著者
高木 興一 松井 利仁 青野 正二 酒井 雅子
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.957-964, 1995-12-01
被引用文献数
12

本研究では、パチンコ、音楽鑑賞などの娯楽に伴い暴露されるような音の危険性をTTS(騒音性一過性域値変化)の観点から、暴露実験により評価することを試みた。暴露実験の結果、パチンコ店、ディスコ、ライブハウスの音を2時間暴露すると20dB程度のTTSが生じ、その聴力への危険性が大きいことが示された。一方、ヘッドホンステレオでの聴取を想定した、洋楽、邦楽のCDの音の暴露では、3〜5dBのTTSが生じるのにとどまった。また、既存の2種類の予測式によりTTSを計算したところ、どちらの予測値も実測値に比較的よく追随し、レベル変動の大きな変動騒音によるTTSの予測に対し、両予測式を適用できることが分かった。
著者
甲田 壽男 永田 可彦 小木曽 久人 中野 禅 山中 一司
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.836-841, 1994-10-01

生体リズムで機械を駆動するという外燃を初めて提唱しその具体的な実現の方法を示した。生体リズムとして心拍信号を検出し、これから得た心拍間隔から電力調整器を制御する信号を発生させ扇風機の回転を制御する方法である。心拍間隔、制御電圧、扇風機の回転数及び風速を測定しそのパワースペクトル密度を求めた結果、心拍間隔に見られる1/f揺らぎ特性や呼吸の影響などがそれぞれのパワースペクトル密度に保存されていた。
著者
若松 勝寿 堀井 憲爾
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.468-476, 1993-07-01
参考文献数
14

本論文は雷鳴の発生と伝搬、ロケット誘雷実験による雷鳴の観測法及び雷鳴解析による雷放電路の再現方法について述べている。雷鳴に含まれる特徴音を使用し、短い時間窓の相関解析から雷撃点近傍の雷放電路を詳細に再現し、最終電撃距離や雷撃進入角度が求められることを示している。自然雷の雷鳴に近い継続時間の長い雷鳴では、ゼロ交差数から相関解析の時間窓を決定して雷放電路を連続再現している。また、多重雷では支配的な雷鳴を形成する雷鳴から再現できることを示している。
著者
山口 善司 壽司 範二
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.8-13, 1956-03-30
被引用文献数
5

In order to get the real ear response reflecting the actual characteristic of a receiver, the relationship among the sound pressures in the free field, at the entrance of a ear canal, ant at the ear drum was found by using the probe tube microphone, with the subject seated facing the sound source in the free field. From the results that the relation between the sound pressure at the entrance of the ear canal ant that at the ear drum was constant in case of both open ear and ear closed by a receiver, the real ear response of a receiver was found to be measured easily. After this experiment, the real ear response of two kinds of receivers were measured. As s results, the conversion coefficient from the conventional coupler response to the real ear response was shown concerning each receiver. By using this conversion coefficient, so far as we use the same kinds of receivers, it is possible to convert directly the real ear response from the coupler response which is easily and accurately obtainable without repeating the complicated measurement of the real ear response.
著者
上田 麻理 藤本 一寿
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.301-308, 2010-07-01
被引用文献数
2

雨天時は,降雨による環境悪化によって視覚障害者が屋外歩行時に危険に晒されているという意見が聞かれる。視覚障害者も雨天時に屋外を歩行する機会が少なくないことから,雨天時の視覚障害者の歩行の安全確保は重要な課題であり,その解決は急務である。本研究は,視覚障害者の雨天時の歩行環境整備の第一歩として,視覚障害者のための雨天時の歩行環境の問題点を明らかにするために,視覚障害者と歩行訓練士を対象に三つのアンケート調査を実施した。その結果,雨天時は,"傘にあたる雨音"等の降雨騒音によって,視覚障害者が歩行時に利用している聴覚情報の聴取が妨害されていることが分かった。そこで,雨天時の環境騒音レベルを測定してみたところ,降雨量がやや強い雨の状態で晴天時に比べ15dB以上高かった。このことから,視覚障害者の雨天時の歩行環境整備として,聴取妨害となる降雨騒音の低減が必要であると結論した。
著者
龍田 建次 吉久 光一 久野 和宏
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.554-560, 1998-08-01
被引用文献数
8

名古屋市では, 市内の国道1号沿道に騒音常時監視装置を設置し, 1974年依頼騒音レベルの測定を継続している。本論文では, これらのデータを基に, L_<Aeq>の観測時間とその測定値との関係について, 基礎的な検討を行った。その結果, 幹線道路沿道では, 1)観測時間長を1時間から24時間あるいは1週間とすることによって, L_<Aeq>の90%レンジが11.4dBから4.2, 2.4dBと狭くなること, 2)L_<Aeq>の日変動パターンは, 平日と休日では大きく異なること, 3)L_<Aeq, 1h>の90%レンジは, 平日と休日, 時間帯あるいは各時刻に分類することによって, 最小3.5dBまで狭くなること, などが確認された。
著者
加藤 雅代 古村 光夫 橋本 新一郎
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.888-896, 1994-11-01
被引用文献数
10

日本語の発音リズムとされる、モーラ単位の等時性という言語習慣に基づく新しい日本語リズム規則を提案する。まず、母音部エネルギー重心点CEGVをリズムのタイミング点と仮定し、日本語リズムを母音部エネルギー重心点間の時間長D_Gで定義した。発声器官の物理的構造による制約が、等時性を乱す第一の要因であるという仮説を立て、実音声の分析を通じて検証した。分析実験の結果をモデル化することにより定めた本リズム規則は、一つのVCV形音韻連鎖内の音韻情報のみを用いた非常にシンプルな規則ではあるが、発話速度の変化にも対応でき、音声合成のための規則として十分実用に耐えるものである。
著者
濱上 知樹
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.831-841, 1998-12-01

VCVを基本単位とする規則音声合成方式において, 発話速度の変化に対応することのできる, パワー時間変化パタン制御方法を提案する。提案に先立ち, 自然発声の発話速度変化に伴う, パワー時間変化パタンの変動について分析を行った。この実験結果に基づき, 音韻間の滑らかな変化(マクロパタン)と, 子音区間の細かい変化(ミクロパタン)を足し合わせるパタン制御方法を提案する。更に規則合成に応用するために, これら二つのパタンの合成に必要な, 制御パラメータテーブルとデータベースを, VCVパタンから作成した。本制御方法を用いた合成音の評価結果から, 本手法が, 自然なパワー時間変化パタンを合成する上で有効であることが明らかとなった。
著者
平井 啓之 党 建武 本多 清志
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.918-928, 1995-12-01
被引用文献数
13

喉頭を含めた発話器官の生理学的モデルを作成した。このモデルは、各筋の活動量を入力として、舌・喉頭・顎などの発話器官に加わるすべての力が釣り合うときの発話器官の位置を求め、得られた声道形状及び声帯長を用いて音声の生成を行なうものである。また、本モデルでは、舌・下顎・舌骨・喉頭は互いに筋によって接続され力の授受が考慮されているため、舌と喉頭との相互作用を表現することができる。測定された筋電信号を入力として発話時の声道形状及び音声を生成し、発話時の声道断面のMRI画像及び実音声との比較を行なった。また、本モデルを用いて外舌筋のF_0に及ぼす影響について検討した。
著者
Ueda Kazuo Hirahara Tatsuya
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
Journal of the Acoustical Society of Japan (E) (ISSN:03882861)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.131-138, 1991-05
被引用文献数
3 1

Loudness comparisons were performed by four subjects, under two experimental conditions: free field (anechoic room) and diffuse field (reverberation room). Each subject adjusted the headphone level of critical band noise bursts untill they were equally loud as those from a reference loudspeaker (70 dB SPL). Measurement scatter was smaller in the diffuse field than in the free field. To examine the reliability of loudness judgments at high frequencies, another method-hearing thresholds by Bekesy tracking-was employed. Each subject's threshold was measured with both loudspeakers and headphones. After compensation was made for the loudspeaker and room transfer functions, headphone frequency response was extrapolated from the results. This method led to high-frequency responses similar to those from loudness comparison. A loudness comparison experiment in which the subjects continuously wore a headphone was performed. However, the method of sound pressure loss measurement should be reconsidered.
著者
中山 剛 宮川 陸男 三浦 種敏
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.332-339, 1966-11-30
被引用文献数
2

A model of the process of evaluating reproduced sound quality was examined experimentally. As shown in Fig. 1, it was assumed that there was such relationship between the preference scale of sound quality R and multidimensional sensory scale D_i(i=1, 2. . . , n), as R=w_iD_i, where w_i=W(L, S, A), L: listener groups classfied in terms of the similarity of preference, S: musical signals classfied by their effect on w_i, A: age(time) and D_i=φ_i(t_j, s_i), t_j: a physical parameter of a transmission system, s_i: components of S, contributing to D_i. To examine this model, three experiments were made. The first and the second experiments were made to examine a linear equation relating to above-mentioned R and D_i. Stimulus conditions are shown in Table 1, and the block diagram of experimental circuits is shown in Fig. 2. Two of classic music(A: synphony, B: string quartet) were used as the source S, and presented to ten listeners under the above stimulus conditions. By means of the method of paired comparisons, the preference scale R and two sensory scales D_1(sensation of noises, mainly related to nonlinear distortion) and D_3(sensation ob treble, mainly related to low-pass filtering frequency) were obtained. From three scales the least square solutions of w_1 and w_3 were calculated. These values are shown in Fig. 3 and 4. Finally, from the scale values of D_1 and D_3 and estimated weights w_1 and w_3, estimated value R^^~ of preference scale was calculated. As shown in Figs. 3 and 4, the coincidence of observed value R and estimated value R^^~ was fairly good. This seems to prove the adequacy of the model. Fig. 5 shows the coincidence of R and R^^~ with four dimenstional sensory scales (D_1-D_4) taken into account. This third experiment was made to examine the stability of w_i. If w_i is only affected by L, S and A, and not by t_j, and once w_i for definite L and S is obtained, as far as L and L and S are fixed, R^^~ for various t_j will be able to be estimated from the curves of φ_i. These estimated values of R^^~ should coincide with observed R for such t_j. Fig. 6 shows the curves, in which w_i was calculated, and Fig. 7 shows tho estimated scale values of D^^~_<2i> for the second set of t_j, which is different from that used in determing w_i (the first set of t_j). From such predetermined w_i and estimated D^^~_<2i>, estimated value R^^~_2 of preference scale was calculated. As shown in Fig. 8, estimated value R^^~_2 and obserbed value R_2 for the second set of t_j coincided with each other very well again. If this model is proved to be adequate, and when a listener group and a source classification are given, it will became possible to design a transmission system, the sound quality of which is liked best by the listener group.
著者
武田 昌一 大山 玄 朽谷 綾香 西澤 良博
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.561-568, 2002-09-01
被引用文献数
9

筆者らは,より詳細なニュアンスの感情を表現する規則合成音声を実現することを究極目的として,感情を数段階に分けて韻律的特徴の解析を行っている。本論文では「怒り」を取り上げ,怒りの度合いを平常,軽い怒り,怒り,激怒の4段階に分けて段階に応じた単語音声の韻律的特徴の違いを調べた。今回は韻律的特徴として,単語内の最高音声パワー,平均発話速度,最高基本周波数を測定した。実験の結果,怒りの度合いが大きくなるにつれて(1)最高音声パワーは増大すること,(2)発話速度は増大傾向にあるが激怒になると逆に遅くなる傾向が見られること,(3)最高基本周波数は高くなる傾向が見られること,などが分かった。
著者
川浦 淳一 鈴木 陽一 浅野 太 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.756-766, 1989-10-01
被引用文献数
30

本論文では、ヘッドホン再生によってラウドスピーカ再生時の音場を模擬する手法について述べる。ヘッドホン再生条件と、ラウドスピーカ再生条件の比較から、頭部が静止している状態の静的な頭部伝達関数と、聴取者が頭部を動かすことによって生じる頭部伝達関数の動的な変化の2点について、ディジタル信号処理などの手法により補償を行った。静的な頭部伝達だけの補償によって、ヘッドホン再生によっても、頭外の水平面内任意方向への音像定位が実現できたが、正面付近のラウドスピーカを模擬した場合には前後の誤判定が増加する、頭内定位が起き易いなどの問題が生じた。静的な頭部伝達関数に加えて、伝達関数の動的な変化を模擬すると、前後の誤判定が減少し、頭内定位も減少するなど、より自然な音像定位が実現された。また、頭部回転に伴う動的な音源位置情報は、静的な伝達関数からの音源位置情報に比べて、少なくとも同程度の重みを持つものであることが示唆された。
著者
大串 健吾
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.253-259, 1980-05-01
被引用文献数
9

In order to investigate physical and psychological factors governing timbre of complex tones, three-frequency complex tones are synthesized on a digital computer. Subjects make similarity judgments of pairs of the complex tones and the experimental data are analyzed by Kruskal's multidimensional scaling program. The analysis of the experimental data shows the followings : (1) the absolute values of the lowest and the highest frequencies are the most important factors governing timbre, (2) from a different point of view, the mean of the logarithmic values of the lowest and the highest frequencies are also important, and these values correspond to tone height (kan-dakasa) of complex tones, and the mean of adjacent frequency ratios (or absolute dissonance) is another important physical factor governing timbre and this physical factor is closely related to consonance of complex tones.
著者
鎌倉 友男 阿比留 巌 熊本 芳朗
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.802-809, 1990-10-01
被引用文献数
2

音波の吸収、回折、非線形効果を集約したKZK放物形波動方程式を数値解析することで、1周期の正弦波パルスが伝搬するに際し発生する波形歪を追跡した。初期波形、特に符号のみ異なる正及び負で立ち上がるパルスに対して、波形の変化のみならずパワースペクトルの変化についても言及した。広帯域なパルス波においては1次波と2次波のスペクトルが重畳し、周波数成分間の非線形相互作用や回折効果の違いにより複雑な波形変化をする。初期信号の符号のみを変えることでこのような歪んだ波形から1次波と2次波を分離することができ、この手法について実験結果を加えて議論した。