著者
牟田 悦子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.124-131, 2002-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
33
被引用文献数
1 5
著者
柴橋 祐子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.12-23, 2004-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
1 4

本研究では中学, 高校生の友人関係における「自己表明」および「他者の表明を望む気持ち」の2側面に関わる心理的要因を発達的な観点から検討した。中学, 高校生721名を対象に質問紙調査を実施し, 因子分析により, 2側面に関わる心理的要因として「安心感」「配慮・熟慮」「率直さへの価値感」「スキル不安」「支配欲求」の5つが抽出された。これらの心理的要因が「自己表明」および「他者の表明を望む気持ち」に及ぼす影響を分析した結果,(1) 中学, 高校生の男女共にほぼすべての「自己表明」および「他者の表明を望む気持ち」に「率直さへの価値感」が深く関わる。(2) 全体を通して「意見の表明」および「不満・要求の表明」の低さの背景に「スキル不安」がある。(3) 高校生では, ほぼすべての「自己表明」に「安心感」の影響があり, 高校生の女子では「他者の表明を望む気持ち」にも関連している。 (4) 「不満・要求の表明」の背景に女子では「配慮・熟慮」, 男子では「支配欲求」があることが示された。これらの結果から, 自己肯定感, 自己信頼感が2側面を共に支える重要な要因であること, 2側面のあり方を支える心理面の発達的な違いが明らかになった。
著者
山田 剛史
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.64-76, 2013-03-30 (Released:2013-10-30)
参考文献数
100
被引用文献数
1 1

本稿では,2012年度の測定・評価領域の研究の動向を概観する。対象となる研究は,『教育心理学研究』に掲載された論文,日本教育心理学会第54回総会で発表された論文,さらに,国内外の関連する学会等で報告された論文や文献である。本年度に発表された研究を概観するにあたり,(1) 効果量(および, 検定力分析, メタ分析),(2) 項目反応理論,(3) MCMC法に注目した。 2012年度は,これまでその重要性を指摘されながらも十分に実践されているとは言えなかった,効果量やメタ分析に焦点が当たり,普及への一歩を踏み出した年と言えるかもしれない。また,項目反応理論に関する研究が多数報告されたことも本年度の特徴と言えるだろう。 本稿のもう1つの目的は,オープンソースの統計ソフトウェアであるRについて,教育心理学研究における利用の現状と展望について述べることである。Rが心理学研究でどのように利用されてきたか,Rの利用におけるメリットとデメリット,Rと他のソフトウェアの整合性,そしてRを用いた心理統計教育について述べる。
著者
上瀬 由美子 堀野 緑
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.23-31, 1995-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
17

This study investigated psychological background for self-recognition need (Kamise, 1992) and actions of seeking information about the self. Two surveys were conducted and 960 young adults participated in total (655 participants for the first survey and 305 for the second). The results of the first survey showed that the confusion of ego-identity gave rise to the instability of self concept and invoked self -recognition need. The results of the second survey showed that the interdependent construal of self preceded the instability of self concept and was related to the arousal of self-recognition need. In addition, after their self-recognition need being raised, the participants initiated actions of seeking self-information. Moreover, both the interdependent construal of self and the tendency of dependence on others in decision making were related to the action of seeking information about self.
著者
内田 照久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.414-423, 1993-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
21
被引用文献数
6

Many learners have difficulty in recognizing long vowels (LVs) and double consonants (DCs) in Japanese language. The purposes of this study are to investigate the characteristics of auditory perception of LVs and DCs in Japanese natives and to compare them with those of Chinese students. In the experiment I, 52 Japanese subjects were asked to judge 712 stimuli (human voices processed by a time expansion technique) whether they included LVs or DCs. The results show the threshold values are proportional to the speech speed and their judgements are the stablest in the range of natural speed. In the experiment II, threshold values were measured by the method of limits for four Japanese natives, four Chinese experts in Japanese language, and four Chinese novices. Threshold values in ascending series are longer than those in descending series for Japanese natives and Chinese novices, while the reverse is true for Chinese experts. This result suggests that Chinese experts use the different strategy in perceiving LVs and DCs to attain the same level of performance as Japanese natives.
著者
高垣 マユミ 中島 朋紀
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.472-484, 2004-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
1 4

本研究は, 小学4年生を対象とした一斉形態の理科授業の協同学習において,「知識の協同的な構成が生じている場面においては, どのような相互作用がみられるのか」また,「そのような相互作用を教室において生じさせる要因は何か」について検討することを目的とした。授業の構成は, ブリッジングアナロジー方略 (Clement, 1993) を教授的枠組みに据え, 学習者の既有知識から出発した「話し合い活動」による協同的探求を中心とし, 解釈上の疑問や問題点を検証する場として実験・観察を位置づけた。理科授業の協同学習における発話事例の解釈的分析から, 以下の結果を得た。1) 知識の協同的な構成には,「個別的」VS.「統合的」の二項対立的な相互作用のスタイル間の揺さぶりによる組織的変化が必要であることが示唆された。2) 科学の基礎概念についての対話者間の解釈上の違い, 及び,「アナロジー」,「可視化」という具体的事象の理解を深める道具立てにより,「操作的トランザクション」の対話が生成され, 相互作用の組織的な変化が生起することが見出された。
著者
一柳 智紀
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.361-372, 2009
被引用文献数
1

本研究の目的は, 児童による話し合いを中心とした授業における児童の聴き方の特徴が, 学級や教科の課題構造の違いによりどう異なるか明らかにすることである。小学5年生2学級において, 担任教師による児童の聴く力の評価と, 社会科と国語科の授業を対象に直後再生課題を行い, 児童による再生記述について, 学級(2)×評価群(高・中・低)×教科(社会・国語)の3要因分散分析を行った。結果, 1)授業中の発言の有無にかかわらず, 「よく聴くことができる」と教師から認識されている児童は, 能動的に発言内容と発言者に注目し, つながりを意識しながら, 自分の言葉で発言を捉えていること, 2)学習課題の違う教科により, 発言のソースモニタリングや話し合いの流れを捉えるといった児童の聴き方の特徴が異なること, 3)学級により, 2)の教科による聴くという行為の特徴は異なることが示された。これにより, 学級や課題構造に伴う話し合いの展開の違いが, 児童の聴くという行為に影響を与えていることが示唆され, 今後より両者の関連を考察することが課題として示された。
著者
針生 悦子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.275-284, 2010
被引用文献数
2

日本語で, 有声音で始まる擬音語と無声音で始まる擬音語がペアになっている場合, 前者は, より大きな対象から発せられるより大きな音を, 後者は, より小さな対象から発せられるより小さな音をあらわす。日本語話者のおとなは, 実在の擬音語ペアだけでなく, 初めて耳にする擬音語ペアにも, このルールを適用し意味を理解しようとする。本研究では, 日本語話者の子どもが, この"感覚"を, いつ, どのようにして備えるようになっていくのかについて, 書記体系であるひらがな——ひらがなでは, 有声音と無声音の対応は濁点の有無によって系統的に標示される——の影響に注目しつつ検討した。その結果, 4歳児は既に, 実在の擬音語だけでなく, 新規な擬音語も, このルールを適用して理解しようとするようになっていることが見いだされた。また, 濁音文字が読める子どもは, 読めない子どもより積極的に, このルールを新規な擬音語ペアに適用していた。このように, ひらがなについての知識は, 子どもが, 有声音と無声音に関する意味づけを, 実在の擬音語だけでなく新規な擬音語にも適用可能なものへと一般化していく過程で, 一定の役割を演じている可能性が示唆された。
著者
生月 誠 田上 不二夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.425-430, 2003-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
11

本研究では, 視線恐怖を主訴とする被験者の, 視線恐怖軽減のメカニズムを解明することが目的である。実験1では, 言語反復を含むリラクセーションによる脱感作の手続きを, 実験2では, 拮抗動作法による脱感作の手続きを用いた。いずれも, 自己視線恐怖より, 他者視線恐怖の軽減に効果的であり, distractionが視線恐怖軽減の重要な要因となることが示唆された。また, 自己視線恐怖は自己の視線に関する独特の認知を伴っており, 認知変容のための手続きである自己教示訓練が効果的であったと考えられる。
著者
畑野 快
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.404-413, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
24
被引用文献数
4 4

本研究の目的は, コミュニケーションに対する自信がアイデンティティと関連していることを実証することである。研究1では, 大学生254名に質問調査を行い, 「意図伝達への自信」, 「意図抑制への自信」, 「意図理解への自信」(3下位尺度)からなるコミュニケーションに対する自信尺度(Self-confidence in Communication Scale : SCS)を作成した。α係数の値から十分な信頼性が示され, またコミュニケーション・スキル, セルフ・モニタリング, 自尊心との相関分析の結果から妥当性が検討された。研究2では大学生384名に対し質問紙調査を行い, SCSと多次元自我同一性尺度(Multiple Ego Identity Scale : MEIS)との関連を検討した。まずSCSに対し確認的因子分析を行い, 因子構造の安定性を検討した。適合度は十分とは言えなかったが, 概ね因子構造の安定性が確認された。そしてSCSとMEISの相関分析の結果から, SCSが心理社会的自己同一性と特に関連していることが示された。
著者
宇都宮 博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.209-219, 2005-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
35

本研究は, 青年期の子どもからみた両親のコミットメントに関する認知尺度を作成し, 両親間の葛藤解決および青年の不安との関連性を検討することを目的として実施された。女子青年136名 (平均20.4歳) を対象に質問紙調査を実施した。分析の結果, 両親の結婚生活に対するコミットメントの認知は, 父母いずれも「存在の全的受容・非代替性」「社会的圧力・無力感」「永続性の観念・集団志向」「物質的依存・効率性」の4因子が抽出された。このうち, 不安と比較的強い相関がみられたのは「存在の全的受容・非代替性」と「社会的圧力・無力感」であり, 両者は異なる関連にあった。すなわち, 「存在の全的受容・非代替性」を高く認知している者ほど不安は低減するのに対し, 「社会的圧力・無力感」が高い者ほど不安は強まることが示された。また両親のコミットメントと女子青年の不安の関連は居住形態によって異なり, 親と同居している場合に顕著であった。さらに両親間の葛藤解決と不安の関連は一様ではなく, コミットメントの性質によって異なる可能性が示唆された。