著者
矢澤 浩治 川村 正隆 伊藤 拓也 松山 聡子 松井 太 松本 富美 島田 憲次
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.285-289, 2015 (Released:2015-10-31)
参考文献数
8

【目的】われわれの施設ではこれまでに男子小子宮/男性膣に対して様々な方法で手術を行ってきた.最近では腹腔鏡下摘除術を行うようになってきており,その症例につき臨床的検討を加えた. 【対象・方法】1992年より2014年10月までに大阪府立母子保健総合医療センターで男子小子宮/男性膣に対して腹腔鏡下摘除術を行った5例を対象とした.手術時間,出血量,術後の合併症について検討を行った. 【結果】手術時間は,159±19.4分,出血量は,6.6±3.1mlであった.術後,Clavien-Dindo分類でGradeⅠの合併症も認めなかった. 【結論】男子小子宮/男性膣に対する腹腔鏡下摘除術は,開腹手術よりも良好な視野で手術が可能であり非常に有用な手術方法と思われる.
著者
田中 徹 石塚 昌宏 小倉 俊一郎 井上 克司
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.29-34, 2011 (Released:2014-02-07)
参考文献数
18

5-アミノレブリン酸(ALA)は天然のアミノ酸で広く動植物に含まれ,クロロフィルやヘムの前駆体として重要な役割を果たしている.ALAは通常の食品にも含まれ食品を通じて摂取しており,我々人間の体内でもALAは1日700mg程度生成,消費されていると考えているが,これを上回る量のALAを外生投与するとヘムの前段に当たるプロトポフリリンIX(PPIX)が蓄積する.特にがん細胞においてはPEP-T1などのALA取り込みが亢進しており,また,解糖系にエネルギー生産を依存するためヘムの要求量が低く,その結果,正常組織よりPPIXの蓄積が高い.ALA自身は蛍光を示さないが,代謝物であるPPIXは蛍光物質であり,PPIXの光増感性を利用した光動力学的治療(PDT)や診断(PDD)が盛んに研究され,海外では皮膚がんの治療や脳腫瘍の術中診断などではすでに実用化している.ALAを用いたPDT,PDDはALAやPPIXが内在物であるため,他の増感剤と比較して代謝,排出が早く,光毒性の問題がほとんど起こらない.光毒性の問題がないALA-PDT,PDDは,泌尿器科領域はもちろん,多くの分野でがんの診断,治療に用いられるものと期待されている.
著者
蔦原 宏一 栗林 宗平 山道 岳 川村 正隆 中野 剛佑 岸本 望 谷川 剛 今村 亮一 高尾 徹也 山口 誓司
出版者
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.97-100, 2016 (Released:2016-06-10)
参考文献数
10

鏡視下ドナー腎採取術においては左腎の方が右腎より血管長の確保が容易であることから,左側の腎採取が選択される場合が多い.手術成績について採取側別に比較検討した. 対象は2003年1月から2014年6月までに当科で後腹膜鏡下ドナー腎採取術を施行した98例を対象とした.右腎採取は26例(26.5%)であった.手術時間,出血量,温阻血時間など各因子について検討した. 手術時間は左257.5(182-506)分,右256(196-374)分,温阻血時間は左150(60-330)秒,右204(120-393)秒,総阻血時間は左120(69-637)分,右104(60-183)分であった.温阻血時間については右腎採取において有意な延長を認めたが,総阻血時間については逆に左腎採取において有意に長かった. 左腎採取に比べ右腎採取では温阻血時間の延長を認めたが,総阻血時間については右腎採取で短く手術成績は両側とも遜色ないものと考えられた.
著者
佐野 優太 伊藤 康雄 湯口 友梨 村木 厚紀 鶴田 勝久 小松 智徳 木村 亨 辻 克和 後藤 百万 絹川 常郎
出版者
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.278-283, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
10

【緒言】結石性腎盂腎炎の感染治療後, 結石の主な治療選択肢としてextracorporeal shock wave lithotripsy (ESWL) やtransurethral ureterolithotripsy (TUL) がある. 当院にて結石性腎盂腎炎後の結石治療に関してレトロスペクティブに検討した. 【対象と方法】当院にて2014年1月から2019年3月に結石性腎盂腎炎と診断された104例を対象とした. その中のESWL (9例) とTUL (71例) の治療効果や合併症を比較検討した. 【結果】80例のうち治療後に38度以上発熱を認めたのはESWLで1例 (11%), TULで14例 (19.7%) であった. Stone free rate (SFR) はESWLで66.6%, TULで95.1%であった. 【考察】TUL後に発熱する割合が高かったが, 1回でほぼstone freeを達成でき, 重篤な合併症は生じず安全に施行できていた.
著者
速水 悠太郎 原田 二郎 河 源
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.192-195, 2017 (Released:2017-10-17)
参考文献数
13
被引用文献数
2

症例は60歳代, 女性. 数ヶ月前から右側腹部痛を繰り返し当科受診となった. 右尿管結石を疑いCT検査を施行したところ, 右水腎症及び下部尿管までの水尿管を認めたが, 結石は認められなかった. 逆行性尿管造影 (RU) 検査にて右下部尿管にcurlicue signを認め, 尿管坐骨孔ヘルニアと診断した. 腹腔鏡下に坐骨孔と尿管の間にメッシュを設置・固定した. 術後合併症を認めず, 現時点で再発を認めていない. 尿管坐骨孔ヘルニアに対する外科的治療法について考察した.
著者
三宅 牧人 桑田 真臣 穴井 智 辰巳 佳弘 井上 剛志 千原 良友 平尾 佳彦 藤本 清秀
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.373-381, 2014 (Released:2014-11-07)
参考文献数
20

膀胱癌に対する5-アミノレブリン酸(5-ALA)を使用した蛍光膀胱鏡補助下経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)の診断精度および膀胱内再発予後の向上について検討した.膀胱癌96例を対象とし5-ALA溶液を経口または膀胱内投与し,白色光モードおよび赤色蛍光検出モードを切り替えながら膀胱内を観察した.採取した膀胱上皮組織の病理診断結果とモード別の画像所見から診断精度を評価した.白色光モードと比較して,蛍光検出モードでは特異度は低下したが(76.3% vs. 白色光84.6%),癌検出感度は向上した(84.5% vs. 白色光71.6%).蛍光膀胱鏡補助下TURBT症例と従来の白色光下TURBT症例をhistorical controlとして再発率を比較したが有意な差は認めなかった.蛍光膀胱鏡補助下TURBTは,診断薬5-ALAに起因する重篤な副作用もなく,癌の検出に有用で安全な手技であることが示されたが,治療成績については今後の多数例での前向き比較試験での評価も必要である.
著者
庵谷 尚正
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.169-174, 2015 (Released:2015-10-31)
参考文献数
11

TURisは当初,閉鎖神経反射やTUR反応を回避する目的で,導電性で点滴可能な生理食塩水を潅流液にすることで開発された.その過程で非常に鋭い切れ味を有することが分かり,特にTURBTに於ける有用性が評価されて現在多くの施設で使用されている.従来のTURでは生体との接触点にしか起こらないアーク放電がTURisではループ全体に発生し,しかも生体とループの接触状態によらず安定し持続することがTURisの鋭い切れ味の要因である.アーク放電はループ周囲を包むように発生した気泡内で生じており,アーク放電を開始させるためにはまず気泡を生成しなければならない.実際には,通電してもアーク放電が発生しない放電ミスの原因が起こったり,通電後すぐにアーク放電が起こらず突沸を伴った放電が起こって予想外の深い切開の原因となることもある.TURisの電源には種々の改良が加えられ,気泡生成からアーク放電成立までの過程がスムーズに進むようになってきたが未だ十分とは言えず,second TURなど膀胱壁の層構造を意識したより繊細なTURBTがもとめられる状況では,この原理を理解することが必要と考えられる.従来のTURとTURisを比較してこれらの原理,要因について解説した.また,TURisの止血,凝固における特性や突沸の問題,発生するガス等についても言及した.
著者
太田 純一 大竹 慎二 南村 和宏 澤田 卓人 藤川 敦 林 宏行 森山 正敏
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.289-293, 2013 (Released:2013-11-16)
参考文献数
10

経尿道的膀胱腫瘍一塊切除術(Transurethral resection of bladder tumor in one piece:TURBO)は,腫瘍を細切せず一塊に切除することで,より正確な病理診断が可能である.その治療成績と病理診断における有用性について報告する.膀胱腫瘍135例,173病変に対し経尿道膀胱腫瘍一塊切除(TURBO)を施行した.切除は1.marking,2.粘膜切開,3.水平切除,4.腫瘍摘出の順に施行した.腫瘍は膀胱内いずれの部位でも切除可能であり,合併症も許容される範囲であった.切除検体に筋層を含む症例は123例(91.1%)に認めた.pT1 23例中22例(95.7%)に粘膜筋板を認めた.粘膜筋板を超えない浸潤であったT1症例は進行例を認めないが,粘膜筋板を超える浸潤を認めた7例中4例に病期進展を認め,1例に上部尿路再発を認めた.TURBOにおける深達度診断は正確であり,粘膜筋板浸潤の有無は予後と相関する可能性が示唆された.
著者
辻本 裕一 谷 優 山道 岳 辻村 剛 中田 渡 任 幹夫 辻畑 正雄
出版者
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.116-119, 2019 (Released:2019-07-27)
参考文献数
6

【目的】大阪労災病院で入院加療を行った結石性腎盂腎炎に対して臨床的検討を行った. 【対象・方法】2007年~2018年の73例をステント留置の有無に分けて比較検討を行った. 【結果】ステント留置無し (27例) のほうが有り (46例) より有意に結石最大径が小さく (7 vs 10 mm, p=0.0393), WBC (12000 vs 15900, p=0.0428) と好中球数 (9354 vs 11882, p=0.0199) が少なかった. 全身状態が悪い4例はステント交換のみ, 残り69例は自然排石14例, ESWL32例 (5例がTUL追加), TULのみ22例, 腎摘1例であった. 73例中61例 (84%) がstone free, 69例 (95%) がstent freeとなった. 【結論】従来からの治療方針は有用であると思われた.
著者
佐藤 達夫
出版者
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.2-10, 2012 (Released:2014-02-07)
参考文献数
12
被引用文献数
1

骨盤腔は深くて狭いうえに,内部は直腸,子宮,膀胱,前立腺等の重要臓器で満たされており,臓器それぞれには血管,リンパ管,自律神経が出入りしている.QOLを重視した手術を行うには,これらの構造物の解剖と相互位置関係を熟知していなければならない.さらに癌の手術では,それらを包む結合組織性の膜様構造物(いわゆる臓側筋膜)の層構築がとりわけ重要であり,骨盤の解剖はさらに複雑化している.しかし幸いなことに,直接に手術に携わる外科系医師達自身による臨床解剖学的検索が進み,ここ10年程の間に大きな進歩がもたらされた.このようなとき,各科のエキスパートを集めた骨盤の外科解剖の特集が組まれたことは,非常に意義深い企画と考えられる.しかし,本特集の先端的な研究の内容を理解するには,準備体操,すなわち序論が必要であろう.ここでは,いささか古典的になってしまったきらいはあるが,基盤となる解剖学的知識を剖出所見を活用しながら検討しておきたい.

1 0 0 0 序文

著者
荒川 孝 奴田原 紀久雄
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1, 2015

従来の上部尿路結石破砕治療の評価は,1989年に日本泌尿器科学会雑誌に公表された故園田教授等による『Endourology・ESWLによる結石治療の評価基準』が大筋で用いられていた.しかし近年においては,この評価基準が公表からあまりにも時間が経過しているためその存在が忘却され,各学会発表,各掲載論文がそれぞれ異なる基準により報告されていることが多く統一性が失われ,それ故それぞれの治療成績の比較が正当に行われているか否かに疑問が残される.また,結石の大きさの評価法も時代とともに変化してきている.これらの事柄を修正し,AUA,EAUいずれの最新ガイドラインでも示されていない,時代に即応した『新たな尿路結石治療効果判定』を提案するべく,2011年秋頃より荒川と東先生,麦谷先生,山口先生の4人の有志により模索が始められた.これは新たなルール作成の作業であるため,慎重に時間と手間を掛け,2013年の日本尿路結石症学会第23回学術集会と第27回日本泌尿器内視鏡学会総会,2014年の第102回日本泌尿器科学会総会と第79回日本泌尿器科学会東部総会の4つの学会において,各学会会長のご理解とご協力のもと『新たな尿路結石治療効果判定の提案』と題した内容でシンポジウムを開催させて頂いた.繰り返し会員の先生がたのご意見を伺いながらversion upし,最終的に今回の本誌特集に於いて論文発表をさせて頂いた.その過程で先の4人に加え,宮澤先生,奴田原先生にもご参加頂き,合計6人が今回の特集の構成メンバーとなった.本特集では,最初に宮澤先生より『国内外における結石破砕治療評価の現状について』と題してご報告頂く.現状では,治療前の結石の大きさの表現方法はKUBや超音波検査による結石の長径,近年の尿路結石診断で多用されるCT検査を用いた結石の表面積を用いたものや,3次元画像を用いた結石の体積など様々である.小さな結石であれば大きな誤差は少ないかもしれないが,大きな結石になると,単純な長径だけの比較と表面積や体積の比較では大きな違いが生じてくる.この疑問に答えるべく東先生は『結石の大きさの術前評価と残石の評価法』において結石の大きさを体積表記に統一する提案をされている.様々なデータ解析を用いて,CTを実施していない症例に於いても簡便に体積の近似値を求める計算式を提示されている.更には,大きな結石に於いては残石率という概念の提案も併せてなされている.結石の外科的治療は完全摘出が基本であろうが,評価の一助となろう.また,治療結果の判定においては,stone freeのみが治療成功の評価なのであろうか?との疑問もある.つまり結石の存在により生じた尿の通過障害の解除は評価されなくてよいのであろうかという点である.これにつき麦谷先生は『結石治療後の尿路閉塞解除の評価について』の中で,結石による閉塞の解除が確認できた症例を成功例とする提案を行っている.最後に山口先生より我々6名の提案を具体的な表にして示して頂いた.これらの提案は,学会の正式な委員会設置によるものではないので拘束性は無い訳であるが,一つでも多くの学会報告,論文作成においてお役に立つ事が適うならば,我々6名望外の喜びである.なお,この特集の根幹をなす東先生の論文に於ける共同著者である山田先生に対し,膨大な数の症例のデータ分析に多大なるご尽力を頂いた事に対し,深く感謝申し上げる次第である.
著者
西山 康弘 西川 大祐 倉繁 拓志 山根 享 早田 俊司 市川 孝治 中村 勇夫 三宅 茂樹 渡邊 健志
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.29-35, 2016

上部尿路結石症に対するTULは,バスケットカテーテルで抽石することで術中に全ての結石を摘除できる可能性があることが,ESWLに比較しての最大の利点である.<br> TULでは,その手術における目標到達点の設定を適切に行うことが重要で,それが確実な治療を行う上での要点となる.TULの目標到達点としては,大きく三つのレベルに分けて考える.目標到達点の最良レベルは,術中に全ての結石を抽出できる「術中ストーンフリー」で,これを最大の目標として手術に臨む.次のレベルは,抽石はできないが結石を全て自排石可能な大きさまで砕石できる「砕石のみ」である.このレベルでESWLと同等の治療効果であるが,ESWLにおいては術中に全て自排石可能な大きさまで砕石できるのは最良レベルと言える.その次のレベルは尿管ステントが留置でき尿路を確保できる「尿路確保」である.<br> TULの手術難易度は個々の症例で様々であり,「術中ストーンフリー」を目指していたが,術中所見によっては「尿路確保」ができれば最良の治療効果と判断せざるを得ない症例も存在する. <br> 術中ストーンフリーを目指すTULでは,抽石操作を容易にするアクセスシースを積極的に利用し,抽石効率をに意識しながら手術をすることが重要である.アクセスシースが良好に使用できる症例は抽石操作が容易となり,術中ストーンフリーが得やすい.<br> 例えば尿管嵌頓結石は,症例により難易度が大きく異なり,目標到達点を術中に適切に判断しながら手術することが要求される.<br> 尿管陥頓結石を例に図示し,TULの手順,手術時の術者の思考過程を考察することにより,より適切で確実なTULが普及することに貢献したい.
著者
錦見 俊徳 小林 弘明 山田 浩史 石田 亮 山内 裕士 服部 恭介 浅野 彰之
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.120-124, 2019 (Released:2019-07-27)
参考文献数
7

【目的】ロボット支援下前立腺全摘術 (RARP) は本邦でも広く行われている. 近年では泌尿器科専門医取得前であっても一定の条件下であればRARPを施行することが可能となり, RARPで初めて前立腺全摘術を経験する術者も増えている. 初心者の場合, 膀胱頸部離断の際に前立腺に切り込んだり, 膀胱を大きく開放することがあり, また精嚢剥離の際には精嚢の同定が困難で間違った方向へ剥離を進めると直腸損傷のリスクもある. 初心者にとって比較的難しいとされる膀胱頸部離断および精嚢剥離時に術中ロボット用エコーが有用であったので報告する. 【方法】膀胱頸部離断, 精嚢剥離の操作前に術中エコー (術中用リニア探触子) を使用して部位確認を行う. 【結果】膀胱頸部離断ではエコーで尿道カテーテルや前立腺を確認し, 離断部位の同定が可能であった. 精嚢剥離の場面でもエコーで精嚢の位置を確認することで安全に剥離が可能であった. 【結論】RARP初心者にとってしばしば難関とされる膀胱頸部離断, 精嚢剥離の場面で術中ロボット用エコーの使用は有用であると考えられた. 初心者はもちろんのこと, 比較的慣れた術者であっても前立腺が膀胱に突出した症例や精嚢および精管膨大部が見つかりにくい症例において効果的であると考えられる.

1 0 0 0 序文

著者
川端 岳
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.184, 2016

<p> 腹腔鏡下前立腺全摘除術(以下LRP)の最大の利点は開腹手術では困難であった骨盤奥の明瞭な視野が得られ,その術野を多くの人と共有できるようになったことであろう.そのために他施設の術者間で共通の「言葉」で議論し互いに切磋琢磨することが可能となり比較的短期間で安定した術式になったと思われる.一方ここ数年のda Vinci<sup>®</sup>システムの急速な普及,特に2012年よりロボット支援前立腺全摘除術(以下RALP)が保険収載となってからの爆発的な普及によりLRPを施行される機会は激減している.しかしRALPの術式は基本的にLRPの術式をロボット支援下に行うことにより,より洗練され進化し技術的に昇華されたものとも言える.<br> 個人的な事であるが,1999年末に京都大学にて本邦第1例目のLRPが行われ,その場に同席させていただく機会を得た.当時の腹腔鏡手術の経験者達が見守る中,さまざまな障壁を乗り越えて完遂された寺地先生を初めとする京都大学関係者の方々の熱気は決して忘れることの出来ない重大イベントであった.この経験に励まされ,われわれも2000年4月からLRPを開始し術式に各種の改良を加え標準術式として確立する事ができた.本学会誌にて2011年にわれわれの報告も含みLRPの長期成績について特集が組まれたが,その後5年経過したこともあり真の長期成績と言えるまとめが必要な時期が来ており,この度再び特集が組まれたことは時宜にかなっていると思われる.<br> いずれの筆者も非常に多数の症例を経験されている施設での術者であり,さまざまな試行錯誤を重ねられて来たことが本文中に述べられている.その長期成績のご報告はLRPの一つの区切りとして相応しいものであり,今後のRALPの発展のためにも非常に大きな役割を担うマイルストーンになるものと思われる.<br> 本特集が前立腺全摘除術という泌尿器科医にとり今後も重要かつチャレンジングな手術をさらに発展させる糧となれば幸いである.</p>
著者
寒野 徹 高橋 俊文 渕上 靖史 船田 哲 岡田 崇 東 義人 山田 仁
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.218-222, 2018 (Released:2019-07-27)
参考文献数
10
被引用文献数
2

【目的】寝たきり患者の尿路結石の対処法は定まっていない. 閉塞性腎盂腎炎治療後の寝たきり患者の外科的結石除去術の安全性と効果を明らかにすることを目的とした. 【対象と方法】2010年以降に閉塞性腎盂腎炎で入院した80例を対象とした. 術後全生存期間と腎盂腎炎再発を起こさない割合をカプランマイヤー法で解析した. 【結果】67例において閉塞性腎盂腎炎治療後に結石外科的治療 (TUL49例, PNL8例, ESWL7例, 腎摘4例) を施行した. 年齢中央値は81歳, 女性の割合は69%であった. 周術期合併症は18例 (27%) に認めた. 3年の全生存率は78%, 腎盂腎炎非再発率は69%であった. 【結語】閉塞性腎盂腎炎治療後の寝たきり患者の手術は合併症率の増加を認めるものの手術可能であった. 腎盂腎炎の再発は3年で約30%認めた.
著者
吉岡 邦彦 青木 啓介 坂本 英雄 久留 優子 小澤 祐 小池 慎 伊関 亮
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.254-257, 2020

<p> 術式によらず, 熟練した手術チーム (術者, 助手, 麻酔科, および看護師等手術室スタッフ) を固定して手術を施行する事で安全性が高まることは周知の事実である. ロボット支援手術も同様で, 術者のみのSolo Surgeryではなく, 短時間で安全な手術を目指すには術者の技量はもとより優秀な手術チームが必要であり, その中でも助手は最も重要な役割を担う. ロボット支援手術において, 助手の技量・経験の多寡が手術成績に影響するか否かは議論が分かれるが, 術者が熟練者であれば助手の技量によらず周術期アウトカムが大きく損なわれることはない. しかし, 助手の技量が拙い場合, 手術時間は有意に長くなり周術期合併症の発生につながる可能性がある. また, 特に勃起神経温存術や拡大リンパ節郭清等の高度な技術を要する手術操作では術者が術式を微妙に変えることを余儀なくされることで, 長期的にはデメリットを受ける症例の存在が危惧される. 一方, 術者が導入期の場合, 助手の技量は周術期成績のみならず機能温存や癌制御全般に影響する可能性がある.</p><p> ロボット支援手術における助手は, 術者の快適な手術操作のサポートのみならず, 執刀医から離れている患者側の安全管理, および機械操作の責任者かつ手術室のムードメーカーとしての役割を持つ. 術前の準備として, 助手は術者と同等の手術解剖の知識と, 目指す術式の詳細を理解すべく, 術者と共通の文献やDVDを用いてイメージトレーニングに励むべきである. 術直前には, 術者と手術各ステップにおける詳細な打ち合わせを行うとともに, ダビンチ<sup>TM</sup>機械操作の基本的事項を再確認する必要がある. 自施設で実機を用いた訓練が不可能な場合はトレーニング施設を活用する. また看護師, ME等手術室スタッフとも患者入室から退室までの手術の流れを共有し, 術中に孤立しがちな術者と手術室スタッフとの橋渡しをするチームの要たる自覚を持つことが肝要である. 特に導入期には, 助手の操作は手術成績に影響するという意識を持って手術に臨むべく準備を怠らない事が重要である.</p>

1 0 0 0 序文

著者
川喜田 睦司 岩村 正嗣
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.20, 2019

<p> 1992年にわが国ではじめて副腎腫瘍に対し腹腔鏡手術が行われてから四半世紀が経過した. 2004年より施行されている腹腔鏡技術認定制度の合格率は, 当初60%台であったが, 徐々に低下しこの数年50%そこそこと低迷している. 腎癌に対し部分切除術を適応することが多くなり症例数が減ってきていることが原因のひとつであるが, 指導者の世代交代が進んできていることもその要因と推測される. 初心者を対象にした講習会や学会での企画は毎年開催されるが, 指導者を育てるものは多くない. 今回の企画はその意味において時宜を得たものと思われる.</p><p> まず教えられる立場として, 技術認定を取得されて間もない秋田大学の神田先生から, 教わる側の心得, 技術向上に向け実践したこと, 教える側に希望することを解説戴く. 引き続き指導者の立場として, 北里大学の藤田先生から手術室教育と手術室外教育に分けて初心者教育を解説戴く. 岡山大学の小林先生には, 症例数の減少の中でいかに効率的に教育するか, ロボット支援手術との相補的教育について解説して戴く. 京都大学の澤田先生からは, スコピスト, 助手, 執刀医にわけて, 習得すべき具体的な手技を解説戴き, 最後に名古屋医療センターの吉野先生から, イメージングスキルの向上と具体的な合併症の事例から危機予知能力をいかに高めるかを解説して戴く.</p><p> 技術認定取得前の先生方はもちろん, 認定医を取得されてかなり時間が経っておられる先生方にも是非ともご一読戴き, 各施設の腹腔鏡技術の向上, 伝承のお役に立てれば幸いである.</p>
著者
井上 貴昭 松田 公志
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.180-183, 2018

<p> 近年の上部尿路結石に対する尿路内視鏡治療は劇的な進歩を遂げ始めている. このような変遷の中にあっても未だ2cm以上の腎結石に対しては経皮的腎砕石術 (percutaneous nephrolithotomy : PNL) が標準的な治療であるのには変わりはない. PNLもstandard PNLから始まりmini-PNL, ultramini-PNL, そしてmicro-PNLと細径化の波が来ているのは間違いない. しかし, いくらトラクトサイズを小さくしてもいくつかのステップを踏み間違えるとPNLは多くの合併症を引き起こす可能性がある. その最初のステップが"経皮的穿刺"である. PNLは経皮的穿刺技術の有無でその後の流れの多くが影響されるといっても過言ではない. 穿刺の成功の有無を"確認する"こと, それはその後のトラブルを避けるためにもとても大切なステップと思われる.</p>

1 0 0 0 序文

著者
木下 秀文 佐藤 文憲
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.115, 2017

<p> 尿膜管は膀胱から臍にいたる管腔であるが, 臍から膀胱頂部までの様々な部位で, 拡張した管腔が遺残する場合がある. 部位により, urachal cyst, urachal fistula, urachal sinus, urachal diverticulumなどと呼ばれる. これに感染などを伴うと, 疼痛や発熱, 臍からの膿の流出, 血膿尿などの症状が現れ, 症候性 (感染性) 尿膜管疾患として治療される. 急性期は一般的に, 抗菌薬などの治療が中心となるが, 再発することもあり, 外科的な治療が考慮される.</p><p> 従来は開腹手術により遺残尿膜管を摘出していたが, 腹腔鏡下尿膜管摘除術が保険収載され, より低侵襲な外科的治療として普及してきている. しかしながら, 手術症例自体がさほど多くないため, 術式についてコンセンサスは得られておらず, 施設ごとに様々なアプローチがなされているのが現状である. 経験の多い施設でも, 年間に数例程度の手術症例数であろう. 手技自体は, 比較的容易であり, ほとんど経験のない施設でも比較的導入しやすい手術であると思われる.</p><p> 本稿では, 腹腔鏡下尿膜管摘除術の変遷と今後の方向性を佐藤先生に概説していただき, 基本的な術式 (側方アプローチ) を荒木先生に解説していただいている. もう一つの基本的なアプローチとして, 正中アプローチがある. この術式は, 臍の部分からopen laparotomyでカメラポートを挿入し, 左右の傍腹直筋レベル (臍よりやや尾側) に術者の左右のポートを置く術式である. 近年, このアプローチの発展型として, 単孔式腹腔鏡下尿膜管摘除術を行う施設も増加してきており, 矢西先生, 石井先生, 金先生には単孔式の術式について解説していただいている. また, 臍は腹部に位置する唯一の"チャームポイント"であり (あくまで個人的な意見です), 臍をどのように扱うかには, 各施設・各術者で様々な考えがあると思われる. 金先生には特に臍形成の工夫について解説していただき, 矢西先生には, 本術式の整容性について, データを示していただいている.</p><p> 本稿が, これから腹腔鏡下尿膜管摘除術を導入する先生方および単孔式手術に移行しようとされている先生方の一助になれば幸いである.</p>
著者
小山 政史 上野 宗久
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.23-28, 2011 (Released:2014-02-07)
参考文献数
20

5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた術中光力学的診断(PDD)は通常光では視認困難な腫瘍の同定やサージカルマージンの検索に有用である.泌尿器科領域では従来,膀胱癌に対して5-ALAを膀胱内注入してきたが,内服が可能なことより,最近では腎細胞癌に応用され5-ALAの腫瘍特異性が確認されている.また,腹腔鏡下腎部分切除術に5-ALA-PDDを併用することでサージカルマージンの蛍光発色部位に病理組織学的に癌細胞が確認されている.5-ALA-PDDが手術中リアルタイムにサージカルマージン同定に寄与する可能性が示唆された.尚,5-ALAによる有害事象は本稿で紹介した報告では認めていない.