著者
間野 博行
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.1355-1359, 2014-06-10 (Released:2015-06-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

癌の発生に寄与する遺伝子のことをドライバー変異と呼び,近年肺癌において次々と同定されてきている.特に活性型チロシンキナーゼはその阻害薬も比較的簡便にデザインしやすいので重要である.肺腺癌においては活性型EGFR変異,EML4-ALK,ROS1融合型遺伝子,RET融合型遺伝子などが発見され,肺癌の個別化医療が可能になってきた.
著者
千葉 滋
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.1661-1666, 2013-07-10 (Released:2014-07-10)
参考文献数
6

白血病は,染色体異常の情報がもっとも早くから臨床現場で用いられてきた疾患である.染色体検査による予後分類は,急性骨髄性白血病における治療戦略上の基本情報である.また,染色体転座関連遺伝子の解析が進み,融合遺伝子を同定ないし定量する技術は,診断や微小残存病変の検出に広く臨床応用されている.さらに近年,染色体異常とは独立に多数の遺伝子異常が同定され,これらの遺伝子異常の組み合わせでより詳細な予後予測が可能になりつつある.早晩,これらの情報が日常診療で利用できるようになると期待される.
著者
萬年 徹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.2349-2353, 2002-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
23
著者
篁 俊成 御簾 博文 金子 周一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.1670-1676, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
26

肝臓の脂肪化は肥満と独立してインスリン抵抗性と関連する.このことは日本人の糖尿病発症が肥満だけでは説明できず,軽度な肥満域から動脈硬化につながる代謝異常が増大することと関連する可能性がある.2型糖尿病に肥満症を伴った患者の肝臓では,解糖系,糖新生系,それらから派生するPentose phosphate cycle,中性脂肪合成系,脂肪酸合成・酸化系を構成する遺伝子群が協調的に発現亢進する.これらのプロファイルは糖・脂質由来の基質がミトコンドリアに流入することを示唆し,事実,ミトコンドリア酸化的リン酸化(OXPHOS)を構成する遺伝子群が活性酸素関連遺伝子群の発現とともに2型糖尿病患者,とりわけ肥満症を合併する患者の肝臓で,協調的に発現亢進する.2型糖尿病患者肝臓の包括的発現遺伝子解析から同定した新規ヘパトカイン「セレノプロテインP」は,抗酸化作用を有するにもかかわらず,一部にAMPキナーゼ活性の抑制を介して,全身のインスリン抵抗性を増大する.
著者
深川 一史 相川 竜一 羽場 一直 北川 良子 樋口 国博 泉 道博 森 秀樹 奥村 浩二 石田 聡 足立 幸彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.1680-1683, 2012 (Released:2013-06-10)
参考文献数
5

急性感染性心内膜炎は黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの強毒性菌によって引き起こされ,高齢者に多いことが知られている.2症例は,20歳と36歳といずれも重度のアトピー性皮膚炎を有する若年患者で,発熱,炎症反応上昇を伴った.経胸壁心エコーにて疣腫と僧帽弁付近の乱流を認め,血液培養検査にてmethicillin-sensitive Staphylococcus aureus(MSSA)が検出され,感染性心内膜炎と診断した.特に症例2では,血液培養と皮膚培養の結果より,感染経路としては皮膚と考えられた.
著者
松本 美富士
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.1833-1839, 1996-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

心病変の発生頻度,病変部位に疾患による差異があるものの,いずれの膠原病でも基本的に心臓も標的臓器となる.心病変は膠原病の重症度,活動性,生命予後を規定する重要な因子である.最近の画像診断の進歩を背景に早期診断が可能となり,また一部の心病変の発生に抗リン脂質抗体が関連していることが明らかにされた.これら病態,診断法の進歩によって早期からの適切な治療によって可逆的病変もあり,長期予後のために重要である.
著者
池嶋 健一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.15-24, 2016-01-10 (Released:2017-01-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholoic fatty liver disease:NAFLD)は,非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver:NAFL)および進行性の肝疾患である非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)を含む,メタボリックシンドロームの肝病態として注目されている.NAFLDはインスリン抵抗性を基盤とした糖脂質代謝の変化に伴い,肝細胞の脂肪化および組織障害を来すが,その病態には遺伝的素因,エピジェネティック制御機構や遊離脂肪酸の脂肪毒性に加え,腸内細菌叢のバランスや自然免疫系などが関与している.
著者
前川 理沙 勝又 淳子 関 大成 日出山 拓人 佐藤 望 平 賢一郎 清水 潤 椎尾 康
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.2316-2323, 2018-11-10 (Released:2019-11-10)
参考文献数
9

症例は39歳,男性.亜急性に進行する下肢筋力低下で入院した.末梢神経障害を認め,ステロイドで改善したが,減量開始から1年で症状が再燃した.再入院時の胸部単純CT(computed tomography)にて乳腺腫大を認め,女性化乳房がPOEMS(polyneuropathy,organomegaly,endocrinopathy,M-protein, skin changes)症候群(Crow-Fukase症候群)を疑う契機となり,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の高値や骨硬化性病変等から診断に至った.胸腹水や浮腫はなく,M蛋白は陰性であった.骨病変に対する放射線治療のみで良好な経過を得た.本例は女性化乳房の検出に胸部CTが有用であった.

1 0 0 0 OA 8.線維筋痛症

著者
西海 正彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.1937-1942, 1999-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

線維筋痛症(Fibromyalgia)は長期にわたって全身の筋肉の痛みと特徴的な圧痛点を多数認め,通常の臨床検査では殆ど異常が認められないことから診断されるリウマチ性疾患である,他に疲労感,慢性頭痛,うつ状態,睡眠障害などを認める.病因は不明であるが,素因説,脳神経内分泌系の循環または代謝障害説,精神疾患説,免疫異常説,などがある.治療にはアミトリプチリンなどの三環系抗うつ剤, SSRI剤,入眠剤,などが用いられる.

1 0 0 0 OA 1.Basedow病眼症

著者
廣松 雄治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.755-762, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
12

甲状腺眼症(Basedow病眼症)はBasedow病の25~50%,橋本病の2%にみられる.遺伝因子を背景に環境因子が誘因となり,何らかの自己免疫異常が生じて,TSH受容体や外眼筋抗原などに対する自己免疫機序により発症する後眼窩組織の炎症性疾患である.上眼瞼後退,眼瞼浮腫,眼球突出,涙液分泌低下,結膜・角膜障害,複視,視力低下など多彩な眼症状を呈する.眼症の診察にはCAS(clinical activity score)に加えてMRI(magnetic resonance imaging)による活動性,重症度の評価,QOL(quality of life)の評価が重要である.眼症の専門の医療機関への紹介の基準やMRIによる眼症の診療指針を提案する.

1 0 0 0 OA KYOTO HEART Study

著者
沢田 尚久
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.190-196, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
9
著者
鎌田 七男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.999-1005, 1992-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
3

白血病における染色体変化は白血病病型の確定診断,病態研究,予後推定などに役立っている.また,最近では分子生物学的手法が導入され,病型特異的染色体変化を分子レベルで捉えるようになってきた.すでに20余個の遺伝子プローブが分子レベルでの“転座”を証明するのに使われている.このような分子・細胞遺伝的手法は白血病の“完全治癒”を目指す治療計画にも大きく貢献している.
著者
多川 斉 一色 高明 山門 実
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.398-402, 1978-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
18

急性単球性白血病はときに低カリウム血症を伴うことが知られている.われわれもその1例を経験し,低カリウム血症の発生機序を検討した.症例は61才,女,発熱,リンパ節腫脹,出血傾向,肝脾腫あり.白血球10.1万,単球様白血病細胞が末梢血で89%,骨髄で92.6%を占めた.血清Kは常2.9mEq/l以下.リゾチーム活性は血清357,尿3111μg/m1と高値であつた. VCMP療法3クールにて完全寛解となつた.リゾチーム活性は血清,尿ともに著減したが,血清Kは低値のままであつた.カリウム負荷により尿中K排泄が増加し,またナトリウム摂取を制限しても尿中K排泄が減少しないことから,近位尿細管あるいはHenle係蹄におけるカリウム再吸収の抑制が示唆される.トリアムテレン投与に対する反応は正常であり,遠位尿細管のNa・K交換部位はintactと判断された.また,血漿レニン活性,アルドステロン値が正常であり,スピロノラクトンが無効であることから,レニン・アルドステロン系の関与は否定された.以上から,崩壊した単球に由来する大量のリゾチームが近位尿細管で再吸収されたために,その部位のカリウム再吸収機構に傷害を与え,カリウム喪失をきたしたものと結論した.なお,その他の尿細管機能の異常は随伴しなかつた.

1 0 0 0 OA 6.COPDの予後

著者
三嶋 理晃
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.1115-1121, 2015-06-10 (Released:2016-06-10)
参考文献数
19

我が国のCOPDの死亡数は増加の一途をたどっているが,高齢化の影響が大きい.生命予後を左右する因子として,気流閉塞の程度,身体活動性,気腫病変の程度,増悪の頻度などが挙げられる.また,循環器疾患,糖尿病,骨粗しょう症などの併存症の存在も予後因子として重要である.予後を改善する治療法として,ワクチン,気管支拡張薬などの薬物療法,在宅酸素療法,非侵襲的陽圧換気,肺移植,包括的リハビリテーションなどが挙げられる.
著者
大戸 斉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.7, pp.1706-1711, 2014-07-10 (Released:2015-07-10)
参考文献数
14

Aggregate除去から出発した白血球除去フィルターは進化し,輸血血液の白血球の99.99%以上と血小板の90%以上を除去する.白血球と血小板の混入を最少にすることで,大量輸血患者の多発血栓,輸血発熱反応,HLA抗原感作,病原体(CMV,HTLV,Yersinia菌)感染を防いでいる.輸血後GVHD予防目的に現在実施されている放射線照射を高性能フィルターは代替できる可能性がある.白血球除去による輸血関連免疫修飾への防止効果について結論は出ていない.血小板製剤用白血球除去フィルターを用いた血小板と遠心法によって白血球数低減した血小板では残存白血球数に差がないが,サブセットは異なり,遠心法では単球比率が高い.このため,HLA抗原感作に関与している可能性があり,検証が必要である.prion除去能を併せ持つ白血球除去フィルターが開発されているが,臨床への導入は未だである.
著者
菱川 望 阿部 康二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.1823-1830, 2014-08-10 (Released:2015-08-10)
参考文献数
10

2010年の厚労省の報告では,平均寿命と健康寿命の差は男性9.13年,女性12.68年,つまり平均的には亡くなる前の約10年間,何らかの介護を受けている.その主な原因は,脳血管障害,認知症,高齢衰弱の順であり,“健康寿命を延ばす”には,急増し続けている認知症の治療・予防が不可欠である.我が国では2011年から認知症治療薬が4剤使用可能となり,各薬剤の特徴を生かしながら治療にあたることが重要である.
著者
梅原 久範
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.10, pp.2467-2471, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
11
被引用文献数
3 1

再発性多発性軟骨炎は,耳介,鼻,気道軟骨を破壊する慢性炎症性疾患である.機序は,軟骨組織に対する細胞性および液性免疫による自己免疫疾患と考えられている.特徴的な症状は外耳介の疼痛・発赤・腫脹で,軟骨のない耳朶は侵されない.随伴症状として,多発関節炎,気管支狭窄,鞍鼻,強膜炎・虹彩炎,大動脈閉鎖不全症などがある.患者の約30%がその他のリウマチ性疾患や血液疾患を合併している.