の開発が待たれる. 最近尿を用いたIgG抗体検出キットが開発されたが, 従来の血清抗体測定法以上に良好な診断率が報告された. また, 便中H. pylori抗原測定法も実用化され, その信頼性に対しても検討もすすんできた. 除菌療法の世界の主流はプロトンポンプ阻害剤 (PPI) と抗菌剤2剤を用いた新3剤療法である. 欧米では除菌治療レジメに関して多くの論文が出されているが, これら欧米人で用いられる治療法が日本人でも有効かどうかについては新たな検証が必要である. われわれの多数例の検討では, 現在の日本における最適な治療法はPPIの2倍量 (1日2錠) にアモキシシリン1500mg, クラリスロマイシン400mgを組み合わせて7日間服用するPPI/AC療法であると考えている. 副作用は下痢や口腔内症状が主であるが, ほとんどは軽微で服薬率に影響を与えることは少なく, 安全な治療法でもある. H. pylori感染症の診断と治療は常に進歩しているが, 新しい方法や知識をいち早く取り入れ, そしてそれらの限界を見極めながら安全に効率よくH. pylori感染症の診断と除菌治療を行っていくことが肝要である.
著者
川久保 嘉昭 竹井 謙之 泉 光輔 山科 俊平 今 一義 榎本 信行 鈴木 聡子 池嶋 健一 大久保 裕直 佐藤 信紘
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.73-81, 2007

目的: 肝星細胞は肝障害が継続すると筋線維芽細胞様細胞に形質転換し, コラーゲンをはじめ, 細胞外マトリクスを過剰産生し, 肝線維化機序の中心的な役割を果たす. このため, 活性化した星細胞に細胞死を誘導することができれば, 肝線維化抑制につながると期待される. グリオトキシンは活性化した星細胞にアポトーシスを引き起こすことが知られているが, その分子機序は明らかではない. 一方, inverse genomicsの手法は, ランダムな切断配列をもつリボザイムライブラリーを導入し, 細胞の表現型・性質を変化させる刺激を与えた際, 変化が起こらなかった細胞からリボザイムを単離し, その塩基配列を知ることで表現型変化に関わる機能遺伝子を同定することが可能である. われわれはこの手法を用いてグリオトキシンによる星細胞のアポトーシスに関わる遺伝子の探索を行った.対象・方法: 株化星細胞であるHSC-T6にリボザイムライブラリーを搭載したプラスミドをトランスフェクションし, 48時間後にグリオトキシン (1.5μM) を培養液に添加して24時間培養後, 生存細胞からプラスミドを回収した. このグリオトキシンによるセレクションを3回繰り返した後にリボザイムを単離してシークエンス解析を行い, その配列情報をもとにアポトーシス関連遺伝子の検索をデータベース上にて行った.結果: われわれは20の星細胞アポトーシスに関わる候補遺伝子の配列を得た. その中の1配列は, カスパーゼ7に相補性を有していた. 同配列を持つリボザイムをHSC-T6に導入したところ細胞はグリオトキシンによるアポトーシスの誘導に抵抗性を示した.結論: 以上の結果によりグリオトキシンによるアポトーシスの誘導にはカスパーゼ7が関与していることが示唆された. またinverse genomicsによるアプローチは, 肝星細胞のアポトーシスに関わる機能遺伝子の探索に有用であることが示唆された.
著者
森近 浩 橋本 隆之 草野 マサ子 細田 誠弥 倉本 孝雄 田村 和子 林 敬民 稲見 邦晃 高桜 芳郎
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.83-89, 2005-03-31
被引用文献数
1

目的:肥満者に胃食道逆流をよく経験する.体格指数と逆流性食道炎発症の相関について検討した.対象:男性548例(平均53.9歳)女性246例(平均62.2歳)の計794例(平均56.5歳)である.方法:肥満は日本肥満学会の基準に準じ,また逆流性食道炎の判定はロサンゼルス分類による内視鏡所見基準に従った.結果:逆流性食道炎発症は非高齢者普通群(男,女)に比し,肥満A群2.2, 1.5と肥満B2.7, 2.0,また高齢者においてやせ2.4,1.9普通A群1.8,0.9普通b群1.9,2.2肥満A群2.6,2.5と肥満B群3.1,2.8各々倍である.結語:逆流性食道炎発症は体格指数が大となり高齢者に多かった.肥満者と高齢者には逆流性食道炎対策が必要である.
著者
千葉 百子 横山 和仁
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.115-122, 2012

放射線の生体影響は早期影響, 晩発影響および遺伝的影響に分けて考えねばならない. 晩発影響や遺伝的影響は半世紀以上経過した広島・長崎の例, 四半世紀を経過したチェルノブイリの原発事故の例から学ぶことができる貴重なデータがある. 2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴って起きた福島第一原子力発電所事故では日本政府は原発から半径20km以内の住民に避難指示を, 半径30km以内の住民に屋内退避指示を出した. 事故から約1年経過した現在も残留放射線があり, わが家へ帰れない住民は少なくない. 環境の放射能汚染にとどまらず食品, 飲料水からも高い放射線が検出され, 厚生労働省は食品衛生上の暫定規制値を設定した. 放射線被曝に関連して過度に恐れることなく, 適切に対処するには正しく理解することが重要である. そこで1950年に12万人の対象者で開始された広島・長崎の追跡調査 (寿命調査), チェルノブイリ原発事故に関する知見, その他放射線に関する環境衛生学的な知見について紹介する.
著者
山口 忍 丸井 英二 斉藤 進 荒賀 直子
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.468-476, 2007-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
29

目的: 1歳児をもつ母親の育児困難感の有無を把握し, 母子の属性と育児困難感の関連を明確にする. 対象: 千葉県内の協力が得られた2市に在住する1歳児をもつ全母親910名 方法: 2005年10月に無記名自記式質問紙による郵送調査を実施した. 育児困難感がある母親の把握には母子愛育会日本子ども総合研究所が作成した子ども総研式育児支援質問紙1歳児用を使用した. 結果: 分析対象は有効回答が得られた362名 (39.8%). 育児困難感がある母親は21.0% (76名) であった. その内, 育児困難感I. IIともにもっとも強いランク5である面接相談が必要とされる母親は4.4% (16名) であった. 育児困難感がない母親は79.0%で, その内訳では全くなしが45.0%であった. 母の属性7項目との関連では, 妊娠中に異常があった母親と関連がみられた (p<0.05). 子どもの属性7項目との有意な関連はなかった. 結論: 育児困難感がある母親は21%であり2000年の川井らの報告と比較して増加していた. また, 妊娠中に異常があった母親は育児困難感を持つことが明確になった. 今後は育児困難感軽減に向けた取り組みの充実が急務であり, そのためには妊娠中からの予防方法の開発, 汎用性がある育児困難感尺度の開発が必要である.
著者
山田 俊彦
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.118-119, 2003-05-30
被引用文献数
1
著者
恩田 紀更 大井 洋之 玉野 まり子 大澤 勲 富野 康日己
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.217-225, 2007-06

目的:IgA腎症はわが国の原発性糸球体腎炎のなかで最も頻度の高い腎炎である.補体成分の糸球体沈着は知られているが,血清中の補体成分の全体像は明らかにされていない.そこでわれわれは,血清中の補体成分と補体制御蛋白がIgA腎症の病態に関与しているか否かについて検討した.対象と方法:IgA腎症患者50名と健常者50名の補体価(CH50)および血清補体成分を測定した.血清C3とC4はlatex cohesive immunoassayで測定し,CH50はMayer法相対比濁法,C1qはnephelometry法,C5・C1 inhibitor・B・C4 bindingprotein・H・Iは一次元放射免疫拡散法で測定した.Mannose-binding proteinとproperdinは,ELISA法で測定した.IgA腎症患者を組織学的予後分類で4群(予後良好群,予後比較的良好群,予後比較的不良群,予後不良群)に分類し,血清補体成分との関連性を検討した.結果:IgA腎症患者では,健常者と比較しCH50・C4・B・properdin・H・Iは有意に高値であった(p<0.01).IgA腎症患者では,C4とC1 inhibitor(p<0.05),C5とC4 bindingprotein(p<0.05)の間に有意な相関が認められた.しかし,健常者ではそれらの相関は認められなかった.予後分類の予後不良群は,他の群に比べC4 binding proteinの有意な高値がみられた(p<0.05).考察:IgA腎症患者では,健常者と比較して血清補体成分および補体制御蛋白が高値であり,各補体成分間で掛1相関が認められた.また,C4 binding proteinが組織障害度と強い関連を認めた.これらのことより,血清補体の変動は,本症の病態を反映しているものと考えられた.
著者
堀越 あゆみ 堀越 勝
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.192-199, 2008
被引用文献数
3

目的:ハーディネスは,ストレスが精神的健康に及ぼす影響の緩衝要因として海外で数多く研究されているが,日本での研究は少なく,日本語版の尺度の信頼性と妥当性は検証が不十分である.本研究では,中高年と大学生を対象に,日本において最も有用と考えられる多田・濱野の15項目版ハーディネス尺度の構造,および精神的健康との関連を検討する.対象:関東圏に住む中高年向け会員制雑誌の50歳以上の購読者とその知人の合計750名と,関東圏の大学に在籍する大学生164名であった.方法:多田・濱野の15項目版ハーディネス尺度により調査対象者のハーディネス特性を,日本語版GHQ短縮版(GHQ12)により精神的健康を測定した.結果:因子分析の結果,全ての世代および性別で,おおむね同様の3因子構造が確認された.重回帰分析の結果,GHQ12に対してコントロールとコミットメントは負の影響を,チャレンジは正の影響を与えていた.考察:本調査で使用した15項目版ハーディネス尺度の信頼性と妥当性が確認された.コントロールとコミットメントは精神的健康を高め,チャレンジは阻害するという結果が示された.
著者
金子 堅一郎
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.p153-159, 1976-06
著者
長尾 正嗣
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.45-52, 2001-07-30

高齢社会が到来した今日,わが国の老年期痴呆疾患患者数は約130万人と推定されている.この数は21世紀に入っても増加して2035年には350万人に達すると予想される.アルツハイマー病はその過半数を占めると言われている.今まではアルツハイマー病の人は痴呆症状のため家族や地域社会の人々から誤解を招き,つらい日々を送っていた.痴呆症状が進行してくると介護している家族の負担も増し,医療機関に援助を求めて来院する.この時点では痴呆もかなり進行しており,入院治療などが必要になってくる.笑顔の失われた人々に何が今できるのか,地域でどのようにアルツハイマー病に取り組んでいるのかを紹介する.57歳女性の症例の治療において,ドネペジルを投与しての経過を紹介し,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はあくまでも病態に作用する対症療法であり,一時的に認知機能を改善するだけであり,その後各国での治療も参考にした経過を報告し,今後地域におけるアルツハイマー病の早期診断早期治療が必要であることを述べる.
著者
長尾 正嗣
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.45-52, 2001-07-30
参考文献数
18

高齢社会が到来した今日,わが国の老年期痴呆疾患患者数は約130万人と推定されている.この数は21世紀に入っても増加して2035年には350万人に達すると予想される.アルツハイマー病はその過半数を占めると言われている.今まではアルツハイマー病の人は痴呆症状のため家族や地域社会の人々から誤解を招き,つらい日々を送っていた.痴呆症状が進行してくると介護している家族の負担も増し,医療機関に援助を求めて来院する.この時点では痴呆もかなり進行しており,入院治療などが必要になってくる.笑顔の失われた人々に何が今できるのか,地域でどのようにアルツハイマー病に取り組んでいるのかを紹介する.57歳女性の症例の治療において,ドネペジルを投与しての経過を紹介し,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はあくまでも病態に作用する対症療法であり,一時的に認知機能を改善するだけであり,その後各国での治療も参考にした経過を報告し,今後地域におけるアルツハイマー病の早期診断早期治療が必要であることを述べる.
著者
中島 直也 福田 友紀子 梁 広石 饗庭 三代治 津田 裕士
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.302-305, 2007-06

リウマチ因子陰性の多発関節痛を訴える高齢者を診療する際に, RS3PE症候群Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edema Syndromeは鑑別すべき疾患の1つである.当該症候群と診断した4例について,診断・治療における留意点を指摘した.何れの症例も高齢者(76〜85歳)であり,突然の発症,対称性多発関節炎,両側手背足背のpitting edema,およびリウマチ因子陰性が共通した所見であった.プレドニゾロンの投与が著効を示したが,その減量は注意深く行う必要性があると判断された.
著者
冨木 裕一 坂本 一博 鎌野 俊紀
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.338-346, 2004-12-22
参考文献数
20
被引用文献数
1

近年わが国では大腸癌が増加しているが,その原因として食生活の欧米化により,脂肪の摂取量が増加したことが要因のひとつと考えられている.高脂肪食は肝の胆汁酸産生と分泌を亢進させ,便中胆汁酸の増加をきたす.実際に大腸癌患者の便中胆汁酸は健常者より高濃度であり,その組成も二次胆汁酸のデオキシコール酸(DCA)とリトコール酸(LCA)が多い.また,食生活の欧米化に伴い,血清コレステロールレベルの上昇も認められるようになっているが,コレステロール低値群に悪性疾患が多いことは以前より注目されている.消化管癌患者のコレステロールレベルをコントロールと比較すると,早期癌でも有意に低値を示したことから,担癌者の低コレステロール血症は経口摂取の低下や栄養状態に起因するものではなく,癌の早期から脂質代謝系に何らかの異常が生じている可能性があることが示唆された.大腸癌に関しては環境的要因が大きく作用するため,大腸癌の予防には食物や身体活動などの生活習慣の改善が重要と考えられている.しかし,それだけで予防できるとは言えないため,早い時期から定期的に検査を受けることも大切である.
著者
須賀 康
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.24-32, 2003-05-30

皮膚は外界からのダメージに対して生体を保護し,体内からの水分蒸発を防ぐ働きがあります.主たる役割を有する場所は表皮であり,ダメージに対抗するため,細胞骨格,膜骨格などを有しています.遺伝的な要因で「表皮バリアーの準備が十分にできない」という事態を生ずれば,先天性角化異常症(角化症)という病気が起こります.私は,このような角化症の病態生理・分子生物学的な解析に携わってきた経験を生かし,角化症の原因となる<細胞骨格・膜骨格の異常>について動物モデルを作成し,今後の病態解明・遺伝子治療などに役立てる試みを行って参りました.これらの動物モデルは,今後の先天性皮膚疾患の患者に対するex vivo遺伝子治療を考える上でも大変有用と思われます.すなわち本療法は,表皮基底層の幹細胞(stem cell)を見つけて培養,ノックイン法の技術により疾患遺伝子を正常遺伝子で置換します.そして,悪い遺伝子を取り除いた培養表皮シートを使って患者さんの表皮を植え変えてしまう方法です.表皮シートは患者本人由来ですから,拒絶されることはありません.このため,本療法は皮膚科領域の中では最も理想的な方法と考えられ注目されています.