著者
三田村 圭祐 奥平 敬元 三田村 宗樹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.61-74, 2016-02-15 (Released:2016-06-17)
参考文献数
64
被引用文献数
1

生駒断層帯において,白亜紀花崗岩類中に発達する露頭規模の断層群に対する構造地質学的解析を行った.断層群のスリップデータに基づく多重逆解法により求められた古応力場は,南北引張の正断層型であった.また,断層コアのガウジから分離したイライトのK-Ar年代は,45.2±1.0Ma(粒径0.2-0.4µm)および46.0±1.1Ma(粒径0.4-1.0µm)となった.各粒径区画におけるK-Ar年代値や低温イライトの含有率に有意な差が認められなかったため,母岩の黒雲母K-Ar年代を用いて砕屑性高温イライトの影響を考慮した結果,断層コア形成およびその後の熱水変質による年代として~45-30Maを得た.これらの結果は,生駒断層帯における白亜紀花崗岩類中に発達する露頭規模の断層群の形成が始新世後期〜漸新世前期の伸長テクトニクスに関連したものであることを示唆する.
著者
石川 剛志 氏家 恒太郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
日本地質学会学術大会講演要旨 第124年学術大会(2017愛媛) (ISSN:13483935)
巻号頁・発行日
pp.207, 2017 (Released:2018-03-30)

【台風のためプログラム中止】 台風18号により学術大会の一部プログラムが中止となりました.中止となったプログラムの講演要旨については,著者のプライオリティ保護の見地から今回に限りJ-STAGEに公開し,引用可能とします.ただし,学術大会においては専門家による議論には供されていませんので「台風のためプログラム中止」との文言を付記します.(日本地質学会行事委員会)
著者
山本 浩文
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.7, pp.333-343, 2009 (Released:2009-12-08)
参考文献数
51

海底堆積物から過去の海洋環境を推定することは,近未来への環境予測を可能とする.現在の海洋環境下で生息しているものと同種のプランクトンが2万年前からの微化石として産出する.つまり,現在の海洋環境を正確に把握した上で,古環境を論じられなければならない.本報告では,現在の海洋環境を参考にして,過去2万年前までの化石群集解析を行い,放散虫指数を決定し水塊の分布を求めた.本州東方沖の親潮が直接影響する北の観測点では,海水温の低下は最終氷期最寒冷期の18.0 kaで最大となった.南の観測点では,最終氷期の最寒冷期の18.0 kaから少し遅れ17.1 kaに親潮を含む水塊の流入が見られた.9.0 kaで現在の東北沖の海洋環境に落ち着いた.8.3~6.3 kaでは黒潮親潮混合域が現在よりもやや北に張り出していた.0.3~0.2 kaには房総半島沖に親潮黒潮混合域が南下した.さらに,プランクトンの種構成から黒潮流軸についての解釈を議論する.
著者
羽地 俊樹 山路 敦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.12, pp.1049-1054, 2017-12-15 (Released:2018-03-28)
参考文献数
35
被引用文献数
5

Saruodaki Falls, which is about 60 m high, is one of the highlights of the San'in Kaigan Geopark, northern Hyogo Prefecture, SW Japan. The quartz diorite exposed at the falls has previously been thought to represent a wide dike. However, we found that it is a laccolith with a horizontal diameter of <4 km and a thickness of >100 m. The base of the laccolith is not exposed. The host of the intrusive body consists of a lower Middle Miocene shaley formation, which is subhorizontal in this region. However, the formation makes a culmination centered by the body. In addition, the interface between the shaley formation and the diorite is concordant with the domal structure of the surrounding shale. Fracture patterns observed at the falls suggest that the laccolith is a composite sill made up of at least four sheets. Fission-track and U-Pb dating of zircon from the lower part of the laccolith yields ages of 15.7±1.2 Ma and 16.1±1.4 Ma, respectively. These ages are concordant with fossil data from the host rocks.
著者
伴 雅雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.310-328, 2011-06-15 (Released:2011-11-03)
参考文献数
98
被引用文献数
1 2

精度の高い噴火史を基にした岩石学的研究により,沈み込み帯活火山のマグマ供給系進化の解明が格段に進展し,その成果は噴火予知にも利用されつつある.玄武岩主体の活動的な火山の場合は供給系の構成が明らかにされると共に,浅部マグマ溜りが深部から注入を受けて進化する経過や,より深部の組成変化とその要因が解明されつつある.一方,安山岩~デイサイト質の火山では噴出物の特徴の時間変化に多様性があり,一噴火で急変するもの,100~800年程度で周期的に変化するもの,あるいは時間変化が見られないものがある。各々について供給系の構成や特に浅部マグマ溜りの進化を精度良く解明する研究が活発に行われている.また,噴出率の急上昇など特徴的な変化が認められる時期には浅部-深部マグマ溜りあるいは初生マグマ発生領域に大きな転換が起こっていることが判明してきている.この場合マグマ溜りの寿命について制約条件が得られる.
著者
藤川 和美
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.Supplement, pp.S161-S168, 2006 (Released:2007-06-06)
参考文献数
32

植物の分布や植生には,気候以外にも生育地の土壌が大きな影響を与えている.高知県には高知市郊外をはじめ蛇紋岩地が多い.蛇紋岩地では土壌の貧栄養や乾燥によって形態が特殊化した植物が認められること,また,固有種や分布上興味深い種が多いことなどが報告されている(北村, 1993;堀江, 2002).日本の蛇紋岩地の植物に関する研究は高知県を舞台とした吉永(1914)の研究を端緒としており,県内ではその後,山中(1959)ほかがその植生を中心に精力的に研究を進めた.そこで,高知県におけるこれまでの研究成果をまとめ,蛇紋岩地に生育する植物について報告する.次に,植物について知り得る身近な見学コースとして高知県立牧野植物園を紹介する.園内には,高知県の変化に富んだ植生を再現する土佐の植物生態園があり,また,平成18年8月15日から11月30日までは「植物化石展 ―化石でたどる植物の進化」と題した展示が開催されている.
著者
里口 保文 山川 千代美 高橋 啓一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.Supplement, pp.S70-S78, 2012-08-15 (Released:2013-02-21)
参考文献数
51
被引用文献数
2 2

近年,第四紀が正式な地質年代区分の一つとしてその定義が国際地質学連合(IUGS)に承認された.第四紀の始まりは更新世の始まりでもあり,地層としての第四系の下限は,鮮新−更新統境界という意味でもある.鮮新−更新統境界の新定義は1980年代に決められた旧定義より下げられ,年代的には約80万年古くなった.本コースでは,近畿地方において旧定義と新定義における鮮新−更新統境界の両方が観察できる古琵琶湖層群において,両者を露頭観察するとともに,陸域における地層にとっての鮮新−更新統境界の意味を考える.
著者
小平 秀一 富士原 敏也 中村 武史
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.9, pp.530-534, 2012-09-15 (Released:2013-01-26)
参考文献数
14
被引用文献数
2

2011年東北地方太平洋沖地震では,海溝軸周辺までの断層破壊に伴う海底変動が大きな津波の原因と考えられているが,地震に伴う断層運動の上限は正確に見積もられておらず,巨大津波の成因は未解決のままであった.そこで,海溝軸周辺の海底地形変動を明らかにするため,地震発生直後にマルチナロービーム音響測深機により取得した海底地形データを,地震前の海底地形データと比較した.その結果,海溝陸側で海溝軸まで及んだ大きな偏差が確認された.この偏差から地震に伴う海底変動を見積もったところ,海溝陸側が東南東方向に50 m水平に移動して,10 m隆起していると推定された.この大きな水平変動によって,海溝軸陸側の急斜面では,実効上10−20 mの大きな隆起をもたらし,数値モデリングによると,この変動が今回の地震に伴う巨大津波の原因と考えられる.
著者
鈴木 慶太 酒井 邦裕 太田 亨
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.3, pp.205-216, 2013
被引用文献数
6

本論では,楕円フーリエ–主成分解析,mPD法フラクタル次元を用いて砕屑物粒子の形状を定量的に評価し,河川,前浜,氷河堆積物を形状から判別することを試みた.楕円フーリエ–主成分解析によって,粒子の伸長度(EF1)と突起度(EF2,EF3,EF2 + EF3)など全体的な形状を表す指標が,mPD法フラクタル次元では,表面構造(FD,FDCv)を示す定量的な指標が得られた.この結果に基づくと,砕屑物粒子は氷河,前浜,河川堆積物の順に円形から棒状に変化する.また,氷河,河川,前浜堆積物の順に表面構造が滑らかになり,かつ,滑らか度の標本ばらつきが少なくなる.これらの指標の中で,堆積場ごとの値の違いが顕著であるのはFD,次いでEF1であり,楕円フーリエ–主成分解析とフラクタル解析の結果を統合的に用いることによって,各堆積環境を明瞭に判別することが可能となった.
著者
竹下 欣宏
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.158-174, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
31
被引用文献数
12 8

古期御岳火山の降下テフラおよび火砕流堆積物を記載し, 降下テフラの重鉱物組み合わせ, 重鉱物の主成分化学組成を明らかにした. 降下テフラの記載岩石学的特徴と年代値の明らかな溶岩層およびテフラ鍵層との層序関係に基づき, 古期御岳火山の詳細なテフラ層序を確立した. テフラの層序および重鉱物組み合わせに基づき, 古期御岳火山テフラステージを下位より, Hサブステージ (主に緑色角閃石を多く含む降下テフラを噴出する活動が盛んな時期 ; 約0.78 Ma以前), PHサブステージ (主に褐色角閃石, 斜方輝石, 単斜輝石を含むテフラを噴出する活動が盛んな時期 ; 約0.78-0.70 Ma), OPサブステージ (主にかんらん石, 単斜輝石, 斜方輝石を含むテフラを噴出する活動が盛んな時期;約0.70-0.64 Ma) に区分した. この区分は, 古期御岳火山の山麓全域において年代値の明らかな溶岩層やテフラ鍵層との層序関係と矛盾なく確認された.