著者
山田 智之
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

1年目に予定していた職場体験やキャリア教育の教育課程上の位置づけや関連する取り組みに関する中学校の教員を対象とした調査については、北越地域、関東地域の26校の中学校の校長、副校長、教員等を対象に面接調査を行った。このうち、北越地域のデータの分析を行った結果については、多くの中学校が、仕事や職業、進路や将来を生徒が主体的に考えることを目的としており、ほとんどの学校が総合的な学習の時間を活用し,学習内容を系統的に構成していることが明らかとなった。この結果については、日本キャリア教育学会第39回研究大会(上越教育大学)において、「シンポジウム:上越市における5日間の中学校職場体験に関する研究」を企画し、教育現場における職場体験やキャリア教育の教育課程上の位置づけについて研究を深めた。また、1・2年目に予定していた、中学校時代の職場体験やキャリア教育が成人期の進路選択・職業生活やセルフマネジメント等に与えた影響に関する大学生や職業人を対象としたアンケート調査については、全国の大学生1000名、北越地域の職業人100名のデータを収集した。このうち北越地域の職業人データをもとに分析をすすめ、職場体験の体験日数(1~2日間, 3~4日間, 5日間以上)が長いほど職業選択や職業生活に影響を与えたと自認する傾向があることが確認された。また, 地元での生活や仕事への満足感が高いほど成人職業キャリア成熟にプラスの影響を与え, 理想の自分イメージにも影響を与えることが明らかになった。この結果については、上越教育大学研究紀要37巻に、調査協力者とともに共同執筆を行い「中学校における職場体験が職業選択や職業生活に与える影響-新潟県上越市における社会人への調査からー」として発表した。
著者
齋藤 一雄
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.77-87, 2004

養護学校小学部用の音楽科教科書に掲載されている歌唱教材を音楽の授業で活用し,リズムの指導がどのように展開できるか,リズム反応の部分を中心に分析した。対象は小学校特殊学級の1~5年生の3名で,教師の支援を得ながら楽しく,授業に参加することができた。そして,手拍子による「ことりのうた」の八分音と「かもつれっしゃ」の四分音で構成されたパターンによく反応した。児童がよく知っている曲であったことと反応動作の工夫が影響したと考える。足踏みによる「あしぶみたんたん」の四分音で構成されたパターンへの反応は,正反応するまでに時間がかかった。手拍子よりも足踏みが大きな動作を必要としたこと,簡単な構成の教材だが児童にとって初めての曲であったことが影響したと考える。正確なリズム反応をひきだすために歌唱教材は有効であったが,教材により親しむことと反応動作のし方,テンポ設定について配慮する必要が示唆された。We made a teaching plan with rhythmic responces, using song teaching material, in mentally retarded class which had 3 children. Their age were 6-11. All of them participated in music class pleasantly with supports by teachers, and enjoyed. In rhythmic responces by clapping, they could respond to the complicated rhythmic patterns on "ことりのうた ""かもつれっしゃ". By stumping, they had much time to respond to the complicated rhythmic patterns on "あしぶみたんたん". For this reason, stumping need large movement in comparison with clapping, and they start begin to listen "あしぶみたんたん". However, we found that song teaching materials are useful in rhythmic responces.
著者
大庭 重治
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.529-537, 2003

多くの子どもたちは,小学校に入学する頃にはある程度の平仮名書きを習得している。しかし,組織的な書字指導が行われない幼児期には,字形を誤って学習してしまう状況が少なからず存在する。このため,小学校に入学した後の文字学習においては,平仮名書きの新たな習得とともに,誤学習により定着した誤字の修正が重要な目標となる。そこで本研究では,27名の子どもを対象として,幼稚園の年長時と1年時の年度末に平仮名書字の状態を観察し,その誤字内容の変化から,誤字の修正を促すための小学校での一斉指導における配慮事項を提案することを目的とした。その結果,就学直前の幼児期には,無反応の他に崩壊,異字など,字形が大きく崩れた誤字タイプが多く観察された。一方,1年終了時には,原型保存,異配置など,字形の部分的な崩れを示す誤字タイプがほとんどであった。このことから,小学校における一斉指導において,字形の大きな崩れは修正されやすいが,文字の部分的な崩れは十分に修正されない可能性があることが示唆された。また,描画機能の発達は書字行為の全体的な向上には関連していると考えられたが,そのことが必ずしも平仮名書字における細部の誤字修正には結びつかない場合があることも示唆された。以上のことから,1年生に対する平仮名書きの一斉指導においては,板書とともに手元で字形を確認できるプリントを併用したり,グループ学習により児童が相互に評価し合う機会を作るなど,誤字の細部にわたる修正を可能とする学習環境を計画的に設定することが必要であると考えられた。Preschool children are apt to write wrong Japanese letters (hiragana) because they have little chance to acquire handwriting skills systematically. They therefore need to correct their wrong letters by themselves when they become school children. This study was planned to propose the handwriting teaching method to the teachers who were teaching handwriting skills to first-grade children in the regular class. Twenty-seven children were given the writing task of 10 letters two times, at the end of the year of preschool and the first grade. The wrong letters at those times were classified into five error types, and the distributions of the types were compared. The main result was that many letters that got out of letter shapes were observed in preschool children, but in first-grade children there were few those letters and there were just letters that had partial errors. From these results some teaching methods of handwriting in the regular class were proposed to improve children's corrective abilities in handwriting, for example, using a letter-model sheet or making children assess their writing letters each other.
著者
藤岡 達也
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-10, 2008
被引用文献数
1

本稿では、近年の自然災害に関する防災・減災への国際的な取組の動向を国連の機関(UN/ISDR)を中心に概観し、持続可能な開発のための教育(ESD)が推進されていく上での意義と課題を探る。その中で、特に教育に期待されている内容に焦点をあて、兵庫行動枠組2005-2015(HFA)の観点から学校教育を中心に日本に期待される役割について論じる。また、HFAを構築する日本における自然災害の復興の例として、2007(平成19)年7月16日に生じた中越沖地震での柏崎市の学校と上越教育大学の支援活動を取り上げる。この支援活動の意義と課題を踏まえながら、ESD構築のための今後の地震等大規模災害時における学校安全や教員の役割等についても考察する。In this paper, in the first place, I would like to overview the international current for natural disaster reduction through the consideration of activities of United Nations International Strategy for Disaster Reduction (UN/ISDR). In the second place, especially I focus on the contexts concerning education and see the construction of Education for Sustainable Development (ESD) in Japan. After that, I discuss the safer school and roles of teachers from the Viewpoint of Hyogo Framework for Action 2005-2015 (HFA).\Furthermore I will take an example to illustrate the natural disaster reduction by the development of HFA in Japan, After The Niigataken Chuetsu-Oki Earthquake in 2007 occurred, Joetsu University of Education sends students for damaged primary schools in Kashiwazaki City. In addition to these considerations of the significance and problems of these activities, the safer schools and roles of school teachers after the natural disaster such as great earthquake will be brought to light for the construction of ESD in schools.
著者
太田 將勝
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.37-44, 2002-10
著者
河合 康
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.119-129, 1998

本稿では,イギリスにおける特別な教育的ニーズをめぐるオンブズマン提訴事例を取り上げ,その特徴と,親の権利保障の実情を把握することを目的とした。今回,この事例を取り上げたのは,1事例の中で複数の不服申し立てがなされ,各々について,オンブズマンの裁決の基準となる「過誤行政」と「不公平」に関して,異なる判断が示されており,特別な教育的二一ズをめぐる親の権利が実質的にどのような意味を持ち合わせているのを検討するのに適していると考えたからである。本事例における主要な論争点は,子どもの特別な教育的ニーズの評価の段階において,当局が,①子どもの状態について適切な情報を獲得せず,②親に情報を提供するのを怠り,③判定書を作成するかどうかの決定に長時間を要したという点,及び,判定書の作成の前後において,④正規の当局の職月でない者が報告書を作成し,⑤その作成者と報告書について議論するように手配せず,⑥作業療法士の報告を受けず,⑦分子どもに対して別の教育の場を検討しなかった,という点であった。結果は,評価の段階における①~③については,「過誤行政」の結果として「不公平」を親が被った点を認め,当局に賠償の支払を命じた。しかしながら,判定書の作成の段階においては,④,⑤, ⑦については「過誤行政」は認められず,また,⑥については,「過誤行政」は認められたが,それによって「不公平」が生じたとは判断されなかった。今回の事例より,特別な教育的ニーズをめぐるオンブズマン提訴事例においては,手続き上の不備や時間的な遅延の場合に,親の不服申し立てが認められ可能性が強いが,教育の場の決定に直接関わる段階になると,当局の裁量が支持される傾向にあることが示唆された。その一方で,オンブズマンは,教育法令には規定されていない不服申し立て事項を補完する機能を有していることも明らかにされた。The purpose of this study was to analyze the case of the ombudsman concerning special educational needs. In this case parents lodged some complaints which were as follows; 1 ) During the assessment the Council failed to obtain adequate information about their daugher's condition. 2 ) It failed to keep them fully information. 3 ) It took too long time in deciding whether a formal statement should be issued. 4 ) It accepted a report from an officer who was not employed. 5 ) It failed to arrange for them to discuss the report. 6 ) It failed to obtain an occupational therapist's report. 7 ) It failed to consider alternative placements for their daugher. For the complaints of 1), 2), and 3), maladministration leading to injustice was accepted and the ombudsman recommended that the injustice should be remedied. For the complaint of 6) maladministarion was found but injustice wasn't accepted. For the rest of complaints maladministraion wasn't found. From this case study it was suggested that ombudsman would complement the appeal systems which were based on the educational law.
著者
大嶽 幸彦
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.113-126, 2007-02-28

本稿は,40年近くの研究・教育生活のかたわら,地理学周辺の読書を通して得た地理知識の効用についての研究にさらに考察を加え,特に2005年から2006年にかけての1年間の最新著書・学会誌掲載論文等を中心にまとめたものである。The object of this research consists of a reflection on 『Utility of Geographic Knowledge』 by Yukihiko Ohdake, which analysed the author's geographic knowledge in near 40 years' research and education life, referring to about 530 books and dissertations.
著者
丸山 昭生 小杉 敏勝 小西 明
出版者
上越教育大学
巻号頁・発行日
vol.26, pp.399-420, 2007-02

特別支援学校は,障害児に対する教育が必要不可欠であるという先人達の固い信念と熱意に基づいて,盲学校,聾学校,養護学校として誕生した。本稿では,新潟県内の盲・聾・養護学校4校の誕生に際し,どのような経緯があったのか,どのような多くの人々の苦労があったのかを明らかにした。そして,開学以来,今日まで営まれてきた各学校の教育基盤と,それを支えてきた精神は何であったかを明らかにした。結果,新潟県の特別支援学校の開学のきっかけは,障害のあるこどもたちの近くに存在していた人々の思想や行動が大きいことが分かった。とりわけ,親や祖父母を始めとする家族,教師,医師,地域の人々等の身を削るような努力があった。その思想や努力は,何らかの形で受け継がれ語り継がれなければならないと考えた。
著者
安藤 知子
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.95-106, 2001

本研究では,第一に子ども理解規範と学校組織の構造的矛盾の可能性について考察を行い,第二に実践場面における子ども理解表現を二人の中学校教諭の事例に基づいて検討した。その結果,受容,共感,個別的配慮という子ども理解規範の構成要素と,教師-生徒関係による秩序維持を必要とする学校組織の枠組みとには,両立の不可能性が内在していることを指摘した。さらに,二教諭の子ども理解表現の相違は,学校組織における教職役割と子ども理解という二つの期待の間でのバランスの取り方によって生じているものと捉えることができた。これらの検討を経て,全面的な受容としての子ども理解規範へのコミットメントと,学校組織における教職役割へのコミットメントの間での,バランスの取り方による子ども理解表現の多様性を把握するための概念枠組みとして,「子どもへの同調性尺度」を試論的に提示した。In this study, I considered variance between norm about understanding children and teachers role on school organizations. And then, I analyzed two teachers daily expressions of understanding children at school. The following points are found. 1. There are contradictions between norm about understanding children and teachers role on school organizations. Because, on the one hand, norm about understanding children consists of the factor that, unconditional accept, empathic understanding, and regard with each other. And on the other hand, school organizations need to teacherstudents order and discipline to keep up schools. 2. The difference expressions between two teachers are cause by difference where put stress on between norm about understanding children and teachers role on school organizations. So, I tried to set up the framework of norm about understanding children. It is one dimension scale that one end of axis points the commitment to norm about understanding children, and the other end of axis points the commitment to teachers role on school organizations, which names "scale of sympathize with children". The end of commitment to norm about understanding children is high sympathize, and the other is low. This article is limited only set up the scale. But next, I'll investigate the actual conditions of teachers expressions of understanding children by using this scale, and research how school organizations should support high sympathize teachers.