著者
田近 淳 小板橋 重一 大津 直 廣瀬 亘 川井 武志
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.Supplement, pp.S51-S63, 2007 (Released:2009-01-27)
参考文献数
43
被引用文献数
1

石狩平野・夕張山地・富良野盆地を横断し,山麓に分布する変動地形を観察するとともに,夕張山地の大規模地すべり地形とその移動体を貫通したトンネルの見学を行なう.石狩低地東縁断層帯では,ブラインドスラストが形成した段丘面の緩やかな傾動や撓曲変形を観察する.断層帯周辺は縄文時代以降の遺跡の密集地帯であり,発掘により多くの地震性地すべりの痕跡が発見されている.それらも観察できるかもしれない.富良野断層帯では盆地の両側に分布する断層崖や地形面の傾動を観察するとともに,傾斜した十勝火砕流堆積物とこれを覆う砂礫層や断層の剥ぎ取り標本を観察する.一方,両断層帯に挟まれた夕張山地の蛇紋岩や白亜系蝦夷累層群・新第三系の分布域には大規模な地すべり地形が分布する.道道夕張新得線赤岩トンネルは蛇紋岩と付加体構成岩類からなる大規模地すべり移動体を貫くトンネルである.本コースは,活断層・地すべり・トンネルなど,変化に富む巡検となっている.現地での様々な議論を期待する.
著者
石毛 康介 中川 光弘
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.2, pp.73-91, 2017-02-15 (Released:2017-05-15)
参考文献数
23
被引用文献数
4

旭岳(標高2291m)は御鉢平カルデラの南西に位置する成層火山で,現在でも活発な噴気活動がおこっている.旭岳山頂部から東には熊ヶ岳(2210m)の火砕丘と後旭岳(2216m)の溶岩円頂丘があり,いずれも旭岳の噴出物に覆われている.旭岳サブグループの活動は,山体の違いによって熊ヶ岳火山体,後旭岳火山体,旭岳火山体の3つに大別される.旭岳火山体については主にマグマ噴火を行った前期と主に水蒸気噴火を行った後期に区分され,さらに前期噴出物は噴出量とマグマタイプの違いを基にE-1サブステージとE-2サブステージに細分される.旭岳サブグループの噴出物は,特に苦鉄質側岩石の組成で山体および活動期間で区別できる.旭岳の活動では,従来の研究で指摘されているようにマグマ混合が支配的プロセスであるが,今回の検討によって山体(火口)および山体での活動期毎に,特に苦鉄質端成分が変化していることが明らかになった.
著者
金子 慶之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.103, no.3, pp.203-226, 1997-03-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
103
被引用文献数
21 23
著者
須藤 斎 高橋 雅紀 柳沢 幸夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.266-278, 2002-04-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
59
被引用文献数
2 4

埼玉県川本町の植松橋付近の荒川河床に露出する中新世海成堆積物より珪藻化石を抽出した結果,珪藻化石を含有する試料は,すべてYanagisawa and Akiba(1998)のDenticulopsis lauta帯(NPD4A)下部の,Denticulopsis praelautaの終産出層準(D41 : 15.7Ma)とCavitatuss lanceolatusの初産出層準(D41.5 : 15.6Ma)の間に位置づけられることが明らかとなった.その結果,これまで土塩層最下部と考えられていたこのシルト岩層は土塩層には帰属せず,より下位の中部中新統下部に属することが判明した.
著者
西来 邦章 竹下 欣宏 田辺 智隆 松本 哲一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.3, pp.89-103, 2014-03-15 (Released:2014-07-26)
参考文献数
28
被引用文献数
1

四阿火山において地質調査,K-Ar年代測定および全岩化学組成分析を行い,火山活動史の再検討を行った.本火山は噴出物の分布と地形の開析の程度差,活動年代および全岩化学組成から,3つの火山体(初期火山体,根子岳火山体,浦倉山火山体)からなる.本火山の活動は,約80万年前に開始した(初期火山体の活動).約70万年前には,根子岳周辺でデイサイトの火山活動が発生し(根子岳火山体の活動),数万年間で山体が形成された.初期火山体は約55万年前まで活動が継続したのち,5万年程度の活動休止期を挟み,約50万年前には,浦倉山周辺で安山岩の火山活動が発生した(浦倉山火山体の活動).この火山体の活動は約45万年前には終息した.そして,約30万年前には,四阿火山の北西方において小規模な火山体(鳴岩火山)が形成された.
著者
白尾 元理
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.641-655_2, 1981-10-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
32
被引用文献数
3
著者
端山 好和
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.97, no.6, pp.475-491, 1991-06-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
71
被引用文献数
6 7
著者
西来 邦章 高橋 康 松本 哲一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.7, pp.474-487, 2013-07-15 (Released:2013-11-02)
参考文献数
35
被引用文献数
2

活火山を有する浅間・烏帽子火山群において21試料のK–Ar年代測定を行い,火山活動場の時空間的変遷を明らかにした.本火山群は西北西–東南東方向に約22 kmにわたり分布し,主稜線は成層火山体で構成され,周辺域には溶岩ドームなど単成火山的な山体で広範囲に分布する.本火山群は活動地域と休止期を基に以下の4つのステージに区分される.ステージⅠ(約100万年前),西部地域のみ;ステージⅡ(85~75万年前),西部地域で南北にやや伸張した広範囲;ステージⅢ(45~24万年前),西部地域から中央部;ステージⅣ(約13万年前以降),中央部から東部地域.本火山群で認められる単成火山的な活動は,約80万年前,約30万年前,約10万年前および約2万年前の短期間に限られる.約30万年前には,西部地域のみであった活動場が東進し,現在の浅間・烏帽子火山群の配列方向である西北西–東南東方向の活動場へ移行した.
著者
近重 史朗 小坂 和夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.574-577, 2000-08-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

Yorii welded tuffs in the northeastern Kanto Mountains are penetratively crushed and strongly hydrothermally altered. They are younger constituents of the Atokura Nappe and their ages indicate the lower limit of the time when the Atokura Nappe thrusted up on the Sanbagawa belt.The whole rock K-Ar ages of the altered Yorii welded tuffs give 58.0±2.9 Ma which is consistent with zircon FT age (59.6 Ma). This suggests that the hydrothermal alteration followed the formation of welded tuffs at the last stage of cooling process. After this hydrothermal alteration, the Yorii welded tuffs thrusted up on the Sanbagawa belt.
著者
中川 久夫 新妻 信明 早坂 功
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.267-280, 1969-05-25 (Released:2008-04-11)
参考文献数
62
被引用文献数
17 26
著者
須藤 斎 高橋 雅紀 柳沢 幸夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.48-62, 2003-01-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
76
被引用文献数
3 6

埼玉県川本町の明戸堰上流の荒川河床に露出する中新世海成堆積物(土塩層)より珪藻化石を抽出した結果,珪藻化石を含有する試料は,すべてYanagisawa and Akiba(1998)のThalassiosira yabei帯(NPD 5C)最上部に相当し,Denticulopsis hustedtiiのアクメ・終多産出層準(D 55.8:10.1 Ma)とDenticulopsis dimorphaの初産出層準 (D56 : 10.0 Ma) の間に位置づけられた.珪藻化石年代に基づくと,明戸セクションの土塩層は栃木県烏山地域の田野倉層,福島県東棚倉地域の久保田層および茨城県日立市の国分層上部に年代対比される.比企丘陵地域の土塩層と土塩層に重なり海退相からなる楊井層は,富岡地域の原市層と板鼻層にそれぞれ岩相対比されるが,それぞれの地層境界(海退相の開始層準)は,富岡地域が150万年ほど古く,岩相境界の時間斜交性が明らかにされた.
著者
佐藤 大介 松本 一郎 亀井 淳志
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.8, pp.439-450, 2011-08-15 (Released:2011-12-10)
参考文献数
38
被引用文献数
1 2

島根県松江市周辺には中新世~更新世の断続的な火成活動が認められる.本研究では,この地域で活動した和久羅山と嵩山を構成する火山岩について岩石記載および全岩化学分析を行った.この火山岩はこれまで和久羅山安山岩と呼称されてきたが,全てがデイサイトに分類されることから和久羅山デイサイトと再定義した.鉱物比および化学的特徴から和久羅山デイサイトはタイプⅠ,タイプⅡ,タイプⅢの溶岩に区分でき,層序的にこの順で噴出したと推定される.そして,和久羅山デイサイトはアダカイトの特徴を示し,スラブメルトの寄与が示唆される.このデイサイトの活動は約5 Maとされていることから,この頃にはフィリピン海プレートの先端が日本海拡大に伴う熱いアセノスフェアの上昇部に到達して部分融解を起こしていた可能性がある.和久羅山デイサイトは西南日本の背弧側におけるアダカイト火山群の萌芽的活動として位置づけられる.