著者
和井田 清司 高田 喜久司 小林 恵 藤田 武志 小林 毅夫 釜田 聡 尾島 卓
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

2年間にわたる研究では,研究協力者を含めいくつかのワーキンググループを作り成果をあげた。1.理論研究班は,文献研究を通して,総合学習の理論と方法の基礎を探究した。特に,義務制と違う高校段階の特質を,学科制度や生徒の発達段階の違いから明らかにした。2.質問紙調査班は,行政機関調査と学校調査を実施し,学校段階における実践状況と行政の学校支援の状況を明らかにした。特に,学校における温度差の違いは,創立年次との関連があること,学科制度と実践の特質に連関があることが明らかになった。3.実践研究班は,先進的な事例を参照しつつ,実践構築の方向について検討した。ここでは,総合学習の実践と学校改革が連動することで効果を発揮すること,総合学習の実践にはカリキュラム開発とともに探究ツールの活用が有効であることが示唆された。4.小中高連携班は,連続セミナーや座談会を通して,新潟県上越地域における総合学習実践上の学校間連携を追究し,その糸口を開いた。だが,総合学習の実践状況は,各学校段階において温度差があり,連携の重要性にもかかわらずその困難さも明確になった。5.海外研究班は,東アジア各国での総合学習の文献調査や現地調査(中国・韓国・台湾)を実施した。その上で,中国における総合実践活動,韓国における裁量活動,台湾における統整課程の比較を行い,総合学習の共通性と差異を明らかにした。以上,1〜5の各分野に分けて研究実績を略述した。詳細については,各種学会での口頭報告やシンポジウム,また2冊の研究報告(中間報告書2004.3,最終報告書2005.3)および紀要論文等において公表している。
著者
時得 紀子 田中 博之 村川 雅弘 無籐 隆
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日米小・中学校の研究先進校から抽出した優れた授業実践に、独自に設けた評価観点などを尺度として質的な分析を加えた。その結果、音楽と言語と身体の各活動がバランスよくかかわり合うことで、表現活動が活発化する傾向が見られた。また、音楽と言語が相互に作用することで双方の活動の質が高まることから、この往来の活性化をはかる手立てとして、言語が関わる演劇的表現や音楽と関わる身体表現活動などを関連させた活用型の学習が有効であることがわかった。
著者
東原 貴志
出版者
上越教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,地域の木材および森林について理解を深めるため,これらを活用した,中学校技術・家庭科技術分野におけるものづくり教材の開発を中心とした,「木育」に関する教材を開発し,中学生を対象とした活動実践に取り組んだ。研究の成果は以下の通りである。(a)国産スギ材を活用した,プランター教材とちゃぶ台教材を開発した。(b)中学生を対象とした木工競技大会の製作課題について検討するため,一例としてCDラックの製作時間を分析した。(c)国立妙高青少年自然の家にいて,森林樹木オリエンテーリングプログラムならびに科学技術学習を取り入れた「森小屋つくり体験活動」に関する教材を開発し,中学生を対象とした活動実践に取り組んだ。
著者
河合 康
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.381-397, 2007-02-28

本稿では,イギリスにおけるインテグレーション及びインクルージョンに関する1970年代以降の施策の展開を検討した。その結果,1970年代以降,政府の諸文書や法令においてインテグレーションやインクルージョンの促進が明示されてきてはいるが,実際の統計データにおいてはインクルージョンが進展しているとはいえない状況にあること及びインクルージョンの実態についてはかなりの地域差がみられることが指摘された。さらに,イギリスでは特別学校の存在が否定されてはいるわけではなく,むしろ1970年代から特別学校がインクルージョンを進展させるために重要な機能を果たす存在として認識されていることが明らかにされた。さらに,1970年代から今日まで,インテグレーション及びインクルージョンを実施するための条件が明示されており,この条件の検討が今後の課題である点が指摘された。The purpose of this study was to analyze the political development of integration and inclusion from 1970s in UK. It was clarified that inclusion was not accelerated as a whole according to the actual statistical data though the promotion of integration and inclusion was indicated at some acts and political documents. The existence of special schools was not rejected. If anything it was accepted that special schools had very important roles to promote inclusion. It was suggested that some statutory conditions to implement inclusion should be examined.
著者
釜田 聡 許 信恵
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.17-27, 2009-02-28

本研究は,日韓相互理解の歴史教育実践上の諸課題を明らかにするため,日韓の歴史教育担当教師を対象にアンケート調査を行い,分析考察をした。研究の結果,次の4点が明らかになった。1 韓国と北朝鮮の関係について,日韓の歴史教育担当教師間に大きな隔たりがある。2 日本の教員は,歴史用語の定着を強く意識している。3 国際理解教育と歴史教育の関係について,韓国の教員の方が日韓相互理解のためには歴史教育を中核とした国際理解教育の充実が必要だと考えている。4 今後の教員や研究者の交流の在り方について,韓国の教員の方がより積極的に日韓での実践交流や研究交流を望んでいる。A purpose of this study is to clarify many problems in the practice of the Japan-Korea mutual understanding. I performed inventory survey for a Japan-Korea history education charge teacher and I analyzed it and considered it. The result of the study is the following: ① There is a great difference between the recognition about North Korea and Korea of the Japan-Korea teacher, ② The Japanese teacher makes much of what the history term teaches, ③ The Korean teacher has an opinion that the international understanding education that attached great importance to history education is important, ④ The Korean teacher expects Japanese teacher and practice interchange and study nterchange.
著者
風巻 孝男
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.261-271, 2008-02-28

C.D.フリードリヒは三度テプリッツへ旅している。1828年の美術の旅,それに1835年と翌36年の二度の療養の旅である。1828年及び1835年のテプリッツ旅行中に成ったと覚しい彼の作とされる素描や水彩画の数々が現存している。その中にはその画家とは異質な筆癖を示しているものや素人の作としか考えられないものも含まれている。<<テプリッツ近傍の森の中の廃櫨>> (図1),<<ベーメン中部連山眺望>> (図10),<<旅人のいるベーメン風景>> (図13),<<ベーメン中部連山中のクレッチェン山眺望>> (図17)がそうした例である。フリードリヒとは異質な描法に言及し,これら諸業の作者を推定するのが本稿の目的である。Caspar David Friedrich machte dreimalige Teplitzer Reisen ; ewe Kunstreise von 1828, danach zweimalige Kurreisen von 1835 und 1836. Es gibt die Friedrich zugeschriebenen Zeichnungen und Aquarelle, die auf seinen Teplitzer Reisen von 1828 und 1835 entstanden scheinen. Darunter befinden sich einige solche Blatter, die sich in der Pinselfuhrung von dem Maler unterscheiden oder nur als Amateurswerk denkbar sind; zum Beispiel <<Ruine im Walde bei Teplitz≫ (Abb. 1), <<Blick auf das Bohmische Mittelgebirge>> (Abb. 10), << Bohmische Landschaft mit Wanderer>> (Abb. 13), <<Blick zum Kletschen im Bohmischen Mittelgebirge>> (Abb. 17). Der Zweck dieser Schrift liegt darin, die andere Zeichnungsweise als die Fridrichs in diesen Blattern zu erwahnen und die Autorschaft zu vermuten.
著者
中里 理子
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.268-282, 2002

オノマトペの多義性についてその時徽を考え、一例を取り上げ実際に多義が派生しさらに解消されていく過程を考察した。まず、現代語の多義のオノマトペから意味相互の関連を考察し、(1)擬音と擬態の共通性、(2)様態の共通性、(3)感覚の共通性、(4)一般語彙との関連、(5)隣接オノマトペとの関連、(6)音の類似性、という六つⅥ特徴を見出した。次に近世・近代の「まじまじ」を取り上げ意味変化を見ながら、多義の派生とそれが解消される過程を検討した。「まじまじ」は、「目ぱちぱちさせる」という一動作とその動作を行う一般的状況を表したが、その状況が「眠れない」「平然と(見る)」「見ていて落ち着かない」に分化したとき矛盾する意味を含んでしまい、混乱を生じた末、一動作を表す意味「じっと見つめる」になり、本来のコ目をぱちぱち」という象徴性が失われた。「落ち着かない」意味は隣接オノマトペの「もじもじ」に、「眠れない」意味は語基が共通する「まんじり」にその意味が移行し、多義の縮小につながっている。形態による意味の分担も多義性の解消に関連すると思われる。The polysemy of onomatopoeia was described in this paper, which was different from that of non-onomatopoetic words. I examined how some of the onomatopoeia obtained multiple meanings and adapted to one by analyzing the actual cases. At first, following six features were described, regarding the relations among the meanings of polysemous onomatopoeia; (1) similarity of the imitative and mimetic meanings, (2) similarity of movement of words, (3) similarity of feelings, (4) relation to nononomatopoetic words, (5) relation to adjacent onomatopoeia, and (6) similarity of sounds. Secondly I examined the meanings of "majimaji", which were changed from Edo to Taisyo periods as an example of polysemous onomatopoeia. "Majimaji" originally implied blinking-eye movement and such action. And then its meaning was distinguished into multiple meanings such as <hardly sleeping > , < (looking) without shaming>, and <looking awkwardly > -leaded discrepancy and confusion among them. At last "majimaji" meant <watching fixedly > and lost the sound symbolism of blinking. On the other hand, the meaning of <looking awkwardly > was completely transferred to similar sounded onomatopoeia, as "mojimoji", another meaning of <hardly sleeping> was transferred to "manjiri" which was derived from "majimaji". These transformations lead the reduction of olysemy. Appearance of the related onomatopoetic words to share the meanings of polysemy was considered ro facilitate the reduction of polysemy.
著者
戸北 凱惟 西川 純 根本 和成
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究では、理科教材改善の手法として、客観的評価方法を開発することを目的としている。特に、従来行われていなかった、生理反応等を利用した認知的評価方法に注目した。本研究では、認知的評価方法の成立根拠をあきらかにし、さらに実態調査によって、その具体的な方法を開発した。実態研究においては、情意領域における象徴的距離効果を中心に調査した。距離効果とは、ある一対を選択する時間は、その選択する次元における距離に逆比例する現象である。その次元は抽象的な場合、象徴的距離効果と呼ばれる。この現象を用いることによって、本来測定できない心的な次元を、反応時間によって客観的に測定することが可能となる。本研究における被験者は小学生である。事前調査によって、児童が一般的に知っており、かつ、好嫌度において特徴的な動物(ゴキブリ、鳥等)を選択した。第一調査において、彼に一対の動物を提示する。そして彼らは、その一対の中でより好きな方の動物を選択するよう指示された。その選択は、一対のボタンを押すことによって行われる。好きな方の動物を選択する反応時間は、その一対の動物の好嫌度の違い(ステップ)の逆比例した。第二調査においては、彼らの反応時間を2回測定した。1回目は解剖実験の前に測定した。2回目は解剖実験の後に測定した。実験を経験したことによる好嫌度の変化は、反応時間の変化として現れた。その結果、一般的には、一度解剖実験を行った対象に対しては興味を失う。しかし、一部児童は逆に興味を持つようになり、多様性が見られた。
著者
黒木 伸明
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

聴覚障害児童・生徒の数学的学力は、中学校卒業時において数年の遅れがあると言われている。著者は数学者の立場から彼らの数学学習の自立に向けて、ろう学校及び公立中学校難聴通級クラスに出向き彼らと接してきた。教育現場での教員の努力には殆ど限界に近い状態であることから、教員の授業改善だけを期待しても、彼らの数学的学力の保障は困難であることが確認できた。そこで、ろう学校での通常のカリキュラムに加え、適切な教材の開発と、その実践を外部研究者・講師(ボランティアを含む)にお願いすることを提案したい。その学習時間は放課後・土曜日・日曜日・祭日の学習のために、先ずろう学校等の管理者(校長・教育委員会等)及び教員の意識改革が必要である。もちろん、聴覚障害児童・生徒及びその保護者の理解・意識改革も必要である。聴覚障害児童・生徒の生活体験を考慮するとき、(1)理解・解決するには少し困難さを伴う教材(2)作業を伴う教材(3)達成感の感じられる教材を教材開発の視点としていくつかの教材を開発した。例えば、(1)三角形の内角の和、(2)四角形の内角の和、(3)星形図形の性質、(4)平行四辺形の面積、(5)三角形の面積、(6)四角形の等積変形、(7)サッカーボールを作る(8)正多角形を折る(9)分数を作る(10)独楽を作るなどである。なおこれらを教育現場で実践するにあたって旅費等でSPPの支援も受けていることを記しておく。例えば、中学校における三角形の相似の考え方や、三角形の重心の考え方を適用することで、小学校6年での長方形の紙を1:2に折る教材を開発し、ろう学校6年生に実施している。これは、紙を「折る」という作業・操作活動により、中学校3年での学習内容を事前に体験させ、彼らが中学3年になり相似の学習のとき、より理解し易いようにする為である。このような観点から開発したのが上記の教材である。
著者
南部 昌敏 浦野 弘 三橋 功一 小林 稔 井上 久祥 城間 祥子
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

知識伝達型、問題解決型、省察型の研修スタイルを必要に応じて組み合わせた「協働と省察の継続と積み上げによる校内教員研修標準モデル」を構築し、実践した結果、教員の授業力と児童の学力の向上及び学習習慣の習得が明らかとなった。校内教員研修の効果は、全ての教員の行動変容として表れ(レベル3)、教職員一丸となって学校組織全体の自律的な取り組みも実現した(レベル4)。また、ニーズに応じた多様な集合型研修を行った結果、どの研修でもワークショップ型研修は好意的に受け止められ、授業力の向上に向けた改善点の明確化に寄与したことが確かめられた。
著者
中里 理子
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-14, 2007-02-28

「笑い」の表現には(1)笑い声,(2)笑うときの表情・笑い方,(3)笑うときの姿態,の描写がある。(1)と(2)に関して,中古から近代までのオノマトペの変遷を見てみると,笑い声を表す擬音語も表情・笑い方を表す擬態語も,近世にはすでに現代使われているオノマトペの典型的なものが確立していたことがわかった。笑い声を表す<模写に近いオノマトペ>は近代以後現代に至るまで個性的なオノマトペの工夫が見られるが,笑い声を表す<象徴度の高いオノマトペ.と,笑いの表情・笑い方に関しては,近代になって新たに工夫されたオノマトペはほとんど見られなかった。近代,特に明治期には,笑う表情と笑いの内容に関してオノマトペ以外で描写した表現がさまざま見られるが,これは明治期に正確で細密な描写が目指されたことと関連があり,笑いに関するオノマトペが新たに工夫されなかったことの要因の一つであると考えられる。The expression of "the laugh" is greatly divided into three with laughter and an expression to laugh and a figure to laugh at it. Even modern ages were investigated about the onomatopoeia which showed laughter and an expression to laugh from the Heian period. As for the mimesis which showed the onomatopoeia which shows laughter, and an expression, it found that the typical thing of the onomatopoeia which the present day has already been spent on was established in the modern times. Until it reaches the present day after the modern ages, the idea of the unique onomatopoeia is seen with the onomatopoeia which is close to the copy to describe laughter.
著者
中里 理子
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.137-144, 2008-02-28

「擬音語」「擬態語」は日本語に特徴的な語群として古くから研究が進められてきたが,その名称については,総称・名称ともに明治期以降多くの研究者によって様々に工夫され,提唱されてきた。現在は名称として「擬音語」「擬態語」が一般的であるが,「擬音語」が広まる以前は「擬声語」が多く使われていた経緯があり,「擬態語」は「擬容語」という名称も提唱されたことがある。「擬声語」は総称としても使われていたが,現在では総称として「オノマトペ」という名称が定着しつつある。本稿では,明治期以降に提唱された擬音語・擬態語の名称を総称と各称とに分けて整理し,名称の変遷の様相を辿った。その上で,現在一般的に使用されている名称の妥当性について考えた。As for "Giongo" and "Gitaigo", it has been proceeding with the research as a word group which is characteristic of Japanese since the old days. The various names of this word group were devised by many researchers after Meiji term, and it was proposed. "Giongo" "Gitaigo" is general as each name at present. "Giseigo" was being used before "Giongo" "Gitaigo" spread out. Though a generic name was taken, "Giseigo" was being used. But, the name of "the onomatopoeia" is taking root as a generic name at present. The name of the onomatopoeia proposed after Meiji term was divided into each name with the generic name, and put in order, and it followed the aspect of the change in the name in this paper. Then, it thought about the validity of the name generally being used at present.
著者
石川 真
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.9-16, 2009-02-28
被引用文献数
1

本研究は,コンピュータや携帯情報端末の限定された表示サイズ画面に提示される文章の表示に関する特徴を「見やすさ」や「好み」という観点から明らかとすることを目的とした。コンピュータ画面上に,携帯電話ディスプレイ,PDA ディスプレイ,パソコンモニタの表示サイズに合わせたテキストエリアを確保し,文章を提示して実験的検討を行った。はじめに,5種類の文字サイズと3種類の行間幅を組み合わせた文章をそれぞれの表示サイズに提示し,見やすさと好みについて評定させ,分析したところ,見やすさ,好みの双方とも,明確な特徴が示されなかった。そこで,各情報端末において,一般的に文章提示に用いられる3種類の文字サイズと3種類の行間幅を組み合わせて見やすさと好みの評定をさせ,分析・検証を行った。その結果,いずれの表示サイズにおいても,提示した組み合わせのうち,中間の文字サイズ,中間の行間幅が最も見やすく,また好まれることが示された。さらに,見やすさと好みの評定の関連性に着目して分析したところ,それほど強い相関関係は示されなかった。The purpose of this study was to clarify features of sentence presentation on the information terminals that had restricted display size. Especially the experimental study was examined from the point of legibility and preference. Firstly, sentence presentation was analyzed by combined conditions on five character sizes and three types of line spacing, but the result didn't indicate statistical features in each cases. Secondly, sentence presentation was analyzed by combined conditions on general three character sizes and three types of line spacing. The result showed that the middle type in both character size and line spacing was most legible and most preferable in all conditions. Thirdly, relationship between legibility and preference was examined. The result showed legibility was correlated with preference, but correlation coefficient was not so high.
著者
増井 三夫 福山 暁雄 鈴木 智子 齋京 四郎
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.231-244, 2004

「学級」を同質的集団であるとする思い込み一学級文化主義はいま根本的な転換を余儀なくされている。相互行為の視点が導入されて久しいが,この文化主義を超える方法はいまだ模索の段階にある。合意形成研究が示すように,相互行為にみられる行為者の意味はもともと不確定である。とすると「学級」が異文化ないし個別文化が共生する空間へ転換する可能性は閉ざされているのか。本共同研究は,この共生の可能性について,まずは,保健室における養護教諭と来室者の会話記録から,両者の相互行為を解釈する方法として,エスノメソドロジーとコミュニケイション的行為論の有効性を検証することから着手している。検討と考察の結果は,養護教諭と来室者との間で相互に了解を志向する行為を解釈する方法はコミュニケイション的行為論による方法が有効であった。Changing a priori premise that classroom is homogenous group is almost inevitable nowadays. A view point of interactive action hat been discussed in fields of educational science and educational sociology: neversless the development of Methodology is till at groping level. According to the study of conflict and consensus, sense of actors in interactive action is naturally uncertainty. Then is the possibility of changing over schoolroom to a space coexisting with diverse individualties closed? This cooperative research aims at verifing the validity of theory of ethnomethdology and communicative action as the method to interpret interractive action between nurseroom attendance and school nurse. The result of verifing is the following: theory of communicative action by Habermas is more valid than ethnomethdology.
著者
林 泰成
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.271-284, 2005-09-30

本稿の目的は,道徳教育のさまざまな立場で前提されている他律から自律への発達図式を検討することである。まず,ピアジェの発生的認識論を取り上げ,ついで,それを精緻化したものととらえられるコールバーグの道徳性発達論を取り上げる。つぎに,それに対する批判として,ギリガンやノディングズのケア倫理あるいはケアリング倫理の考え方を検討する。こうした流れの中では,社会関係との関わりが十分に取り上げられないので,社会律を発達の一段階としたブルの考えを吟味し,さらに,ピアジェに対して社会関係の視点が抜け落ちている点を批判したワロンに言及する。最後に,心理学的な研究ではないが,自律から他律へと発達の図式を逆転させて考え,その後に,目的律あるいは神律を想定するフェニックスやティリッヒの考え方を取り上げる。結論として,他律から自律への発達図式には,それのみを妥当なものとして認める論拠はないということを示す。しかし,こう述べることはその図式を全面否定するということではない。さまざまな図式が同等の権利で主張可能であることを明らかにすることになる。