著者
葛西 隆敏 成井 浩司
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.412-418, 2003-03-31 (Released:2018-04-10)
参考文献数
31

近年,習慣性のいびきや上気道抵抗増加症候群,睡眠時無呼吸などの睡眠呼吸障害と心血管障害との関連が注目され,いくつもの研究報告がなされている.これらの報告の多くは,睡眠呼吸障害からのアプローチであり,睡眠呼吸障害が血管障害の発症,進行に何らかの影響を及ぼすというものが主体である.しかし近年,心血管障害によってひき起こされる睡眠呼吸障害の存在が知られるようになってきた.それは慢性心不全(CHF)患者の約40%に,いわゆる睡眠時無呼吸症(閉塞性睡眠時無呼吸)とは異なるパターンの睡眠時無呼吸が合併するというものである.これは一回換気量の漸増漸減する過呼吸と中枢性無呼吸を繰り返し中枢性睡眠時無呼吸を伴うチェーンストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration with central sleep apnea : CSR-CSA)といわれており,これらの合併する心不全症例は,非合併例に比べ予後が悪いということがわかってきている.そのため,臨床医,特に循環器科医はこの睡眠呼吸障害に目をむけ,その治療を考慮する必要性が生じてきている.そこで,この慢性心不全に合併する中枢性睡眠時無呼吸を伴うチェーンストークス呼吸の疫学,メカニズム,治療法などについて自験例を交えて報告する.
著者
吉村 力
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.301-303, 2018-11-05 (Released:2018-11-30)
参考文献数
14

心不全患者は,中枢性睡眠時無呼吸(CSA)症候群やチェーン・ストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration: CSR)を呈することがあり,CSRは心不全の重症型に出現しやすく,予後が悪い病態であると言われている.CSRの治療にはcontinuous positive airway pressure(CPAP),adaptive servo-ventilation(ASV)のどちらが有効かをPSG検査などで評価をし,CPAP,ASVの適応を見極めて,治療をしていくことが重要である.今後,新たなASVの大規模長期試験の結果が望まれる.
著者
小林 佐也加 中村 洋之 岩崎 瞳 大林 彩香 山﨑 昌代 喜田 美之 井上 卓哉 喜多 信之 谷本 清隆 岡田 節雄
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.377-382, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
13

「人生の最終段階」における医療・ケアに対して,医師・看護師が,「生命維持治療に関する医師指示書(Physician Orders Life-Sustaining Treatment: POLST)」を用いて終末期指示書を作成し,終末期に患者自身の意思・希望が反映されるよう取り組んだ.多くの患者が終末期に心肺蘇生や挿管を希望しなかった.抗生物質や非侵襲的陽圧換気療法(Non-Invasive Positive Pressure Ventilation: NPPV)は希望者が多く, NPPVは緩和目的を含めて8割が希望した.全ての項目において,肺癌・非肺癌で大きな差は認めなかった.家族は患者より延命治療を希望する傾向にあったが,話し合いの結果,患者自身の希望を尊重する例が多かった.
著者
菅原 慶勇 高橋 仁美 清川 憲孝 笠井 千景 渡邊 暢 藤井 清佳 柏倉 剛 本間 光信 佐竹 將宏 塩谷 隆信
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.177-181, 2008-10-29 (Released:2016-12-28)
参考文献数
11

当院において呼吸リハを行っている安定期COPD患者を対象に栄養状態を調査し,身体組成,筋力,運動耐容能,炎症性サイトカインとの関連を検討した.呼吸リハを行っている半数以上が%IBW<90%で,REE/REE predictは1.37倍,エネルギー充足率は83%であった.%IBW分類では,低体重群が他2群と比較し,FMI,FFMI,REE,Leptin,FVC,PImaxが有意に低値で,Ghrelin,TNF-aは有意に高値であった.%IBWとTNF-aおよびIL-6において,弱い逆相関が認められた.COPDの体重減少には,REE/REE predict亢進,エネルギー充足率低下および炎症性サイトカインの上昇がかかわっているであろうと推察された.
著者
塩谷 隆信 照井 佳乃 佐竹 將宏 川越 厚良 菅原 慶勇 高橋 仁美
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.62-68, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
21

COPDの終末期には,呼吸困難,疲労感,咳嗽,身体疼痛など様々な症状をきたし,この終末期の症状の中では,呼吸困難が最もその頻度が高く辛い症状である.COPDの終末期の呼吸困難の対策として,Rockerらの三段階の対処法がある.第一段階の呼吸困難に対しては,COPDガイドラインに基づいた最適な気管支拡張薬に運動療法,酸素療法の増加を図る.続いて,第二段階の呼吸困難に対しては,活動ペースに合わせた呼吸リハビリ,口すぼめ呼吸などを行う.第三段階の呼吸困難に対しては,緩和薬物療法として,モルヒネの容量調整と抗不安薬の併用を行うというものである.呼吸リハビリは,多次元的医療サービスを多くの職域にわたる専門家チームの協力によって提供する医療介入システムであり,プログラムとしては,運動療法,呼吸筋トレーニング,栄養療法などを提供する.現在のところ,COPDの終末期の呼吸困難の対策としての確立した包括呼吸リハビリ・プログラムはないが,最近,我々が経験した重度COPD事例を対策の一助として紹介する.終末期COPDにおける呼吸困難の対策として呼吸筋トレーニングを含んだ包括的呼吸リハビリが有用であると考えられるが,今後,多施設多数例における臨床研究によるエビデンスの構築が必要と考えられる.
著者
松井 憲子 井上 昌子
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.28-32, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
15

慢性呼吸不全患者では,気管支炎,肺炎などの呼吸器感染症を契機に,急速に呼吸器症状が悪化することがあり,慢性閉塞性肺疾患の急性増悪では,患者のQOLや呼吸機能を低下させ,生命予後を悪化させる.したがって,急性増悪により緊急入院した際は,速やかな回復への支援と合併症の予防が重要である.急性・重症患者看護専門看護師は,患者とその家族に寄り添い,早期回復を目指す実践と医療チームの協働を先導する役割が求められる.今回,急性増悪した慢性閉塞性肺疾患の患者において,急性期のリハビリテーションと合併症予防のケアによって,人工呼吸器離脱を支援した症例を報告した.症例は,入院当初は体外式膜型人工肺による補助循環が必要な状態であったが,第8病日に人工呼吸器離脱に至った.この症例で,急性・重症患者看護専門看護師の実践と多職種協働を振り返り,急性増悪した慢性呼吸不全患者の回復を支えるケアについて検討した.
著者
手間本 真 佐藤 伸之 佐藤 照樹 上田 歩 逢坂 みなみ
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.162-166, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
4

【目的】これまでのRST活動をまとめ,その成果をインシデントレポートの変遷から考察する.【方法】2014-17年の人工呼吸器関連のインシデントを抽出し,内容と変遷についてRST活動との関連を検討した.当院RSTの主たる活動は週1回の病棟ラウンドで,安全管理,離脱,合併症予防などの観点から評価,提案を行なっている.また院内研修会やセミナーを開催している.【結果】人工呼吸器関連のインシデントは全体の2-3%程度であった.項目別では呼吸器本体とチューブ関連が多かった.チューブ関連では当初予定外抜管が多く見られたが2017年には全インシデントに対する割合は有意に低下していた.【考察】インシデントの内容は多岐にわたるが,予定外抜管に関しては低下していた.チューブ固定や鎮静に関するラウンドでの指導や研修会の開催,体位変換時のチューブ固定に関するマニュアル作成などのRST活動が寄与したと考えられた.
著者
吉川 雅則
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.258-263, 2012-12-28 (Released:2016-04-25)
参考文献数
24

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)において,栄養障害は高率に合併する併存症であり,COPDの病態や予後と密接に関連している.体重減少を除脂肪量,脂肪量,骨塩量などの体成分の変化として捉えることによって栄養障害と病態との関連がより明確となる.栄養障害の原因として代謝亢進や全身性炎症,内分泌ホルモンの分泌動態の変化などが複合的に関与しており,これらのメカニズムを踏まえた栄養管理が必要となる.栄養療法と運動療法の併用とともに基盤病態である全身性炎症のコントロールが重要である.栄養管理の有効性に関するエビデンスは確立されつつあるが,その手法に関しては新規治療の開発も含めてさらなる検討を要する.蛋白同化作用,抗炎症作用,摂食促進作用を有するグレリンの反復投与と運動療法の併用は新たな治療法として期待できる.
著者
石田 洋子 石井 暁 菅原 英和 水間 正澄 石川 誠
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.111-116, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
9

【背景】誤嚥性肺炎後の廃用症候群に対するリハビリテーション(リハ)では,回復に難渋する例や状態が悪化する例も多い.【対象と方法】2002~2018年,当院回復期リハ病棟に誤嚥性肺炎後の廃用症候群で入院した232例において,藤島Grade,FIM(Functional Independence Measure),急性期病院への転院率,退院先など35項目を後ろ向きに調べ比較検討した.【結果】急性期病院への転院率は30.6%,在宅復帰率は58.6%,3食経口摂取獲得率は41.0%であった.【考察】誤嚥性肺炎後の廃用症候群では転院率が高く在宅復帰率が低い.全身状態を慎重に管理することが大切である.
著者
野原 幹司
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.78-80, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
3

超高齢社会をむかえた日本においては,高齢者の肺炎,中でも誤嚥性肺炎の予防と対策が大きな課題となっている.そのような情勢を踏まえて,2017年に「成人肺炎診療ガイドライン2017」が作成された1).このガイドラインの最大のポイントは,繰り返す誤嚥性肺炎や終末期の肺炎などに対して踏み込んだ内容となっている点とされている.ガイドライン自体は非常に分かりやすく実践的にまとめられており,治療方針決定に有用であるということに疑いはない.しかし,嚥下障害や誤嚥を専門とする筆者にとっては気になる点が一つあった.ガイドラインの冒頭に「本ガイドラインでは感染症以外の肺炎・肺臓炎等は取り扱わない」と明記されていることである.誤嚥性肺炎や終末期の肺炎を取り上げているにも関わらず感染症による肺炎のみを扱うというのは,高齢者の「いわゆる」誤嚥性肺炎を診ている医療者に誤解を与えかねない.はじめに「いわゆる」誤嚥性肺炎と診断されていた症例の経過を提示したい.
著者
石橋 靖子 佐竹 將宏 塩谷 隆信 佐々木 誠 高橋 仁美 菅原 慶勇 笠井 千景 清川 憲孝 渡邊 暢 藤井 清佳 河谷 正仁
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.469-473, 2005-05-31 (Released:2017-11-10)
参考文献数
17

吸気筋トレーニングによる吸気筋力の増強が期待される低負荷量を調べるために,健常成人を対象に,最大吸気口腔内圧の20%,15%,10%負荷にて1回15分間,1日2回,4週間にわたって吸気筋トレーニングを行った.結果,いずれのトレーニングでも,呼吸筋力は有意な増強を示したが,肺機能検査値には変化がみられなかった.本研究では,健常成人による低負荷量吸気筋トレーニングの効果がみられたことから,今後,臨床的な応用が示唆された.
著者
横田 直子 石山 亜希子 宇佐美 記子 柳 恩英 遠藤 直子 丸山 ゆかり 武知 由佳子
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.17-22, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
12

在宅呼吸ケアにおける高いパフォーマンスの発揮を,①患者本人と家族がWell Beingな状態で生活できるための援助:専門性の高い,個々のサービスの提供と多職種連携②人材の育成と働きつづけられる職場づくり③ケア事業所の生み出す良い循環と継続の3つを柱に,具体的な例を交えて述べる.
著者
高橋 仁美 菅原 慶勇 清川 憲孝 笠井 千景 土橋 真由美 敷中 葉月 澤田石 智子 加賀谷 斉 佐藤 一洋 伊藤 伸朗 本間 光信 佐竹 将宏 塩谷 隆信
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.420-423, 2002-03-31 (Released:2018-08-07)
参考文献数
8

呼吸リハビリテーションを施行して2ヵ月以上経過したCOPD患者に対して,運動耐容能に大きく影響を及ぼす因子について検討するため,一般生体特性(体重,身長など),スパイロメトリー,肺拡散能力,呼吸筋力,大腿四頭筋筋力などを横断的に測定し検討した.測定したデータを正規変換したうえで相関行列を分析し,6分間歩行距離と関連する変数を定量的に探し出して重回帰分析を行った結果,6分間歩行距離には大腿四頭筋の最大筋力を体重で除した体重支持力指数と肺拡散能力が大きく影響を与えることが明らかにされた.
著者
高橋 典明 佐藤 良博 清水 哲男 橋本 修
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.175-178, 2014-08-31 (Released:2015-11-13)
参考文献数
9

肺がんにおける緩和ケアは他のがんと基本的に同じである.ただし,肺がんはがんのなかでも予後が不良で,他のがんよりも疼痛ばかりでなく咳や呼吸困難などの呼吸器症状が伴いやすい.そのため病名告知されるだけでも精神的負担は特に強い.したがって,肺がんにおいて身体的,精神的,社会的およびスピリチュアルな苦痛に対する緩和ケアはきわめて重要であり,早期から緩和ケアを実施することは肺がん患者の延命にもつながる重要な要素である.肺がん終末期の身体的苦痛として呼吸困難の頻度は高く,臨床的に問題となることも多い.呼吸困難の治療は原因病態に対する治療が第一であるが,複数の原因が絡み合い難治性で不可逆的なことも多い.その呼吸困難に対する薬物治療としてモルヒネは第一選択とされ,日本緩和医療学会の「呼吸器症状の緩和に対するガイドライン」でも推奨されている.しかし,その有効性については一定の見解は得られていないのが実情である.そのことを踏まえて,肺がん終末期医療の実情について,呼吸困難に対するモルヒネ投与を例にとって検討し,さらに非がん性呼吸器疾患に対する終末期医療との比較についても述べる.
著者
本間 栄
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.105-111, 2014-04-30 (Released:2015-11-13)
参考文献数
19

特発性肺線維症は治癒が期待できない慢性進行性疾患であるため,改善にいたらないまでも悪化を阻止することが到達可能な治療目標である.治療を開始すべき正確な時期はいまだ不明であるが,回復不能の線維症へと進展する前の初期段階で治療を開始したほうが治療効果は高いと考えられている.慢性増悪期の経時的予後不良因子として6~12ヵ月間で呼吸困難増悪,肺活量(FVC:10%<),拡散能(%DlCO:15%<)の低下,蜂巣肺の進展などがあげられ,これらの因子が複合的に観察された場合には抗線維化薬としてN-アセチルシステインあるいはピルフエニドンを開始する.IPF の急性増悪は安定期においても,感染などを誘因に生じうるが,発症時にはただちに治療を開始する.ステロイドパルス療法に加え免疫抑制剤,PMX-DHP 療法,好中球エラスターゼ阻害薬,低分子ヘパリン,トロンボモジュリンなどの併用療法が施行される.
著者
松尾 善美 山本 洋史 米田 稔彦 三木 明徳
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.300-306, 2003

<p>腹式呼吸(横隔膜呼吸)により,1回換気量の増加,呼吸数・酸素換気当量・死腔換気率の減少,さらにPaO<sub>2</sub> 上昇やPaCO<sub>2</sub> 減少が報告されている.呼吸補助筋の収縮抑制と胸腹部運動の同期性を伴った意識下での呼吸コントロールが成功したときに,腹式呼吸は,換気効率を改善し,呼吸困難感を緩和する可能性がある.しかし,安定期COPD患者では,必ずしも完全な腹式呼吸パターン習得がその目標にはならない.</p>
著者
太田 智奈美 江田 清一郎 折井 恭子
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.273-279, 2007-12-25 (Released:2017-04-20)
参考文献数
14

医学の進歩が目覚しいなか,間質性肺炎を代表とする予後不良の呼吸器疾患終末期の呼吸困難は,非常に辛い症状であるにもかかわらず,その緩和に対する適切なガイドラインや,明らかに有効な緩和治療はいまだないのが現状である.モルヒネ持続皮下注射は,あらゆる治療が無効で呼吸困難が進行した間質性肺炎終末期の患者において,呼吸困難を最小限にとどめ,残された時間を個々が望む生命・生活の質を維持するのに有効であった.
著者
福島 春樹
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.219-224, 2007-12-25 (Released:2017-04-20)
参考文献数
9

パルスオキシメータの正確なモニタリングを阻む2大要因は,患者の体動と低灌流(ローパーフュージョン).特に体動時は静脈などの非動脈成分も拍動するため,それら静脈などの信号と動脈からの信号を正確に識別できなければ正確なモニタリングが困難となる.精度の良いパルスオキシメータを選択し使用すること,そして機器の長所,短所を正確に理解してうまく使いこなすことが肝要である.パルスオキシメータがもつ問題点,解決法,そして最新のパルスオキシメータについても考察してみたい.
著者
武田 英二 阿望 幾久子 増田 真志
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.109-112, 2010-10-31 (Released:2016-09-01)
参考文献数
36

COPD(慢性閉塞性肺疾患)およびARDS(急性呼吸器窮迫症候群)患者に対する栄養管理の必要性が徐々に注目されるようになってきた.そこで,これまでの患者の予後およびQOL改善に関する栄養管理のエビデンスについて評価した.その結果,n-3多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)投与により,COPD患者の運動機能の低下,乳酸産生の増加,クレアチンリン酸の低下を示し,またARDS患者の死亡率や新規臓器不全の減少,ICU期間や人工呼吸を必要とする期間を短縮させた.今後は,n-3 PUFAのCOPDおよびARDSに対する効果をさらに検証していくことが重要と思われる.
著者
穂苅 諭 中山 秀章 梶原 大季 鈴木 涼子 大嶋 康義 高田 俊範 鈴木 栄一 成田 一衛
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.30-34, 2011-06-30 (Released:2016-07-05)
参考文献数
14

目的:呼吸機能低下患者での術後ハイリスク群を検討した.対象:術前呼吸機能検査で1秒量<1.2 Lを満たした80例.方法:術後呼吸不全の発生について診療録より後ろ向きに調査した.結果:7例で合併症が発生した.多因子より算出した呼吸不全リスク指数は合併症群で有意に高値であった.また,同リスク指数と合併症発生頻度の間に有意な傾向性が認められた.結論:呼吸不全リスク指数は術後呼吸不全の検出に有用である.