著者
上川 紀道 對東 俊介 高橋 真 関川 清一 濱田 泰伸
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.200-203, 2016-08-31 (Released:2016-09-15)
参考文献数
20

咳嗽は気道内分泌物や異物を除去する生体防御機構であり,肺炎などの呼吸器感染症,痰の貯留による無気肺や気道閉塞などの改善や予防のために重要な役割を担っている.随意的な咳嗽力の指標として咳の最大流量(Cough peak flow: CPF)がある.CPFは排痰能力や嚥下機能と関連性が高いことから,神経筋疾患患者や高齢者の症状の悪化や病態の進行を反映する指標として使用されている.CPFに影響を与える因子として肺気量,呼吸筋力,声門閉鎖能力,測定時の姿勢,体圧分散マットレスであるエアマットレスの硬さが報告されている.これらの因子を個別に評価し,可能な限り身体の機能を維持し,環境を改善することが有効な咳嗽を発生させるために重要である.
著者
富井 啓介
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.182-185, 2012-10-31 (Released:2016-04-25)
参考文献数
6

経皮的に動脈血二酸化炭素分圧(PtcCO2)と酸素飽和度(SpO2)を同時測定できるシステム(TOSCA)は,1つのセンサーで耳朶より非侵襲的にPtcCO2(PaCO2との相関はr=0.88),SpO2,脈拍の測定が可能で,12時間のデータを連続的に記録できる.一方難点は通常のパルスオキシメータほど操作が簡便ではない点で,2週間ごとの電極のメンブレン交換,8時間ごとのキャリブレーションが必要である.また機械本体以外にメンブレン,耳クリップ,電解液,コンタクトジェル,校正用ガスなどの消耗品があり,センサーも数年で交換を必要とする可能性がある.これらのコストに見合う診療報酬が認められるようになれば,閉塞型ないし中枢型睡眠時無呼吸,2型呼吸不全の夜間低換気増悪などにおいて,PtcCO2の変動を基にCPAP,NPPVの至適圧,HOTの至適流量の決定が可能と考えられる.
著者
野原 幹司
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.179-185, 2019-11-30 (Released:2020-01-28)
参考文献数
17

超高齢社会を迎えた日本においては高齢者の肺炎,その中でも誤嚥性肺炎の予防と対策が大きな課題となっている.これまで肺炎といえば,呼吸器内科医をはじめとする呼吸器に関連する医療者が,その対策の主軸を担ってきた.しかし,誤嚥性肺炎は,その原因となる「誤嚥」を診ている医療者と,「肺炎」という結果を診ている医療者が異なるという特殊性を有している.誤嚥性肺炎とは呼吸器のみの疾患ではなく,「どのような食事をどれだけ食べてよいか」というギリギリのラインを,嚥下機能,口腔機能,口腔内の状況,服薬内容,栄養状態,循環機能,呼吸機能など,さらにはその症例を取り巻く家族や医療・介護リソースを総合的に判断して見極めるという非常に興味深い疾患である.本稿では,誤嚥性肺炎の予防と対策を進めるにあたり,誤嚥と肺炎の両方の面からの誤嚥性肺炎について考察を加えた.本稿の主たる目的は誤嚥と肺炎の橋渡しである.
著者
赤星 俊樹 吉澤 孝之 岩城 基 村上 正人 高橋 典明 橋本 修
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.215-219, 2009-12-28 (Released:2016-10-07)
参考文献数
11

COPDにおける終末期の定義は,明確に示されていない.一般に,終末期とは「疾患の進行に伴う症状に対して治療は可能であるが,原疾患に対しては治療による効果が期待できない状態」と定義され,およそ余命6ヵ月と予測される時期である.COPDの終末期では,高度な呼吸困難や運動耐容能の低下がみられ,医学的のみならず社会的問題をも含有することが多い.本稿では,こうした諸問題と終末期医療や緩和ケアの重要性について述べたい.
著者
塩谷 隆信 佐竹 將宏 玉木 彰 菅原 慶勇 高橋 仁美 本間 光信
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.8-17, 2012-06-30 (Released:2016-04-25)
参考文献数
30

呼吸リハビリテーション(呼吸リハビリ)は,COPD患者の日常生活を全人間的に支援する医療システムである.呼吸リハビリは,薬物療法により症状が安定している患者においても,さらに相加的な上乗せの改善効果を得ることができる.運動療法は呼吸リハビリの中心となる構成要素である.運動療法施行時には体重減少を抑制し,運動療法の効果を高めるために栄養補給療法を併用することが望ましい.近年,低強度運動療法の有用性が報告され,その普及が期待される.運動療法は,継続して定期的に行われる必要がある.維持プログラムとしては,持久力トレーニングと筋力トレーニングが主体となり,運動習慣がライフスタイルに組み込まれていることが望ましい.運動療法のなかで,歩行は性別,年齢を問わず最も親しみやすい運動様式である.
著者
横山 俊樹 津島 健司 山本 洋 久保 惠嗣
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.220-225, 2011-12-28 (Released:2016-07-05)
参考文献数
10

近年,日本から間質性肺炎についてNIVの有効性を示唆する複数の報告が示されている.自施設でも最近6年間に36例の間質性肺炎急性増悪患者(うちIPF急性増悪15例)に対してNIVを施行し,1ヵ月生存率68.6%,生存退院率51.4%と過去の報告と比べて良好であり,特に早期導入症例において予後が良好であった.また,一部に挿管症例でも生存例を認めており,さらなる検討が必要と考えられる.
著者
小室 圭子
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.249-252, 2019-11-30 (Released:2020-01-28)
参考文献数
5

慢性呼吸器疾患患者は治療を継続しているにもかかわらず,基礎疾患の進行や加齢に伴い一般的には経年的な肺機能低下がある.今回,息切れの訴えと酸素療法を行っている呼吸器内科外来を受診した32名と呼吸器内科病棟で息切れの訴えや酸素療法を行っている患者50名を対象に看護介入を行った.看護介入の延べ数は397件であり,入院222件(55.9%),外来175件(44.1%)であった.疾患別では,間質性肺炎35名(42.7%),とCOPD 21名(25.6%)の患者で過半数を占めていた.介入内容は,酸素療法174件(43.8%)が最多であり,呼吸法113件(28.5%),薬物療法34件(8.6%)と続いた.患者のセルフマネジメント能力を効果的に引き出すためには,必要なときに指導・相談ができる環境が重要である.慢性呼吸器疾患看護認定看護師が病棟と外来の組織横断的活動を行うことは,患者への質の高いケア介入となり,患者のセルフマネジメント能力を効果的に引き出す手段の1つであると考えられた.
著者
白石 匡 東本 有司 澤田 優子 杉谷 竜司 水澤 裕貴 釜田 千聡 西山 理 木村 保 東田 有智 福田 寛二
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.103-107, 2019-05-31 (Released:2019-06-28)
参考文献数
16

【はじめに,目的】慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)は,呼吸困難により身体活動量(以下PA)の減少をきたす.近年,COPD患者において自己管理の重要性が注目されている.本研究の目的はCOPD患者における自己管理能力とPAの関係を検討することとした.【方法】当院にて外来呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)を実施した,GOLD stage 2~4期の安定期のCOPD患者30例を対象とした.自己管理能力はLINQで評価し,PAは3軸加速度計で計測した.評価は呼吸リハ介入時と介入後12週以降に実施した.呼吸リハ前後でLINQの項目に改善が見られた群を改善群とし,改善が見られなかった群を非改善群とした.【結果】改善群・非改善群ともに,6MWDに改善を認めた(p<0.05).改善群ではPAに改善を認めた(p<0.05)が非改善群ではPAが改善しなかった.【結論】身体活動を改善するためには運動療法のみではなく,自己管理能力を獲得させ,生活習慣を変えていくことが重要である.
著者
松岡 森 佐藤 慶彦 本田 憲胤
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.488-492, 2015-12-31 (Released:2016-01-26)
参考文献数
13

肺癌に対する異なる術式(胸腔鏡下手術と開胸手術)におけるインセンティブスパイロメトリーを含む呼吸リハビリテーションの効果を,術後呼吸機能回復率を指標に検討した.入院診療録より患者背景・手術記録を調査し,呼吸機能評価として1秒量・肺活量を測定した.胸腔鏡下手術11名,開胸手術13名の患者を対象とした.平均年齢は胸腔鏡下手術群70.6歳,開胸手術群64.4歳と差があり,呼吸機能・手術関係要因などにも差を認めたことから,両群の単純比較はできなかった.術前呼吸機能実測値から切除部位損失率を引いたものを予測値(100%)とし,実測値/予測値を術後呼吸機能回復率とした.回復率は,両群ともに術後予測呼吸機能回復率の80%前後であり,先行研究と比較して,インセンティブスパイロメトリーを含む周術期理学療法が呼吸機能の回復を早めた可能性が考えられた.
著者
垣内 優芳 森 明子 松本 恵実 金 明秀
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.318-322, 2018-11-05 (Released:2018-11-30)
参考文献数
25

【目的】頭頸部複合屈曲位の状態で誤嚥の回避や気道内分泌物の喀出(喀痰)のために咳嗽が生じた場合,頸部屈曲位と比較して咳嗽が効果的に行えるのか不明である.本研究の目的は,頭頸部複合屈曲位と頸部屈曲位において随意的咳嗽力を比較検討することである.【対象と方法】対象は健常成人男性21名であった.測定肢位は,リクライニング座位45°とした.測定条件は,頭頸部複合屈曲位と頸部屈曲位の2条件とし,それぞれにおいて咳嗽時最大呼気流量,胸郭拡張差,最大吸気圧,最大呼気圧の測定を行った.【結果】咳嗽時最大呼気流量,胸郭拡張差,最大呼気圧は,頸部屈曲位よりも複合屈曲位において有意に低い値を示した.また,複合屈曲位において咳嗽時最大呼気流量は最大吸気圧,最大呼気圧と関連を認めた.【結論】リクライニング座位時における頭頸部複合屈曲位は,頸部屈曲位と比較して随意的な咳嗽力において不利に働くことが示唆された.
著者
松本 匠平 玉木 彰 和田 陽介 道免 和久
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.85-90, 2019-05-31 (Released:2019-06-28)
参考文献数
18

【目的】呼吸理学療法において咳嗽介助や咳嗽練習は重要であるが,臨床上体位が制限されることは多い.本研究では若年者および高齢者を対象に体位が咳嗽・呼吸機能に与える影響を,複数の測定項目を用いて多くの観点から検討した.【方法】健常若年男女20名,健常高齢男女6名を対象とし,ベッド上で座位,背臥位,半側臥位,側臥位,半腹臥位,腹臥位の6つの姿勢を無作為にとらせ,肺活量,1秒量,咳嗽時最大流量,咳嗽時吸気量,呼吸筋力,咳嗽時の胸腹部の周径差,咳嗽加速度を算出した.【結果】若年者,高齢者ともに座位と比較すると臥位での咳嗽機能の数値は低下し,特に半腹臥位や腹臥位で低値を示した.【結論】半腹臥位や腹臥位では咳嗽機能が低下し,高齢者ではより顕著な低下を示した.端坐位の実施が困難である患者に対し,半腹臥位や腹臥位での介入は不利であるが,側臥位での介入は比較的有利である可能性が示唆された.
著者
市江 雅芳
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.7-11, 2008-04-30 (Released:2016-12-28)
参考文献数
14

現在の医療制度の下では,音楽療法を医療として実践するにはさまざまな制約が伴う.しかし,音楽療法士がセッションを行うのではなく,音楽の要素を従来の医療に取り入れるという手法であれば,音楽のもつ力を役立てることができる.リハビリテーション医療では,自主トレーニングの継続性に効果が期待でき,管楽器を用いることで,呼吸リハビリテーションにも応用可能である.
著者
片岡 弘明 北山 奈緒美 石川 淳 宮崎 慎二郎 荒川 裕佳子 森 由弘
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.89-93, 2012-06-30 (Released:2016-04-25)
参考文献数
8

閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者の外来での運動継続率が糖尿病患者,肥満患者と比較し低値であった.そこで,運動の実施状況や継続ができない理由,運動指導の改善点などを明確にすることを目的にアンケート調査を実施した.その結果,運動する時間・意欲がないと回答した者が多かった.運動の効果や方法を科学的根拠に基づいて指導するだけでなく,どのようにして患者の行動を適切な方向に導くかといった行動変容アプローチも必要である.
著者
田村 宏 名和 厳 清水 憲政 柳 良美 玉木 彰 兪 陽子
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.80-85, 2017-09-01 (Released:2017-11-10)
参考文献数
11

【背景】高齢期の誤嚥性肺炎患者に対する呼吸管理において,排痰援助は効果的であるという報告は散見されるが排痰援助を主体に看護師と協働したものについては限定される.本研究では看護師の意識調査を基に排痰援助の共有化を図り,包括的アプローチの有用性を明らかにすることを目的とした.【方法】高齢期の誤嚥性肺炎患者を対象に通常の看護ケアを実施した群85名(対照群)と理学療法士より排痰援助の共有化を図り看護ケアに導入した群70名(介入群)の在院日数を比較検討した.また排痰援助の共有化を明らかにするため介入群の活動前後に病棟看護師に対して意識調査を実施した.【結果】在院日数は対照群に比して介入群の方が有意に短縮した.意識調査では介入群に有意な理解度の向上を認めた.【結論】高齢期の誤嚥性肺炎に対する排痰援助は看護師と協働して実践することで治療効果の向上が期待される重要な包括的アプローチであることが示唆された.
著者
川越 厚良 高田 靖夫 菅原 慶勇 高橋 仁美 佐竹 將宏 塩谷 隆信
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.57-63, 2010-06-30 (Released:2016-09-01)
参考文献数
29

呼吸回数30回に指定した高負荷圧条件による吸気筋トレーニング(IMT)の効果を検証するために,対象者を,高負荷回数群(HF群),中負荷一般群(MC群),低負荷対照群(LC群)の3群に分け,IMTを4週間行い,呼吸機能・筋力・耐久力,運動耐容能の測定を行った.結果,HF群,MC群ともに吸気筋力・耐久力,運動耐容能は有意に増加し,HF群とMC群間に有意差はみられなかった.以上からHF群はMC群と同等の効果を得られ,新しい負荷条件でのIMTの有用性が示唆された.
著者
森 由弘 井上 亜希子 粟井 一哉 荒川 裕佳子 厚井 文一
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.24-30, 2010-06-30 (Released:2016-09-01)
参考文献数
9

間質性肺炎の終末期には合併症や呼吸困難への対応,人工呼吸器装着の可否など多くの問題点を抱えている.最近,NPPVを急性呼吸不全時に挿管までの橋渡しとして一時的に使用したり,終末期呼吸不全に対してNPPVを限度として,慎重な観察下での導入は許容範囲とされつつある.また,終末期の呼吸困難の緩和にモルヒネの有効性が注目されている.今後,終末期医療の決定に関するガイドラインに示された「医療・ケアチーム」による治療方針の決定が望まれる.
著者
井上 登太 鈴木 典子
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.50-56, 2007-04-27 (Released:2017-04-20)
参考文献数
12

誤嚥を評価するスクリーニング法としては簡便であり,かつ低コスト・普遍性が高い等の条件を満たすものが望ましい.これらを満たす誤嚥評価項目として,むせ・咳,SpO2の低下,呼吸パターン変化,HRの変化,血圧変化,胸部呼吸音,頸部聴診法に注目し,これらの結果を同一症例のVF(嚥下造影検査)の結果と比較し評価した.その結果,呼吸音,頸部聴診法が,それぞれ93.2%,89.5%と高い感度を示した.しかしながら頸部聴診法に関しては,21.1%の症例におき偽陽性を示す結果となった.症例が元来もつ呼吸雑音,心雑音,頸動脈雑音が偽陽性出現を助長している可能性が示された.介護看護の場において簡便なこれらの聴診法を用いることにより,随時,臨床の場で嚥下状態が推測されうる.