著者
竹田 伸也 田治米 佳世 酒田 葉子 谷口 敏淳 西尾 まり子 高田 知子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.205-212, 2010-09-30 (Released:2019-04-06)

アルツハイマー病(Alzheimer'sdisease:AD)患者の主観的な記憶障害の訴えのほかに、情緒面や意欲面についても評価できる認知症情緒活動性評価尺度(EmotionandActivityScaleforDementia:EASD)を作成し、信頼性と妥当性について検討した。対象は、AD群61人と健常群62人の計123人であり、両群とも65歳以上を対象とした。因子分析の結果、感情変調、活動性減退、記憶低下の3因子計18項目が抽出された。Cronbachのα係数は尺度全体で91、感情変調で.89、活動性減退で.85、記憶低下で.86、CDRとの相関係数は.70であった。また、AD群と健常群のEASD得点の比較では、総得点および下位尺度得点とも、AD群のほうが有意に高かった。以上より、EASDは軽度AD例の情緒や意欲の問題をとらえる際に有用な尺度であり、認知機能の評価と併せて用いることで軽度ADに対する介入効果を多面的に評価することが可能になると思われる。
著者
竹田 伸也 田治米 佳世 酒田 葉子 谷口 敏淳 西尾 まり子 高田 知子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.205-212, 2010

アルツハイマー病(Alzheimer'sdisease:AD)患者の主観的な記憶障害の訴えのほかに、情緒面や意欲面についても評価できる認知症情緒活動性評価尺度(EmotionandActivityScaleforDementia:EASD)を作成し、信頼性と妥当性について検討した。対象は、AD群61人と健常群62人の計123人であり、両群とも65歳以上を対象とした。因子分析の結果、感情変調、活動性減退、記憶低下の3因子計18項目が抽出された。Cronbachのα係数は尺度全体で91、感情変調で.89、活動性減退で.85、記憶低下で.86、CDRとの相関係数は.70であった。また、AD群と健常群のEASD得点の比較では、総得点および下位尺度得点とも、AD群のほうが有意に高かった。以上より、EASDは軽度AD例の情緒や意欲の問題をとらえる際に有用な尺度であり、認知機能の評価と併せて用いることで軽度ADに対する介入効果を多面的に評価することが可能になると思われる。
著者
皿田 洋子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-9, 2004-03-31 (Released:2019-04-06)

わが国の精神科治療は、欧米に比べてはるかにおくれてはいるが、入院中心から地域へと移行しつつある。慢性精神障害者が生活の質を高め、地域の中で適応していくのに必要な生活技能を学習する有用な方法として、生活技能訓練(SST)が治療の中に組み込まれはじめて10年になる。おもに入院患者を対象として実施されているが、その中には治療動機の乏しい患者、SSTの流れについていけないスキルの低い患者、さらにはストレス耐性が非常に低く、症状の増悪をきたしやすい患者なども含まれており、一筋縄ではいかないことがよくある。本稿では、臨床上遭遇するこのような困難なケースに対して、課題設定、フィードバック、モデリング、宿題などの技法をどのように使っていけばよいか、具体的な事例をあげながら筆者の考えを述べたい。
著者
高石 昇
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.47-59, 1997-03-31 (Released:2019-04-06)

この20年来,米国を中心に着実にすすみつつある心理療法統合の動きについて,行動療法の果たす役割に重点をおきながら概観した。まず,統合をすすめる要因として学派の乱立とそれぞれの治療効果の限界,医療経済からの圧迫などを指摘し,次いで最も頻繁に見られる組合せとしての行動一力動療法統合を歴史的に回顧し,1932年のフレンチ発言から70年代までの貢献を表示した後,加速度的に増加する80年代の業績をテーマ毎にまとめて紹介した。さらに,この統合成否の鍵をにぎる現実認識の相違,無意識の役割,感情転移,治療目標などの論点をあげ統合の可能性を論じた。最後に今後の課題にふれ,改めて認知行動療法の果たす役割を強調した。
著者
根建 金男 上里 一郎
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.101-107, 1984-03-31 (Released:2019-04-06)

The present experiment was designed to determine the effects of cognition of physiological state and actual physiological responses upon emotion, as defined in terms of relaxation. Female undergraduates participated in the experiment as Ss and were asked to decrease their heart rate under both real and false fee dback conditions. Under the false feedback condition, Ss were informed as being successful in reducing heart rate when actually vice versa, and in consequence, came to believe their performance became worse as the sessions proceeded. However, Ss under this condition as well as the real feedback condition could become emotionally stable for they were actually successful in decreasing heart rate as much as under the real feedback condition. This seems to be partly because Ss were mostly using proper strategies under either condition to decrease heart rate. When cognition of physiological state and actual physiological responses are contradictory, the latter seem to influence dominantly upon emotion.
著者
重松 潤 尾形 明子 伊藤 義徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.179-189, 2020

<p>認知行動療法の技法論に関する知見は多いが、認知行動療法で想定される治療的な認知変容のプロセスを辿っているか判別する視点に関する知見は乏しい。近年、その視点の一つとして「腑に落ちる理解」が提案されている。しかし、セラピストがどのようにクライエントの「腑に落ちる理解」を観察しているかは不明である。そこで、本研究では、認知行動療法において「腑に落ちる理解」を扱う重要性の確認も踏まえて、認知行動療法を専門とする心理士21名にインタビュー調査を行った。その結果、臨床場面で「腑に落ちる理解」を観察した報告と「腑に落ちる理解」を捉える具体的な視点が抽出された。今後は臨床場面で使用できる「腑に落ちる理解」の指標の作成が求められる。</p>
著者
久野 能弘
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.42-49, 1979-01-31 (Released:2019-04-06)

In the previous volume of this journal, Mr. Sakuma and I reported a paper entitled "Motivation in operant therapy with autistic children". I completely agreed with the effectiveness of Sakuma's "Onbu-Dakko mettod", which made use of physical contact stimuli such as holding the child in the arms or carring the child on the back. But lacking the detailed quantitative analysis, the evidence for the effectiveness of his method was not convincing. In the present paper, I had two objectives : one was to reanalyze his data from quantitative point of view. The other was to make clear the difference of my standpoint from his. After the preyions article was written the difference in our approach to behavior therepy has gradually become evident. I have been keeping a narrow-band standpoint but he has changed his standpoint from the narrow-band to the broad-spectrum one. In this paper, I took a critical attitude toward Sakuma's way of using the concept of motivation in that he tended to use various motive-names in his therapy of autistic children. What seems to me the most important thing to do in behavior therapy practice is to clarify the methods to operate the drive or emotional states of the children rather than to list the names of motives.
著者
佐久間 徹 久野 能弘
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.68-74, 1978-03-30 (Released:2019-04-06)

In operant therapy with autistic children, chocolate or juice is usually used as a reinforcer. Using physical contact stimuli, such as holding the child in one's arms or carrying the child on one's back, we were able to get good results. We will discuss the strengths and weaknesses of such procedures.
著者
谷 晋二 大尾 弥生
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.171-182, 2011-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

ABA知識理解到達度テスト(TestofKnowledgeofAppliedBehaviorAnalysis;以下TK-ABA)を、行動論的知識を測るためのテストとして開発した。TK-ABAは行動の原理や強化、プロンプトなどの行動論的知識を問う41問の選択式テストである。行動論的知識の学習経験のない未学習群、学生群、専門家群に対してTK-ABAを実施した。すべての群間には有意な差がみられた(専門家群>学生群>未学習群)。行動論的知識の学習経験によって得点が増加すると考えられた。特別支援にかかわる教員と施設指導員17名に行動論的知識を学習する講義を実施し、実施前後のTK-ABAおよびKBPAC(Knowledge of Behavioral Principles as Applied to Children;以下KBPAC)の得点の変化を比較した。講義後に両テストともに得点が有意に増加した。TK-ABAの18の質問に対する解答が講義後に有意に変化し、KBPACの五つの質問に対する解答が変化した。これらの結果から、研修による行動論的知識の変化を測定するテストとしてTK-ABAはKBPACよりも敏感なテストであると考えられた。
著者
谷 晋二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.111-119, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
41

本論文は、特別支援分野における認知行動療法の概観と今後の課題についてまとめている。特別支援教育分野は、障害の特性や対象者の年齢によって、支援の目的や用いられる技法が異なってくるので、障害のある人への直接支援、家族支援、そして支援に関わる支援者支援という三つの領域から検討を行い、公認心理師が身につけておくべき技法や態度を要約した。次に、特別支援領域に共通すると考えられる求められる役割について述べ、最後に、この分野での期待される今後の研究について意見を述べた。
著者
佐藤 寛 丹野 義彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.157-167, 2012-09-30 (Released:2019-04-06)
参考文献数
40
被引用文献数
4

巻頭言である本論文では、日本において実施されたうつ病の認知行動療法に関する効果研究を対象とした系統的レビューを行った。国内で実施された12本の効果研究をもとに効果サイズを算出したところ、抑うつ症状の改善については自己評価尺度(研究数12本)では中程度の効果(d=0.78)、臨床家評定(研究数4本)では大きい効果(d=1.35)を示す効果サイズが得られていた。加えて、認知行動療法は抑うつ症状を改善するだけでなく、社会的機能を高める効果もあることが示唆された。治療に伴うドロップアウトは対象者の17.8%に認められた。認知行動療法の実施者の職種は心理士(91.7%)、医師(41.7%)、看護師(33.3%)、その他の職種(16.7%)の順に多く、国内でうつ病への認知行動療法を実施するうえで心理士が重要な役割を担っていることが示された。専門的なトレーニングを受けた心理士による認知行動療法をうつ病の保険診療の対象とすることが急務である。
著者
野村 和孝 山本 哲也 林 響子 津村 秀樹 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.143-155, 2011

本研究の目的は、性加害行為経験者を対象とした認知行動療法的治療プログラムを構成する心理社会的要因が、性加害行為抑止効果に及ぼす影響についてメタ分析を用いた検討を行うことであった。性加害行為抑止を目的とした認知行動療法的治療プログラムを心理社会的要因の構成に基づき分類したところ、セルフ・マネジメントの有無に基づく分類がなされた。セルフ・マネジメントの有無が性加害行為抑止に及ぼす影響についてメタ分析を行った結果、性的嗜好、歪んだ態度、社会感情的機能、リラプス・プリベンションから構成される治療プログラムの性加害行為抑止効果が確認された一方で、ストレスマネジメントなどのセルフ・マネジメントの向上を目的としたアプローチの手続き上の工夫の必要性が示唆された。
著者
横光 健吾 入江 智也 斎藤 了 松岡 紘史 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.95-104, 2014

本研究の目的は、病的ギャンブリングに対する認知行動療法がどの程度有効であるかを検討するため、PGの診断を受けている参加者に対して実施され、かつ研究の質の高い治療効果研究を対象にメタアナリシスを実施することであった。論文検索にはPsycINFO、MEDLINE、PubMed、CiNii、医中誌を使用した(2012年2月時点)。また、各論文の引用文献による検索を行った。抽出された213件を対象に、適格基準と研究の質の検討を行った結果、4編の論文(7件の治療プログラム)がメタアナリシスの対象となった。その結果、認知行動療法は、治療終結期のギャンブル行動、ギャンブル費用、病的ギャンブリングの症状を減少させ、ギャンブル行動とギャンブル費用について、その効果が6ヵ月後においても維持されることが示された。今後の課題として、異質性と公表バイアスの結果から、今後の病的ギャンブリングに対する認知行動療法について、サンプルサイズの大きい研究の必要性が述べられた。
著者
武部 匡也 岸田 広平 佐藤 美幸 高橋 史 佐藤 寛
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.169-179, 2017

<p>本研究の目的は、児童青年期の感情としての怒りの測定に特化した子ども用怒り感情尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。小学4年生~中学3年生を対象に予備調査(<i>n</i>=101)および本調査(<i>n</i>=1,088)を実施した。その結果,1因子7項目の子ども用怒り感情尺度が作成され、「COSMIN」に基づいて検討したところ,十分な信頼性と部分的な妥当性が確認された。また,性別と発達段階で得点に差が認められ,男女ともに発達段階が上がるにつれて怒りを強く抱く傾向があること,そして,男子は女子に比べてその傾向が顕著であることが示唆された。さらに,項目反応理論による項目特性の分析では,子ども用怒り感情尺度は怒りを母平均よりも強く抱いている子どもに対して十分な測定精度を有していた。最後に,子ども用怒り感情尺度が怒りの認知行動療法に関する研究と実践の発展に貢献する可能性と本研究の限界,そして今後の課題が議論された。</p>
著者
有村 達之 小宮山 博朗 細井 昌子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.7-15, 1997-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究の目的は慢性痔痛患者における生活障害を測定する疹痛生活障害評価尺度(PDAS)の開発である。32項目からなる予備尺度を慢性痔痛患者100名に適用して項目分析を行ない,最終的に20項目からなるPDASを構成した。さらに尺度の妥当性検討のため健常者113名のデータが収集された。PDASの内的一貫性,再検査信頼性は高かった。PDASと抑うつ重症度との間,およびPDASと役割機能障害度との間にはそれぞれ有意な相関が見られた。また,入院患者は外来患者より有意に高いPDAS得点を示した。さらに慢性疹痛患者は健常者より有意に高いPDAS得点を示し,PDAS得点を用いての両群の弁別が可能であった。