著者
濱村 真理子 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.218-224, 2015-05-01

音の大きさの評価における男女差の周波数依存性を検討するために,様々な中心周波数を持つ狭帯域ノイズを用いた音の大きさの評価実験を行った。中心周波数にかかわらず狭帯域ノイズの大きさの評価には男女差が認められ,女性は男性よりも同一音圧レベルの狭帯域ノイズをより「大きい」と評価していた。特定の周波数帯域を増幅させた音楽再生音の最適聴取レベルを測定した結果,最適聴取レベルには男女差が認められ,その差は増幅する周波数帯域や増幅の有無にかかわらず同程度であった。これは音の大きさの評価における男女差が周波数帯域に依存しないためであり,音楽再生音の周波数特性は最適聴取レベルにおける男女差に影響を与えないと言える。
著者
武田 昌一 横里 恵 比嘉 誠 村岡 輝雄 山田 麻衣子
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.429-440, 2004-08-01

全日本かるた協会公認の男性読手1人が朗詠する小倉百人一首100首の音声の韻律的特徴を解析した。その結果,基本周波数に関しては,(1)発声開始あるいは小節開始時に立ち上がり後ほぼ一定の値であること,(2)局在する基本周波数の跳ね上がり下降,(3)基本周波数の概周期的揺らぎ,が全首に共通の特徴であることが分かった。ただし,他の読手音声との比較により,(2),(3)は読手に依存することが分かった。時間構造の特徴としては,(1)単語の区切り部分におけるモーラの伸長,(2)歌の終わりの極端な伸長,更に(3)上の句と比較して下の句において平均モーラ持続時間が伸長していること(有意水準1%),が認められた。
著者
矢野 隆 五十嵐 寿一 加来 治郎 神田 一伸 金子 哲也 桑野 園子 新居 洋子 佐藤 哲身 荘 美知子 山田 一郎 吉野 泰子
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.101-110, 2002-02-01
被引用文献数
15 3

世界各地で行われる騒音に関する社会調査のデータを精度よく比較するためには, 異種の言語間で比較可能な騒音のうるささに関する尺度が必要である。筆者らはICBEN Team6が計画した国際共同研究の一環として, 我が国の4地域で20代から60代以上の1,102名の人々を対象として, 騒音のうるささに関する日本語の5段階の尺度を構成した。騒音のうるささの程度を表す21個の言葉を選び, どの言葉が最小のうるささから最大まで等間隔に並んでいるか, どの言葉が尺度カテゴリに好んで選ばれるか, 更に評価のばらつきが小さいかを検討し, 異種の言語間で比較可能な騒音のうるささに関する尺度の言葉として「非常に」, 「だいぶ」, 「多少」, 「それほど…ない」, 「まったく…ない」を選んだ。

2 0 0 0 視聴覚統合

著者
スペンス チャールズ 五十嵐 由夏 北川 智利
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.83-92, 2007-02-01
被引用文献数
2

過去50年以上にわたる多くの実験研究によって,低次の空間・時間的要因が,視覚と聴覚の多感覚統合にとって重要であることが立証されてきた(例えば腹話術効果の研究で示されるように)。ここでは,多感覚統合における空間的・時間的要因の役割を明らかにする証拠について概説する。また,多感覚統合に影響する要因として,視覚信号と聴覚信号間の時間相関,刺激の運動,モダリティ内とモダリティ間の知覚的群化,モダリティ間の意味的一致性,及び,一体性の仮定の役割についてもそれぞれ議論する。総合すると,構造的,認知的な多くの異なる要因が[1,2]視聴覚情報の統合(又は結びつけ)に共同して寄与しているという見解が,これらの証拠によって支持されるのである。
著者
Nishiguchi Masayuki
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
Acoustical science and technology (ISSN:13463969)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.375-383, 2006-11

A coding algorithm for speech called harmonic vector excitation coding (HVXC) has been developed that encodes speech at very low bit rates (2.0-4.0kbit/s). It breaks speech signals down into two types of segments: voiced segments, for which a parametric representation of harmonic spectral magnitudes of LPC residual signals is used; and unvoiced segments, for which the CELP coding algorithm is used. This combination provides near toll-quality speech at 4.0kbit/s, and communication-quality speech at 2.0kbit/s, thus outperforming FS1016 4.8-kbit/s CELP. This paper discusses the encoder and decoder algorithms for HVXC, including fast harmonic synthesis, time scale modification, and pitch-change decoding. Due to its high coding efficiency and new functionality, HVXC has been adopted as the ISO/IEC International Standard for MPEG-4 audio.
著者
松田 勝敬 森 大毅 粕谷 英樹
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.477-487, 2000-07-01
参考文献数
25
被引用文献数
3

ささやき声の低次のフォルマント周波数が, 通常発声に比べてわずかに高いことが知られている。本論文ではこの現象について, 声門下部系の結合を考慮した声道の電気回路モデルをもとに音響的に説明することを試みる。モデルにおける, 3次元声道形状は磁器共鳴画像(MRI)から測定した。その結果, 声門上部構造のせばめと, 声道と声門下部系との結合が低い周波数のフォルマントを上昇させる主な原因であることが分かった。
著者
曽根 敏夫 城戸 健一 二村 忠元
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.320-326, 1962-11-30
被引用文献数
40 7

We subjectively evaluate the acoustics of rooms and the qualities of acoustical instruments by evaluating musical sounds, speech sounds, and others passing through them. In such a case we had expressed the evaluations by some descriptive adjectives such as "rich", "clear", "resound" and so forth. But there are a variety of expressions to describe the impression of such sounds, and it is uncertain what and how many adjectives we should use. Judging from the number of physical factors influencing those sounds, we expected that it is possible to select a limited number of adjectives sufficiently evaluating those sounds and made two experiments. The first experiment was made from the standpoint of room acoustics. 15 differentlyconditioned sounds made with a reverberation equipment were rated on 21 seven-category scales defined by polar-opposite adjectives. As a result of factor analysis of the intercorrelation between scales by the centroid method, four nearly orthogonal factors were extracted; (1) the aesthetic or lyric factor, (2) the one expressing "volume" and "extent", (3) the one expressing "brightness" and suchlike, (4) the one expressing "softness" and suchlike. The secound experiment was made by varying the lowest resonance of a dynamic loudspeaker by means of a simulator. The ratings were made by the Scheffe's method for pair comparison, and the result proved consistent with the first one.
著者
中山 実 清水 康敬
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.368-373, 1989-05-01
被引用文献数
11

平仮名文の提示パターンをテレビ画面に提示し、無音、BGM音、テレビのCM音、雑音の4種類の音環境下で被験者に音読させ、学習能率としての音読速度と学習意欲の指標としての瞳孔面積を測定した。その結果、音読速度、瞳孔面積とも無音の音環境下で最も大きな値を示した。ナレーションを含むテレビのCM音は音読速度を最も低下させ、不快に感じる雑音は瞳孔面積を最も小さくした。更に被験者のそれぞれの音環境に対する特性を調べて音読速度との相関関係や音圧レベルとの関係も調べた。
著者
永幡 幸司
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.406-417, 2000-06-01
被引用文献数
18

本研究では, 視覚障害者がある場所で聞こえてくる音からその場所を特定する際の過程の分析を行った。その結果, 視覚障害者が音から場所を特定する過程には, ある音の存在からおおざっぱに場所の特徴を特定した後に, 他の音の存在から詳しく場所を特定していくという「階層的」な過程と, ある場所で聞かれる特徴的な音すべてを総合的に判断することで場所を特定するという「並列的」な過程の2種類があり, 人によってそのどちらかを採用していることが分かった。また, どちらかの過程を採用するにせよ, 音から場所を特定する際に具体的に用いている音は, 人によって異なっていることが明らかとなった。
著者
伊藤 憲三 水島 昌英 北脇 信彦
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.431-440, 2005-08-01
参考文献数
28
被引用文献数
1

入力信号を音声とそれ以外の信号(非音声)に識別して, 定常雑音を効率的に抑圧する方式を提案した。音声と非音声の識別には, 入力信号の周期性を表す特徴量, 信号スペクトル特徴, パワーなどを用いた。雑音抑圧処理は, スペクトルサブトラクション(SS)とロスコントロール(LC)を併用した。SSでは, 周波数重みづけによって雑音を差し引くこととし, また, LCはSSで消し残った残留雑音を損失制御することによって無音区間の残留雑音を完全に除去した。種々の雑音を用いて評価実験を行った結果, 信号対雑音比が10dB程度以上の雑音条件下で良好な動作をすることを示した。また, 本方式をマルチマイク集音系と組み合わせることによって更に性能を向上させることを示した。更に, 聴覚障害者による数字了解度試験を実施し, 提案した雑音抑圧処理が難聴者の聴こえに非常に有効であることを示した。
著者
石田 明 小畑 秀文
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.911-917, 1991-12-01
被引用文献数
8

音声認識装置を例にとって考えると、音声信号処理の分野で雑音処理は重要な研究課題である。特に背景雑音は、音声入力と間違えて応答する原因になるなど、認識率の著しい低下を招く。この問題は、実環境に存在する様々な非定常な雑音、とりわけ、ドアの開閉音のような継続時間の短いものに起因することが多く、この種の雑音対策は単純ではなく、より高度な雑音処理技術が必要とされる。本論文は、雑音環境の中の継続時間の短い非定常雑音と人間の音声とを区別する手法について述べたものである。本手法は、雑音と音声とを区別する重要な手掛かりとして、母音らしい部分を含むか否かの情報を用いることとし、そのための特徴量として周期性/ピッチ周波数/最適線形予測次数/5母音との距離/第1ホルマントのQという五つの特徴量を選定した。本論文では、この特徴量について詳細に検討を行い、特徴量の分布とそれらの変化パターンとを用いることで、音声と非音声の区別を高精度に行うことができることを示す。また、この手法をS/N比の低下した信号に対して検討を行い、耐雑音性の点でも優れた特徴量であることを示す。
著者
黒岩 和治 的野 孝明 カバタンチ ムアンバ
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.443-451, 1984-07-01

This paper describes a method for separating each of progressive (direct) and retrogressive (reflected) sound waves in real time which are traveling between the source and the reflector and are overlapped mutually. In this method, the sound wave is expressed and measured in the form of a correlation function obtained from the source and receiver signals in the case of scanning the time delay (variable) and fixing the receiving position (parameter). In order to realize the real time separation, three microphones closely set at the receiving position are used. From them, time delay differential and space differential values are derived. Then, by addition and subtraction of these two differential values, each of progressive and retrogressive sound waves can be obtained separately. Some experiments based on the theory in the case of normal incidence are carried out. Then, considering about the measured sound waves concerning the attenuation by distance and the traveling time, it is shown that the theory and the procedure of separating are valid. But, it is not yet about the case of oblique incidence.