著者
上田 昌宏 山田 諒 串畑 太郎 永田 実沙 栗尾 和佐子 安原 智久 曽根 知道
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-028, 2020 (Released:2020-10-31)
参考文献数
10

学習方略の適切な設定は,効果的な教育を行う上で必須であるが,方略を比較,検証した研究は少ない.今回,防災に対する意識を涵養するため,シミュレーション(HUG)と講演を組み合わせた学習プログラムをデザインしたが,学習環境の制限により,方略の順序が異なる2クラスでの実施となった.本研究では,順序違いが学習効果に及ぼす影響を検証した.プログラム前後に防災に関するアンケート調査を実施し,Fisherの正確確率検定を行った.その結果,HUG先行群では,災害現場での行動に自信を持ち,上位年次での災害研修への参加意欲につながることが示され,講演先行群では,災害支援への意欲が向上することが示唆された.どちらの方略でも,受講者が災害医療を考えるきっかけとなり,被災地の様子をイメージできることが示された.1回の測定だが,学習効果に違いが出たことから,学習目標に合わせた方略をデザインし,教育を行う必要があることが示唆された.
著者
近藤 雪絵 木村 修平 山中 司 山下 美朋 井之上 浩一
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-011, 2020 (Released:2020-10-16)
参考文献数
10

立命館大学薬学部ではディプロマ・ポリシーにおける教育目標の一つである「国際社会でも活躍できる英語での情報収集・発信能力」を涵養するため,「プロジェクト発信型英語プログラム」(Project-based English Program: PEP)を導入し,専門英語を含む英語科目を系統的に配置している.本稿では,専門性の高い領域での英語発信力を育成するために,専門教員と英語教員がどのようにコラボレーションできるかを,専門教員,専門知識を持たない英語母語話者,社会人による学生のプレゼンテーションの評価分析を元に論じた.専門教員はテーマの絞り込みや深め方,英語教員は成果を広く発信する際にどう社会に関連させ伝えるかという点でアドバイスを行い,学生自身がその中で自分の意見をさらに深めるという協同が実現することにより,発信力を “I(自身)”,“Me(客観的に捉えた自身)”,“Connection(自身と他者あるいは社会とのつながり)” の観点から涵養できるという示唆が得られた.
著者
岡田 聡志
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.2018-012, 2018 (Released:2018-11-03)
参考文献数
19

本稿では医学教育を1つの事例としながら,専門分野レベルのInstitutional Research(IR)の役割と機能について考察し,機関レベルのIRとの関連性を含め,今後の方向性について検討する.具体的には,まず現在なぜ専門分野レベルのIRが注目されているかの背景について,内部質保証の強調,教育プログラムの第一義的重要性,分野別評価の導入と進展,機関別認証評価の軽量化の観点から整理する.次いで,事例としての医学教育におけるIRの展開について概観した上で,IRの形態の多様性について確認する.その上で,IRの具体的な機能に関連して,日本のIRに関する制約とその現状を指摘した上で,学修成果の測定や可視化に関する議論を確認しつつ,実践の在り方について論じる.最後に,専門分野レベルのIR機能の重要性を指摘するとともに,具体的な課題とともにその方向性を考察する.
著者
井上 信宏 中島 りり子 山内 理恵 大野 修司 久保 元 浅井 和範
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.2018-042, 2019 (Released:2019-06-08)
参考文献数
21

本研究では,薬学部6年生に対する改変型team-based learning(m-TBL)の成績向上効果を検討することを目的として,病態・薬物治療分野の問題を用いるm-TBL演習を実施した.従来のTBLと異なり,個人及びグループテストには難易度が同等になるように調整したそれぞれ別の問題セットを用いた.その結果m-TBL演習を行った試験群では,グループテストの得点が個人テストと比較して有意に高かった.また試験群と,同一課題を自主学習する対照群との,演習期間前後の試験成績を比較した結果,その得点向上率は試験群の方が有意に大きかった.さらにアンケートの顧客満足度分析の結果から各試験の難易度は同等と評価され,因子分析の結果と試験成績から,TBLに期待している学生ほど成績が高いことが明らかとなった.以上のことから,m-TBLが6年生の成績向上に効果的であることが示された.
著者
中井 俊樹
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.2018-010, 2018 (Released:2018-11-03)
参考文献数
3

近年の高等教育政策では,学生の学習成果を可視化して,大学教育の内部質保証を確立することが求められている.そして,学習成果が身についているのかどうかを適切に評価し,組織的に改善することがインスティチューショナル・リサーチ(IR)に期待されている.本稿では,大学におけるIRの実践の効果を高めるための課題を,IRの有効性と限界,大学教育の質保証の特徴,学習成果を捉えるモデル,IRの実践的方法といった論点にそってまとめる.
著者
高橋 秀依
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.2023-006, 2023 (Released:2023-12-15)
参考文献数
3

6年制の薬学が始まってから,ことさら薬剤師養成を意識した教育が推し進められるようになり,研究もこれに沿ったものに変えていくべきではないかと議論されるようになった.本稿では,筆者が経験した興味深い例を報告する.病院薬剤師を希望していた6年制学生には,医薬品の代謝物の合成を研究テーマとして与えた.しかし,その過程で,学生はNMRスペクトルの解析から興味深い発見をし,学生が執筆した基礎的なNMRの論文は有機化学系の伝統ある雑誌に掲載された.一方,光反応の開発に携わっていた4年制の学生は,ビタミン剤と医薬品の相互作用に興味を持ち,医療系の雑誌に掲載される論文を書き上げた.教員は,4年制,6年制,それぞれにふさわしい研究テーマを割り振るのではなく,学生が研究を楽しめるよう支援することが重要と考える.卒業研究は,学生が課題を発見し,解決する能力を養成するもの,という原点を忘れてはならない.
著者
西牧 可織 二瓶 裕之
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.2023-005, 2023 (Released:2023-05-27)
参考文献数
11

数理・データサイエンス・AI教育(応用基礎レベル)に対応する授業として「医療データサイエンス入門I」を,薬学部をはじめとする複数の医療系学部で開講した.本稿では,その授業デザインと教育用ロボットを活用した教材について紹介する.「医療データサイエンス入門I」では,薬剤師など医療従事者を目指す学生がAIやプログラミングに興味を持つよう教育用ロボットを活用した.また,学修プラットフォームとして「医療データサイエンス学修サイト」を作成し,Google Colaboratoryを用いたプログラミング演習をサイトに組み込むことで,ロボットを活用しながら応用レベルの基礎学修項目を体系的に学修できるよう工夫した.
著者
井上 信宏 大野 修司 山内 理恵 久保 元 浅井 和範
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.2022-044, 2023 (Released:2023-04-15)
参考文献数
18

学習効果を高めるために学生が実践する学習方法(認知的方略)が,薬学生の学習成果にどのような影響を与えているかを推察するため,薬学生の認知的方略と卒業試験成績との関連性について解析した.学年を区別して確認的因子分析を行う多母集団同時分析により,「深い処理方略」,「まとめ作業方略」,「反復作業方略」の3つの認知的方略が共通に使用されていることが抽出され,また因子間相関から各認知的方略の使用傾向が学年によって異なることが示された.これらの認知的方略と薬学科6年生の卒業試験との関連性について,「深い処理方略」の使用が卒業試験成績に対し正の影響を示した.一方「反復作業方略」を多く使用する学生ほど成績が相対的に低く,この方略による学習は卒業試験成績に反映され難いことが推定された.以上より,将来の卒業試験に向けた「深い処理方略」の使用促進のため,低学年のうちからその有効性を認知させることが重要であると考えられた.
著者
近藤 雪絵 布目 真梨 天ヶ瀬 紀久子 細木 るみこ
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2022-026, 2022 (Released:2022-09-28)
参考文献数
15

好奇心から大麻を使用する若者が増えている.大麻や乱用薬物に関する大学生の意識調査はこれまでに実施されているが,大麻の形態が多様化する一方で,CBD(カンナビジオール)製品に関する意識調査は十分ではない.本稿では,薬学生を対象に,大麻・CBD製品に対する意識調査を実施した.その結果,大麻の違法性の認識は高かったが,CBD製品は認知が低く,漠然と大麻の類似物だと捉えられていることがわかった.また,薬学生の取るべき行動の意識を分析した結果,「正しい知識の取得と伝達」「違法薬物の乱用と勧めの拒絶」「薬学分野における積極的な学び」「薬学専門家としての薬の扱い」「大麻の危険性と医療利用の理解の深化」が抽出された.これにより,薬学部では,社会的・法的規範の観点に加え,薬物乱用防止の指導を専門性の高い授業に関連付け,学生が抱く現在から将来へのビジョンの中に指導を取り入れることが肝要であると考えられる.
著者
室井 延之
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2020-024, 2021 (Released:2021-05-13)
参考文献数
4
被引用文献数
1

神戸市立医療センター中央市民病院における11週間の実習プログラムでは,臨床薬剤師の育成に向け段階的にプログラムを改定し,最前線で活躍する薬剤師と医師,看護師,その他のメディカルスタッフなどとのディスカッションを通して,薬剤師の職能を深く学ぶことを重点においている.指導については薬剤師レジデントがプリセプターとして学生を指導するとともに,レジデントには経験年数の近い薬剤師がメンターとしてサポートし,それを認定実務実習指導薬剤師が統括指導する.スタッフ全員が『ともに学び,ともに育つ』ことができる屋根瓦教育体制により疾患や薬物治療に対する理解を深めている.臨床薬剤師の育成にあたっては,実務実習教育と卒後教育とのシームレスな連携が不可欠である.
著者
塩見 めぐみ 田中 庸一 尾鳥 勝也
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2020-060, 2021 (Released:2021-09-15)
参考文献数
15

北里大学メディカルセンターでは,薬学実務実習に関するガイドラインを基に実践的な臨床対応能力が修得できる実習プログラムを考案し,2018年度より実習を開始した.本研究では,2018~2019年度に行った計6回のプログラムについて,教育効果に与えた影響を評価した.教育効果として,薬局および病院実習ともに終了した実習生62名を対象としたパフォーマンス評価の推移,アンケート調査結果を用いた.パフォーマンス評価11項目全てにおいて,評価は段階的に上昇し,11週目では,実習生の80%以上が,9項目で「3」または「4」の評価であった.病棟業務実践で主に評価する項目については,実習生の90%以上が,「3」または「4」の評価であった.アンケートより,各実習項目の満足度が95%以上で得られ,病棟業務については100%であった.今後は,得られた課題についての対策を具体的に検討し,実習生の臨床対応能力の向上に資するプログラムを構築していきたい.
著者
池村 舞 橋田 亨
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2022-022, 2022 (Released:2022-06-21)
参考文献数
7

薬学部が6年制となり,より高い資質や能力を持つ薬剤師の養成が望まれている.研究活動は,医療の発展に寄与するためのエビデンスを創出する上で有用であるだけでなく,薬剤師としての業務を行う上で必要な幅広い能力を養成することができる.我々の調査から,研究室在籍期間が長いほど,研究経験を積んでいる傾向にあったものの,6年制薬学部卒業者の経験値は,4年制薬学部卒業後に2年の修士課程を修了した者の経験値と比較すると,低い傾向にあった.この結果も踏まえ,主として臨床研究の経験の少ない薬剤師を対象に,効率的で有意義な研究活動の一助となるよう,研究の意義や方向性を定期的に見直すための「研究テーマ進捗状況報告書」を独自に作成し,運用している.臨床能力の高い薬剤師を養成するために,ひいては,薬物治療の発展のために,基礎研究・臨床研究を問わず,薬学生や薬剤師が積極的に研究に取り組む機会を設けることが重要である.
著者
西田 祥啓 多賀 允俊 高橋 喜統 政氏 藤玄
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
pp.2022-015, (Released:2022-05-25)
参考文献数
20

薬学生教育において集中治療領域を学ぶ重要性は認識されているが,実際に集中治療領域の学生実習を実施している施設は多くはない.集中治療領域の実習内容は,集中治療を要する患者の薬学的管理に加えて集中治療室退室後の患者に対する薬学的管理も含むため,全ての薬学生が学ぶべきである.当院では集中治療領域の実習を講義とSGDを交えて2日間実施している.当院での実習は特に敗血症に対する薬物治療と臓器系統別評価を学ぶことに寄与し,実習生に集中治療領域の薬剤師業務への興味を与える可能性がある.また,集中治療領域における薬剤師業務の必要性は実習経験の有無に関わらず薬学生から認識されており,学習ニーズも高いため,学習機会の提供が望まれる.今後は学生実習内容の更なる充実と集中治療に関する卒後教育プログラムの継続により,重症患者に向き合える薬剤師育成を図っていく.
著者
永田 実沙 青江 麻衣
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2022-016, 2022 (Released:2022-05-25)
参考文献数
15

大学教員は個々の裁量が大きく負担度も自律性も高い職業であり,やりがいがある.一方で,ワークとライフの分別が困難な業務が多くもあり,結婚・出産・育児・介護などのライフイベントが発生した場合に困難を抱える場合がある.本来ライフイベントの発生に男女差はないはずだが,現状,女性研究者の離職が比較的多い状況となっている.我々は,どのような原因や葛藤が就労継続を困難にしているかを明らかにすることが第一歩になると考え本シンポジウムを企画した.本シンポジウムでは,ライフイベントと就労継続の困難さについて,特に育児に焦点を合わせて情報共有するとともに議論を促すことを目的とした.本総説では,シンポジウムの実施内容と共にシンポジウム実施後に実施したアンケート結果,また現在進行中の「就業継続」に関する質的研究の概要について報告する.
著者
林 輝明 上田 昌宏 中澤 公揮 橋本 佳奈 桂木 聡子 天野 学 清水 忠
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2021-039, 2022 (Released:2022-05-13)
参考文献数
10

基礎実習や臨床事前実習の学習効果を向上させるためには,受講生が既に学習済の内容が実習内容と繋がっているかを予習し,関連する部分の知識を整理した上で実習に取り組むことが望ましい.我々は,臨床事前実習コースの化学的な知識を踏まえた配合変化の学習において,チーム基盤型学習(TBL)を導入し,応用演習の部分に実習を位置づけた方略を構築した.授業終了後に行ったアンケートの因子分析およびクラスター分析の結果から,臨床に関連する化学的な知識に自信がなくてもTBLを経験することによって,実習内容が理解できたと実感している可能性が示された.TBLと実習を組み合わせた本授業方略が,化学的な知識と臨床を繋ぐ実習内容の理解度を高める可能性のあるプログラムであることが示唆された.
著者
柴田 昌彦
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2020-040, 2021 (Released:2021-04-07)
参考文献数
12

ろう者・難聴者が薬剤師免許を取得する道が開かれたのは2001年のことである.免許取得者は増え続け,薬学部に入学するろう・難聴学生も続出している.これまでに薬剤師免許を取得し,社会に出たろう・難聴薬剤師の役割を理解すれば,自ずからろう・難聴薬学生を教育する意義が導き出されるだろう.筆者が考えるその役割とは,ろう・難聴者と聴者との間のコミュニケーションの課題が具体的に明らかになり,当事者の視点でその解決方法を提供することである.1つは服薬指導などにおけるろう・難聴患者–聴医療従事者間の課題で,もう1つは一緒に働くにあたってのろう・難聴薬剤師–聴医療従事者間の課題である.それらの課題や,解決に向けた活動を紹介する.薬学教育にも「文化モデル」の視点で「ろう・難聴」「日本手話」を取り入れてコミュニケーション豊かな薬剤師を輩出して頂ければ幸いである.
著者
木下 淳
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2020-004, 2021 (Released:2021-04-07)
参考文献数
4

障害者差別解消法の施行に伴い,すべての大学において学生を含む障がい者への差別的取り扱いの禁止が義務化された.このため,各大学において障がいを有する学生への支援,合理的配慮が提供され始めたが,個人情報保護法等に十分配慮しながら,薬学教育における具体的な支援事例を紹介し,議論する機会を設けること,また,合理的配慮に精通した教職員による事例紹介と薬学教育への応用に関して議論することは,障がいを有する学生への支援および合理的配慮を提供するうえでの注意点やあり方を共有できる貴重な機会といえる.本稿では,姫路獨協大学での支援事例として,高学年学生ノートテイカーによる支援や音声変換システム等の導入による支援の試みについて,支援を試みた教員の意見および支援を受けた学生の意見を紹介する.
著者
岸本 成史 小佐野 博史 奥 直人 渡邊 真知子 安藤 崇仁 厚味 厳一 板垣 文雄 大藏 直樹 岩澤 晴代 長谷川 仁美 長田 洋一
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, 2021

<p>帝京大学薬学部では,4年次に統合型の演習科目「薬学統合演習1」を開講し,約300名の学生を対象に講義室内で薬物治療症例の問題基盤型学習を行っているが,2020年度はCOVID-19のパンデミックによりオンライン形式での遠隔授業として行うことになった.オンライン授業はオンライン会議システムと学習管理システムを組み合わせて用いて実施し,症例検討のスモールグループディスカッションはオンライン会議システムのブレイクアウトルーム機能を利用して行った.また,症例シナリオや授業の実施内容を極力変えず,履修者全員が確実に授業に参加できるよう考慮して授業を行った.授業終了後に学生が得られたと感じた学修成果や授業の満足度は,従来の授業と比べて差異がなかったことから,本演習をオンライン形式で行った場合でも,対面形式と遜色ない学修成果が得られたものと考えられた.</p>
著者
榎田 めぐみ 田中 佐知子 佐口 健一
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.2019-011, 2019 (Released:2019-09-19)
参考文献数
8

教育とは,学修者の行動に価値ある変化をもたらすプロセスである.教育を通じて学修者には行動変容が生じ,より望ましい状態,より高いレベルに向上する.教育効果を教育による学修者の成長の証として捉えると,それをどう測定するかが重要となる.現状,アンケートの実施やパフォーマンス評価等の量的研究が多くみられる.しかしながら,教育を通じて学修者が何を感じ,何を思い考えたか,またその経験をどう意味づけ,それをどう次に活かそうと考えたか,といった視点で学修者の成長を捉えることも教育効果を明らかにするうえで大切である.本稿では,上で述べた視点から学修者の成長を捉えようとして取組んだ質的研究の概要を紹介し,「学修成果を明らかにするための手法としての質的研究」について考えていきたい.
著者
二瓶 裕之 浜上 尚也 木村 治 小田 雅子
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2021-014, 2021 (Released:2021-09-15)
参考文献数
10

新型コロナウイルスの感染拡大防止策の一環として,面接受講と遠隔受講を組み合わせて実施した早期体験学習ワークショップの実践方法と教育効果の検証結果を報告する.例年実施していた施設訪問は中止とし,その代替として,ワークショップの実施時間を拡充した.デジタルを活用して学びあいの機会を提供するなどして,学生の集中力を持続させたり,遠隔受講の学生も含めてディスカッションができるようにした.デジタルを活用することにより,「ワークショップに参加してよかった」,「ワークショップが役立った」などの事後アンケートの結果を得たが,一方で,フィジカルによる学びあいの重要性も再認識できた.