著者
三宅 なほみ 大島 純 益川 弘如
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.43-53, 2014 (Released:2014-09-11)
参考文献数
41
被引用文献数
1

This manuscript aims to introduce a discipline called the learning sciences to readers of this journal. Naomi Miyake spent years in the graduate program at UC San Diego in 1980s, was involved in the emergence of cognitive science and has expanded her basic research toward classroom practices. Jun Oshima spent years in 1990s as a graduate student at the University of Toronto to work on how computers can support students’ knowledge building in the classroom and has continued lesson studies in Japan. The two researchers had three meetings to talk about their research field. Their conversation was structured as a story line by Hiroyuki Masukawa. First, it starts with Miyake’s talk about how the cognitive science emerged and came to be related to the learning sciences. Second, Oshima describes his experience to be in the vortex of the emergence of the learning sciences and research projects in the 90s. Third, the talk continues to discuss more deeply a disciplinary issue of how we treat human learning in the learning sciences. Finally, we wrap up our talk by summarizing the future of this discipline and how we will approach collaboration with practitioners and other stakeholders in education.
著者
遠藤 育男 益川 弘如
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.221-233, 2015-12-25 (Released:2015-12-28)
参考文献数
22
被引用文献数
2

授業研究の質向上のため,客観的なエビデンスを基に議論できるよう,研修体制を考慮しつつ3年間にわたって授業研究デザインを改善し実施した.今回は,毎年同じ6年生算数組み合わせを対象とし,前年度のエビデンスを活用し授業改善を進めた.1年目は授業後時間をかけて発話分析し,各班の学習プロセス比較図と一定期間後の定着度を調べた回顧記述調査を長期休業での研修で提示し,エビデンスを基に議論する重要性を共有した.2年目は観察者を学習者1人1人に割り当て,視点を持って発話を観察記録することで事後研修の質を高め,長期休業の研修に向けた分析負担を減らした.3年目は定着度の予測活動を導入することで,長期休業の研修を組み合わせなくても定着を意識した議論を引き出せた.前年度までのエビデンスを活用しつつ各年度研修を改善した結果,分析負担を減らしても,精度の高い学習成果の予測を基に観察吟味ができる授業研究が実現できた.
著者
安斎 勇樹 益川 弘如 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.287-297, 2013-11-20 (Released:2016-08-10)

本研究の目的は,協同制作を課題とした大学生向けのワークショップにおいて,創発的コラボレーションを促すプログラムの活動構成の指針を示すことである.本研究では,ジグソーメソッドと類推の効果を組み合わせた「アナロジカル・ジグソーメソッド」という活動構成を仮説として設定した.アナロジカル・ジグソーメソッドのほかに,ジグソーメソッドと類推の有無によって合計4群の活動構成を設定し,それぞれ2回(各6-7グループ)の実践を行い,各グループの制作プロセスを質的に分析した.その結果,アナロジカル・ジグソーメソッドによって活動を構成すると,創発的コラボレーションが促されることが示唆されたほか,視点の相違から類推が活用され,さらにそれが異なる視点から再解釈されたり,複数の概念を結びつけたりする可能性が示された.
著者
益川 弘如
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.89-98, 1999-09-20
被引用文献数
16

ノートやメモなど自分が書いたものを後から見直すとき,作成時に利用した資料がすぐに参照できると,書かれた内容をより発展的に利用できると考えられる.また,他人のノートについても同様のことができると,お互いに相手が何をどう考えてきたかが分かりやすくなり,協調的な学習支援につながるであろう.そのような相互参照の履歴を活用する「相互リンク機能」を備えた協調学習支援ノートシステム「ReCoNote」を製作,実際に大学の授業で使用し,評価した.あるグループでは話し合いなどを進める前に,各自がお互いのノートどうしにリンクを作成して関連付けを行っていた.その相互リンクをみんなで活用して,お互いに考えたことをグループで共有しながら話し合いが進められ,質の高い教え合いが起きていた. ReCoNoteの活用により全体としてさまざまなノートや資料にリンクが結ばれ,協調的な学習が進んだと考えられる.
著者
渡邊 由紀子 合田 美子 山田 政寛 益川 弘如 兵藤 健志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は,研究や教育のためのリソースが集約されている大学図書館が授業外学習支援を積極的に行うために,大学図書館員の専門性を図書館情報学だけではなく,教育工学及び学習科学の観点を含めて再構成し,それに基づいた教材と学習システムを開発し,効果を評価することにある。そのため,学習支援を担当する大学図書館員を対象としたeラーニングの学習教材を開発し評価するとともに,それらの教材を通じて学んだ知識やスキルの転移を支援できるように,学習科学の研究知見であるアンカードインストラクションを活用したストーリーベースのビデオ教材を開発し評価した。
著者
白水 始 三宅 なほみ 益川 弘如
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.254-267, 2014-06-01 (Released:2015-02-10)
参考文献数
46
被引用文献数
8

This paper reviews the birth, growth and future issues in learning sciences, an ever-growing discipline of human learning research. In the former part of this paper, we trace three groups of researchers who dealt with learning in real classrooms based on their own cognitive studies in 1970s through 1980s. Their trajectories demonstrate the learn-ing sciences as a natural outgrowth of cognitive science as well as a good test field of learning in reality. In the latter part, we discuss current moves of the learning sciences,and identify three issues: (1) how to change and realize our visions of “learning goals,”(2) how to use technology in order to keep records of learning, and (3) how to help everybody make the new version of “learning sciences” as a core common science of all. As an example to deal with the issues simultaneously, we introduce teacher-researcher-government partnerships that create knowledge constructive classrooms, from which every participant can learn to revise her or his vision of goals and learning.
著者
益川 弘如 白水 始
出版者
独立行政法人 大学入試センター
雑誌
大学入試研究ジャーナル (ISSN:13482629)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.162-168, 2019 (Released:2023-09-07)
参考文献数
17

入試問題の改変には問題形式の違いが引き出す思考過程に関する知見が必須である。本研究は,良問と言われる東京大学の国語記述式問題がいかなる思考過程を引き出しているかについて,同じ作者の文章が出題された大学入学センター試験の多肢選択式問題と比較した。思考発話実験の結果,前者の方が参加者から,問題文全体を読み,内容理解に基づいて解答を検討するという思考過程を誘発することがわかった。今後の入試問題の改変に向け,出題意図と出題形式や設問構成,そしてそこで誘発される思考過程とを一体的に検証することの重要性を指摘した。
著者
武田 香陽子 高橋 淳 益川 弘如 島森 美光
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.6, pp.659-664, 2017-06-01 (Released:2017-06-01)
参考文献数
22
被引用文献数
8 9

Recently, the practice of active learning has spread, increasingly recognized as an essential component of academic studies. Classes incorporating small group discussion (SGD) are conducted at many universities. At present, assessments of the effectiveness of SGD have mostly involved evaluation by questionnaires conducted by teachers, by peer assessment, and by self-evaluation of students. However, qualitative data, such as open-ended descriptions by students, have not been widely evaluated. As a result, we have been unable to analyze the processes and methods involved in how students acquire knowledge in SGD. In recent years, due to advances in information and communication technology (ICT), text mining has enabled the analysis of qualitative data. We therefore investigated whether the introduction of a learning system comprising the jigsaw method and problem-based learning (PBL) would improve student attitudes toward learning; we did this by text mining analysis of the content of student reports. We found that by applying the jigsaw method before PBL, we were able to improve student attitudes toward learning and increase the depth of their understanding of the area of study as a result of working with others. The use of text mining to analyze qualitative data also allowed us to understand the processes and methods by which students acquired knowledge in SGD and also changes in students’ understanding and performance based on improvements to the class. This finding suggests that the use of text mining to analyze qualitative data could enable teachers to evaluate the effectiveness of various methods employed to improve learning.
著者
益川 弘如
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.331-343, 2004-09-30
被引用文献数
8

本論文では, 大学学部生を対象に学生自身が協調的な活動を通して知識を構成していく2つの授業の実践と評価を報告する。認知科学研究の基礎資料を理解させる1998年度学部3年生の授業では, 学生自身が担当した研究事例を調べて発表し, 互いの研究事例を関連付け, 全体を統合する3つのフェイズが段階的に含まれるカリキュラムで, これらの学習活動を協調活動作業支援ツールで支援した。理想的な協調学習が起きた場合を想定した学習者モデルを作成し, その学習者モデルとシステムログデータを照らし合わせて分析した。結果, 想定していた積極的な他人のノート参照, 関連付け活動が確認された。特に活発なグループは, 個々の研究例の繋がりを挙げつつ問題解決の特徴をまとめた質の高いレポートを提出していた。この授業成果を元に, 2000年度は授業に段階的に関連付け活動を入れて, 幅広い対象領域においても相互に関連付ける活動を促進させる工夫をした。結果, 統合型のレポートを提出する割合が増加した。以上より, 研究事例の関連付け活動をシステムとカリキュラムで工夫して導入したことで学習者自身による協調的な知識構成活動を促進させることができたと言える。
著者
益川 弘如 白水 始 齊藤 萌木 飯窪 真也 天野 拓也
出版者
日本テスト学会
雑誌
日本テスト学会誌 (ISSN:18809618)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.25-44, 2021 (Released:2021-12-01)
参考文献数
29

一つの文章を複数の要素に解体・再構成して全体を捉える「積極的読み」は大学生活で必須の認知活動だが,その難しさゆえに大学入試で問われても入学志望生はテストワイズネスを利用した浅い処理で対処しがちである.本研究は,解決過程の制御と記録というCBT の利点を生かし,積極的読みを求める典型としての東大入試国語問題を対象に,問題文全体の読解・要素抽出・関連付けを促すCBT を開発,統合的課題解決に及ぼす効果を検証した.この「改変版」と入試問題をCBT に移し替えた「従来版」を用意し,積極的読みの経験が異なる二層の参加者計79 名で実験を行ったところ,読解経験の少ない中堅大学生では従来版の統合課題成績が改変版を上回り,進学校生ではそれが逆転する有意な交互作用が得られた.設問解答とログ分析から,同程度の成績でも中堅大学生の従来版では傍線部付近の書き写し,進学校生の改変版では自らの言葉による再構成が把握でき,CBT の読解支援・評価両面の可能性がうかがえた.
著者
益川 弘如 白水 始
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.4K3GS105, 2022 (Released:2022-07-11)

本報告では,学習科学を題材に授業などの学習環境をどうデザインするかという知が対話で生まれ,対話を通して能動的に使われ伝わる様を描き出し,以て「対話するAI」のモデルを構想したい。ある単元における特定の授業法がどのような学習成果を生むかという因果関係が一挙に理論化されていた学習研究に比べ,学習科学はそうした無理な一般化を避け,各状況での実践を関係者の対話を通して協調吟味し,対話を通して「デザイン原則」と呼ぶ仮説的実践指針を抽出し,次の現場の関係者が主体的に(まさに一人称的に)使って結果をさらに次の対話に活かすというデザイン研究の枠組みを採用している。ここでは知が対話の中で生み出され,それぞれの主体が自らの状況にあわせて使って,次の知を生み出す臨床の知が生成されているとも見てとれる。果たして主体を各AIに変えたときに,こうした社会システムをいかに実現できるか―人間研究者の立場から話題を提供したい。
著者
遠藤 育男 益川 弘如 大島 純 大島 律子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.363-375, 2015-03-20 (Released:2016-08-11)
被引用文献数
5

1人ひとり異なる多様な視点で解き方について議論することがその話し合いの対象としている課題の理解を深めるプロセス(以下,知識構築プロセス)を引き起こし,そこで構築した理解が長期にわたって保持されるという仮説に基づき,6年生算数・組み合わせの授業を,ジグソー法を基にデザインし実施した.検証は,班の対話プロセスを個々人の知識変化で分析する認知内容分析と,班でつくられていく知識変化を分析する社会ネットワーク分析の2種類を行うとともに,知識構築プロセスを引き起こしていた学習者がその理解を保持でいているか回顧記述調査から同定した.その結果,多様な視点での議論が,知識構築プロセスを引き起こすこと,その議論によってどう考えて解けばいいのかという抽象的な理解につながる可能性が見えた一方,正解を同定するような介入や特定の方略を価値付けてしまうような介入が学習の深まりを止める可能性など,次なる検討材料を得た.
著者
益川 弘如 河﨑 美保 白水 始
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.237-254, 2016-09-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
20
被引用文献数
2

This study examined whether collaborative problem solving (CPS) skills can be de-veloped in school through knowledge creation. We collected dialogue data from four lessons and analyzed how children engage in dialogue. The study subjects were children who had taken classes with a working-backward approach until the third grade and then lessons with a working-forward approach from the fourth-grade until graduation. The longitudinal dialogue data were analyzed in three ways. First, each utterance was coded as “team-coordination”or “contents-oriented.”Second, we counted the number of cy-cling processes between understanding and non-understanding based on the framework of constructive interaction. Finally, we examined the level of understanding based on the model of social construction of knowledge and understanding. The results suggested that the children developed their CPS skills through the lessons with a working-forward approach. This was supported by a cross-sectional study, wherein children were asked to solve a problem in pairs. The targeted school outperformed other schools with re-gard to the likelihood of constructive interaction. These longitudinal and cross-sectional analyses suggest that the frequency of constructive interaction could be an indicator of CPS skills. This study finally discussed the possibility that accumulative experience of knowledge creation through constructive interaction in lessons could develop children’s CPS skills.
著者
安斎 勇樹 益川 弘如 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.287-297, 2013

本研究の目的は,協同制作を課題とした大学生向けのワークショップにおいて,創発的コラボレーションを促すプログラムの活動構成の指針を示すことである.本研究では,ジグソーメソッドと類推の効果を組み合わせた「アナロジカル・ジグソーメソッド」という活動構成を仮説として設定した.アナロジカル・ジグソーメソッドのほかに,ジグソーメソッドと類推の有無によって合計4群の活動構成を設定し,それぞれ2回(各6-7グループ)の実践を行い,各グループの制作プロセスを質的に分析した.その結果,アナロジカル・ジグソーメソッドによって活動を構成すると,創発的コラボレーションが促されることが示唆されたほか,視点の相違から類推が活用され,さらにそれが異なる視点から再解釈されたり,複数の概念を結びつけたりする可能性が示された.