著者
真下 いずみ 田中 和宏 橋本 健志
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.372-379, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

4年間自閉的生活を送っていた重症統合失調症患者に,生活行為向上マネジメント(MTDLP)を用い,患者の希望する生活行為である「働くこと」を支援した.作業療法士が,就労継続支援B型事業所内(以下,事業所)に出向いて認知機能,精神症状,身体機能を評価した.多職種連携プランを立案し,事業所職員と協働した結果,患者は通所に至った.また介入前後で機能の全体的評定,社会機能評価尺度,WHO/QOL 26の得点が向上した.以上から,重症度によらず患者が希望する生活行為を遂行することが,社会機能と主観的QOLの向上をもたらすと考えられた.作業療法士が地域に出向いて患者が希望する生活行為に介入することの有用性が示された.
著者
松岡 耕史 三沢 幸史 横山 雄一 島田 真太郎 伊藤 富英
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.377-384, 2021-06-15 (Released:2021-06-15)
参考文献数
21

アームサポートであるMOMOは,主に神経難病患者に対して利用されているが,回復期リハビリテーション病棟での利用報告はほとんどない.そこで,MOMOを回復期リハビリテーション病棟入院中の脳血管障害患者や脊髄損傷患者4例に対して,日常生活における生活支援機器と,訓練におけるリハビリテーション機器として利用し,MOMOの活用方法について検討した.その結果,スプーンやパーソナルコンピュータの操作など,生活動作で利用できた他,上肢訓練の補助機器として利用することができた.これらより,MOMOは,回復期リハビリテーション病棟の対象者に対して,生活支援機器やリハビリテーション機器として活用できる可能性が考えられた.
著者
清家 庸佑 野口 卓也
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.548-556, 2020-10-15 (Released:2020-10-15)
参考文献数
32

要旨:本研究の目的は,ポジティブ作業に根ざした実践(以下,POBP)が高齢者サロン利用者のWell-Being(以下,幸福)に与える効果を予備的に検討することであった.方法は,高齢者サロンの利用者21名を対象に,介入期間は5週間,介入デザインは前後比較試験でPOBPの効果を検討した.効果指標は,改訂版PGCモラールスケール,ポジティブ作業評価などを使用した.解析は,介入効果に影響を与える変量効果を考慮した結果が推定できるよう一般化線形混合モデルで検討した.その結果,POBPはPGCモラールスケール(合計得点)で介入効果を認めた.POBPは,高齢者サロン利用者の幸福の促進に貢献できる可能性を示唆した.
著者
堀 翔平 齋藤 潤也 花田 恵介 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.535-542, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
12

要旨:右上肢麻痺を呈した脳卒中者に対して,エビデンスの高い手法を組み合わせた多角的なアプローチに加えて,装具装着下で実生活における麻痺手の使用を促す介入を実施したので報告する.介入は,装具・電気刺激・ロボット療法を併用したCI療法を1日1~2時間実施した.さらに,筋緊張の抑制・実生活での麻痺手の使用といった異なる目的の装具を作成し,実生活での装着を促した.結果は複数の上肢機能評価において,臨床上意味のある最小変化量を超える改善が見られ,麻痺手使用の機会が増大した.手指の伸展が十分でない脳卒中者に対しても,装具着用下での実生活の麻痺手の使用は麻痺手の使用場面の拡大の一助となる可能性が考えられた.
著者
今岡 泰憲 廣瀬 桃子 山口 みさき 天白 陽介 塩津 裕康
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.442-449, 2020-08-15 (Released:2020-08-15)
参考文献数
27

要旨:本研究の目的は,急性期病院において作業療法士が肺炎患者の病棟トイレ自立使用可能・不可能を判断する下肢機能評価のカットオフ値を算出することである.研究デザインは横断研究とした.対象は肺炎患者56名,調査項目は,SPPB,TUG,膝伸展筋力とした.結果,病棟トイレ使用可能・不可能に関連する因子としてTUGが抽出され,カットオフ値:11.8秒,AUC:0.807,感度:69.4%,特異度:89.5%であった.作業療法士は,算出されたTUGのカットオフ値:11.8秒を用いることで,観察による主観的な評価だけでなく,客観的な評価基準に基づいて,病棟トイレ自立使用可能・不可能を判断することが可能となる.
著者
勝山 美海 花田 恵介 河野 正志 市村 幸盛 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.733-741, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
19

要旨:右上肢麻痺を呈した亜急性期脳梗塞患者1例に対して,リストバンド型活動量計を用いた行動心理学的介入(Transfer Package)を行った.作業療法介入は,第17病日から1回2時間,週3回,計10回行った.また上肢活動量計測は1週ごとに実施し,対象者に示した.その結果,麻痺側上肢機能と日常生活における麻痺手の使用頻度は改善し,外来終了2ヵ月後にも維持された.上肢活動量の客観的計測は,対象者と作業療法士の双方が麻痺手の使用状況を客観的に振り返ることができ,Transfer Packageをより効率化できると思われた.今後はケースシリーズ研究や比較研究を行い,その有効性を確認する必要がある.
著者
田中 啓規 立山 清美 原田 瞬 日垣 一男
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.645-653, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
21

本研究は,自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder;以下,ASD)のある児の箸操作の特徴を明らかにすることを目的とした.ASDのある児18名と定型発達児16名を対象とし,「箸の持ち方」,「箸の操作パターン」,「箸操作時の指の動き」を比較検討した.その結果,ASDのある児の箸操作の特徴として,「箸を開く時の一定しない母指の動き」,「橈側と尺側の分離運動の未熟さ」,「動きが一定しない不安定な指の動きによる箸操作」があることが明らかになった.また,これらの要因としては,手指の分離運動の未熟さ,視覚優位な情報の捉え方,行為機能の障害が影響していることが考えられた.
著者
村田 雄一 大橋 秀行 添田 啓子 久保田 富夫
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.459-467, 2020-08-15 (Released:2020-08-15)
参考文献数
23

要旨:本研究は,医療観察法の入院医療における作業療法実践から,介入の焦点や技術と作業療法士の役割について明らかにすることを目的とした.この医療に従事するエキスパートの作業療法士を対象に半構造化面接を行い,質的分析を実施した結果,本人の“守りたい暮らしの安定”を目指す作業療法実践の概念的構造が得られた.この医療における多職種チームの中で作業療法士は,対象者の守りたい暮らしを主眼におき,当たり前の日々の生活の中にある作業(occupation)を安定してできるようにともに取り組むことにより,間接的に再他害行為を防止することを担っている.
著者
南 庄一郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.103-109, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
15

今回,筆者は疾病理解と服薬の必要性に関する理解の乏しさから病状が悪化し,精神科急性期病棟に入院となった統合失調症の事例に関わる機会を得た.介入経過の中で,事例が健康であった時に経験した「陶芸」が意味のある作業であることが発見され,陶芸を続けることで疾患と服薬に対する意識が変化し,自分らしい生活を送るためには服薬を継続し,健康維持を図ることが重要との認識を持つに至った.本論から,対象者の意味のある作業を中心とした「健康的な部分」に着目してアプローチすることは,「リカバリーモデル」や「ストレングスモデル」と共通性を持つと考えられ,統合失調症の急性期作業療法においても重要な視点となると考えられた.
著者
今岡 泰憲 廣瀬 桃子 山口 みさき 武村 裕之 塩津 裕康
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.239-246, 2021-04-15 (Released:2021-04-15)
参考文献数
14

呼吸器疾患のクライエントに対して,酸素デバイスの取り扱いや,トイレ使用時の呼吸困難を軽減させるセルフマネジメントスキルを習得するために,Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OP)を使用した(5日,40分/日).結果,Canadian Occupational Performance Measure,Performance Quality Rating Scaleは向上した.今回の報告でCO-OPは,呼吸器疾患のクライエントのセルフマネジメントスキルの習得に有用である可能性が示唆された.
著者
髙橋 香代子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.131, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)

「臨床・教育・研究は,作業療法士としての責務である」と恩師である故 淺井憲義先生に幾度となく諭され,私もこれまで研究活動に従事してきた.読者の中にも「作業療法士たる者,きちんと研究もしなければ」という責務を感じている人も多いだろう.しかし,「どこから始めたら良いのかわからない」という人も多いのではないだろうか.
著者
真下 いずみ 四本 かやの 角谷 慶子 橋本 健志
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.87-95, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

併存障害を有する成人期ADHD患者に訪問作業療法を実施した.症例は40歳代の女性で,家事や育児を遂行できず入退院を繰り返していた.訪問作業療法では,注意の持続困難を考慮した片づけの工程の簡素化,視覚優位の特性を活かした視覚的手掛かりの設置などを行い,症例の遂行能力に適合するように環境を調整した.同時に,同居家族に心理教育を行い,多職種連携を行った.結果,症例は家事と育児を遂行できるようになり,介入後2年間入院しなかった.以上から,成人期ADHD患者の訪問作業療法の意義は,作業療法士が障害特性に関する医学的知識と作業の専門的知識を活用して,患者の生活を再建することであると考えられた.
著者
中村 眞理子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.383, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)

格言,諺の類には,一般的に認識されている意味合いが真意と正反対であったりすることが,しばしばある.「弘法筆を選ばず」という言葉.「弘法」とは,平安時代初期の書の名人である弘法大師のことで,今から1,200年以上前の平安時代初期に,真言宗を開いた空海を指している.
著者
村仲 隼一郎 島田 浩輝 植田 友貴 水野 健 大石 實
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.239-247, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
47

本研究は,高齢者の摂食・嚥下障害事例報告の作業療法実践を分析し,今後の作業療法のあり方について考察するとともに,当該分野における作業療法の専門性確立の一助とすることを目的とした.文献検索の結果,25件が分析対象となりアブストラクトテーブルを作成した.また,介入内容は出現頻度順で示しICFで分類した.その結果,心身機能・構造では17種類,活動と参加では8種類,環境因子は5種類の介入内容に分類された.一方で,個人因子に対しての明らかな作業療法実践はなかった.したがって,今後の摂食・嚥下領域における作業療法のあり方は,心身機能・構造に偏重しすぎず,個人因子に十分に配慮した作業療法実践の必要性が示唆された.
著者
安保 雅博
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.3-9, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
12

リハビリテーション科医と作業療法士は似ているところがある.何をやっているのかわからず,世間的にほとんど認識されていないところである.だから,需要が十二分にもありながら,供給が著しく足りない,なんともアンバランスな不人気な職種でもある.だから,低迷する要因にもなっている.ブルー・オーシャン(競争相手のいない未開拓の市場)であることを自覚し,時代の流れを鋭利に感じ,患者さんのためにリハビリテーション医療を戦略的・革新的に行うべきである.
著者
佐野 裕和 籔脇 健司 佐野 伸之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.60-69, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
25

地域リハビリテーションでは高齢者の役割支援が課題とされるが,役割の促進要因や健康関連Quality of life(以下,HRQOL)への影響を明らかにした報告はきわめて少ない.本研究の目的は役割チェックリスト3の日本語暫定版を用い,要支援・要介護高齢者の役割遂行,環境要因,身体機能がHRQOLへ与える影響を包括的に明らかにすることである.作成した仮説モデルを構造方程式モデリングにて分析した結果,環境要因からHRQOLへの直接効果と役割遂行を介した間接効果があった.一方,身体機能からHRQOLへの影響はなかった.要支援・要介護高齢者においては環境を包括的に支援し,役割遂行を十分に促すことでHRQOLの向上につながることが示された.
著者
小渕 浩平 竹林 崇 堀内 博志 村岡 尚 中村 裕一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.197-204, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
20

急性期脳卒中患者5名に対し,実生活での非麻痺手の抑制を行わず,補助的手段を併用した上肢集中練習を1日2時間,平均3週間実施した.本研究では,麻痺手の機能と生活における使用の改善での有用性と安全性を検討した結果,集中練習が麻痺側上肢機能と実生活における麻痺手の使用頻度および質を有意に改善させることを確認した.加えて,急性期における集中練習介入期間中に有害事象は認めなかった.これらの結果は,急性期における短時間の集中練習のプロトコルが,意味のある方法である可能性を示唆した.しかしながら,急性期の集中練習の効果を実証するためには,今後,対照群をおいたランダム化比較試験による検証を行わなければならない.
著者
片岡 聡子 畑田 早苗 宮本 謙三
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.285-293, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
14

育児中・非育児中および男女を4群に分けて比較することにより,育児中の作業療法士(以下,OT)の生涯学習の現状と課題を明らかにする目的で,高知県作業療法士会所属のOTを対象に,私生活や生涯学習についてアンケート調査を行った.結果,育児中の女性OTは他のOTと同程度に生涯学習への関心があるにもかかわらず,生涯学習の機会への参加と,それに対する満足度は有意に低い状況が明らかとなった.育児中のOTが生涯学習の機会への参加に必要な要素として,本人の意欲,家族の理解や協力,時間の工面など,自助努力に依存するものが挙げられた.自助努力だけでなく,育児中のOTを取り巻く環境的側面からの支援の必要性が示唆された.
著者
赤堀 将孝 亀山 一義
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.325-334, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
21

本研究は,日常生活圏域ケア会議に参加する他職種を対象に,作業療法士が果たせる役割を調査し,テキストマイニング手法により,個別ケア会議,日常生活圏域ケア会議,地域ケア推進会議に共通する役割と,それぞれに異なる役割を明らかにすることを目的とした.その結果,共通する役割は,生活のアドバイスをすることであった.また,個別ケア会議では身体機能や動作に対するアドバイス,日常生活圏域ケア会議では集団に対する関わり,地域ケア推進会議では施策の取り組みを考えることが,役割として明らかになった.そのため,これらの役割を把握した上で,それぞれの地域ケア会議へ参画していく必要性が示された.
著者
吉田 太樹 伊藤 大将 渡邉 翔太 大須 理英子 大高 洋平
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.468-477, 2020-08-15 (Released:2020-08-15)
参考文献数
45
被引用文献数
2

要旨:脳卒中患者におけるリハビリテーション(以下,リハ)のモチベーションに関する知見をシステマティックレビューを用いて整理した.PubMed,CENTRAL,医中誌Webのデータベースから1,930文献が検索され,適格基準・除外基準を満たした13論文が抽出された.脳卒中患者のモチベーション評価には,リハのモチベーションに特化していない尺度や医療者による観察評価が用いられていた.モチベーションとリハの相互作用については,モチベーションに影響を与える要因,モチベーションが機能や活動に及ぼす影響について報告されていたが,報告の質・量共に不十分であった.今後は脳卒中患者のリハに対するモチベーションの概念形成や評価尺度開発が必要である.