著者
山﨑 陽平 西田 拓司 井上 有史
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.702-709, 2018-01-31 (Released:2018-02-01)
参考文献数
13
被引用文献数
3 8

てんかん患者のための学習プログラムMOSES(Modular service package epilepsy、モーゼス)は、てんかん患者が病気を理解し、実践的な対処能力を身に付け、積極的に病気に向き合うことを学ぶための心理社会的学習プログラムである。海外の報告では、MOSESは知識の向上だけでなく、てんかんに対する対処法を身につけ、発作を減らし、副作用を軽くすることが証明されている。今回、本邦で実施しているMOSESの有用性を明らかにするために、MOSES実施前後で、てんかん患者の生活の質(QOL)、てんかんに関する知識、気分状態、主観的日常生活評価の変化について調査した。本調査の結果、MOSESを受けたてんかん患者55名では、てんかんの知識スケール、全体的な生活の質、てんかんへの適応の項目で統計学的に有意な得点の向上を認めた。MOSESの効果として、てんかんについての知識の向上のみならず、生活全般の満足度やてんかんという病気を前向きに受け入れようという心理面の変化が得られたと考えられる。
著者
堀田 秀樹 浜野 晋一郎 福島 清美
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.176-178, 1990
被引用文献数
2

過去4年半に, 抗てんかん薬服用中副作用がみられた48例を調査母体とした。調査時年齢は1歳7ヵ月~29歳2ヵ月であった。体重増加 (肥満) は7例に認め, すべてバルプロ酸ナトリウム (VPA) によるものであった。3ヵ月から24ヵ月の間に肥満度の上昇をきたし, 全例肥満度30%以上となった。投薬前から既に肥満度20%以上を示したものが4例いた。肥満のため投薬を中止したのは4例で, うち3例で体重の減少を認めた。夜尿は7例に認め, 5例がVPAによるもので, フェニトイン, クロナゼパムによるものがそれぞれ1例ずついた。夜尿の出現時期は服薬1日目が4例と多かった。4例で投薬を中止し, 全例その直後から夜尿の消失をみた。VPAによる体重増加, 夜尿は, VPAが視床下部に存在する食欲および排尿調節中枢へ影響を及ぼすためと推測された。
著者
服部 春生 樋口 嘉久 辻 雅弘 古庄 巻史
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.127-131, 1998-06-30 (Released:2012-07-17)
参考文献数
9

まれな自己誘発図形過敏てんかんの1例を報告した。現在13歳の女児。けいれんの家族歴はない。6歳より網戸、縞模様等を見つめるとミオクロニー発作をきたすようになった。当初より発作の多くは自己誘発と思われ、10歳以降は明らかに自己誘発のみとなった。これらのミオクロニー発作と2回の全般発作以外の発作型はなく、光過敏発作もなかった。また、図形過敏以外で自然におこる発作もなかった。発作問欠時脳波では全般性棘徐波複合の群発を認めたが、光過敏は明らかではなかった。発作時脳波は全般性多棘波複合の群発であった。神経学的所見、頭部CTには異常を認めなかったが、新版K式発達検査で、認知・適応指数59、言語・社会指数80、全IQ 71と境界域精神遅滞があった。認知・適応指数の低さは、視覚的記憶の不良のためであった。また図形に対する執着的な行動が見られた。バルプロ酸投与により12歳より発作は抑制された。
著者
渡辺 裕貴
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.74-78, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

てんかん患者の数は小児よりも成人の方が数倍多いが、日本では成人を診療するてんかん専門医が少ないために、小児科医が子供だけでなく成人患者の一部をも診療している。今後はてんかんを専門とする神経内科医が増加して成人てんかんの診療の大きな部分を担うようになると予想されるが、精神症状を有するてんかん患者の治療では、精神科医と神経内科医との連携が必要である。 日本社会の高齢化に伴い高齢者てんかんが増加している。高齢者のてんかんは症状や治療法が若年者のそれとは幾つかの点で異なる。高齢者のてんかん発作は認知症と誤診されやすいのでそのことに留意が必要である。 精神症状を呈するてんかん患者では抗てんかん薬と抗精神病薬を併用することが多い。これらの薬剤は薬理作用や血中濃度で相互に影響を及ぼしあうので、併用時にはそれらの相互の影響について考慮する必要がある。
著者
加藤 昌明
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.116-125, 2015-06-30 (Released:2015-08-06)
参考文献数
53
被引用文献数
1
著者
谷口 豪 村田 佳子 渡辺 雅子 渡辺 裕貴 白戸 あゆみ
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 = Journal of the Japan Epilepsy Society (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.35-42, 2012-06-30
参考文献数
18

高齢発症のてんかんの原因は脳血管障害、腫瘍、認知症などの変性疾患が多いが、扁桃体腫大との関連を示唆する報告も最近見られている。<br> 今回我々は高齢発症の扁桃体腫大を伴った部分てんかんの患者を経験したので報告する。<br> 症例は64歳時から夜間の睡眠中に「突然激しく動き回る発作」が見られるようになり、その頃から健忘症状および嗅覚の低下などの症状があった。他院で認知症あるいは睡眠時無呼吸症候群と診断・加療されたが症状は軽快せず、当院でビデオ脳波を含む精査の結果、高齢発症の部分てんかんという診断に至った。carbamazepine開始後、発作は消失し健忘症状や嗅覚障害の改善を認めている。本症例では右側扁桃体腫大を認めており、過去のキンドリングラットを用いた実験や症例報告をもとに考察した結果、扁桃体が何らかのキンドリング刺激を受けて興奮が前部帯状回に広がり激しい運動発作を示したと考察した。<br>
著者
宮本 百合子 管 るみ子 山田 康人 渡部 学 高橋 留利子 丹羽 真一
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 = Journal of the Japan Epilepsy Society (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.3-10, 1999-02-01
参考文献数
6

家族内にてんかん発作、手指振戦、ミオクローヌス、光過敏性発症者を認めた1家系について報告した。この家系では、てんかんの発症年齢は19歳発症の1例を除き20歳以降と遅く、発作頻度は年に1回から数年に1回程度と少なく、抗てんかん薬による発作の抑制は良好な症例が多く見られた。発作型は7例中2例が部分発作とみなされ、部分発作が出現したと推測される症例も2例あった。脳波上突発波の出現部位に局在性を認めた。この家系は、臨床的特徴より良性家族性ミオクローヌスてんかん (BAFME) と考えられた。BAFMEの発作型は全般性強直間代発作で、脳波所見は多棘徐波複合、あるいは棘徐波、時に鋭徐波複合が広汎性に出現するとの報告が多いが、われわれが報告した1家系においては、部分発作とみなされるてんかん発作症状と局在性の突発性棘波を認めている。良性成人型家族性ミオクローヌスてんかんの、てんかん発作型についても再検討が必要と考えられた。
著者
馬塲 美年子 一杉 正仁 相磯 貞和
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.8-18, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
12
被引用文献数
2

近年、てんかん発作に起因した事故が散見されるが、その背景と刑事責任について検討した。対象は1966年から2011年に発生し、運転者のてんかん発作が原因とされた死傷事故22例である。2002年に道路交通法が改正され、てんかんの既往があっても条件を満たせば自動車運転免許が取得できるようになったが、対象例中に免許更新時にてんかんの既往を申告した運転手はいなかった。起訴されたのは17例(77.3%)で、不起訴は5例(22.7%)であった。起訴された17例中、有罪は14例(82.4%)、無罪は3例(17.6%)であったが、近年、量刑は重くなる傾向であった。多くの運転手は、医師から自動車運転を控えるように指導されていながらも、運転を続けていた。てんかん患者の運転適性が正確に判断されるようなシステムが必要である。また、てんかん患者に対して自動車運転の適否を適切に指導できるよう、医師への啓蒙が必要と考えられた。
著者
立花 泰夫 関 亨 山脇 英範 鈴木 伸幸 木実谷 哲史 前沢 真理子 山田 哲也 清水 晃
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.40-47, 1985-04-30 (Released:2011-01-25)
参考文献数
17

小児期における無熱性全般けいれん発作71例の予後を検討し, 以下の結果を得た。1) 発作の消失したものは, 総数71例中50例 (70.4%), 正常な精神運動発達・精神発達を示したものは, 64例 (90.1%) であった。2) 経過中, 他の発作型を認めたものは, 10例 (14.1%) で, 内訳は, 単純部分発作3例, 複雑部分発作6例, 複雑部分発作+非定型欠神発作1例であった。3) 発作の予後に関与する因子として,i) 精神運動発達遅滞・精神遅滞の合併 (p<0.01)ii) 治療開始までの期間 (p<0.05)iii) 30分以上持続した無熱性全般けいれん発作の既往 (p<0.05) 3つが指摘された。
著者
山岸 裕和 小坂 仁 長嶋 雅子 桒島 真理 宮内 彰彦 池田 尚広 小島 華林 松本 歩 山形 崇倫
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.693-701, 2018
被引用文献数
1

<p>ペランパネル(PER)は、AMPA受容体を非競合的に阻害する新規の抗てんかん薬である。日本国内の使用実績の報告は少ない。今回、知的障害者や12歳未満の小児を含む難治性てんかんの33例について、PERの治療効果と副作用を検討した。発作が50%以上減少した症例を「有効」とし、両側性けいれん性発作への進展を含む焦点発作(Fs)と全般発作のうち強直、間代発作(GTCS)に対する有効率を検討した。FsおよびGTCSに対しては50%の症例で有効であった。全体では52%の症例に有効であった。12歳未満でも12歳以上と同等の有効率が得られた。併用薬剤別では、有意差は得られなかったものの、KBrを併用した2症例でともに有効であった。CBZやPHTといったCYP3A4を誘導する薬剤との併用例の有効率はそれぞれ30%、18%と低い傾向があった。副作用の出現率は55%で、情緒・行動面の異常が30%、傾眠・眠気が18%、めまいが15%であった。若年者や知的障害者では情緒・行動面の異常が出やすく、注意を要する。</p>
著者
茂木 太一 吉川 大輝 曽根 大地 村田 佳子 渡邉 雅子 渡邉 裕貴
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.31-38, 2014 (Released:2014-07-11)
参考文献数
15

良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん(benign adult familial myoclonic epilepsy:BAFME)における難治性の振戦様ミオクローヌスにプリミドンの追加投与が有効であった症例を報告する。症例は39歳女性。てんかん及び振戦様ミオクローヌスの濃厚な家族歴が存在した。17歳時、手のふるえが出現。24歳時、全身けいれんが初発。29歳時、てんかんと診断されバルプロ酸およびクロナゼパムが開始されたが手のふるえは改善せず、年単位での全身のけいれんが持続した。36歳時、レベチラセタム追加以降、全身のけいれんは消失した。しかし、手のふるえは悪化し下肢や体幹にもふるえが出現し39歳時に当院紹介。各種検査にてBAFMEと確定診断したうえでAmerican Academy of Neurologyによる本態性振戦の治療ガイドラインを参考にプリミドンを追加したところ振戦様ミオクローヌスは抑制された。このことから本態性振戦に有効性が示されているプリミドンはBAFMEにおける振戦様ミオクローヌスにも効果が期待できる可能性が考えられた。
著者
Ono Tomonori S. Galanopoulou Aristea L. Moshé Solomon
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
Epilepsy & Seizure
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.19-29, 2013

Infantile spasms (IS) are an age-specific epileptic syndrome with overall poor outcome and are recognized as one of the 'catastrophic epilepsies'. Current conventional therapies including adrenocorticotropic hormone and vigabatrin often fail to control the spasms and improve the long-term outcome, especially in cases with structural/metabolic etiologies. To improve this situation, new treatments with a disease modifying potential must be identified. Recent translational studies have led to the development of several animal models of IS that reflect their multiple etiologies. Among these, the multiple hit model has been used to screen new promising therapies that, in the future, may be explored in clinical trials.
著者
兼本 浩祐 川崎 淳 武内 重二 河合 逸雄
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.202-210, 1995-10-31 (Released:2011-01-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 4

難治側頭葉てんかんのため本院で手術を受け1年以上経過した22例の患者について術後の精神症状を検討した。その結果, (1) 術前に精神病状態を体験したことのない患者で術後新規に精神病状態を体験した患者が3例あり, いずれも右切除例であった, (2) 際立った精神症状をきたした患者では, 実体的意識性, 夢様状態を前兆とするものが比較的多かった, (3) うつ状態は術後3カ月以内には出現し, 時には自殺企図を伴うほど重症になった, (4) 術前に敵意・攻撃性が目立った患者は, 術後には改善がみられた, (5) 精神症状の大部分は1年以内には消失したが, 軽症化したものの2年以上遷延した例が2例みられた。以上の結果を文献例と比較し, 術後精神病を心因論だけからは説明することが難しいことを指摘するとともに, 側頭葉てんかんに対する外科手術後に, 神経学的, 神経心理学的評価だけでなく, 精神科的評価が不可欠であることを考察で論じた。
著者
林 紀乃 原田 一樹 福永 龍繁
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.628-636, 2017

<p>東京都監察医務院(東監医)は、東京23区内の異状死を検案し、死因がわからない場合は行政解剖を施行する。過去20年間(1995年から2015年)、東監医で異状死として取り扱われたてんかん関連の死亡について、その状況と死因に関して調査、検討した。死因に関与する疾患として、てんかんがあったものは364例(全検案数の0.15%)で、201例(55.2%)は行政解剖を施行されていた。直接死因は、いわゆるSUDEPに相当するようなてんかん発作に起因した急死が最も多く191例(52.5%)と全体の半数以上を占めた。男性135人、女性56人と男性が女性の2.5倍であり、半数以上が就寝中に急死していた。2番目には溺死が多く、106例(男性52例、女性54例)で、男女差は殆どなかった。特にてんかん症例では通常の浴槽内死亡に比して、上半身が浴槽内、足が浴槽外で沈んでいる姿が多いことがわかった。</p><p>(本稿は第50回日本てんかん学会学術集会、企画セッション11 SUDEPを探るの講演内容を元に作成した)</p>
著者
田中 司 真田 敏 大塚 頌子 大田原 俊輔
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.147-154, 1984-09-30 (Released:2011-01-25)
参考文献数
20

急性脳症後, 高度の知能障害とてんかんを発現した3歳5ヵ月の男児に見られた極めて特異な反射てんかんの症例を報告した。はじめは自発性発作のみであったが, 経過中特定の言葉を聞くことにより同様の発作が誘発されるようになった。誘因となる言葉は初期は “テレビ” のみであったが, 次第に “テープ”, “テ”, さらに種々の “テ” のつく言葉でも誘発されるようになった。臨床発作型はすべて脱力発作で, 発作時脳波はdesynchronizationを示した。なお刺激からdesynchronizationの出現までの潜時は約500msec.で, 発作発現には脳幹のみならず大脳皮質も関与していることが示唆された。誘発性発作に対してはconditioning treatmentが有効であった。

1 0 0 0 OA 11:グリア細胞

著者
大野 行弘 金星 匡人
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.51-56, 2016-06-30 (Released:2016-06-29)
参考文献数
19

グリア細胞は膠(にかわ)のように神経細胞(ニューロン)の隙間を埋めながら、脳内組織の恒常性を維持する受動的な役割を担っていると考えられてきた。しかし、近年、グリア細胞は神経細胞の活動をより能動的に調節していることが明らかとなり、脳機能の生理的なメカニズムや神経疾患の病態を理解する上で、神経細胞の必要不可欠なパートナーとなっている。中枢神経系に存在するグリア細胞は、アストロサイト、マイクログリアおよびオリゴデンドロサイトに分類される。それぞれの細胞について性質と機能に加えて、てんかん病態における役割を概説する。
著者
高木 俊輔 永井 達哉 斉藤 聖 坂田 増弘 渡辺 裕貴 渡辺 雅子
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.427-433, 2011 (Released:2011-02-01)
参考文献数
11

進行性ミオクローヌスてんかんの一型であるUnverricht-Lundborg病(ULD)は、他の進行性ミオクローヌスてんかんと比べて認知機能低下の進行が緩徐であり、他のてんかん症候群と見誤られる可能性がある。 今回我々はULDの原因遺伝子であるシスタチンB遺伝子について最も多い形式の異常は確認できなかったが、誘発電位でのgiant SEP所見や光過敏性、早朝覚醒時に目立つミオクローヌスや進行性の認知機能障害などの特徴的な症状に気付かれULDと臨床診断された症例を経験した。当症例は部分てんかんの診断のもとULDの症状、予後に悪影響のあるフェニトイン(PHT)の投与を長期間受けており、ミオクローヌスや認知機能低下が進行していた。PHTをクロナゼパム及びピラセタムに変更したところ症状に改善が得られた。 ULDはまれな疾患で診断には困難が伴うが、臨床的特徴を把握しておくことが重要と考えられた。
著者
村田 佳子 渡邊 修 谷口 豪 梁瀬 まや 高木 俊輔 中村 康子 渡辺 裕貴 渡辺 雅子
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.43-50, 2012 (Released:2012-06-28)
参考文献数
21

高齢発症側頭葉てんかんにおいて、健忘症、気分障害、睡眠障害、排尿障害、唾液分泌過多、低ナトリウム血症を認め、抗電位依存性カリウムチャンネル複合体(voltage-gated potassium channel:VGKC-complex(leucine-rich glioma inactivated1 protein:LGI-1))抗体陽性から、抗VGKC複合体抗体関連辺縁系脳炎(VGKC-LE)と診断した。本例は数秒間こみあげ息がつまる発作が1日100回と頻発し左上肢を強直させることがあった。Iraniらは、VGKC-LEの中で抗LGI-1抗体を有するものは、3~5秒間顔面をしかめ上腕を強直させるfaciobrachial dystonic seizures(FBDS)を報告しており、本発作は診断の一助となると考えられた。本例は、本邦において抗LGI-1抗体とFBDSの関連を指摘した最初の報告である。