著者
三浦 玲一 越智 博美
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

平成24年度は、三浦と越智の共同の成果公開の機会が多くあった。本プロジェクトの目標通り、リベラリズムのイデオロギーと現代のアメリカ文学研究の深い関係を分析しようとする試みは、三浦、越智が執筆し、三浦が編者をつとめた『文学研究のマニフェスト』(研究社)として刊行された。越智は、第二次世界大戦期の南部文学と新批評がリベラリズムをどのように制度化したのか、三浦は、J・D・サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』とコーマク・マッカッシーの『ザ・ロード』がどのようにリベラリズムの文学として成立しているかを論じた。また、平成23年急逝されたお茶の水女子大学の竹村和子教授を偲ぶ、アメリカ文学会東京支部におけるシンポジウム(6月於慶応大学三田キャンパス)に、三浦、越智の双方が招かれ、発表を行った。この成果は、アメリカ文学会東京支部の紀要『アメリカ文学』の6月発行の次号において、公開される予定である。越智は、竹村さんの仕事を貫くリベラリズムへの複雑な想いを、三浦は、竹村さんの後期の仕事における生政治批判がどのようなリベラリズム批判であるかを論じた。さらに、一橋大学において隔年で慣行されている人文学とジェンダーの関係についての論集が2013年3月に慣行されたが、その編者を三浦がつとめ、そこに越智も執筆した。『ジェンダーと「自由」』(彩流社)と題されたこの論集も、本プロジェクトの延長上で、リベラリズムと人文学的な想像力との関係を、批判的に考察しようとするものである。越智は、冷戦期の男性性が当時のどのようなリベラリズムの言説によって正当化されたかを、三浦は、新自由主義期の男らしさ、女らしさがどのような新しい定義を与えられているかを論じた。
著者
井上 義夫
出版者
一橋大学
雑誌
言語文化 (ISSN:04352947)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.37-47, 1989-12-20

論文タイプ||論説
著者
李 圭泰
出版者
一橋大学
雑誌
一橋論叢 (ISSN:00182818)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.392-411, 1992-08-01
著者
山崎 晶子
出版者
一橋大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

フランスにおいて、エリートの再生産が階層の固定化を促進していると言われている。しかし、研究代表者は中等教育未修了程度の学歴もしくは移民の親を持ちながら出身階層を乗り越えてエリートとなった人物(非再生産型エリート)と少なからず出会ってきた。親から継承する「資本」を持たない彼らはいかに階層を上昇することができたのだろうか。この問いの解明のために、本研究は、主に非再生産型エリートを対象とするライフストーリー・インタビューを実施する。この調査によって、従来型と言える再生産システムによるエリート形成との違いを示しながら、21世紀のフランスにおけるエリート形成過程の多様性と階層の乗り越え方を見いだす。
著者
イ ヨンスク
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

天皇の詔勅は古代律令制以来存在してきたが、近代になってはじめて「国民」全体に向けて発せられるようになった。天皇は「国民」に呼びかけることで近代的な「天皇」へと転換した。他方で、「国民」は天皇の発する詔勅の受信者となることで成立した。このように、近代日本において天皇と国民は、詔勅を通して「呼びかけ-呼びかけられる」関係におかれていた。本研究では、こうした相互の呼応関係が、どのように成立したかを分析することによって、近代日本における「国民」意識の特質を明らかにすることができた。
著者
竹内 幹
出版者
一橋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

カブトムシの闘争傾向を分析しナッシュ均衡の実証をするために、111頭のカブトムシを各4回(延べ444回)闘争させたデータの分析を行った。そこでは、基準となる個体を設けて、それに対する各個体の闘争傾向を観察することで、体格や頭角長と闘争傾向の関係を個体ごとに整理できた。2種類の戦略を特徴づけるデータが得られたと確信している。ただし、学会報告で受けたコメントから、判別分析の手法を開発する必要があると判断し、その正しい手法を調査した(現在も続行中)。以上とは独立に、カブトムシの体格の決定が、幼虫時の栄養摂取状態にあることを実証するために、幼虫を114匹飼育し、栄養状態を統制し、成虫の体格に与える影響の分析を試みた。だが、大型個体を中心に3割近くが死亡してしまったため、残念ながら分析結果を得ることはできなかった。以上と並行して、信念形成の実証として、コオロギの闘争行動を統制することを試みた。闘争させることはできているが、信念形成をうながすためには、数ヶ月単位で一定期間飼育を続ける必要があり、安定的な飼育を試行した。なお、研究成果を、平成29年10月にバージニア・コモンウェルス大学で開かれた「Economic Science Association (ESA=実験経済学の分野で最も代表的な国際学会)」の北米大会、また、平成29年11月にシドニー大学で開かれた「Behavioural economics: Foundations and applied research」の学会で報告し、非常に有用なコメントを受けた。
著者
小関 武史 深貝 保則 玉田 敦子 坂本 貴志 武田 将明 松波 京子 川名 雄一郎 長尾 伸一 屋敷 二郎 福島 知己 福田 名津子 逸見 竜生 坂倉 裕治 隠岐 さや香 飯田 賢穂
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

18世紀西洋の啓蒙は、科学、技術から政治思想に至る広範な領域で、19世紀以後の知の原型を与えたと考えられてきた。また20世紀後半以後の「近代」批判に対しては、啓蒙の現代的意義が主張されてきた。他方近年の啓蒙研究は、膨大な資料の丹念な発掘と読解、あるいはデジタル化などの新技術に基づき、当時のテクストを時代の文脈の中に位置づけ、多様で複雑な知の在り方を明らかにしてきたが、現代思想における近代批判や啓蒙の再評価に応える統一的な像を提起するには至っていない。本研究は啓蒙研究の現段階の方法と成果を総合し、「浮動する知の境界」という視点から多方面の貴重資料の分析を行い、啓蒙の知の総合的な解釈を試みる。
著者
岡 眞人
出版者
一橋大学
雑誌
一橋論叢 (ISSN:00182818)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.294-312, 1979-09-01

論文タイプ||論説
著者
加美 和照
出版者
一橋大学
雑誌
一橋論叢 (ISSN:00182818)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.200-202, 1957-08-01

論文タイプ||判例研究
著者
佐々木 隆治
出版者
一橋大学
雑誌
一橋社会科学 (ISSN:18814956)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.129-152, 2009-08

マルクスの物象化概念については、「人間と人間の社会的関係が物象と物象の社会的関係として表れる」という定義が定着している。だが、この定義が一面的にとらえられ、物象化がたんなる認識論的「錯視」として理解される場合も少なくない。本来、物象化概念は「錯視」という次元に収斂できるものではない。物象化概念においては、生産物が物象として「主体」となり、逆に生産者が「客体」となるという事態が実践において存立することが含意されているはずだからである。「錯視」はこの実践的関係の結果として生じるにすぎない。本論文は、このような物象化論の核心を、価値形態論における「商品語」の比喩をつうじて明らかにするものである。価値形態論においては形態ばかりに目が奪われがちであるが、同時にその形態においてどのような実践的関係が存立しているかが問われなければならない。このことを明らかにすることによってこそ、商品自身が自分だけに通じる言葉で語るという、「商品語」の比喩も明らかになる。労働生産物を商品として交換しあう社会においては、それぞれの具体的な私的労働は物象の関係をつうじて人間的労働として確証され、そういうものとして実際に編成される。もちろん、この事態がその意識に物象をつうじてしか現象しえない人間たちは、この「商品世界」固有の論理を「知らない」。しかし、にもかかわらずこのメカニズムの中でそれを支える実践を日々「行う」のである。このような意味で、商品語の比喩は、人間の行為をつうじて無意識的に人間の実践を規制する必然的メカニズムが成立するという実践的な転倒を表現するものに他ならない。いわゆる「取り違え」や「錯視」はこの実践的な転倒の基礎のうえに起こるのであって、その逆ではない。それゆえ、『資本論』の物象化論を総体として把握しようとするならば、商品語の比喩で述べられた論理を決して見落としてはならないのである。
著者
白井 聡
出版者
一橋大学
巻号頁・発行日
2010

博士論文
著者
金井 嘉彦
出版者
一橋大学
雑誌
一橋論叢 (ISSN:00182818)
巻号頁・発行日
vol.120, no.3, pp.416-431, 1998-09-01

論文タイプ||論説