著者
細尾 綾子 境 泉洋
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.31-41, 2015-01-31 (Released:2019-04-06)

児童青年における体験の回避や認知的フュージョンによる心理的非柔軟性を測定するAvoidance and Fusion Questionnaire for Youth (AFQ-Y)の日本語版を作成し、信頼性と妥当性について検討した。研究Iでは、Item-parcelingを用いた確認的因子分析によって1因子構造であることが示された。また、十分な内的整合性と収束的妥当性が確認された。研究IIでは、中学生に対してアクセプタンス&コミットメント・セラピーを取り入れた集団心理教育を実施し、その前後での日本語版AFQ-Yの得点変化を検討した。その結果、得点が有意に低くなったことにより反応性が確認された。以上のことから、日本語版AFQ-Yは信頼性および妥当性を有すると考えられた。
著者
松本 明生
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.115-125, 2017-05-31 (Released:2017-10-30)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本研究の目的は、体験の回避がスピーチ時のストレス反応に及ぼす影響について検討することであった。研究1では144人の大学生に対して体験の回避を測定するAAQ-Jへの記入と中性場面とスピーチ場面の想起、そして想起中の気分の評定を求めた。分析の結果、AAQ-J得点とスピーチ場面想起時のネガティブ気分との関連が示された。研究2では、聴衆不安尺度で選抜された18名のスピーチ不安の高い大学生をアクセプタンス教示条件と統制条件の2条件に分けた。アクセプタンス教示条件ではベースラインとしてのスピーチ課題を1回実施した後、アクセプタンス教示下でのスピーチ課題を3回実施した。一方、統制条件ではスピーチ課題のみを4回実施した。その結果、アクセプタンス教示条件の研究参加者にはスピーチ課題中の主観的不安の低減が認められた。考察では、体験の回避とストレス反応との関連と今後の研究・臨床上の課題について論じた。
著者
佐藤 洋一 福井 至 岩本 隆茂
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.47-62, 2002-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、福井・西山(1995)の作成した、論理情動行動療法に基づくComputer-AssistedCounselingのためのコンピューター・プログラムを基盤に、より実用性の高いプログラムを作成して、その効果を検証することであった。福井・西山(1995)のプログラムはJapanese Irrational Belief Test(松村,1991)の項目を用いて、不合理な信念を合理的な信念に変容するものである。しかし福井・西山(1995)の手続きでは1セッションあたりの所要時間が非常に長くなる恐れがあり、実用性に乏しいため、本研究では実施回数は変えずに、1セッションあたりの所要時間が50分程度でおさまるプログラムとした。また、論理情動行動療法のABCモデルの説明を加え、さらに不合理な信念をもっている場合の損な点と得な点を考えてくるというホームワークを追加した。実験の結果、本プログラムには、福井・西山(1995)のプログラムと同等以上の不安低減効果があることが示された。
著者
小関 俊祐 伊藤 大輔 杉山 智風 小川 祐子 木下 奈緒子 小野 はるか 栁井 優子 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.61-72, 2022-01-31 (Released:2022-04-01)
参考文献数
11

本研究の目的は、栁井他(2018)のコンピテンス評価尺度を用いて、臨床心理士養成大学院の大学院生の自己評価と教員による他者評価を行うことでCBTコンピテンスの実態把握と、2時点調査による教育に伴うコンピテンスの変化について基礎的な知見を得ることであった。臨床心理士養成大学院の臨床心理学コースに在籍中の修士課程2年の大学院生、および同大学院においてCBTに関連する講義・実習などを担当している大学専任教員を対象に、X年7月とX年10月の2回にわたって縦断調査を実施した。1回目の調査では教員29名と大学院生87名、また2回目の調査では教員27名と大学院生67名が分析対象となった。本研究の結果から、日本の大学院生におけるCBTコンピテンスの実態に関する基礎的データが得られた。そして、日本のCBTの質保証に向けた今後の取り組みとその課題について論じられた。
著者
津田 理恵子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.77-90, 2011-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

回想法実践中の行動や言動の変化を示す評価尺度がないことから、特別養護老人ホームにおいて、平均年齢±標準偏差が82.8±9.7歳の高齢者4名に、クローズド・グループで5回にわたってグループ回想法の介入を試み、毎回のスクール実施中に作成した行動観察スケールを使用し、参加者の行動・言動の変化を得点化して示すことを目的とした。その結果、回を重ねるごとに得点は上昇し、発言回数が増加する傾向があることが明らかになり、回想法スクール参加者の行動・言動の変化を得点化して示すことができた。さらに、刺激材料を工夫して活用しながら懐かしい記憶に働きかけることは、認知症高齢者のエピソード記憶や手続き記憶を活かすことにつながり、懐かしい記憶の想起から主体的行動の変化が確認できた。
著者
吉田 精次 小西 友
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.205-214, 2015-09-30 (Released:2019-04-06)

本論文の目的は、受診を拒否している依存性物質使用障害の患者の家族を対象としたCommunity Reinforcement and Family Training(以下、CRAFT)プログラムを紹介し、その結果を報告することである。CRAFT群12例、CRAFT拒否群13例を対象に依存性物質使用障害の患者の受診率を追跡した。その結果、CRAFT群の10例(83.3%)で患者が受診につながった。2例は受診にはつながらなかったが、患者の問題行動が改善した。また、CRAFT群の全例において家族自身の生活の質が改善した。一方、CRAFT拒否群においては、患者が受診につながった事例は0例(0%)であった。これらの結果を踏まえ、受診を拒否している依存性物質使用障害の家族に対するCRAFTの効用と今後の課題について考察した。
著者
荒井 穂菜美 青木 俊太郎 石川 信一 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.127-135, 2017-05-31 (Released:2017-10-30)
参考文献数
27

不安のコントロール感は不安症共通の心理学的脆弱要因である。そして、不安のコントロール感は安全確保行動を介し、社交不安に影響をおよぼすことが示唆されている。しかし、これまでの研究において過活動、制限行動、身体症状を隠す行動という三つのタイプの安全確保行動の媒介効果について実証的に検討を行った研究は存在しない。そこで本研究では、不安のコントロール感から社交不安への影響に対する過活動、制限行動および身体症状を隠す行動の媒介効果について検討を行った。対象者は、174名の大学生であった。媒介分析の結果、三つのタイプの安全確保行動の媒介効果および間接効果が有意であった。本研究の結果から、不安のコントロール感の低さから安全確保行動が生起し、結果として社交不安が維持されるという経路が確認された。本研究の結果から、今後社交不安の軽減を目的とするうえで、不安のコントロール感と安全確保行動の存在の重要性が示された。
著者
原井 宏明
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.97-103, 2015-05-31 (Released:2019-04-06)

内山先生は182冊の著書を世に出した。内容はその時代時代を反映していた。1970〜80年にかけて150冊近くを著し、認知行動療法が一般に認識される理由の一端になったことがわかった。これらの著書には154人の共著者がいる。そのなかで共著した回数がトップである坂野も多数の著書を出し、それらの著書には504人の共著者がいる。大勢の共著者と一緒に本を書き、それによって行動療法を盛り上げていこうとする意図が内山にはあり、その意図は共著者にも引き継がれている。一方、現在、内山が書いた著書のほとんどが絶版になっている。ほかの著者とも比較し、内山がなした貢献を検討した。
著者
内田 空 池田 浩之
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-013, (Released:2022-09-12)
参考文献数
38

本研究の目的は、就労後を見据え、就労前の統合失調症患者にWebシステムを用いたセルフモニタリングを導入し、その効果を検討することであった。就労移行支援事業を行う法人に通所する統合失調症患者2人を対象に導入とフィードバック(週2日のコメント+3回の振り返り)を行った。効果測定は導入前1回、導入後2回の計3回行った。事例1では自身の睡眠状態を把握し、振り返りのなかでその傾向に気づくことで、自ら改善するための方法を考えることができるようになった。事例2では幻聴や思考停止について、そのタイミングと傾向をつかむことで、自ら考えた予防策を実施し、継続することができた。最後に就労支援領域における支援方法と今後の課題について考察した。
著者
杉山 智風 髙田 久美子 伊藤 大輔 大谷 哲弘 高橋 史 石川 利江 小関 俊祐
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-047, (Released:2022-09-06)
参考文献数
22

本研究の目的は、高校生を対象に問題解決訓練を実施し、抑うつ、活性化、回避に及ぼす介入効果を明らかにすることであった。あわせて、問題解決訓練の実施前後にかけての活性化/回避の変化によって、抑うつに対する介入効果に差異がみられるか、検討を行った。本研究では、高校生1年生253名を対象として、1回50分の問題解決訓練を実施した。その結果、対象者全体において抑うつ得点、活性化得点、回避得点の有意な変化は示されなかったが、活性化/回避の機能的変容が生じた可能性のある群において、抑うつ得点の有意な低下が示された。このことから、抑うつ低減において、問題解決訓練による問題解決スキルの習得だけではなく、対処行動の促進と強化子の随伴の重要性が示唆された。
著者
村山 桂太郎
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.21-015, (Released:2022-07-12)
参考文献数
14

注射恐怖症の患者に対してApplied Tension法(ApT)を施行した際、患者の生理学的指標を継時的に測定しそれを共有した事が、治療の進展に寄与したと考えられたため報告する。患者は20歳代の女性で、採血や点滴時に気分不良が生じるため、病院受診を長期間回避していた。治療は曝露法と筋緊張法を組み合わせたApTを用いた。治療者は、気分不良の原因である循環動態の変化を脈拍数と血圧値という客観的なデータとして測定した。測定は曝露前、曝露時、筋緊張法施行時と継時的に行い、ApT後にその推移を患者と共有した。12セッションを経て採血時の気分不良は生じなくなり、採血に対する患者の不安は消退した。10週間後のフォローアップセッションでも気分不良の再燃はなかった。ApTにおいて脈拍数と血圧値の推移を患者と共有することで患者自身が病態と治療の仕組みについて理解が進み、治療の進展に寄与できたと考えられた。
著者
杣取 恵太 二瓶 正登 北條 大樹
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.11-21, 2022-01-31 (Released:2022-04-01)
参考文献数
21

近年、認知行動療法における多くの研究でベイジアンアプローチが用いられるようになった。このことは臨床研究者や実践家において研究や介入の質を向上するためにそれらの方法を理解する必要があることを示している。そのため、本論文では初学者のベイジアンアプローチに対する理解を促進することを目的とした。はじめにベイジアンアプローチの導入と従来の方法との比較を行い、その後介入効果を調べるためにベイジアンアプローチを使用した実際の研究例の紹介と解説を行った。最後に認知行動療法の研究にとってベイジアンアプローチがどのような示唆をもたらすかを議論した。
著者
伊藤 久志 菅野 晃子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.193-203, 2022-05-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
23

本研究の目的は、行動論的アプローチに基づく自閉スペクトラム症と知的障害児者に対するトイレットトレーニングにおいて、What Works Clearinghouseが作成した「エビデンスの基準を満たすデザイン規準」に従った単一事例実験計画研究を抽出してメタ分析を行うことである。メタ分析に組み入れるために最終的に抽出された文献7本の統合された効果量は0.77[0.66—0.88]であった。標的行動に関して、3種類(排尿のみ/排便のみ/排泄関連行動を含む)に分類したところ、排尿のみを扱った文献は4本該当し効果量は0.88[0.75—1.00]であった。排尿訓練に関する実践研究が進展してきたことが明確となった。今後、エンコプレシスを伴わないケースの一般的な排便訓練をエビデンスの基準を満たすデザイン規準に従って進めていく必要がある。
著者
高山 智史 佐藤 寛
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.183-191, 2022-05-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
31

本研究の目的は、小堀・丹野(2002)で確認された完全主義が抑うつに至るプロセスを、不安の影響を考慮して再検討することであった。大学生346名を対象として、完全主義、抑うつ、不安をそれぞれ測定した。その結果、小堀・丹野(2002)と一致する知見として、(1)完全性欲求は高目標設置と失敗恐怖を促進する、(2)高目標設置は抑うつを抑制する可能性がわずかながらある、といった点が示唆された。一方で新たな知見として、(3)失敗恐怖は抑うつと直接的な関係は示されず、不安を媒介して間接的に抑うつを促進する関係性のみを示す、(4)高目標設置は不安を抑制する、といった点が示唆された。これらの結果から、抑うつと不安の改善を目的とした心理学的支援に完全主義を応用する意義について議論した。
著者
中西 陽 石川 信一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.11-21, 2021-01-31 (Released:2021-05-18)
参考文献数
33

本研究の目的は、小中学生の自閉症的特性と抑うつ症状の関連およびその媒介要因としてソーシャルスキルと友人との関係性を仮定したモデルを検証することであった。対象者は、小学4年生から中学3年生までの子ども(392名)とその母親であった。自閉症的特性とソーシャルスキルは母親の評定、友人との関係性と抑うつ症状は対象児の自己評定により測定した。構造方程式モデリングによる多母集団同時分析の結果、小学生男子、中学生男子、中学生女子においては、自閉症的特性のうち社会性の問題が、ソーシャルスキル、友人との関係性を媒介して抑うつ症状と関連することが示された。小学生女子においては、ソーシャルスキルと友人との関係性に関連が見られなかった。本研究は、自閉症的特性のうち社会性の問題が強い子どもの抑うつの予防において、ソーシャルスキル介入が重要であることを示唆した。
著者
小関 俊祐
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.67-77, 2015-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、教員が機能的アセスメントを行うことで対応方針を立案し、客観的なデータ収集を行ううえでの教員の負担を減らす工夫を行った行動コンサルテーションの有効性について検討することであった。本報告においては、授業中の課題逸脱行動は依然として一定の出現頻度が確認されたものの、問題行動として挙げられた行動のほとんどが消失あるいは大きく減少した。コンサルテーションを実施するにあたって工夫した点は、学校や授業の文脈に沿った形での介入方法の立案を、コンサルティとともに検討したことが挙げられる。本研究は、限られた情報や状況の中で、仮説検証的に機能的アセスメントを行い、対応方針を立案したところに意義がある。
著者
松本 圭 塩谷 亨 伊丸岡 俊秀 沢田 晴彦 近江 政雄
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.83-95, 2009-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、情動ストループ課題とプローブ検出課題のそれぞれによって測定される注意バイアス指標の収束的妥当性を検討することであった。健常な実験参加者(n=39)に、情動ストループ課題、プローブ検出課題、状態-特性不安検査を実施した。本研究では、情動ストループ課題においては単語タイプをブロック化して呈示する手続きを、プローブ検出課題においては中性語ペアが呈示される試行のプローブへの反応時間を基準として、脅威語に注意が向けられる傾向と、脅威語からの注意の解放が困難となる傾向を切り分ける手続きをそれぞれ用いた。相関分析の結果、情動ストループ課題にみられる脅威語への色命名の遅延が、プローブ検出課題においてみられる脅威語からの注意の解放の困難さと関連していることが示された。ただし、それらと不安との関連はみられなかった。これらの結果から、両課題で測定される注意バイアスの解釈について議論した。